テクノポート株式会社の稲垣です。
BtoB企業向けの「海外向けWebマーケティング」サービスの責任者を務めています。
今回は「韓国の製造業」を紹介します。
新型コロナウイルスにより世界中の経済が落ち込んだ2020年において、韓国経済の成長率は前年比マイナス1.1%と大きな打撃を受けませんでした。その大きな理由のひとつとして製造業を代表とする輸出産業の成長が挙げられます。このことからも韓国の製造業が韓国経済にいかに大きな影響を与えているかが分かるでしょう。
今回は、世界のハイテク産業の中心的存在である、韓国の製造業を日本企業の目線から掘り下げていきます。
この記事の目次
基本情報
- 正式名称:大韓民国(Republic of Korea)
- 首都:ソウル(Seoul)
- 元首:文在寅(ムン・ジェイン)大統領(2017年5月~)
- 通貨:大韓民国ウォン(1大韓民国ウォン=0.095円 ※2022年2月3日時点)
- 人口:約5,178万人
- 面積:約10万km2
- 公用語:韓国語
- 宗教:仏教(約762万人)、プロテスタント(約968万人)、カトリック(約389万人)等(出典:2015年、韓国統計庁)
- 平均寿命:男79.3歳、女85.8歳
産業構造
まずは韓国の産業構造の調査結果を紹介します。下の図は韓国の国内総生産(GDP)における各経済部門の占める割合の遷移を示したグラフです。
データ引用元:South Korea: Sectoral composition of the economy of South Korea| TheGolobalEconomy.com
グラフと関連データから以下のことが分かります。
- GDPに占める製造業の割合は1988年以降40%前後を維持
- 2019年のGDPは1.6兆ドルで世界第13位(日本:5.1兆ドルで世界3位)
現状
- 新型コロナウイルスの影響により、一般消費は落ち込んだが、投資・輸出は好調(テレワークの普及による半導体需要の増加などが要因)
- 新型コロナウイルスによる韓国経済への打撃は他国に比べ小さく、2020年のGDPは世界第10位まで回復する見通し
今後
- 2021年度の経済成長率は3.2%の予想(米中両国の景気の回復にともなう自動車の輸出が鍵を握る予想)
- 文大統領によると2021年は雇用回復に向けた取り組みに加え、国内消費を促すインセンティブの強化、投資と輸出の支援に力を入れる方針
経済の特徴
強み
- ハイテク産業:家電、携帯電話、半導体、自動車分野で世界市場を席捲
- 研究開発:2019年の韓国の研究開発費は89兆ウォンを超えOECD(経済開発機構)加盟国の中で5番目
- 教育制度:OECDの調査によると、OECD加盟国の中で韓国の15歳は読解力5位、数学的リテラシー2位、科学的リテラシー4位といずれも上位
弱み
- 高齢化社会:韓国統計庁の調査によると、韓国の人口は2019年をピークに減少を開始し、2065年に人口に対する65歳以上の割合が先進国でトップになる見通し
- 財閥の存在感:韓国4大財閥(サムスン(半導体・家電)、LG(家電)、現代(自動車)、SK(エネルギー)が韓国の全上場企業の総売り上げの約50%、総純利益の約60%を占める
- 若者の失業率:OECD加盟国のうち、韓国の若者失業率は2009年から2019年までの10年間で0.9%増加し、5位から20位まで順位が下落
製造業全体
次に韓国の製造業の調査結果を紹介します。下の図は韓国の製造業が生み出す付加価値の遷移を示したグラフです。(縦軸は10億U.Sドル)
データ引用元:South Korea: Manufacturing value added| TheGolobalEconomy.com
グラフと関連データから以下のことが分かります。
- 統計開始から増加傾向が続く
- 2019年の製造業が生み出す付加価値は4,169億ドルで世界第3位
現状
- 製造業のPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)は2020年6月に41.3を記録するも、翌月以降急速に回復し2020年12月に52.9を記録
- 新型コロナウイルスによる韓国製造業の国内回帰が予想されたが、90%以上の韓国企業が国内回帰を検討していない(国内の高い生産コスト、現地需要へのアクセスなどが要因)
今後
- 中国などの先端技術産業の新興国による追い上げにより、技術開発競争が激化する見通し
- 新型コロナウイルスの感染拡大が収束した後、製造業とハイテク技術産業が韓国経済回復の中心的な役割を果たす見通し
製造業の主要産業
次に、韓国製造業の主要産業とそれぞれの分野における代表企業を紹介します。
①エレクトロニクス産業
サムスン電子
- スマートフォン:2020年の世界のシェア率22%は世界第1位
- テレビ:2020年7~9月期のテレビ出荷額で世界シェアは33.1%で過去最高
- 家電製品全般:2019年の世界シェアは12.5%で世界第1位
LG電子
- 液晶テレビ:2019年第3四半期までのOLEDテレビ市場でシェア世界第1位
- 液晶モニター:2019年第3四半期までのLCDテレビパネルのシェアは14.3%で世界第4位
- 洗濯機:2017年の世界シェアは14.8%で世界第2位
SKハイニックス
- メモリー半導体:2020年におけるNAND型フラッシュメモリー市場で世界第2位シェア ※インテル合併によるシェア含めた場合
- ソリッドステートドライブ(SSD):2020年における世界第1位のシェア ※インテル合併によるシェアを含めた場合
②造船産業
韓国造船海洋(現代重工業、大宇造船海洋)
- 世界売上高:2020年の造船会社の世界売上高で20%世界第2位
- 造船受注量:2020年11月に世界で発注された船舶のうち約6割を受注し5ヶ月連続で世界第1位
- LNGタンカー:2019年におけるLNGタンカー(液化天然ガスの輸送に用いられる)のシェアは60%で世界第1位
サムスン重工
- 世界売上高:2020年の造船会社の世界売上高6%で世界第4位
③自動車産業
現代自動車
- 自動車販売台数:2019年における自動車シェア世界第5位は販売台数719万台の現代自動車
起亜自動車
- 水素自動車:2020年1月~7月までのFCV車(水素で走る燃料電池車)の販売台数は2,879台で世界第1位 ※現代自動車を含める
- 電気自動車:2020年1月~7月までの電気自動車の販売台数は6万707台で世界第4位
日本企業の進出状況
ここからは、日本企業の視点から韓国の製造業市場を調査した結果です。下の図は韓国に進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。
データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省
グラフと関連データから以下のことが分かります。
- 韓国に進出する日本企業は2017年に大きく増加
- 進出企業の35.4%が製造業企業(28.7%がサービス関連業)
現在
- 進出製造業企業の中でも「電気機械器具」「一般機械器具」「化学及び関連品」を主事業にする企業の進出が多い
- JETROの調査によると、2018年の韓国進出日系企業のうち、84.9%の企業が営業利益ベースで黒字と回答 (アジア地域の中でトップの数字)
今後
- 韓国に進出している日経製造業企業の黒字割合は2014年以降増加を継続中、今後も同じ傾向が続く見通し
- 韓国労働者の賃金は年々増加傾向にあり、進出日本企業の71.7%が同問題に直面中、今後も賃金の増加は避けられない見通し
韓国に進出した日本企業
進桜電機株式会社
▶基本情報
- 本社:静岡県駿東郡
- 従業員数:40人
- 事業内容:交流モーターの設計・製造・販売
▶概要
1968年に誘導電動機(特殊型インダクションモーター)の製造会社として設立。創業時より交流電動機の設計、製造を得意とする。2018年10月に同社の子会社となる工場MOSTEC KOREAを韓国忠清南道牙山市に設立。同工場では現地における同社製品の修理、メンテナンスに加え、研削加工を中心とした精密部品加工の製造を行い、現地での品質管理体制を強化することに成功。
金子産業株式会社
▶基本情報
- 本社:東京都港区
- 従業員数:93人
- 事業内容:電磁弁、液面計、通気装置の設計・製造・販売
▶概要
1919年の創業以来、一貫して流体制御用バルブの製造を行う。同社の主要顧客は発電所、石油関連企業、プラント企業であり、多品種少量生産を軸に顧客を拡大。2010年1月にソウル近郊に現地法人「韓国金子」を設立。同法人の設立により、韓国内の顧客に迅速に対応可能となったことに加え、現地での新たな顧客開拓を実現。
ポバール興業株式会社
▶基本情報
- 本社:愛知県名古屋市中村区
- 従業員数:109人(連結:203人)
- 事業内容:産業用ベルトの製造・販売
▶概要
1957年創業。創業当時は無段変速機用特殊ベルトの製造及び販売を行っており、現在は工業用樹脂ベルトを根幹事業に据える。2006年4月に韓国における事業展開を目的として、現地、韓国慶尚北道にPOBAL DEVICE KOREA CO.,LTD.設立。現在では韓国の他にタイ、中国にも現地法人および工場を有しており、今後はアジア地域における自動車産業向けベルト及び研磨関連部材の販売拡大に取り組む方針。
まとめ
今回は韓国の製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。調査の結果、韓国製造業は新型コロナウイルスによる経済への影響が小さく、その要因として半導体を始めとするエレクトロニクス産業の輸出が好調であることが分かりました。
今後は、中国を始めとする先端技術新興国との技術競争が加速し、韓国のハイテク産業の今後がより一層注目されます。
進出する日本企業の目線から考えると、2018年時点において進出日本企業の84.9%が黒字を記録していることが分かりました。今回紹介した日本企業はいずれも自社製品の販売拡大と韓国での新規顧客開拓を目的とした進出を果たしていることが分かります。今回の内容が、韓国進出を視野に入れている方の参考になれば幸いです。
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