テクノポート株式会社の稲垣です。
BtoB企業向けの「海外向けWebマーケティング」サービスの責任者を務めています。
前回の記事では世界の貿易拠点として近年注目を集める「タイの製造業」について紹介しました。今回はそのタイに隣接し親日国としても知られるミャンマーの製造業ついて紹介します。
ミャンマーの製造業の最大の特徴は、他のASEAN諸国とは異なり、GDPにおける製造業の割合は増加しており、政府もその流れを後押ししていることです。今回はミャンマーの製造業を、実際に同国に事業展開を果たした日本企業の紹介を交えて、日本企業の視点から調査しました。
この記事の目次
基本情報
- 正式名称:ミャンマー連邦共和国(Republic of the Union of Myanmar)
- 首都:ネーピードー(Nay Pyi Taw)
- 大統領:ウィン・ミン(2018年3月から)
- 通貨:チャット(Kyat)(1チャット=0.064円 ※2022年2月3日時点)
- 人口:約5283万人
- 面積:67万8500km2(参考:日本の面積38万km2)
- 公用語:ミャンマー(ビルマ)語
- 宗教:仏教(85%)キリスト教(4.9%)イスラム教(4%)その他(6.1%)
- 平均寿命:男 66.6歳、女 69.6歳(日本:男 81.2歳、女 87.3歳)
経済の特徴
強み
- 豊富な原材料:鉱物(翡翠、銅、金)、天然ガス、石油
- 立地:中国、インド、タイなどの急成長国に近い
- 若年人口:国民の27%が14歳以下
- 産業ポテンシャル:観光産業と農業の成長可能性
弱み
- 宗教問題:多数を占める仏教徒による少数派イスラム教徒の迫害
- インフラ整備不足:電気、衛生環境、教育格差など
- 自然災害:自然災害が発生する確率が高い(地震、サイクロン、洪水など)
産業構造
ミャンマーの産業構造を調査します。下の図は2017年から2018年までのミャンマーへのFDI(直接対外投資)における各部門の割合をしめしたグラフです。
出典:Myanmar – What to Watch 2019 | AEC
グラフから以下のようなことが読み取れます。
- FDIの製造業の占める割合は31%で最も高くミャンマーの経済の主要産業と言える
- FDIのサービス関連業への割合は低く農業と共に縮小傾向
現状
- 製造業への投資が最も多く、製造業はミャンマー経済をけん引する期待が高い
- 中国はミャンマー経済に最も多く投資しており、アメリカや日本はミャンマー経済の将来性に期待し投資を増加させている
今後
- 「衣料品産業」と「食品加工産業」が好調で、投資の増加と共に生産を拡大する見通し
- ミャンマーの「豊富な農産物資源」を効率よく活かすためにテクノロジーの導入が急務の課題となっている
製造業全体
次に、ミャンマーの製造業全体を調査します。下の図は2015年のタイの製造業のGDPにおける各部門の割合を示したグラフです。
出典:Manufacturing Guide 2019 | EUROCHAM MYANMAR
グラフから以下のことが分かります。
- 産業(製造業含む)のみのGDPは統計開始の2013年から2018年にかけて1.58倍に増加
- 2017年から2018年において産業(製造業含む)はGDP全体の31.6%を占める(サービス関連業42.2%、農業26.2%)
- 他のASEAN諸国のGDPにおける製造業の割合は減少する中、ミャンマーではGDPにおける製造業の割合がほぼ一定のまま遷移している
現状
- 「食品加工産業」と「衣料品」の対外需要に支えられ、製造業は2017年から2018年にかけて11%成長
- 「安価な労働力」と「戦略的な立地」がミャンマー製造業を支えていると言える
今後
- ミャンマー政府はGDPにおける製造業の割合を2013年から2014年の33%から、2030年から2031年にかけて37%に増加させる予定
- 短期的に重点を置く3つの産業として、1. 労働集約型産業(例:機業、衣料品産業)、2. 一次産品(例:食料品)、3. 従来の製造業(例:繊維産業、縫製業、エレクトロニクス産業)を挙げている
- 中長期的に重点を置く3つの産業として、1. 自動車部品組み立て産業、2. 先進技術産業(例:先進技術を応用した化学産業)、3. インフラ整備事業(例:道路建設産業)
日本企業の進出状況
ここでは、日本企業の視点からミャンマー製造業市場を調査結果です。下の図は2008年から2020年1月までのミャンマー日本商工業会議所登録企業数の遷移を示したグラフです。ミャンマー日本商工業会議所とは、日本とミャンマー間での商工業及び経済全般の促進及び関係強化を目的に設立された組織です。
データ引用元:ミャンマー日本商工業会議所
グラフから以下の特徴が挙げられます。
- 2012年から急激に増加し、2020年1月末までで2008年の5倍以上の会員数
- 工業部会(製造業関連)の会員数は2020年1月までで93社で全体の22.5%を占める
現状
- ミャンマー日本商工会議所によると2019年9月時点で会議所の会員数は401社(うち製造業関連は89社)
- 2017年時点でミャンマーに進出している日本企業数は438社で第21位
今後
- 自動車部品の手作業を必要とする組み立て作業をミャンマーで行う企業が増加する見込み
- 縫製業などの労働集約型の産業がミャンマーで工場を建設し生産を行うケースが増加する見通し
ミャンマーに進出した日本製造業企業
次に、実際にミャンマーに進出した日本企業を3社紹介します。
株式会社トーノ精密
▶基本情報
- 本社:岩手県遠野市
- 従業員数:68名
- 事業内容:プラスチック製品、MIM製品、TRI製品
▶概要
2019年12月ミャンマー最大都市のヤンゴン近郊のティラワ経済特区に工場を竣工。樹脂成型部品メーカーとしては初めてティラワに生産拠点を構え、海外調達に頼らざるを得なかった現地日系企業をターゲットとして、ティラワ工業団地内の日系企業向けに部品を供給している。
旭日電気工業
▶基本情報
- 本社:東京都世田谷区
- 従業員数:205人
- 事業内容:電気工事、電気通信工事
▶概要
2019年9月ミャンマー最大都市ヤンゴンに支店を開設し、不動産賃貸業を開始。旭日電気工業は経済成長が進むミャンマーへの進出を考え、2017年から駐在員を派遣し調査を行ってきた。短期的には同国の日本人駐在員に対する賃貸を主事業とし、中長期的には内装や設備工事などの事業を開始する予定。
不二熱学工業株式会社
▶基本情報
- 本社:大阪府中央区南船場
- 従業員数:236人
- 事業内容:空調・給排水衛生・低温設備などの設計・保守管理
▶概要
2013年身近な東南アジア諸国の中でも親日的なミャンマーに進出。同国において日系企業を対象に、空調、衛生、冷凍冷蔵や関連付帯業務などに係る技術を提供。また現地の企業に対し、技術を提供し環境保全に貢献。事業展開以外にも社会貢献の一環として、2014年アジアカップに参加するミャンマー女子サッカーチームに寄付。
まとめ
今回はミャンマー製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。個人的な見解としては、ミャンマーの製造業は現在成長の過程にあり、今後は他のASEAN諸国と同様にハイテク産業への転換が進んでいくと思います。同時に農業や縫製業などの労働集約型の産業もGDPの大きな割合を占めていることもミャンマー経済の大きな特徴の一つと言えます。
また、ミャンマーに進出を考える日本企業の数は増加しており、今回紹介した3社の様に高い技術力と現地日本企業のネットワークを利用すれば進出のチャンスはあると言えます。
今回の内容がミャンマーに進出に関心のある方の参考になれば幸いです。次回はASEAN製造業シリーズ第6回目としてカンボジアの製造業について紹介する予定です。
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