製造業の新規市場開拓・異業種参入の手法|成功事例9社紹介

【執筆者紹介】小林(井上) 正道

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この記事の執筆者
小林(井上) 正道
会社名:テクノポート株式会社
役職:取締役
【経歴】
製造業のWebマーケティング支援を15年以上。
製造業への訪問実績3000件を超える。
幅広い加工知識と市場調査をもとに、製造業の新規顧客開拓の支援を行う。

日本工業大学技術経営学修士号(MOT)
研究テーマ「Webを活用した用途開発マーケティング」

【専門領域】
製造業 × 企画コンサルティングスキル × Webスキル(SEO中心)

【寄稿実績】
・Webリニューアルが逆効果に? 問い合わせを減らさない製造業のサイト改革(MONOist)
・新規顧客が集まらない製造業のWebサイト、活用を阻む3つの壁(MONOist)
・技術PRのために最適なWeb戦略は何か、「アンゾフの成長マトリクス」の活用(MONOist)
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新規事業開発と異業種参入の取り組みについて

「うちの仕事、このままで大丈夫だろうか——」

そんな不安を、心のどこかで感じている経営者や営業担当の方も多いのではないでしょうか。長年付き合いのある取引先、積み上げてきた信頼関係。それ自体はもちろん大切な財産です。ただ、自動車のEV化や大手メーカーの生産移管など、業界の地殻変動はじわじわと進んでいます。実際に、EV化による売上への不安を「感じる」と答えた自動車部品サプライヤーは6割超。そのうち新市場の開拓を打開策として考えている企業は58.6%にのぼります(テクノポート株式会社調査)。

また財務省が2023年に全国1,149社を対象に行った調査でも、新規事業や異業種参入の「必要性は感じているが動けていない」企業が18.1%いることがわかっています。「やらなきゃとは思ってるんだけど……」という企業が、実はたくさんあるのです。

「異業種参入・新規市場開拓」の重要性

異業種参入と聞くと、ハードルが高そうに感じるかもしれません。でも、必ずしもそうではありません。

異業種参入といっても、ゼロから新しい技術を身につける必要はありません。 自社がこれまで磨いてきた加工技術や品質管理のノウハウは、実は他の業界でもそのまま通用することが多いのです。

自動車向けに鍛えた精度管理が医療機器メーカーに刺さった、金属加工の技術がインテリア・建築市場で求められた——こうしたケースは、特別な企業だけの話ではありません。財務省の調査でも、新規事業に踏み出した企業の多くは「ビジネスチャンスがあった」(67.1%)と答えており、危機への備えというより、自社技術の新しい活かし方を見つけたという感覚に近いようです。

新市場開拓が難しい理由と解決の切り口

とはいえ、「じゃあどこから手をつければ?」というのが正直なところですよね。

新規事業に取り組む企業の70.3%が「人手不足・専門知見の不足」をボトルネックに挙げています(財務省調査)。受託加工業の場合、特に大きな壁になるのが「自分たちの技術が、どの業界で求められているかわからない」という点です。長年、特定の業界だけで仕事をしてきたからこそ、他の業界のことはなかなか見えてきません。

そこで多くの企業が活用しているのが、Webマーケティングという方法です。大きな投資も、新しい営業部隊も必要ありません。自社の技術を必要としている異業種の企業に、向こうから問い合わせてもらえる仕組みを作るイメージです。

実際にこのアプローチで異業種参入を実現した企業の事例を、次からご紹介していきます。

新規市場開拓を実現した製造業の事例

自社技術を使い新規市場開拓に成功した6社の中小製造業の事例をご紹介します。

有限会社小林製作所(プレス板金・切削加工業)

通信依存から脱却し、多業界へ展開

有限会社小林製作所

出典:有限会社小林製作所Webサイト

通信業界への依存を課題に

有限会社小林製作所は、金属プレス板金・金型設計製作・切削加工を手掛ける加工メーカーです。幅広い加工設備と対応力を強みとしていましたが、長年にわたり通信業界向け案件の比率が高く、特定業界への依存が経営課題となっていました。展示会や紹介営業を中心に新規開拓を行っていたものの、営業範囲や接点に限界を感じていました。また、多様な加工に対応できる反面、「何が強みの会社なのか」が伝わりにくく、新たな業界への展開が進まない状況でした。そこで、通信業界依存から脱却し、幅広い業界から安定的に引き合いを獲得するため、Webマーケティングに取り組みました。

10年間で100社以上を新規開拓

同社では対応可能な加工領域が広い一方で、技術の見せ方や訴求軸が整理されておらず、潜在顧客に強みが十分伝わっていませんでした。また、既存顧客への依存度が高く、新市場・新規顧客の獲得経路を構築する必要がありました。

Webサイトの刷新と継続的なWebコンサルティングにより、技術情報や加工内容を整理・発信した結果、10年間で100社以上の新規顧客開拓に成功。従来接点のなかった業界からの問い合わせも増加し、通信業界1本から脱却する営業基盤を構築しました。展示会や紹介営業に依存しない、新たな集客チャネルとしてWebを確立できたことが大きな成果となりました。 →事例詳細はこちら

株式会社ギケン

自動車業界中心の受注構造を転換

株式会社ギケン

出典:株式会社ギケンWebサイト

自動車業界以外への展開を模索

株式会社ギケンは、樹脂加工・樹脂成形を中心に、試作部品製作やGFRP加工、発泡成形などを行う受託加工メーカーです。切削加工と成形加工の両方に対応できる体制を持ち、試作から量産まで見据えた技術提案を強みとしていました。これまで主に自動車関連分野の案件が中心でしたが、市場変化への対応や事業拡大を見据え、多様な業界からの問い合わせ獲得を目指していました。一方で、Webサイトは会社案内的な役割に留まっており、技術力や対応範囲を十分に訴求できていない状態でした。そこで、自社技術を整理し、Web経由で新たな業界との接点を増やす取り組みを開始しました。

技術の見せ方を再構築 多様な業界から問い合わせ獲得

対応範囲が広い反面、得意技術が伝わりづらいことが課題でした。そこで、加工技術や用途ごとに情報を整理し、Webコンテンツとして発信しました。その結果、ホームページ経由の問い合わせが大幅に増加。これまで受注経験のなかったGFRP加工、熱板溶着、試験片製作など、多様な分野から相談が入るようになりました。問い合わせ内容も具体化し、商談につながりやすくなるなど、自動車業界依存から脱却する新たな営業基盤づくりにつながりました。 →事例詳細はこちら

株式会社ピーエヌ機電

地方企業でも県外販路を拡大

ピーエヌ機電

出典:株式会社ピーエヌ機電Webサイト

長崎県外への販路開拓が課題

株式会社ピーエヌ機電
は、長崎県で鉄・非鉄金属のプレス加工および機械加工を行うメーカーです。航空機関連部品やモーター用鉄心など、高度な加工技術を強みとして事業を展開していました。地方企業であることに加え、営業リソースが限られていたため、県外企業との接点づくりが難しい状況でした。また、自社技術を外部へ発信する仕組みが十分整っておらず、潜在顧客に技術力が届いていないことも課題でした。

県外企業からの問い合わせが増加

Webサイト制作と継続的なWebコンサルティングにより、県外企業からの問い合わせが大幅に増加。現在では毎月10件程度の問い合わせを獲得し、累計1,000万円規模の受注にもつながっています。中小企業だけでなく、大企業や大学からの相談も増え、長崎という地方立地に依存しない販路開拓を実現しました。  →事例詳細はこちら

株式会社星製作所(精密板金加工業)

星製作所出典:株式会社星製作所Webサイト

精密板金加工業を営んでいる株式会社星製作所は、もともとは社会インフラ関連機器に使用される板金加工を生業としていましたが、リーマンショックを機に仕事量が激減してしまいました。

当時、社長に就任したばかりだった星社長は、状況を打破すべく新規事業として、セミオーダーで板金ケースを発注できる事業を開始し、「板金ケース.com」を立ち上げました。

板金加工技術をIT業界の市場向けに展開

板金ケース.comは、立ち上げてから大きな広告予算を投じることもなく、板金ケースを必要としていたサーバ製造メーカー、SIer、ITベンチャー企業などに支持されるようになりました。

多くの板金加工企業は、図面がないと仕事を受けないケースが多かったり、オンラインでのコミュニケーションに慣れていなかったりすることもあり、普段製造業と仕事をする機会の少ないIT企業にとって、仕事を依頼するハードルが高いものがありました。

そこで、板金ケース.comでは、図面がなくても発注ができるようセミオーダー化、リアルコミュニケーション不要のオンライン完結する仕組みを作ることで、顧客のニーズに強くフィットしました。

川上展開により競争優位性をさらに高める

事業を進める中で、顧客の要望としてフルオーダーの板金ケースを求める声が増えていきます。顧客の多くが設計部門を持たないIT企業だったため、筐体の設計ができず困っていることが分かりました。そこで星社長は、設計機能の内製化を決断します。数名の町工場が設計部門を持つことは大きなリスクを伴いましたが、川上展開により競争優位性をさらに高めることができると考えたのです。

結果、この施策も多くの顧客に受け入れられ、事業拡大に貢献しました。また、筐体設計だけアウトソーシングしたいというニーズに着目し「筐体設計.com」という新サービスの立ち上げにもつながりました。

株式会社富士産業(金属金物製作事業)

富士産業

出典:株式会社富士産業Webサイト

株式会社富士産業は、主力としていた鋼材販売業の先行きを危惧し、新規事業として金属加工業へ進出を考えていました。しかし、工業部品の金属加工の分野では本業の顧客とバッティングしてしまう懸念があったため、工業分野以外で自社が進出できそうな分野を模索しました。

その中で、新規事業を推進していた杉本常務が目を付けたのが、他社が仕事を受けたがらない、一般消費者やデザイナーからの仕事です。

金属加工技術を個人・デザイナー向けに展開

Webマーケティングの実施により多くの見込顧客を開拓した杉本常務でしたが、顧客から寄せられる要望は、「図面なしで加工対応してほしい」「金属と皮革を組み合わせた品物を作ってほしい」など、自社だけでは対応できないものばかりでした。

そこで、顧客の要望に何でも応えられるよう、葛飾区という立地をうまく活用し、異業種の町工場ネットワークを構築しました。見込顧客のニーズに提供サービスをフィットさせることで、多くの顧客開拓に成功しました。

当初想定していなかった分野へも市場が広がる

当初ターゲットとしていたのは、一般消費者やデザイナーでした。しかしマーケティングを続けた結果、ホテル、ブティック、お寺、設計事務所、デザイン事務所、大手メーカーといった、さまざまな業種の顧客を獲得することができました。

共通するニーズは、「図面がなくても加工を請け負ってほしい」「異素材でも一社ですべて対応してほしい」「気軽にものづくりを頼める工場を探していた」というものでした。サービスを市場にフィットするよう磨き込んだ結果、共通するニーズを持つ異分野の顧客にまで自然と広がっていったのです。  →事例詳細はこちら

株式会社アデムカ(発泡スチロール加工業)

アデムカ

出典:株式会社アデムカWebサイト

発泡スチロール加工業を営む株式会社アデムカは、鮮魚を運ぶために使われるトロ箱の製造を生業としていました。しかし、時代の流れとともに市場は縮小傾向となり、それに危機感を抱いた澁谷社長は発泡スチロール加工を他の用途へ展開できないかと考えました。

自らの足を使い、用途を探し回った末にたどり着いたのが、企業がイベントや展示会の時に使うオブジェやパネルといった販促品市場への展開でした。

加工機を独自開発するなど優位性を構築

新規参入した市場で発泡スチロール造形を行っている競合他社の多くが、手仕事で造形を行っていました。しかし、見込顧客は発泡スチロールに対し安価に製造ができるイメージを持っていたため、機械化を行いコストを抑える必要がありました。

顧客の要望に応えるために、澁谷社長は3Dの造形物を加工できる機械を独自で開発するとともに、機械を動かすための3Dデータ作成の業務を内製化することで顧客のニーズにフィットさせていきました。当事業は多くの顧客に支持され、今では会社の売上のほとんどを新規事業が稼ぎ出しています。

コロナ禍では工業向け市場にも展開

事業を順調に拡大させていた当社でしたが、コロナ禍に入り状況は一変します。主力としていた販促品の需要が激減したのです。販促品の多くがイベントや展示会で使われるものでしたが、コロナ禍の影響でそのほとんどが自粛となってしまったためです。

危機を脱するために、外部環境に影響を受けづらい工業向けの市場へとターゲットを広げました。具体的には、緩衝材やモックアップ(デザインモデル)、検査治具などといった工業製品です。機転の利いた取組が功を奏し、激減した問い合わせを工業系の問い合わせで埋めることでコロナ禍の危機を乗り越えることができました。 →事例詳細はこちら

株式会社グリムファクトリー(特殊印刷業)

グリムファクトリー新市場開拓

出典:株式会社グリムファクトリーWebサイト

UVインクジェット、シルクスクリーン印刷、パット印刷、レーザー刻印、工業用塗装などを手掛けるグリムファクトリーは、さまざまな印刷技術を駆使し特殊印刷を行っている会社です。その技術をさらに強化し、金属などのデジタル印刷が剝がれやすい材質に対し、剝がれないデジタル印刷技術(特許取得済み)を開発しました。しかし、技術は確立できたものの、その技術の活かしどころがうまく見つからず、Webを活用することで用途を見つける取り組みをスタートしました。

機能性に着目しさまざまな切り口で訴求

「剝がれない」と一口に言っても、それだけではユーザーへのメリットにはなりません。剝がれやすい材質は何なのか、はがれにくいことでどのようなメリットが生まれるかなど、「剝がれない」という機能性を分解し、Webで訴求できるように組み立てました。また、用途が自社だけでは見つけづらいため、アイディア募集のためのクラウドソーシングも活用しました。

多くの引き合いを獲得し、新たな用途を見出すことに成功

「剝がれづらさ」を対候性の観点から屋外看板の用途に展開したり、高級感のある金属壁画や金属屏風に展開したりするなど、自社だけでは見出すことができなかった用途を機能性軸で訴求することで新たな用途を開発することに成功しています。実績を作ることでさらに訴求力と認知度が高まるため、さらなる売上の拡大が期待できます。  →事例詳細はこちら

荒川技研株式会社(樹脂切削加工業)

グリムファクトリー新市場開拓

出典:荒川技研株式会社Webサイト

試作を主とした樹脂切削加工業の荒川技研は、アミューズメント系の仕事が大半でした。アミューズメント系の案件は下降傾向だったため、新規の顧客開拓は必須で、展示会、商談会、Webなどさまざまな営業に取り組んでいました。

アクリル透明化に可能性を見出す

Webや展示会での顧客の反応から、アクリル透明製品の反応が良いことに気づきました。顧客の求めているのは単に樹脂を切削することだけではなく、切削した樹脂の透明性に興味があり、透明化した樹脂を展示会のモデルや、中に水などを流し流動解析をするなどの用途があることがわかりました。そこで、透明化ニーズのユーザーが気になるであろう「透明度」の数値化、透明化させるために技術の研究などを行い、アクリルなどの透明化できる樹脂ページでの訴求を行いました。その結果、狙ったユーザーからの定期的な引き合いの獲得に成功しました。

樹脂試作・アクリル可視化・特殊材切削など多様な切り口で数多くの顧客を獲得

他にもさまざまなマーケティング施策を立て、Web上でPDCAを回すことでこの10年で数百社の顧客開拓に成功、アミューズメント系の業種に偏っていた売上比率を、多種多様な業種に分散させることができました。今後もさまざまな仮説を立て、新しい切り口を設けるマーケティングの仕組みができているため、多くの引き合いを獲得することが期待できます。 →事例詳細はこちら

株式会社リソー技研(装置製造業)

 

出典:株式会社リソー技研Webサイト

産業用機器装置を設計から設置まで一貫して対応できるリソー技研は、特に超音波はんだを得意としています。超音波はんだはセラミックス、難はんだ付け性金属(アルミニウム、モリブテン、 ステンレス等)にも、直接高品質なはんだ付けができる画期的な技術です。当初はこの技術が異素材接合に需要があるだろうと想定していたものの、実際には市場ニーズが薄かったため、新たな用途で活用してもらえるターゲット顧客を模索する必要がありました。

MFTフレームワークとSEOの掛け合わせにより技術課題を発掘

用途を検討する上で活用したのがMFTフレームワークです。超音波はんだ技術を改めて要素分解し、提供できる機能、市場を洗い出すことでどの用途が適しているかを模索していきました。ここで上がってきた候補をもとにSEOなどの施策を約半年続けていると、それまで特に注力していなかった「アルミ系」の分野での検索キーワードからのアクセスが増えていることに気づきました。調べてみるとアルミは融点が低いため、アルミ同士を溶接する際に母材が溶けてしまい、難しいという課題があったのです。

低温接合という新たな切り口で多くの問い合わせを獲得

この課題を踏まえ、「低い温度で接合ができる」といった新たな機能に着目し、「アルミ 接合」「低音接合」をテーマにWebコンテンツを制作したところ、同様の課題を抱える技術者から多くの問い合わせを獲得することとなりました。定期的なアクセス分析により用途仮説を立案し、それをWebコンテンツ(主に技術コラム)に反映して検証したことで、新用途の活路を見出すことができました。 →事例詳細はこちら

受託加工業における新規市場開拓

受託加工業が異業種参入を成功させる3つのポイント

異業種参入に取り組んだものの、なかなか成果が出ない、そんな企業に共通しているのが、従来型の進め方です。

自社技術をベースに → 参入したい業界を決めて → 展示会や営業でアプローチする

一見すると正しそうに見えますが、この方法には構造的な限界があります。端的に言うと、これは「売りに行く構造」です。明確なニーズと提供価値がある時点では有効ですが、そうでなければ効率が極めて悪くなります。

異業種開拓で成果を出している企業がやっていることは、これとは真逆です。

価値を整理し → 課題で接続し → Webで見つけてもらう

つまり「選ばれる構造」を作ることです。この違いを理解した上で、3つのポイントを見ていきましょう。

ポイント① 技術スペックではなく「価値の再定義」から始める

多くの企業がやってしまうのが、「自社は○○加工ができます」「精度±○μmです」という技術スペック起点の発信です。しかし異業種の担当者が知りたいのは、「それで自分たちの何が良くなるのか?」という点です。技術の説明で終わっている限り、ニーズは顕在化しません。
そこで重要なのが、技術を多面的な価値に分解することです。

価値の種類 具体例
機能価値
精度・強度・耐熱性
工程価値
工数削減・一体加工・短納期
経済価値
コストダウン・歩留まり改善
応用価値
異素材対応・小ロット対応

このように分解することで、異業種との接点(用途仮説)を複数持てるようになります。 これは単なる表現の工夫ではなく、異業種と接続するための前提条件です。

ポイント② 「業界」ではなく「課題」でターゲットを切る

異業種参入でつまずく最大の原因は、「どの業界に行くか?」から考えてしまうことです。業界起点で考えると、その業界のどの企業にニーズがあるかは結局わからないまま。仮説が粗くなり、営業効率が極端に悪くなります。発想を変えてみてください。業界ではなく、自社技術が解決できる”課題”を軸にターゲットを設定するのです。

  • 軽量化が必要 → 医療機器/ドローン/ロボット
  • 微細加工が必要 → 半導体/光学/精密機器
  • 試作スピードが重要 → スタートアップ/研究開発部門

課題で切ることで、ニーズの有無が明確になり、1つの技術から複数業界へ横断的に展開できるようになります。「業界探索」から「課題マッチング」への発想転換、これが解像度を一気に上げるポイントです。

ポイント③ Webで「用途・課題別コンテンツ」を作り、引き合いを設計する

価値と課題が整理できたら、次はWebでの見せ方です。
技術紹介ページや設備紹介は、もちろん必要なコンテンツです。ただ、それだけでは不十分というのがポイントです。

△ これだけだと問い合わせにつながりにくい
「○○加工とは」
「設備紹介」
→ 技術を知ってもらう上では必要。でも、異業種の担当者が「自分ごと」として読んでくれるかというと、そうとは限りません。

⭕ これと合わせて作りたいコンテンツ
「軽量化部品の試作でお困りの方へ」
「異素材接合に課題がある方へ」
「短納期試作を実現する加工技術」

技術紹介は「自社を説明するページ」、用途・課題別コンテンツは「相手の悩みに応えるページ」です。この両輪があってはじめて、異業種の検索ユーザーと自然につながることができます。さらに、事例・加工プロセス・品質管理体制など提供できる根拠を見せることで、「この会社に相談してみよう」という状態を作ることができます。

展示会やテレアポは「ニーズがあるかわからない相手を探す営業」ですが、Webは「ニーズを持った人に見つけてもらう営業」です。この構造の違いが、異業種開拓の効率を大きく左右します。

受託加工の新規市場開拓については以下により詳細の内容が記載されたお役立ち資料を用意しておりますので、よろしければご参照ください。

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  • サプライヤー企業の新市場開拓を
    Webマーケティングにより実現する方法
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メーカーにおける新規市場開拓

自社製品を持つメーカーの新規市場開拓では、製品開発時の想定用途に縛られやすいという課題が考えられます。特定の市場や用途に向けて設計や品質が最適化されていたり、営業やマーケティング活動もそれに合わせて実施するため、社内意識としても「この製品はこの市場(用途)のもの」と固定観念に囚われるケースがあります。

しかし、自社で気づいていないだけで思わぬ用途で製品が活用できる可能性は十分に考えられます。いきなり市場や用途を考えずに、MFTフレームワークを活用した機能(Function)の分解をしっかりと行うことと、Web上で情報発信を続けていく中で得られるアクセスデータや問い合わせ内容の定期分析、そして狙いとする市場関係者へのヒアリングなども行いながら開拓を進めていくと良いでしょう。

メーカーが新規市場開拓を行う際の具体的な進め方としては以下の通りです。

STEP1:MFTフレームワークを使い製品の用途仮説を検討

事例:摩擦・せん断力センサーの場合

MFTフレームワークを活用し、自社製品の用途仮説を考えていきます。MFTとは、Market(市場)、Function(機能)、Technology(技術)の略で、市場と技術の間にある機能に着目することで、技術の活用が可能な市場を幅広く検討できるフレームワークのことを示します。より多くの情報を整理するために関連部署で力を合わせて行うとよいです。ここで作成した「技術MAP」を補完し、随時更新していくことが重要となります。

MFTフレームワークの詳細について知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

なお最近では、ChatGPTで壁打ちしながら進めることをおすすめします。

  • 〇〇技術の活用が期待できる用途にどのようなものがあるか?
  • 〇〇技術の競合技術にはどのようなものがあるか?
  • 〇〇技術が持つ機能にはどのようなものがあるか?

などといった質問を投げかけながらMFTフレームワークを埋めると効率的です。

ChatGPT

STEP2:技術者の検索行動を仮定し対策キーワードを調査・選定

自社で展開できそうな用途が定まれば、それに関連する内容で技術者に見つけてもらえるように集客対策を行います。具体的にはSEOを実施することで、技術者が課題や用途、技術名で検索をかけたときに自社サイトを見てもらえるよう誘導する形をおすすめします。

SEOを実施する場合にポイントとなるのは、対策するキーワードの選定です。棚卸しした情報をふまえ、技術者がどのような検索で情報収集をするか仮定しながらキーワード調査を行います。検索需要の大きさ、競合性の高さ、用途開発につながる可能性の高さを総合的に考慮したうえで対策キーワードを策定していきます。

STEP3:製品理解を促進させるためのWebコンテンツの作成

選定したキーワードを軸に、Webコンテンツの企画・制作を進めていきます。ここで最大のポイントとなるのは「異業界(分野)の技術者へわかりやすく伝えること」です。

既に業界や商材理解の深い、社内の人間だけで企画・制作をすると視野が狭くなってしまい、「〇〇は当然の情報だから載せなくて良い」「〇〇はわざわざ書かなくても伝わるだろう」と、必要な情報でも削ぎ落とされてしまう可能性があります。せっかく棚卸ししたMFTの情報も活用しながら、技術・製品を多角的に見てコンテンツを制作していきましょう。

メーカーの新規市場開拓については以下により詳細の内容が記載されたお役立ち資料を用意しておりますので、よろしければご参照ください。

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  • 製造業が持つ自社技術の用途開発を
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高まる新市場開拓の必要性:EV化に伴うサプライヤーへのアンケート調査

現在、サプライヤーが直面している大きな課題として、自動車のEV化に伴う部品点数の減少が挙げられます。一部抜粋した意識調査をもとに、新市場開拓の必要性について紹介します。

新市場開拓 アンケート調査

■調査概要
調査概要:自動車製造業のEV普及に関する意識調査
調査方法:IDEATECHが提供するリサーチPR「リサピー®︎」の企画によるインターネット調査
調査期間:2023年9月27日〜同年9月28日
有効回答:自動車部品の製造を行う企業の経営者・役員・経営企画103名新市場開拓アンケートQ
2

「Q2.あなたのお勤め先では、取引先(自動車メーカー)から、電気自動車(EV)の部品製造への対応を迫られていますか。」(n=103)と質問したところ、「非常にそう思う」が26.2%、「ややそう思う」が49.5%という回答となりました。

新市場開拓アンケートQ2

「Q3.あなたは電気自動車(EV)の普及によって、10年後、現在の売上を維持できなくなるという不安を感じますか。」(n=103)と質問したところ、「非常に感じる」が20.4%、「やや感じる」が42.7%という回答となりました。

新市場開拓アンケートQ5

Q3で「非常に感じる」「やや感じる」またはQ4で「非常に感じる」「やや感じる」と回答した方に、「Q5.売上または雇用維持への不安に対する打開策として、検討している取り組みを教えてください。(複数回答)」(n=70)と質問したところ、「新市場の開拓」が58.6%、「EV部品製造のための技術開発」が50.0%、「自社製品の開発」が27.1%という回答となりました。

市場開拓アンケートQ7

 Q5で「新市場開拓」と回答した方に、「Q7.新市場開拓を行う上での課題を教えてください。(複数回答)」(n=41)と質問したところ、「自社技術が他のどの業界にニーズがあるのかわからない」が51.2%、「新市場での販売チャネルや流通経路の確立が難しい」が41.5%という回答となりました。

以上、製造業が新規市場開拓を進めるための手順と事例をご紹介しました。テクノポートでは、製造業の新規市場開拓をデジタルマーケティングにより支援しています。新規市場開拓に課題を抱えている方はお気軽にご相談ください。

関連資料のご案内

  • 自動車製造業のEV普及に関する意識調査レポート
  • サプライヤー企業の新市場開拓をWebマーケティングにより実現する方法
  • 製造業が持つ自社技術の用途開発をWebマーケティングにより実現する方法

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小林(井上) 正道
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研究テーマ「Webを活用した用途開発マーケティング」

【専門領域】
製造業 × 企画コンサルティングスキル × Webスキル(SEO中心)

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・新規顧客が集まらない製造業のWebサイト、活用を阻む3つの壁(MONOist)
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