中小企業専門の弁理士の亀山です。お陰様で開業して6年目になります。開業して約300社の中小企業様・個人事業主様のご相談を受けてまいりました。前回の記事「プレスリリースを検討する際に気を付けて欲しいこと」では、これから売り出そうとする自社商品・サービスの名前等が、他社の商標権等を侵害していないかのチェックを、プレスリリースの前に行いましょうね。と述べました。今回はその続きです。
この記事の目次
商標権侵害により逮捕された例
高級ブランド「ウブロ」の偽腕時計販売 容疑で会社員逮捕
埼玉県警浦和西署は8日、高級ブランド「ウブロ」の偽物の腕時計を販売したとして、詐欺と商標法違反の疑いで、さいたま市浦和区常盤、会社員(23)を逮捕した。容疑を認めている。逮捕容疑は平成30年11月、商品の売買ができるインターネット掲示板にウブロに似たロゴマークを付けた腕時計を出品し、埼玉県戸田市の自営業の男性(45)から、代金として現金10万円をだまし取ったとしている。「YAHOO ニュース 2020/6/8 17:33配信より引用」
偽シャネルのヘアゴムをSNSで販売‥埼玉県の27歳女を逮捕 岐阜県警
偽のブランド品をSNSで販売していた女を逮捕です。商標法違反の疑いで逮捕された、埼玉県川口市の容疑者(27)は去年12月、SNSを利用して偽の「シャネル」のヘアゴム10点を2000円で販売した疑いがもたれています。 岐阜県警が、サイバーパトロールで偽ブランド品がフリーマーケットアプリで販売されているのを発見し、容疑者の犯行が明るみに出ました。容疑者は容疑を認めています。警察は、偽のブランドのネックレスやイヤリングなど約2000点を押収していて、入手経路などを調べています。「YAHOO ニュース 2020/6/4 19:25配信より引用」
それは「売っても大丈夫だと思っていた」人気ブランドSupremeの偽造品を販売目的で所持…男に求刑【長崎】
偽のブランド品を販売するため所持していた罪に問われている男の初公判が2日、長崎地裁で開かれました。商標法違反の罪に問われているのは長崎市新小が倉1丁目の会社員(46)です。起訴状によりますと被告は、去年11月、長崎市出島町で自分が経営していた雑貨店で人気ブランド「Supreme」の偽のウエストポーチなど124点を販売目的で所持していたとされています。長崎地裁で開かれた初公判で被告は、「注意で済むと思った」と起訴内容を認めました。検察側が懲役1年6カ月、罰金100万円を求刑したのに対し、弁護側は「利益はごくわずかで反省の態度を示している」として執行猶予つきの判決を求めました。「YAHOO ニュース 2020/6/2 18:14配信より引用」
このように、インターネットで検索してみると、商標権侵害によって逮捕されてしまった例というのは珍しくないようです。
商標権侵害事犯の数
では、商標権侵害事犯数は、どれくらいあるのでしょうか?
統計(※1)によれば、商標権侵害事犯は、平29年302件、平成30年 309件です。こうしてみると、1日1件くらい起きているケースになります。なお、証拠不十分等によって、上の数値にカウントされない場合もありますので、実際にはもっと多くの侵害行為が起きていそうだと考えた方が良いでしょう。
商標権侵害で摘発されやすい業種・業態
商標権侵害で摘発されやすい業種・業態としてはどのようなものがあるでしょうか?
商標権侵害事犯(平成30年 309件)のうち、インターネット利用は、265件(85%)となっています(※1)。したがって、インターネット経由の商取引(具体的には、ネット販売(SNSを含む)や、インターネットオークション)は、商標権侵害を根拠に検挙されやすいといえそうです。
また、平成30年における侵害品数(129,328個)のうち、4.5%は国内製造品、海外の仕出国においては、中国(37%)、韓国(6.8%)となっており、その後に、フィリピン、台湾、タイ(いずれも1%未満)が続きます(※1)。出元不明のものが49%(※1)もあることを鑑みると、もう少し多い可能性がありますが、いずれにしても、侵害品のほとんどが国外から輸入品であり、そのほとんどが中国・韓国からの輸入品であるといえそうです。
(※1)平成30年における生活経済事犯の検挙状況等について(警察庁生活安全局)
このように、インターネット経由の取引においては、商標権者から発見されやすいこともあり、摘発されやすいといえます。また、侵害品数の内訳から見てみると、中国等の海外から輸入品に多く見られます。
前回の記事で述べた通り、新しい事業を始める場合や新商品・サービスを開始する際、商標権侵害をはじめ、他社の知的財産権利の侵害について注意をした方が良いと思います。その中でも、ネット販売(SNSを含む)や、インターネットオークション等の「インターネット経由の取引」や「輸入品の販売」を行う場合には、特に、商標権侵害について注意をした方がよさそうです。
商標権侵害にならないようにするためにはどうすれば?
商標権の侵害行為によって、刑事罰を受けてしまうと、あなたの会社に対して、金銭的ダメージのみならず、社会的ダメージが大きくのしかかってきます。それでは、他人の商標権を侵害しないためには、何をすればよいのでしょうか?
そのためには、他者の商標を調べる必要があります。この調査は、事業の企画段階、商品の仕入れ段階において行う必要があります。このような商標権の調査(クリアランス調査といいます)は、専門的知識が必要ですので、調査の際には、お近くの専門家にご相談ください。
まとめ
- 商標権侵害による逮捕は意外と多い。
- 商標権侵害について特に注意したい業種・業態は、「インターネット取引(ネット販売(SNSを含む)や、インターネットオークション)」や「輸入品販売」である。
- このようなリスクを回避するためには、事前のクリアランス調査が必要。