韓国は、アジアを代表する輸出主導型の製造業国家です。IMFの2026年4月時点の見通しでは、韓国の名目GDPは約1.93兆米ドルとされ、世界経済の中でも高い存在感を維持しています。さらに韓国産業通商資源部によると、2025年の輸出額は前年比3.8%増の7,097億米ドルとなり、初めて7,000億米ドルを突破しました。なかでも半導体輸出は1,734億米ドルと過去最高を更新し、総輸出の24.4%を占めています。
2026年の韓国製造業を読み解くうえでは、半導体、EV・車載バッテリー、自動車・造船という3領域が重要です。尹錫悦政権期に本格化した「国家先端戦略産業」の育成や、龍仁(ヨンイン)を中心とするメガ半導体クラスター構想は、政権交代後も韓国の産業政策の中核として機能しています。日本企業にとって韓国は、単なる輸出市場ではなく、高度製造業のサプライチェーンに直接参入できる近接市場です。
この記事の目次
基本情報
- 正式名称:大韓民国(Republic of Korea)
- 首都:ソウル(Seoul)
- 元首:李在明(イ・ジェミョン)大統領(2025年6月4日就任)
- 通貨:大韓民国ウォン(2026年6月23日時点で、1ウォン=約0.105円、100ウォン=約10.5円 ※為替は変動するため参考値です)
- 人口:約5,161万人(KOSISの2026年人口推計)
- 面積:約10万km2
- 公用語:韓国語
- 宗教:公的統計としては2015年国勢調査が主要な参照値です。米国国務省の整理によると、宗教を持つ人は人口の約44%で、その内訳はプロテスタント45%、仏教35%、カトリック18%、その他2%です。
- 平均寿命:83.7歳(KOSIS、2024年)
産業構造
韓国経済はサービス業の比率が最も大きい一方、製造業が輸出と技術競争力を支える構造です。世界銀行の2024年データでは、韓国のGDP構成はサービス業57.5%、工業33.9%、製造業26.6%、農業1.5%です。製造業がGDPの4分の1以上を占める点は、先進国の中でも特徴的です。
今後の産業構造は、従来の家電・自動車・造船中心から、AI半導体、先端メモリー、二次電池、ディスプレイ、バイオ、スマートファクトリー関連へと重点が移っています。特に半導体では、メモリー中心の強みに加え、HBM(高帯域幅メモリー)やAIサーバー向け部品の需要拡大が韓国企業の成長を支えています。
経済の特徴
韓国経済の強みは、輸出競争力のある大企業群と、狭い国土に集積した高度な製造業クラスターです。サムスン電子、SKハイニックス、現代自動車、LGグループなどがグローバル市場で競争し、その周辺に素材、装置、部品、検査、物流、ITサービスの企業群が形成されています。韓国銀行は2026年5月の経済見通しで、堅調な半導体サイクルを背景に2026年の実質GDP成長率を2.6%と見込んでいます。
一方で、弱みとしては外需依存、米中対立や通商摩擦への脆弱性、財閥系大企業への依存度の高さが挙げられます。さらに深刻なのが、超少子高齢化による人口オーナスです。KOSISによると、2025年の出生数は25万4,457人、合計特殊出生率は0.800、死亡数は36万3,389人で、自然減が続いています。これは製造業において、若年技能者や生産現場の担い手不足、賃金上昇、技能継承の難化を招きます。
そのため韓国では、自動化、ロボット、AI検査、予知保全、スマートファクトリー化は、単なる生産性向上策ではなく、労働力不足を補う重要な投資領域になりつつあります。日本のBtoB企業にとっても、省人化・検査・保守・工場DX関連の技術は有望な提案領域です。
製造業全体
2025年の韓国製造業は、半導体を中心に回復基調を強めました。産業通商資源部によると、2025年の輸出は7,097億米ドルと過去最高となり、半導体輸出の伸びが全体を牽引しました。自動車や石油化学など一部では市況変動の影響を受けたものの、AI関連需要を背景に半導体の存在感は一段と高まっています。
政策面では、尹錫悦政権期に打ち出された国家先端戦略産業の育成方針が重要です。韓国政府は2024年、京畿道の龍仁、平澤、華城、利川などを中心に、世界最大級の半導体メガクラスター構想を発表しました。JETROによると、2047年までに民間投資622兆ウォンを誘導し、13の生産工場と3つの研究施設を整備する計画です。
さらに2025年には、半導体産業支援規模が33兆ウォンに拡大され、龍仁・平澤地域のインフラ整備や低利融資、補助金が強化されました。政権交代後も、半導体やAIなど先端産業を国家競争力の柱に据える方向性は続いており、素材・装置・検査・ユーティリティ・建設・保守関連の需要拡大が見込まれます。
製造業の主要産業
半導体・エレクトロニクス
第1の主要産業は、半導体・エレクトロニクスです。韓国はDRAM、NAND、HBMなどメモリー半導体に強く、AIサーバー向け需要の拡大により輸出額が大きく伸びています。2025年の半導体輸出額は1,734億米ドルで、総輸出の24.4%を占めました。今後は、先端メモリー、ファウンドリー、半導体製造装置、検査装置、フォトレジストなどの周辺産業も含めた競争が激しくなります。
半導体・エレクトロニクスでは、サムスン電子とSKハイニックスが代表企業です。サムスン電子の2025年通期売上高は333.6兆ウォン、営業利益は43.6兆ウォンでした。スマートフォン、家電、ディスプレイに加え、半導体メモリーとファウンドリーが中核です。SKハイニックスは2025年通期で売上高97.1467兆ウォン、営業利益47.2063兆ウォンを記録し、AI向けHBM需要の恩恵を強く受けています。
EV・車載バッテリー
第2の主要産業は、EV・車載バッテリーです。韓国企業はLGエナジーソリューション、SK On、サムスンSDIを中心に世界市場で存在感を持ちます。ただし、中国勢の台頭により競争は厳しくなっています。SNE Researchによると、2025年1〜6月の世界EV用電池使用量は504.4GWhで前年比37.3%増となった一方、LGエナジーソリューション、SK On、サムスンSDIの韓国系3社の合計シェアは16.4%と前年から低下しました。今後はESS、LFP電池、リサイクル、安全性評価などが重要になります。
EV・車載バッテリーでは、LGエナジーソリューションが代表格です。同社の2025年売上高は23.7兆ウォン、営業利益は1.3兆ウォンでした。2026年はESS需要の取り込みやLFP電池、46シリーズ円筒形電池などの製品展開を進める方針です。
自動車・造船
第3の主要産業は、自動車・造船です。現代自動車グループはEV、ハイブリッド、SUVを軸に販売を拡大し、造船ではLNG船、高付加価値コンテナ船、艦艇、環境対応船が成長領域です。2025年の韓国の船舶輸出額は過去最高の約318億米ドルとなり、世界受注シェアも20.2%まで上昇しました。
自動車では現代自動車が中心企業です。2025年の世界販売台数は413万8,389台、売上高は186.3兆ウォン、営業利益は11.47兆ウォンでした。電動車販売も前年比27%増の96万1,812台となっており、EVだけでなくハイブリッドを含めた電動化戦略を進めています。
日本企業の進出状況
韓国は日本企業にとって、距離の近さ、産業構造の近似性、顧客企業の技術水準の高さから、BtoB分野で重要な市場です。外務省の海外在留邦人数調査統計によると、2025年10月1日時点の韓国在留邦人数は4万4,471人です。また、外務省の海外進出日系企業拠点数調査をもとにした集計では、2024年時点の韓国の日系企業拠点数は3,003拠点とされています。
今後は、単なる販売拠点ではなく、韓国大手メーカーの近くで技術サポート、試作、保守、品質対応を行う拠点の重要性が高まります。特に半導体材料・装置、精密検査、工場自動化、産業用ドローン、バッテリー関連部材は、日本企業が競争力を発揮しやすい領域です。
韓国に進出した日本企業
浜松ホトニクス株式会社
浜松ホトニクスは2025年3月、韓国法人HAMAMATSU PHOTONICS KOREAが京畿道華城市に新工場を建設し、本格稼働を開始したと発表しました。目的は、半導体故障解析装置の製造能力を強化し、韓国の半導体メーカーからの需要増に対応することです。韓国の半導体クラスターに近接して製造・サポート体制を整える動きは、今後の日本企業進出の典型例といえます。
東京応化工業株式会社
東京応化工業は、韓国・平澤市に新工場を建設する計画を発表しています。同社は韓国でフォトレジストなど半導体材料の研究・製造・販売を行ってきましたが、平澤新工場では高純度化学薬品の製造体制を強化します。投資額は約120億円で、半導体製造に不可欠な材料を現地で安定供給するサプライチェーン構築が狙いです。
株式会社Liberaware(リベラウェア)
Liberawareは2024年11月、韓国現地法人Liberaware Koreaを設立しました。同社は世界最小クラスの産業用「超狭小空間点検ドローン」と画像処理技術を開発しており、工場、倉庫、インフラ設備など、人が入りにくい場所の点検を可能にします。韓国では製造現場の省人化、安全管理、設備保全DXの需要が高まっており、同社の進出はスマート工場化の流れと合致しています。
まとめ
2026年の韓国製造業は、半導体を中心に再び成長局面へ入りつつあります。特にAI半導体、EV・車載バッテリー、自動車・造船は、韓国の輸出と産業政策を牽引する主要分野です。一方で、超少子高齢化による労働力不足は深刻であり、省人化、自動化、検査、保守、スマートファクトリー関連の需要は今後さらに高まります。
日本企業にとって韓国市場は、低コスト生産地ではなく、高度な製造業顧客に近接して技術力を提供する市場です。半導体サプライチェーンの現地化、バッテリー産業の高度化、工場DXの進展を踏まえれば、素材・装置・精密部品・検査・保守サービスを持つ日本のBtoB企業には、引き続き大きな事業機会があります。
参考ソース一覧
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- Korea.net「President Lee Jae Myung」
- KOSIS「Korean Statistical Information Service」
- Yahoo!ファイナンス「KRW/JPY」
- Exchange-Rates.org「KRW to JPY exchange rate history」
- U.S. Department of State「2023 Report on International Religious Freedom: South Korea」
- IMF「World Economic Outlook Database, April 2026」
- Bank of Korea「Economic Outlook, May 2026」
- World Bank「World Development Indicators」
- 韓国産業通商資源部「2025年輸出実績」
- BusinessKorea「Korea’s semiconductor exports reached $173.4 billion in 2025」
- JETRO「韓国政府、半導体メガクラスター造成計画を発表」
- AP News「South Korea expands support for semiconductor industry」
- SNE Research「Global EV battery usage, January-June 2025」
- Samsung Electronics「FY 2025 Results」
- SK hynix「FY25 Financial Results」
- LG Energy Solution「2025 Financial Results」
- Hyundai Motor「2025 Annual and Q4 Business Results」
- 外務省「海外在留邦人数調査統計」
- 外務省「海外進出日系企業拠点数調査」
- 浜松ホトニクス「HAMAMATSU PHOTONICS KOREAが工場を新設」
- 東京応化工業「韓国平澤工場建設に関する発表」
- オートメーション新聞「東京応化工業、韓国・平澤に新工場」
- JETRO「Liberaware、韓国現地法人を設立」
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