法人設立時の会社の名前決めの際にチェックしたいところ

【執筆者紹介】亀山 夏樹
この記事の執筆者
亀山 夏樹
役職:かめやま特許商標事務所 所長 弁理士
執筆テーマ:中小企業における知的財産(特許・商標等)
【経歴】
千葉県生まれ
筑波大学院 理工学研究科 理工学専攻 修了(1999)
電気メーカにてネットワーク機器の商品企画・開発設計に従事(~2004)。
その後、特許業界にて、特許・商標等の出願業務の他、契約交渉、技術開発支援、セミナー講師などを行う。
技術分野:金型、工具、ソフトウエア、鉗子、内視鏡、医療機器、筆記具、塗料、食品等
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弁理士の亀山夏樹です。1年くらい前の弊所の話になりますが、雇用準備の関係もあり、法人設立の準備をしておりました。法人設立にあたり、本店の所在地、資本金や役員の数など決めごとをしなければなりません。この辺の決め事は、リクツでなんとかなるのですが。リクツで決めにくいモノは、悩ましく・・・

それが、法人の名前決め。

自分にとって非常に悩ましいのです。ここでは、知的財産の観点から、法人の名前決めについて考えたいと思います。

1.名前選びの基準

名前決めに当たっては、通常

  • A 経営理念
  • B 商号
  • C 商標
  • D 商売の内容を示唆する名前

あたりを検討すると思うのですが、今回は、商品名ではなく、法人名(企業名)。ということなので、Dの優先度を下げ、A~Cの3点で検討したいなと思っていました。A~Cを分解すると、

  • A1 経営理念に沿っているか
  • A2 お客様に理念が伝わるか
  • A3 社員に理念が伝わるか
  • A4 協力会社に理念が伝わるか
  • B1 名前を会社名として使用できるか(商号の問題)
  • C1 名前を商標として使用できるか(商標の問題)
  • C2 同じ商標を先行使用されている企業があるか?ある場合は、そのイメージ(特に悪い方)を引きづらないか?

この中で一番難しいのは、経営理念に関するA1~A4。経営理念に沿った言葉・・・千葉県中小企業家同友会での学びのおかげで経営理念は一応あるのですが、経営理念に沿った言葉って何?正直、自分探しみたいなもので、正解がみつからないところ。ほどよい着地点がみつかればよいなぁ、と思っていました。

一方、会社の名前として・・・

ありふれた名前では個性がないだろうし、覚えてもらいにくい。とはいえ、狙いすぎた結果、これまでの自分と整合性のない名前もイマイチ・・・昨年の流行語大賞にあやかって

株式会社そだねー

・・・イマイチですよね。

2.名前探しの旅

と、いうことで。理念に沿った言葉探し。なぜ、今の仕事をしているのか?なぜ、開業したのか?いわば、自分探しの旅。自分の言葉を振り返るべく、過去のブログを読みあさっていました。(ブログをやっていて良かったです。)旅を終え、名前の候補が3つくらいみつかる。

1つ目は、開業前に考えた名前。2つ目・3つ目は、ブログから引っ張って来た名前。これらを、A 理念の観点でチェックしてみると・・・。

1つ目はイマイチ。なんか、「らしさ」というか、自分の手垢感がない。さすがは開業前の言葉。一方、2つ目・3つ目は、「らしさ」がある。さすが、開業後の言葉です。

3.商標・商号のチェック

どんなに良い名前でも、適法に使用できなければな意味がありません。ここでチェックしたいのは、B 商号と C 商標。

まずは、C 商標についてチェックしてみる。2つ目は、役務違いですが、登録数が多い。使用数も多い。したがって、目立ちにくいし、憶えてもらえにくい。3つ目は、登録数・使用数がほとんどない。よって、目立ちやすいし、憶えてもらいやすい。

ここから、3つ目の社名が第1候補となります。次に、B 商号に戻って、3つ目の社名候補について商号のチェック。現在、敏腕司法書士に調査してもらっています。

4.良い名前のリスク

良い名前。良い名前であればあるほど、自分だけが使いたいと思うはずですし、他人に使ってほしくないと思う方も多いです。そのため、自分が良いと思った名前も、他人にとっても良い名前であり、結果、多くの他人が使用していることも珍しくありません。

そういった名前には、良くも悪くも、他人の手垢がついており・・・それ以上に、自社ブランドイメージの毀損、商標権侵害の問題につながっりやすく・・・一方、そこから離れた名前は誰も使っていないことが多く・・・自社ブランドイメージの毀損、商標権侵害の問題から遠ざかる。結果、自社ブランドイメージをつくりやすくなる。

他人の手垢(土俵ともいうのでしょうか?)から離れたところで、自社の経営理念との整合性を取る・・・名前決めは、難しい部分も多いですが、

  • 一度使い始めたらそうそう代えられない物が名前。
  • その事業(その人)の信用がくっつくのも名前。
  • ブランドの器となるのが名前。

なので、会社の名前は、慎重に考えたいところです

5.まとめ

法人設立時の会社の名前決めの際にチェックしたいところ

A 経営理念

  • 経営理念に沿った名前か
  • 名前を通してお客様に理念が伝わるか
  • 名前を通して社員に理念が伝わるか
  • 名前を通して協力会社に理念が伝わるか

B 商号

  • 名前を会社名として使用できるか?(登記前の調査)

C 商標

  • 名前を商標として使用できるか(商標調査)

何かの参考になれば幸いです。

この記事の執筆者
亀山 夏樹
役職:かめやま特許商標事務所 所長 弁理士
執筆テーマ:中小企業における知的財産(特許・商標等)
【経歴】
千葉県生まれ
筑波大学院 理工学研究科 理工学専攻 修了(1999)
電気メーカにてネットワーク機器の商品企画・開発設計に従事(~2004)。
その後、特許業界にて、特許・商標等の出願業務の他、契約交渉、技術開発支援、セミナー講師などを行う。
技術分野:金型、工具、ソフトウエア、鉗子、内視鏡、医療機器、筆記具、塗料、食品等
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