テクノポートの徳山です。近年、ChatGPTやGemini、Perplexityなどの生成AIを使って情報収集をする人が増えています。これに伴い、従来の検索エンジン対策(SEO対策)だけでなく、生成AIの回答文の中で自社が引用される(言及される)状態をつくる「AI検索対策」への注目が高まっています。
ただしAI検索対策は、単にSEOの延長線上で取り組めば良いわけではありません。ポイントは、ユーザーが生成AIに投げかける「質問(プロンプト)」を意識して設計できているかどうかです。今回は、AI検索対策の基本的な流れと、対策プロンプトをどう設定していくべきかを解説します。
この記事の目次
プロンプト設計の重要性
AI検索対策は、SEOの延長ではあります。どちらも「ユーザーが知りたい情報に対して、自社の情報を見つけてもらう」という点では共通しています。しかし、両者には大きな違いがあります。
SEOは「キーワード」を中心に対策する
SEOでは、対策したいキーワード(例:「切削加工 見積もり」「工場 IoT 導入」など)をベースに、記事の構成やページ内容を設計します。検索結果に表示される順位があり、ツールで検索ボリュームや競合状況なども調べやすいため、比較的定量的に対策できます。
AI検索は「プロンプト(質問文)」を中心に対策する
一方でAI検索では、ユーザーが入力するのは「キーワード」ではなく、「プロンプト(質問文)」です。例えば次のような形です。
- 切削加工を外注したい。業者選びのポイントは?
- 製造業向けのIoT導入で失敗しないための注意点は?
- 溶接加工の自動化に適した協働ロボットのメーカーや機種は?
このようにAI検索では、プロンプト(質問文)をベースに情報を集め、回答を生成します。そのため、単にSEO対策した記事を作っていても、AIの回答内に引用されないケースが増えてきます。言い換えると、AI検索対策は「プロンプトで引かれる設計」ができていないと勝てません。だからこそ「プロンプト設計」が非常に重要になります。
プロンプト設計を軸にしたAI検索対策の進め方
1. 対策したいプロンプトをリストアップ
AI検索対策の第一歩は、対策したいプロンプト(質問文)をリストアップすることです。ここが最も重要と言っても過言ではありません。なぜなら、AI検索対策の勝敗は、「ターゲットユーザーが使いそうなプロンプトを、どれだけ具体的に設計できるか」で決まるからです。
ユーザーの解像度を高めることが勝負
プロンプトを考える際、「自分たちが伝えたいこと」から発想すると、どうしてもユーザー視点からずれてしまうことがあります。
例えば、企業側が「高精度加工」という言葉を使っていても、ユーザーは「±0.01mmの加工ができる?」のような聞き方をするかもしれません。このギャップを埋めるためには、ターゲットユーザーの実態を深く理解することが必要です。
そのために有効なのが、ユーザーインタビューです。可能であれば、営業担当が日々の商談で受けている質問を集めたり、既存顧客へのヒアリングを行ったりすると良いでしょう。
おすすめ:購買フローマップを作る
筆者としては、ユーザーインタビューに加え、プロンプト設計の前段として購買フローマップの作成をおすすめします。購買フローマップとは、ユーザーの購買プロセスを正確に理解し、購買段階ごとにユーザーが行う行動や関心ごとを可視化するためのフレームワークです。つまり、「購買のタイミングを的確に捉える」ための整理法です。
〜購買フローマップ〜

詳しくは、以下の記事でも解説していますので、ご覧ください。
(参考)顧客の購買プロセスを可視化する「購買フローマップ」
情報整理ができたら、生成AIにプロンプト案を出してもらう
購買フローマップなどのフレームワークで情報を整理すると、ターゲットユーザーの解像度はかなり高まります。この状態になってから、整理した情報を生成AIに読み込ませて、「プロンプト案を複数出してもらう」のが非常に効率的です。例えば、以下のような依頼をすると良いでしょう。
- 「この購買フローをもとに、ユーザーが生成AIに聞きそうな質問を30個作ってください」
- 「日常の情報収集段階・課題解決段階・具体的な製品調査段階、の3段階に分けて生成AIへの質問文を出してください」
- 「購買フロー後半のユーザーが生成AIに質問する可能性が高い質問文を考えてください」
このように、ターゲットユーザー理解 → フレームワークによる整理 → AIに質問文(プロンプト)を生成させるという流れで行うとよいでしょう。
2. 対策候補となるプロンプトの引用状況を確認する
プロンプトをリストアップできたら、次に行うのが 引用・メンション状況の確認です。具体的には、対策候補となるプロンプトを実際に生成AIへ入力し、自社のWebサイトが引用されているか、自社名や製品・サービス名がメンションされているか、をチェックします。
この作業は、AI検索対策における「現状分析」にあたります。どんなに良いコンテンツを作っていても、AIが参照していなければユーザーに届きません。
注意点:パーソナライズされていない状態で確認する
このとき重要なのが、パーソナライズされていない回答結果を取得することです。生成AIは、ログイン状態や履歴の影響で、回答が個人に最適化されることがあります。例えば、過去に自社サイトをよく見ている人が質問すると、自社が引用されやすくなることもあります。そのため、なるべく客観的な状態で確認したい場合は、生成AIの種類によって違いはありますが、以下の方法をおすすめします。
- ブラウザのシークレットモードで質問する
- ログアウト状態で質問する
- 新しいチャットで質問する(会話履歴を引き継がない)
こうすることで、「一般ユーザーが検索した場合」に近い状況で、引用状況を確認できます。
3. 対策するプロンプトを決定する
引用状況を一通り確認したら、次は 対策プロンプトの優先順位付けを行います。すべてのプロンプトに対応するのは現実的ではないため、限られたリソースで成果を出すための判断が必要です。
SEOは判断軸が明確だった
SEOの場合は、例えば次のような軸で対策優先度を決められます。
- 検索ボリュームが大きい
- 競合サイトが弱い
- 現在の検索順位が低い
- 上位表示で問い合わせにつながりやすい
ツールが充実しているため、比較的定量的に判断できます。
AI検索では検索ボリュームの調査が難しい
一方でAI検索では、プロンプトに対する検索ボリューム(利用頻度)を調べる方法が確立されていません。一部、有料ツールで調査できるものもありますが、現状では精度が十分とは言い切れない印象です。
そのため、現時点では、プロンプト内に含まれるキーワードを抽出し、SEOツールでキーワードの検索ボリュームを調べるといった形で検索ボリュームを推定していくしかありません。今後、AI検索対策の分析ツールが整備されていく可能性は高いため、ここはアップデートしていく前提で進めるのが現実的です。
4. 対策プロンプトで引用・メンションがされるようコンテンツ設計を行う
最後に、対策するプロンプトが決まったら、そのプロンプトで質問された際に、自社のWebサイトが引用される、自社名や製品・サービス名がメンションされるように、Webサイト上のコンテンツを設計し直します。
この段階で重要なのは、従来の記事制作のように「読み物」として作るだけではなく、AIに引用されやすい形に整えることです。例えば、手順が箇条書きで整理されていたり、FAQ形式で質問と回答がセットになっているなどの工夫が必要になります。
ただし、AI検索対策を意識しすぎると、実際にユーザー(人間)がWebサイトを見たときに、ページが見づらくなったり、全体の構成が崩れてコンテンツが整理されていない状態になってしまう恐れがあります。
その結果、AI検索でユーザーを集められても、問い合わせや資料ダウンロードなどの成果につながらず、かえって本末転倒になってしまいます。AIに引用されることだけを目的にせず、ユーザーが情報を理解しやすい導線設計もあわせて意識することが大切です。
この「コンテンツ設計・作成」の具体的な方法は、内容が多くなるため本記事では概要にとどめます。詳しくは次回の記事「AI検索対策のためのコンテンツ設計・作成方法」で解説します。
プロンプト設計に関するQ&A
Q. 対策するプロンプトは、どのくらいの数を用意すればよいですか?
A. 最初から多くのプロンプトを用意する必要はありません。まずは、問い合わせや商談につながりやすい「購買フロー後半のユーザーが使用しそうなプロンプト」を中心に用意しましょう。
営業現場で頻出する質問を起点に、10〜30個程度のプロンプトをリストアップするのがおすすめです。慣れてきたら、購買段階ごとにプロンプトを増やしていくことで、より幅広いユーザーを対象にできるようになります。
Q. 「良いプロンプト」とはどのようなものですか?
A. 良いプロンプトとは、ターゲットユーザーが実際に入力しそうな言葉で書かれていて、かつ購買行動につながる情報ニーズが含まれているものです。
例えば「加工 精度」よりも、「±0.01mmの加工ができる会社を探している。選び方を教えて」のように、目的や条件が含まれている方が、実際の利用シーンに近いプロンプトになります。
Q. ターゲットユーザーが使いそうなプロンプトはどうやって見つければよいですか?
A. 最も確実なのは、ユーザーインタビューや営業現場での質問収集です。
特に製造業では、購買担当者が「比較検討するタイミング」でどのような情報を求めるかが重要になります。購買フローマップなどのフレームワークを使って購買プロセスを整理すると、自然とプロンプトの候補が出しやすくなります。
Q. 生成AIにプロンプト案を作ってもらっても大丈夫ですか?
A. はい、有効です。ただし「AIに丸投げ」すると、実際の顧客像とかけ離れたプロンプトになることがあるため注意が必要です。
購買フローマップなどで整理したユーザー情報をAIに読み込ませたうえでプロンプト案を出してもらうと、実態に近い候補を効率よく作成できます。
Q. 対策するプロンプトの優先順位はどうやって決めればよいですか?
A. 最終的な目標である問い合わせや資料ダウンロードの増加に直結するプロンプトほど、優先度は高くなります。
ただし、潜在層の獲得を目的とする場合は、情報収集段階のユーザーが使うプロンプトを優先するなど、重視すべきポイントは自社のマーケティング課題によって変わります。目的に応じて、柔軟に優先順位をつけていきましょう。
Q. プロンプトの調査や選定で、製造業ならではの注意点はありますか?
A. はい、あります。製造業では検討プロセスが長く、関わる人も購買担当者だけでなく、設計・品質・生産技術など多岐にわたる場合が少なくありません。
そのため、複数人にユーザーインタビューを行ったり、「誰が、どのタイミングで、何を知りたくなるのか」を意識してプロンプトを設計したりすると、実態に合った対策がしやすくなります。
Q. 技術情報の漏洩リスクが心配です。AI検索対策はどう進めればよいですか?
A. ご心配はもっともです。ただし、AI検索対策で必要なのは、必ずしも詳細なノウハウの公開ではありません。
多くのユーザーが求めているのは、選定や発注の判断材料となる情報です。対応範囲や品質保証体制、納期の考え方、発注時に必要な情報などを整理するだけでも、十分に効果があります。公開してよい情報と避けるべき情報の線引きを社内で事前に決めておけば、情報管理とAI検索対策は両立できます。
Q. 自社顧客へのユーザーインタビューが難しいのですが、必須でしょうか?
A. 自社顧客へのインタビューが難しい場合は、インタビューサービスを活用したり、自社の営業担当者にヒアリングしたりする方法でも問題ありません。
まずは社内にある情報を活用し、必要に応じてインタビューを追加していく進め方が現実的です。
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AI検索対策では、SEOのようにキーワードだけを見るのではなく、ユーザーが生成AIに投げかける質問(プロンプト)を起点に設計することが重要です。まずは対策したいプロンプトを整理し、引用・メンション状況を確認したうえで、優先度の高いものからコンテンツを整備していきましょう。
なお、AIへの最適化だけに偏るとサイトが見づらくなり成果につながりにくいため、ユーザーにとっての読みやすさや導線設計もあわせて意識することが大切です。