ものづくりドットコムの熊坂です。
早いもので今年も残り一か月を切りました。やり残したことを少しでも片づけたいものです。
ものづくりドットコムのセミナー案内コーナーは、自分に最もあったセミナーを1,000件以上の中から選択できると大好評ですが、先週から利用可能となったスマートサーチ機能は、入力された単語に関連するセミナーが関係性の高い順番に表示されますので、これまで以上に要望に沿ったセミナー選択が可能となります。
今年のうちに新たな知識を仕入れておきましょう。
さて毎回一つずつ紹介している、ものづくり革新の知恵の今回は、「商標・特許のDIY出願」についてお話します。
自分でやっちゃっていいの?
ご存知のように特許や商標の登録出願業務を代行できるのは、弁理士もしくは弁護士資格を持っている人だけです。しかし自分が創案した特許や自社が使おうとしている商標を自分で登録出願することは全く問題ありません。むしろ本来はそれが原則ながら、慣れないことを自分でやっていては時間がかかったり、手続きを間違えたり、あるいは出願できても効果の小さい内容になったりするために、弁理士さんに手伝ってもらうというのが本筋の考え方です。
出願に関する最小限のことは学習し、弁理士をリードしないと本当に有効な知的財産権は獲得できません。ゆめゆめ事務所に丸投げしないようにしたいものです。
私は去年から今年にかけて、商標と特許を自分で出願してみましたので、その経験から手順と注意点についてお伝えします。決してDIYをお勧めするわけではありません。目的と状況次第で判断してください。
商標出願のDIY
当社で運営するWebサービス「ものづくりドットコム」は2012年3月にスタートした時は「ものづくり革新ナビ」という名前でした。当時からURLは「www.monodukuri.com」でしたので、サービスの認知度向上には、URLとサービス名が一致した方が良いだろうということで、2014年からサービス名変更の検討を、次のような手順で開始しました。右図2を参考にしてください。
図2 商標登録の手順
- 調査:特許庁の特許情報プラットフォーム「J-Plat Pat」にて検索窓にキーワードを入れれば、登録された類似商標を比較的簡単に見つけることができます。ただし、完全同一商標はすぐ見つかるものの、紛らわしい呼び名や図形を見つけるには経験とセンスが必要です。おそらくここが素人の一番弱いところです。
- 出願願書作成:指定のフォーマットはありません。特許庁のホームページなどに「商標登録願」のひな形が載っていますので、それに準じてA4用紙で作成します。最も悩ましいのは【指定商品又は指定役務並びに商品及び役務の区分】という項目でしょう。ここにはまず45種類に分かれた商品または役務(サービス)の区分から、登録しようとするものが属する区分を選んで記入する必要があります。さらに商品あるいはサービスの内容詳細を記述します。他は迷うところもなく記入作成ができるでしょう。
- 出願する:出願には郵送と電子出願がありますが、電子出願は個人認証などの仕組みが非常に複雑、煩雑であり、DIYで1~2回使うだけなら紙に印刷して出願する方が圧倒的に簡単です。この時作成した書類に印紙を貼る必要があります。その金額が3400円+[区分数]×8600円ですから、最少の1区分の場合の出願費用は12,000円ということになります。これが費用の全てです。この費用の少なさがDIY最大の魅力でしょう。
- 拒絶理由通知書に応える:出願の内容がすべて条件に適合すれば登録査定となりますが、不備があると拒絶理由通知書が届きます。実際ものづくりドットコムの場合も、出4か月後にこれを受け取りました。ただしご丁寧に「こうすれば登録できますよ」という例文付きでしたので、その通りに補正書を作成して郵送したところ1カ月ほどで登録証が届きました。
- 登録料の納付:登録査定が届いたら登録料を納付することで、商標権が登録されます。特許庁のホームページなどから「商標登録料納付書」の書式をダウンロードして、商標登録料に相当する印紙を貼って特許庁に郵送します。登録料は10年分で[区分数]×28200円ですが、分納してまずは前期5年分の[区分数]×16400円だけを支払う手もあります。
これで届いた登録証が右図3です。
図3 商標登録証
DIY登録の留意点
商標登録の最終目的は権利を得ることではなく、自社の事業を有利に進めることです。上記の手順を見る限り、自分でもできそうだと思う方も多いでしょう。弁理士さんに頼むと調査から登録までの一連の作業で数万円から十数万円の費用が発生しますので、主力製品ではないが、一応登録しておく程度であれば、DIYはありだと思います。しかしどの区分にいくつ登録するのか、どのような名称、形態で登録するのが後々有利なのか、多角的な検討が必要な場合もあり、特に主力製品、サービスで大きな事業を計画している場合は、その微妙な判断が大きな問題を作る危険性があります。
そんな時は専門家と共に登録作業を進めた方が無難でしょう。
特許のDIYも書こうと思いましたが、字数が過ぎてしまいましたので、別稿にあらためたいと思います。
いかがでしょう?私は、知的財産管理技能士2級という(微妙な)資格を所有しており、多少は知識があるのですが、本格的な知財戦略は鶴見隆さんが御専門です。不明の点はQ&Aや問い合わせフォームで質問してください。