マーコム・サポーターの椎名です。中小企業や個人事業主のマーケティング活動をサポートする傍ら、ライティング活動も行っています。今回はカスタマージャーニーをテーマにお話しします。カスタマージャーニーを作るメリットや具体的な作り方、BtoB製造業における注意点などについて解説します。
この記事の目次
カスタマージャーニーとは
カスタマージャーニーとは、顧客が製品・サービスを認知してから購入/利用するまでの一連のプロセスのことです。その顧客がたどるプロセスを旅路に見立てジャーニーとしています。旅路における顧客とサービスの接点や顧客の行動心理などを整理して可視化したものがカスタマージャーニーマップになります。
カスタマージャーニーマップは、顧客の状況や自社施策をまとめたマーケティングの設計図のようなものです。マーケティング活動に活用することで、顧客が必要なタイミングに、必要な情報が届けることができ、購入を促すことができます。
カスタマージャーニーを作成するメリット
企業がカスタマージャーニーを作成するメリットはいろいろありますが、ここではBtoB製造業に対するメリットとして、主に3つのポイントを解説します。
組織全体でベクトル合わせができる
BtoBでは、受注に至るまでにBtoCよりも多くのメンバーが関わります。カスタマージャーニーマップを作成することで、すべての組織で共通認識が生まれ、同じ目標に対して同じ方向を向いて活動できます。個々の担当者の思い込みが排除できるので、個人の力量に依存しない組織全体での最適化が図れる。
顧客の状態にあった最適なアプローチができる
カスタマージャーニーマップを活用すると、顧客側の行動心理を時系列で追跡することができます。そのため顧客の「今」の状態にあわせて最善の施策を打つことが可能になり、購買促進や顧客満足度の向上につながります。
プロセスごとに進捗や達成度を可視化できる
カスタマージャーニーにおける各プロセス・施策ごとにプロセスの達成度を可視化できます。そのため、顧客がどの段階でどういう成果がでているのか、どういう課題があるかが明確になります。これは組織の中でも管理しやすく、PDCAを素早く回すことが可能です。どの施策に先に実施すべきなのかの優先順位付けを行うのにも役立ちます。
カスタマージャーニーマップを継続的に活用することで、ノウハウが組織で蓄積されていきます。ブラッシュアップしつづけることで大きなビジネス成果を得ることができます。
BtoB製造業のカスタマージャーニーマップの作り方
カスタマージャーニーマップは、BtoBでもBtoCでも概ね共通の手順にて作ります。ここでは、一般的な作り方を5段階のステップでご紹介します。各ステップにおいて、BtoBならではのポイントも説明します。
1、ペルソナを設定する
まず、ターゲットとなる顧客の人物像を明確にします。顧客というと企業全体でとらえてしまう方もいらっしゃいますが、ここでは企業の中の個人が対象です。ただし、個人は企業を代表して動くのが前提となります。BtoB製造業の場合、企業内の複数の人・組織を経て購買に至るので、各役割におけるキーパーソンにフォーカスするのがよいでしょう。
ターゲットが複数いる場合、別々にペルソナを設定することになります。BtoBの場合、業務上の悩みや仕事スタイル・嗜好性を見た方がよいでしょう。顧客にヒアリングをし、それを拠り所に作成することが望ましいです。
2、フェーズを設定する
次に、認知から受注に至るまでの顧客の行動フェーズを設定します。通常、購買行動モデルを参考に当てはめて考えていきます。BtoB製造業の一般的な購買行動モデルとして、ASICA(アシカ)*1があります。
ただし、商材によっては、一般的な購買行動モデルにあてはめにくいものもあります。また、BtoBの場合、担当役割によっても行動が異なることです。購買行動モデルに囚われず、ビジネス形態や、自社の目的にあわせて設定してみてください。
*1)BtoBの購買行動モデル ASICA(アシカ):
-
- Assignment(課題)
- Solution(解決)
- Inspection(検証)
- Consent(承認)
- Action(行動)
3、タッチポイントを洗い出す
このステップでは、自社と顧客の接点となるポイントを考えます。BtoBの場合、受注に至るプロセスがパタン化されているため、そのパタンに沿って洗い出していくとよいでしょう。
タッチポイントと併せて、接触するメディアなどの媒体が何かも一緒に考えていきます。
タッチポイントを考える際の注意点として、今現在の活動において、どこにどういう接点があるかも見た上で検討するとよいでしょう。現状を無視して、理想を追い求めてしまうと絵に描いた餅となってしまい、実際の施策にうまく落とし込めないことがあるためです。
なお、複数ペルソナがある場合は、それぞれに対して別々にタッチポイントを考えます。同じ企業でも役割担当によりタッチポイントが異なるからです。
4、行動・感情を整理する
ペルソナがどの段階でどんなアクションを行い、どんな心理状態なのかを考えます。例えば、課題解決に向け情報収集をしたい場合、ネット検索で関心の高いテーマのサイトを閲覧したり、展示会に足を運んだりします。比較検討の段階では、候補となる製品のデモ動画を視聴したり、サンプルを取り寄せたりします。
こうした行動やその際の感情は、基本、③で洗い出した個々のタッチポイントに対して考えていきますが、そのタッチポイントに限らず、その接点の前後の行動にあたる周辺までみていくとよいでしょう。顧客へのアンケートやヒアリングを活用し、多角的な視点で顧客行動を見ていくことが必要です。
5、マップに落とし込む
最後に、①~④の結果を実際のマップに落とし込んでいきます。マップの横軸には、時系列にフェーズを並べます。縦軸には、タッチポイントと媒体チャネル、行動、感情、そしてアプローチ施策を置いていきます。
わかりやすくするために、グラフなどを用いてビジュアル化してもよいでしょう。
カスタマージャーニーマップを作る上で押さえるべき5つのポイント
ここでは、カスタマージャーニーマップを実際に作る上で、BtoB製造業として注意しておきたい事項について説明します。
対象と目的は明確化されているか?
カスタマージャーニーマップに限らず、計画立案時によく言われていることですが、手段が目的にならないようにするということはとても重要です。マップを作ることが目的にならないように注意しましょう。
また、ペルソナの対象はできるだけ具体的に設定した方がよいです。抽象的な設定をしてしまうと、対象がぼやけてイメージしづらくなります。
顧客視点で考えられているか?
顧客視点が重要ということは誰もが認識する当たり前の話になりますが、考えられていないケースが少なくありません。それは、顧客視点といいながら、自社にとっての理想像や、担当者の思い込みになっているケースが多々あるからです。
顧客視点で考えるには、営業やカスタマーサポートなど顧客と日頃接点をもつ担当者を巻き込むことが必要です。顧客自身が実際に述べた意見を拾うようにし、自社担当者が考える想像上の顧客イメージを盛り込んでしまわないよう気をつけましょう。
優先順位はつけられているか?
カスタマージャーニーを検討する際には、目的やゴールに対する優先順位を常に意識することが重要です。
理想を追いすぎてしまって現実とかけ離れたものができあがってしまわないよう、現状を見ながら検討していきましょう。なんでもかんでも緻密に考えすぎてしまうと冒頭で述べた手段が目的化してしまうことになりかねません。
フェーズごとにKPI設定されているか?
カスタマージャーニーを考える際には、各フェーズ、タッチポイントごとにKPIを設定することが望ましいです。最終目的からの逆引き設計でKPIを考えていくとよいでしょう。
目的は、KPIの管理ではなく、PDCAを回してビジネスを改善することです。そこを見失わないようにしましょう。
作って終わりになっていないか?
カスタマージャーニーマップは作って終わりではありません。実際に活用しながら課題を見つけ改善していくことが求められます。
顧客の行動を観察し、マップとあわない部分はどこか洗い出しましょう。顧客と直接接点がある営業やカスタマーサポートの部門から定期的に意見を吸い上げる仕組みを構築しておくことが肝要です。課題がどこにあるのかを検証し、タッチポイントやチャネル、施策を追加変更してPDCAを回していきましょう。
カスタマージャーニーに役立つツール
ここでは、カスタマージャーニーマップを作成する際に、役立つツールを3つ紹介します。
KARTE
株式会社プレイドが提供するカスタマージャーニーを分析・可視化するツールで、サイトやアプリの訪問者の行動や感情をリアルタイムに解析可能です。 カスタマージャーニーは、訪問者がWebサイトに訪れた理由を蓄積された情報からの推測により作成できます。
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Salesforce Marketing Cloud
株式会社セールスフォース・ドットコムが提供するMarketing Automation(MA)ツールです。カスタマージャーニーマップは、MAツール内の「Journey Builder」でカスタマージャーニーマップを作成できます。またSalesforce向けの「GetFeedback」を使用すると、カスタマージャーニーの重要なタッチポイントで、自動的に顧客フィードバックを収集できます。
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AD EBiS
株式会社イルグルムが提供するアクセス解析ツールで、媒体・デバイスを横断したデータ取得が可能で、すべての流入チャネルを統合管理できます。カスタマージャーニー分析機能が搭載されており、「施策にどのくらい寄与したか」や「接触者と非接触者の違い」を比較検証できます。
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カスタマージャーニーマップは、無料で使えるテンプレートが各社から提供されています。検索ワードで「カスタマージャーニーマップ テンプレート」と入力すると提供しているサイトが見つかるので、作成に慣れていない方は参考にしてみてください。
まとめ
カスタマージャーニーマップは、顧客の製品認知から購入に至るまでの旅路を可視化したもので、顧客接点・行動心理、施策をまとめたマーケティングの設計図です。このマップを組織全体で活用することで、組織全体で共通のゴールに向かって最適化が図れ、顧客起点でマーケティング活動が行えるようになります。
カスタマージャーニーマップは、対象となるペルソナの設計から始まり、顧客の購買行動に従って、顧客接点や行動心理を整理しながら作成していきます。BtoB製造業の場合、商材によってパタン化された流れがあるので、自社の現状を各フローで整理しながら作成するとよいでしょう。カスタマージャーニーマップはあくまでもマーケティング活動全体を改善するための手段のひとつです。手段が目的にならないよう気をつけたいものです。
カスタマージャーニーは、MAツールやアクセス解析ツールなどを活用して自動的に可視化・分析することができます。また、カスタマージャーニーマップのテンプレートもいろいろ出回っています。これらのツールを活用することで効率化を図れます。
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