技術アイデアが必要ならTRIZという手法は?

【執筆者紹介】熊坂 治
この記事の執筆者
熊坂 治
山形県生まれ
東北大学工学部(応用物理学科)を卒業後パイオニア(株)に入社し、基礎研究、プロセス技術、生産技術、製造技術、工場計画、技術営業、事業開発など広範に担当。
2008年に経営工学部門、2009年に総合技術監理部門と技術士資格を取得し、退社後技術士事務所を開設して、品質工学をコンサルティング。
2011年に株式会社産業革新研究所を設立し、2012年にWebサイト「ものづくりドットコム」を公開。多くの専門家と協力しながら製造業のプロセス革新と課題解決を支援している。
博士(工学)、技術経営修士(専門職)、山梨学院大学客員教授(技術経営論)
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ものづくり革新ナビゲーターの熊坂です。

卒業式のシーズンですが、実は私も28日が卒業(正確には修了)式です。3年間お世話になった東京工業大学社会理工学研究科の博士後期課程を修了し、還暦を目前にようやく学位をいただきます。博士論文の題名は「経営工学手法の活用とその推進に関する研究」で、まさに現在の事業内容そのものであり、名実ともにこの分野の専門家となるわけです。名に恥じぬよう優れた手法活用を推進して、ものづくり革新に貢献して参ります。

さて前回は、私が今の事業「ものづくりドットコム」をやっている理由などを書かせてもらいました。今回からは実際にものづくり革新を進めていくための手法を一つひとつ紹介していきます。

TRIZというアイデア発想法

アルトシュラー

まずはTRIZというアイデア発想法を紹介します。これは1940年代にロシアの発明家であり特許審査官でもあったG.アルトシュラー氏が、毎日たくさんの特許を審査しているうちにそれらアイデアに共通点を見出し、いくつかの法則としてまとめたものです。当時は東西冷戦の最中で、西欧社会に秘密とされる一方でロシア国内では小学校から教育に使われて、宇宙開発競争でも威力を発揮したと伝えられます。

東西冷戦が終了し旧ソ連が解体したのちにTRIZは米国へ渡り、日本にはその後に伝わったため20年弱の歴史しかなく、まだ産業界で十分に認知されているとは言い難いのですが、大手企業を中心に活用が拡大しています。技術課題へのアイデアが出ない場合はもちろん、既に出ている場合でも、より多くのアイデアの中からベストなものを選択する事で、開発設計終盤になってからの後戻りを防止する事が可能となります。

実は、当社で紹介している140種類以上の手法の中で、アイデア発想法は群を抜いて種類が多く、それだけ産業的な需要が多いと考えられます。しかし、ほとんどの手法は商品企画や一般的な問題解決に使われるものであり、技術課題に特化したアイデア発想手法は、私が知る限りTRIZ以外にありません。ものづくりに関連する皆さんには是非使っていただきたい手法です。

TRIZの概念図

TRIZの概念を図に表すと下のようになります。すなわち問題をいくら考えても直接の解決策が思い浮かばない時に、図の上半分にあるTRIZの世界を利用します。そこには一般的な問題と、それに対応する解決策のペアが数多く用意されていますから、それらの中から現実の問題に近い一般問題を見つけ出せば、自動的に一般解を手に入れることができます。そしてその一般解を現実問題に照らし合わせて、実際はどんなアイデアになるのかを考えるのです。TRIZ概念図

一見遠回りですが、TRIZの世界で左から右はあっという間ですから、下から上、上から下の矢印に相当する作業に慣れてくると、短時間で多くの名案が浮かぶようになります。

TRIZの使い方

元祖TRIZは10種類ほどのサブツールから成り立ち、必要なアイデアに応じて使い分けるのですが、それぞれを知っていないと使い分けられないこととなり、ちょっと敷居が高いという印象がありました。現在ではそれらを包含した支援ソフトウェアが発達しており、それらを使うのが一般的です。そのソフトが結構高額であり、購入する資金があって複数部門で共用できる中堅以上の企業が主なユーザーになっています。

しかし考えてみればアルトシュラ―がこの発想体系をまとめていたころは、一般人がコンピューターを使うなど全く想定されておらず、インターネットの概念すら生まれていません。つまり高額なソフトウェアを前提としない利用の仕方があるわけです。

ものづくり.comの登録専門家では粕谷茂氏がPCを使わないTRIZを得意としていますので、この手法に興味が湧いた方は彼のホームページを利用してみてください。

 

ものづくり革新に関するプレゼン8本が聴けて、ものづくり関係ネットワークが広がる4月9日の交流会にも是非参加してくださいね。お待ちしています。

この記事の執筆者
熊坂 治
山形県生まれ
東北大学工学部(応用物理学科)を卒業後パイオニア(株)に入社し、基礎研究、プロセス技術、生産技術、製造技術、工場計画、技術営業、事業開発など広範に担当。
2008年に経営工学部門、2009年に総合技術監理部門と技術士資格を取得し、退社後技術士事務所を開設して、品質工学をコンサルティング。
2011年に株式会社産業革新研究所を設立し、2012年にWebサイト「ものづくりドットコム」を公開。多くの専門家と協力しながら製造業のプロセス革新と課題解決を支援している。
博士(工学)、技術経営修士(専門職)、山梨学院大学客員教授(技術経営論)
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