製造業のエンジニアで、製造業系ライターとして活動している一之瀬です。
これまで、自社が持つ技術の売り込み先を見つけるのは簡単ではありませんでした。ここ数年で、オープンイノベーションに取り組むメーカーが増えています。自社の技術を売りたい企業にとって、そのようなメーカーにアプローチすることは、技術を売り込む有効な手段の一つになっています。特に、不足技術を探しているメーカーが技術を公募する取り組みを「不足技術補完型」のオープンイノベーションと言います。不足技術補完型のオープンイノベーションは、外部の技術を取り入れることで、新製品の開発を効率よく進めることを目的としています。
この記事では、不足技術補完型のオープンイノベーションに取り組むメーカーの事例に加えて、それらのメーカーをどのように見つければいいかを紹介します。
この記事の目次
不足技術補完型のオープンイノベーション
「オープンイノベーション」を活用することで、多くのメーカーが従来とは異なる、新たな領域で活躍できるようになりました。オープンイノベーションは、外部の技術やアイディアを自社が持つリソースと掛け合わせることで、新たな製品やサービスを生み出す方法です。オープンイノベーションの手法は「不足技術補完型」と「休眠技術活用型」に分類できます。
不足技術補完型は、自社に不足している技術を外部から取り入れる方法です。今まで知見のない新しい技術の開発には、莫大なコストがかかります。外部から技術を供給してもらうことで、開発期間やコストを短縮することを目的としています。休眠技術活用型は、自社技術の新しい利用法を外部から公募する方法です。外部からのアイディアを取り入れることで、これまで眠っていた技術の新たな活用法が見つかり、製品化につなげられる可能性があります。
不足技術補完型に取り組むメーカー例
不足技術補完型のオープンイノベーションに取り組むメーカーを、3社紹介します。
富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
富士フイルムビジネスイノベーションは、複写機やレーザープリンターの製造販売で有名な企業です。
オープンイノベーションの取り組みとして、「四次元ポケットPROJECT」を展開しています。四次元ポケットPROJECTは、「ドラえもんのひみつ道具」作りに挑戦するプロジェクトで、2014年からスタートしています。
プロジェクトには複数の中堅・中小企業が関わるため、企業間の連携が重要になります。富士ゼロックスは自社のITソリューションを活用することで、企業間の技術連携を円滑にし、プロジェクトを成功に導きました。
これまで第一弾から第三弾まで行われ、「セルフ将棋」「望遠メガフォン」「室内飛行機」が開発されてます。
株式会社村田製作所
村田製作所は、自社のホームページ上に「MURATA OPEN INNOVATION」という特設ページを設置し、必要な技術を常に募集しています。
村田製作所が特に注力している領域として、自動車・ヘルスケア・環境、エネルギーが挙げられています。公式HPへ掲載されているものは一例であり、掲載されている分野以外でも村田製作所が注力している領域であれば、問い合わせを受け付けています。
株式会社フジクラ
フジクラは、光通信や配線、レーザ、超電導など幅広い技術を扱っている企業です。
自社サイトではなく、オープンイノベーションプラットフォームであるCrewwを活用して、技術公募を行っています。募集している技術やアイディアは、新しいコミュニケーションやエネルギーの仕組み、新たなモビリティに関係するものです。不足技術の公募は、自社のHPなどを活用した独自の形式で具体的な技術を募集するだけではありません。フジクラのようにプラットフォームを利用して間口を広げ、広くアイディアや技術を募集するメーカーも増えています。
不足技術の公募をしている企業の見つけ方
ここからは、自社が持つ技術を売り込んでいく先として有力な、不足技術を公募している企業の見つけ方について解説します。
技術公募は自社サイトや仲介サービスを利用して公開される
不足技術の公募は大きく分けると、自社サイトで公開される場合と、仲介サービスを利用して公開される場合があります。
仲介サービスには、クローズドの仲介業者とプラットフォームがあります。クローズドの仲介業者は、不足技術を伝えることで、欲しい技術を保有する企業とマッチングしてくれます。プラットフォームは、オープンイノベーションに取り組む企業を集め、情報を掲載しています。
自社サイトで公募している企業を見つける方法
自社のHPなどの自社サイトで技術公募をしている企業は、GoogleやYahooなどの検索エンジンを利用して見つけられます。
例えば「表面処理+オープンイノベーション」など、自社が保有している技術名やその用途、狙いたい技術名に「公募」や「オープンイノベーション」などを付け加えて検索します。すると、公募に取り組んでいる企業が表示される可能性があります。技術系のキーワードは、自社内で使われている言い方だけでなく、類似の表現や言い換えとなるキーワードで検索することも重要です。この方法であれば、自社の技術を売り込める企業をピンポイントで見つけられる可能性があります。しかし、探すには労力がかかり、社内で思いつかないキーワードについては見つけられないというデメリットがあります。
専用のプラットフォームを確認することも効果的
複数の公募案件を効率よく確認したい場合には、オープンイノベーションに取り組みたい企業が登録するプラットフォームを確認するといいでしょう。
オープンイノベーションのプラットフォームとしては、CrewwやAUBAが有名です。それぞれのサイトを確認すれば、短時間で複数の公募案件を確認できます。プラットフォームでは効率よく公募案件を確認できる反面、自社の技術をピンポイントで活かせるかわかりにくいことが多い点には、注意が必要です。
まとめ
不足技術補完型のオープンイノベーションに取り組むメーカーは、自社サイトを活用した形式と専用のプラットフォームを利用したプラットフォーム形式で公募をしています。
自社サイトで公募を行っている企業を見つける場合には、検索エンジンの活用が効果的です。また、プラットフォーム形式の企業は、プラットフォームとなっているサイトを確認することで効率よく確認できます。応募したい企業を見つけたら、提携先として選んでもらうために、「自社が持つ独自の技術を売り込み先の企業と提携することでどう活用できるのか」をアピールすることが重要です。
テクノポートでは、自社の技術をわかりやすく伝え、アピールするために必要不可欠な技術マーケティングや技術ライティングのサポートを行っています。ぜひお気軽にご相談ください。