オープンイノベーションを促進する仲介業者

【執筆者紹介】野口 幸嗣
この記事の執筆者
野口 幸嗣
現役CAE工学エンジニア、工業系技術ライター
執筆テーマ:工業・製造業系の技術情報やCAEなど
【経歴】
工学部大学院を卒業後、精密機器業界で信頼性や材料評価、CAEエンジニアとして勤務。工業系に特化したライターとして活動中。計算力学技術者固体1、2級及び技術士補。
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製造業勤務、機械系エンジニアライターの野口です。「オープンイノベーションって何?どうやって始めるの?」こんな悩みをお持ちではありませんか。本記事ではオープンイノベーションの概要やメリット・デメリット、そして仲介業者をお伝えします。

オープンイノベーションとは?

オープンイノベーションとは、イノベーションに関する概念の一つです。米国の研究者ヘンリー・チェスブロウによれば、次のように定義されています。

組織内部のイノベーションを促進するために、意図的かつ積極的に内部と外部の技術やアイデアなどの資源の流出入を活用し、その結果組織内で創出したイノベーションを組織外に展開する市場機会を増やすこと

出典:NEDO『オープンイノベーション白書』

そもそもオープンイノベーションの目的は、イノベーションに必要な知識や技術を外部から取り入れることです。最近では、企業が研究開発における経営戦略の一つとしても注目されています。これにより、新しい形のビジネスモデルを早期に立ち上げて、新たな製品やサービスなど、新しい事業や市場を生み出すことにあります。

オープンイノベーションの3つのメリット

まず、オープンイノベーションのメリットを紹介します。

1、外部の技術や知見を導入できる

自前開発と異なり、他社や他の業界、研究機関などの知識を獲得できます。従来の自前主義では、新規開発はゼロベースでの開発が求められていました。そのため、アイデアの陳腐化や独自性の生まれにくさといった課題があります。しかし、技術やビジネスモデルを融合させると、革新的なアイデアの創出につながります。

2、多様な顧客ニーズに対応できる

外部のリソースやマーケティングを有効活用することで、相乗効果が生まれます。自社が保有する市場を超えて、戦略が練れるからです。さらに、自社で把握しきれなかったニーズやシーズにも気づけるでしょう。

3、開発スピードを上げられる

外部リソースを共有し、既存技術を生かして開発期間を短縮できます。自前技術だけだとゼロからの開発になり、開発期間も莫大にかかります。しかし、外部と連携してお互いの知見を共有すれば、研究→開発→販売サイクルの短縮につながるのです。

オープンイノベーションの3つのデメリット

メリットに続いて、デメリットも見ていきましょう。

1、機密情報の流出のリスク

関わる人間が増えるほど、情報は漏れやすくなります。自社の機密を共有するオープンイノベーションでは、第3者への漏洩リスクが懸念されます。そのため、オープンイノベーションに取り組む際には、公開範囲を決めるといった機密管理も大切です。

2 コミュニケーションコストの増加

外部組織と連携すると、打ち合わせや会議、外部とのやり取りルールなど、調整業務の増加が懸念されます。また会社が違えば、文化や仕事の進め方も異なり、仕事がやりにくくなるケースもあるでしょう。そのため、お互いの仕事の進め方を理解し合うことも必要になります。

3 自社の技術力の低下

オープンイノベーションでは、自前の技術(コアコンピタンス)の低下も懸念されます。他社との協業や外部の技術を利用するため、自社の研究開発力が衰退する恐れがあります。自前で開発する技術と協力する技術を分けるなど、自社の技術を高める工夫が求められるでしょう。

オープンイノベーションを仲介している業者など

ではここからは、オープンイノベーションの仲介業者を紹介していきます。

ナインシグマ

ナインシグマは「モノづくり企業を強くする」をコンセプトとし、技術のマッチングを提供している企業です。協業企業の探索や技術シーズの出口戦略のサポート、有望なスタートアップ企業の探索などを世界中から請け負っています。これにより、オープンイノベーションを考えている企業のニーズやシーズをサポートしています。

リンカーズ

リンカーズは、オープンイノベーションを考えている企業に革新的なマッチングを提案している企業です。業界に精通したコンサルタントによる調査とIT技術を駆使した探索システムを掛け合わせて、マッチングを提案。リンカーズのマッチングシステムは、企業の技術をWeb上に展示し、異業種からの問い合わせを得られるのが特徴です。お互いのニーズがマッチできる仕組みを駆使して、技術を基にした企業間の出会いを手助けしています。

川崎市

オープンイノベーションの仲介は企業以外に行政も行っています。川崎市では、川崎市産業振興財団コーディネータが中心となり、中小企業の支援施策の企画や仲介をしています。「川崎モデル」とも呼ばれ、知的財産交流会やマッチングの調整、契約交渉の代行支援により、中小企業と大企業を結び付ける役割を果たしています。

東北大学オープンイノベーション戦略機構

大学もオープンイノベーションの仲介、支援を行っています。東北大学のマッチング手法は、独自のネットワークを活用したB-U-B(Business-University-Business)型のシステムです。さらに、企業と大学の引き合わせのみならず、ビジネス目線でのプロジェクトマネジメントや、イノベーションリーダーの人材育成など、幅広く大学と企業をサポートしています。

まとめ

オープンイノベーションの概要や、その仲介業者を紹介しました。「オープンイノベーションは難しそう」と考えているあなたも、一度仲介業者に相談してみるのはいかがでしょうか。うまくオープンイノベーションを活用できれば、自社の技術をもう一段高められるはずです。

この記事の執筆者
野口 幸嗣
現役CAE工学エンジニア、工業系技術ライター
執筆テーマ:工業・製造業系の技術情報やCAEなど
【経歴】
工学部大学院を卒業後、精密機器業界で信頼性や材料評価、CAEエンジニアとして勤務。工業系に特化したライターとして活動中。計算力学技術者固体1、2級及び技術士補。
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