テクノポートの小林です。今回は、製造業者の営業活動を成功に導くための秘訣を、5つの成功事例を通じて考察します。製造業の営業活動にとって必要不可欠なホームページを、自社の営業戦略にうまく組み込み、大きな成果を挙げたこれらの事例から、成功の秘訣を探求していきます。
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この記事の目次
ホームページを活用した5つの営業活動事例と成功の秘訣
独自の営業戦略とホームページの活用によって、大きな成果を挙げた製造業の事例をいくつかご紹介し、それぞれ成功の秘訣を考察していきます。
ホームページ×協力工場ネットワークを活かした営業戦略(株式会社富士産業)
新事業を中心に据えたホームページを制作
富士産業は鋼材事業を柱としていましたが、市場の成長が見込めず、事業として差別化を図ることが難しい状況でした。そのため、新事業として行っていた、自社の加工設備とネットワークを活用した製作金物事業を中心に据えたホームページを立ち上げました。顧客ターゲットを設計事務所やデザイン会社といった異業種に設定することで、競合他社との競争を避けながら、多くの引き合い獲得に成功しました。
独自のネットワークを活かした営業戦略
上述したターゲットからの引き合いを受注するためには、見込み顧客の多種多様な要望に応えるための、異業種を中心とした協力工場ネットワークを構築する必要がありました。また、協力工場は、近場の工場のほうが連携を取りやすいと考え、タウンページと地図を広げ、近くの工場を地道に探しては声をかけ、ガラス、皮革、樹脂など幅広い業種の協力工場を70社ほど開拓しました。同業他社では断ることが多い複合素材の製作案件を、富士産業が協力工場を取りまとめて連携製作することで受注できるようになり、同社の大きな強みとなっています。
成功の秘訣
- 成長の見込めない既存事業ではなく、新事業を中心に据えたホームページを制作
- 個人やデザイン会社をターゲティングすることで競合他社との競争を避けた
- 独自の協力工場ネットワークを形成し、異素材対応を可能にし顧客ニーズに応えた
ホームページ×ターゲットに刺さる独自の強み(荒川技研)
プラスチック試作品の切削加工に特化したホームページへリニューアル
プラスチック加工を手広く手がける荒川技研は「樹脂試作専門工場」というキャッチコピーを掲げ、試作に特化した事業展開を行うためにホームページをリニューアルしました。
仕様変更の提案ができない量産段階では、価格競争になりやすくなるため、試作段階で課題を抱えている見込み顧客へターゲットを絞りました。協力工場とともに試作段階からの案件を獲得できる仕組みを作ることで、試作から量産時においてトラブルなく良心的なコストで移行できることを価値として訴求できています。
試作を切り口にさまざまな工法転換を提案
試作に対して課題を抱えているメーカーの設計開発部門をターゲットにする際において、価値提供を行う一つの手段として「最適な工法が提案できる」というものがあります。自社で対応できる切削加工以外の工法も提案できるよう、協力会社を活用し、光造形や真空注型などの他工法も含めた提案を行うことで、他社との差別化を図っています。
成功の秘訣
- プラスチック加工の中でも、高い利益率が期待できる試作領域に特化
- 試作を課題に抱える見込み顧客に対し、工法提案や試作〜量産の一貫対応など独自の価値を作り上げた
- 自社で対応できない領域は、設備投資ではなく協力工場とのコラボレーションでカバー
ホームページ×見積り最速化を実現した営業努力(株式会社共栄精機)
ホームページでは「金属加工のコンビニ」をブランディング
精密板金加工業を営む共栄精機は、精密板金業界における見込み顧客の最大のニーズはスピード対応であると考え、「すぐに欲しいものが手に入る」ことをなぞらえて「金属加工のコンビニ」というキャッチコピーをホームページ上に掲げ、ブランディングを行いました。その結果、短納期対応にニーズを持っているメーカーや同業者からの受注を多く獲得しています。
見積り回答を最速化することで受注率を高める
「すぐに欲しいものが手に入る」という状況を実現するために、共栄精機が取り組んでいることは見積もり回答の最速化です。ネット上で見積もり依頼する顧客にとっての一番のニーズは、見積もり回答が早いことであるという仮説のもと、同業他社が数日かけて提出する見積もりを最短1時間以内に提出しています。
このスピーディーな見積もり回答を実現するために、外注先の見積もり待ち時間を省き、自社で迅速に見積もりを行う仕組みを独自で考案することで、通常断られるような短納期要求にも対応可能となり、高単価での受注が実現しました。さらにはこの対応が信頼関係の構築が進み、顧客からのリピート依頼が増加しました。
成功の秘訣
- 「短納期対応」という顧客ニーズに焦点を当てホームページをブランディング
- 短納期対応を求める見込み顧客が持つウォンツを「見積もり回答スピード」と定義
- 競合他社を圧倒的に凌ぐ見積もり回答スピードを実現するための仕組みを、社外(外注)も巻き込みながら構築
ホームページ×独自のターゲティングによる営業効率化(昭和電器)
特定の市場にターゲットを絞ったホームページへリニューアル
昭和電器は、樹脂の射出成形用金型の設計・製作から成形に至る一連の工程に対応できる中堅樹脂加工企業です。汎用プラスチックからエンジニアリングプラスチックまで、多様な分野での受注が可能です。ただし、汎用プラスチック分野では競争が激しく、高付加価値の仕事を獲得するのが難しいとの判断から、成形難易度が特に高い「PPS樹脂の成形」に特化したホームページを作成しました。
ターゲットを絞ることでマーケティング・営業活動が効率化
競合性の低い市場にターゲットを絞ることで、ホームページで対策する検索キーワードのSEO難易度が下がり、短期間でPPS関連のキーワードで軒並み好順位を獲得することができ、多くの問い合わせ獲得につながりました。
また、問い合わせ対応を行う営業担当者はPPSに関連する分野の技術知識を習得しておけば問い合わせ対応が可能なため、営業活動が効率化され受注率の上昇にもつながっています。
成功の秘訣
- 競争を避けるために付加価値の高い分野にターゲットを絞る
- ターゲットを絞った分野において、ブランディングを高めるために関連キーワードでSEO対策を行う
- 対象分野を狭めることで、対応する営業担当者の負荷を下げる
ホームページ×泥臭い営業活動による用途開拓(株式会社アデムカ)
足を使った営業活動により技術の新用途を開拓
第一フォームは、1986年に創業して以来ずっと魚を入れる発泡スチロール箱(トロ箱)など大量生産品の製造を行ってきましたが、その市場は縮小の一途をたどっていました。それに危機感を抱いたニ代目の新社長は、自社技術の新たな用途を探すため、展示会へ足を運んだり、知り合いの経営者に相談したりしながら新たな用途を開拓していきました。
その結果として、一般向けのウェディングパーティーを彩る装飾品、学校や公共機関向けの安心安全な発泡スチロール製の掲示板、企業向けの展示会装飾品や記念行事で使用する立体企業ロゴなど、BtoC、BtoG、BtoB問わず、多種多様な用途展開を行っていきました。
用途実績をもとにホームページをリニューアル
足を使った用途開拓の後に行ったのは、ホームページのリニューアルでした。今までに開拓した用途実績を題材にしてWebページを量産することで、類似用途の問い合わせを多く獲得することができました。
問い合わせの中には、立体造形物を作ってほしいという要望も多く見られました。立体造形物はどちらかというと工業より工芸に近い分野でしたが、そのような要望にも低コストで対応できるよう、3D加工の対応ができる設備を独自で開発するなど、受注率を高めるための設備投資や営業努力も欠かさず行っています。
成功の秘訣
- コミディティ化した技術に対し、市場(用途)を変えることで新たな付加価値を創出
- 用途開拓したテーマをもとにホームページをリニューアルし、類似用途を持つ見込み顧客を獲得
- 市場が変わることで競合する相手も変わったが、それに対し自社のコア技術であった工業化によるコストダウンで対抗
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ホームページを営業として有効活用するための質問集
ご紹介した各社は一朝一夕で独自の営業戦略へたどり着いたわけではありません。日々の顧客との対話、ホームページの運営、新規顧客の問い合わせ対応などから少しずつ正解を導き出していきました。
以下の質問は、正解を導き出すために日々の営業活動で押さえておきたい項目を質問形式でまとめたものです。できているかどうかチェックをつけて、できていないところから日々意識して取り組んでいただければ幸いです。
営業戦略に関する質問
■なぜ顧客は自社と継続的に取引を続けてくれているのですか?
■競合他社と比べ、自社の強みが何かを言語化できますか?
■よく相見積もりになる競合他社がどのような会社か把握していますか?
■「なんでもできます」ではなく、自社の得意領域を築けていますか?
ホームページ運営に関する質問
■掲載内容は自社の現在の事業内容に合っていますか?
■自社のアクセス数がどれくらいか把握していますか?
■対策キーワードを設定していますか?
■ホームページがどのような検索キーワードで見られているか把握していますか?
■問い合わせがどのページから流入したユーザーなのか把握できていますか?
■アクセスキーワードの中から見込み顧客の新たなニーズを定期的に発見していますか?
問い合わせ対応に関する質問
■問い合わせの数は目標どおり獲得できていますか?
■どのような問い合わせを獲得したいか、明確に答えられますか?
■問い合わせの内容は自社が獲得したいと考えている内容とマッチしていますか?
■問い合わせの対応フローや報連相のルールは決まっていますか?
■問い合わせ内容の情報管理はできていますか?
■見積もり回答した案件について、受注可否を記録できていますか?
■失注した場合にその理由をヒアリングできていますか?
ホームページを使った営業が製造業と相性が良い理由
購買のタイミングを効率的に掴める
多くの場合、製造業においては従来から継続取引している発注先が存在します。より安価な発注先を探す場合もありますが、通常は特別な理由がない限り、新しい発注先を検討することはありません。
新しい発注先を検討するタイミングや理由としては、従来の加工業者が遅れている場合や品質に問題がある場合、製造ボリュームに対応ができない場合、後継者が見つからないことによる廃業、発注リスクの分散などがあります。現在の発注先との関係が常に良好であるわけではないため、そのようなタイミングを見極めることは非常に難しいです。ほとんどの場合、「機会があれば」新しい発注先を検討することになります。
そのため、製造業の営業活動における最も難しいポイントは「購買のタイミングをつかむことができるかどうか」になります。ホームページであれば、購買タイミングになった発注先のほうから問い合わせをしてきてくれるため、営業活動が圧倒的に効率的です。
営業リソースが不足していても取り組める
製造業における営業リソースの不足は、人材不足による「専任の営業担当者不在」、または「営業力の不足」の場合があります。営業リソースが限られている状況では、プッシュ型の営業は不向きです。既存の取引先に自社を発注候補として考慮してもらう必要があり、多くの営業リソースを投入する必要があるためです。
しかし、ホームページを利用することで、購入のタイミングやニーズがある際に顧客からの問い合わせが得られ、営業の労力を大幅に軽減できます。
設備稼働率の波を埋める役割を果たせる
製造業では、保有設備の限界により、需要があっても必ずしも受注できないことがあります。繁忙期には、営業活動を通じて案件を獲得しても、製造能力の制約で対応できないことが少なくありません。
一方で、営業側は売上や顧客信頼を重視し、多くの案件を受けようとしますが、現場ではそれが受け入れられないこともあります。さらに、閑散期には営業活動をしても案件が獲得できない場合もあり、仕事の波をコントロールするのが難しい業界です。
しかし、ホームページからの継続的な案件受注に成功すれば、設備稼働率が低い時期に積極的に仕事を引き受け、稼働率の波を平準化できます。
幅広く技術を知ってもらうことで新市場開拓につなげられる
ホームページを通じて、さまざまな分野の見込み顧客に自社の技術を紹介することで、自社が想定していなかった業界や用途からの問い合わせの獲得が可能になります。現在利用されている分野以外の用途や業界への進出は、特定の業界に依存しない顧客基盤を構築し、リスク分散に寄与します。
最近では、EVシフトが進んでいる自動車業界を中心に、新市場開拓の必要性が高まっています。弊社が自動車部品製造に携わる製造業の経営者に対し行った調査では、約6割が「10年後、今の雇用を維持できなくなる」と回答しました。
そして、その打開策として検討している取り組みとして「新市場開拓」と回答した方が最も多く58.6%にも及びました。
しかし、新市場開拓を行う際の課題として「自社技術が他のどの業界にニーズがあるのかわからない」と回答する方が51.2%と最も多い結果となりました。
ホームページを活用し、自社技術の新たな用途ニーズを持つ見込み顧客側から問い合わせを獲得する取り組みは、自社技術の用途開拓と見込み顧客獲得を並行して実現することのできる良策であるのではないでしょうか。
当調査レポートの結果と新市場開拓に関するお役立ち資料は以下よりダウンロードいただけます。
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以上、製造業が営業活動を成功させる秘訣を考察してみました。テクノポートでは、製造業専門のWebマーケティング支援を行っており、1,000社を超える製造業を支援した実績があります。ホームページ営業に注力したいと考える製造業の方は、ぜひお気軽にご相談ください。