テクノポートの廣常です。今回は製造業におけるWebマーケティングの中でも、特に新規顧客の開拓を目的とした場合によくある失敗パターンをご紹介します。
これからWebマーケティングに取り組もうとされている方や、Webサイトのリニューアルを検討されている方へ、未然に失敗を防ぐための参考となれば幸いです。
この記事の目次
実際の製造業Webマーケティング失敗事例
弊社は製造業系企業のWebマーケティング支援を専門としているため、日々製造業の方々から自社サイトに関するお困りごとをご相談いただきます。その内容は各社のマーケティング活動状況によってさまざまです。以下に実際にあった失敗事例をご紹介いたします。(業種や社名の表現は仮称です。)
板金加工業A社:運営体制の未確保
板金加工業者のA社は新規顧客開拓をねらいとしたサイトリニューアルを実施したものの、その後の運営を担う人員を十分に確保できていませんでした。リニューアルしたページの効果検証にまで手が回らず、施策も単発止まりとなってしまい、サイトのデザインを刷新しただけで問い合わせが来ないまま、停滞してしまいました。
自動車部品メーカーB社:戦略未検討
自動車部品メーカーのB社は、問い合わせの獲得増を目的として新たにWebサイトを立ち上げました。制作会社とは簡易的な打ち合わせのみ実施し、自社から伝えた会社概要を元に丸投げで制作を依頼すると、集客面が考慮されておらず、技術的な優位性などの訴求がないシンプルなサイト構成となってしまいました。アクセスやお問い合わせも増えず終いとなりました。
印刷業C社:集客施策ミス
印刷業者のC社では、Webサイトの流入を増やすために顧客事例記事の追加を実施しました。同様の業種からの流入を見込み何十件もの投稿を追加しましたが、その顧客事例に掲載されている会社名でしか検索ヒットせず、新規顧客の獲得にはうまくつながりませんでした。
プレス機メーカーD社:更新テーマの検討不足
プレス機メーカーのD社は、「Webサイトの検索流入を増やすには定期的な更新が不可欠」という情報を元に、社内で更新体制を構築しました。毎日更新作業に奮闘していましたが、新着情報や社内の日常ブログの更新がメインで、特に検索意図や上位表示を意識した構成でコンテンツを制作していませんでした。そのため労力の割に流入はふえず、評価の低いページが量産されただけとなってしまいました。
よくある失敗パターン
サイト制作〜運営までの項目別に製造業Webサイトのよくある失敗パターンをご紹介します。
サイト制作・運営体制編
・社内理解を十分に得られていない
「本当に効果があるのか」「今の営業体制のままで良いのではないか」と、Webマーケティングに関して懐疑的な方が社内にいらっしゃるケースもあるかと思います。
Webサイトの訴求力を高めるには営業担当者や技術職の方の意見を取り入れることが効果的なため、できる限り社内を巻き込んで活動していくことが重要です。
まずはスモールスタートとして一製品・技術に絞ったWebマーケティング施策に取り組み、その効果を見ながら徐々に社内理解を浸透させていくことも一つです。
・制作会社に丸投げしている
自社の技術や顧客の特徴を最も理解しているのは自社自身です。「制作のプロだから」とページの内容まで制作会社に丸投げしてしまうと、一般的な内容ばかりが並んだ、自社らしさに欠けたページができあがってしまう場合があります。
技術的な強みや、どのような見せ方をしていきたいかは自社でも積極的に検討し、制作会社と意思疎通を図ることが重要です。
戦略編
・目的やターゲットが明確でない
デザインが古いなどの理由でなんとなくリニューアルを検討してしまうと、Webサイトの方向性がうまく定まり切らず失敗に終わってしまう場合があります。
Webサイトをリニューアルしたり新たにコンテンツを作成する場合には、サイト運営の目的(新規顧客開拓・採用・イメージアップなど)や、訪問して欲しいユーザー像を今一度明確にすることが重要です。これらを明確にすることで、訴求内容やデザイン、集客手段が自ずと見え、ブレのない戦略を立てることが可能です。
・競合を意識できていない
Webサイトの中身を検討する際に、自社の特徴ばかり考えてしまっていないでしょうか?
ユーザーが加工先や購入先を検討する際、複数社のページを比較することがほとんどです。競合他社と比較された際に自社を選んでもらえるよう、ページの見せ方を工夫する必要があります。
実際に競合として認知している企業のWebサイトのほか、自社が保有している技術や製品名で検索した際に上位表示されているサイトと比較し、どのように差別化できるか検討してみることをおすすめします。
サイト設計・デザイン編
・サイト内の導線がわかりづらい
サイト設計・デザインを検討していると、どうしても自社(担当者)好みの仕様に変えてしまいたくなることもあるかもしれませんが、第一に重要なのはサイトを訪れるユーザー目線で考えることです。
実際の自社の顧客や案件の傾向を踏まえ、ユーザーの行動を考慮した導線にする必要があります。
例)
急ぎ・単発の依頼がくることが多い → 問い合わせ先・方法がすぐにわかるような設計にする
取り扱い製品の品番が多い → 大中小のカテゴリごとの分類や検索機能を追加する
・過度な加飾が施されている
自社のWebサイトを刷新する場合、流行のデザインを取り入れたり、モーションをつけたりとデザインばかりにこだわりすぎてしまう場合があります。
特に感性に訴えかける必要があるBtoCサイトとは異なり、BtoBサイトはユーザーは限られた業務時間の中で情報を探し求めているため、必要な情報への辿り着きやすさや、操作のスピーディーさが問われます。
デザイン調整に割く時間が増えてきた際には、今一度この視点で見直してみることをおすすめします。
集客活動編
・集客施策が限定的となっている
「集客といえば広告」など、限定的な施策に囚われすぎているケースもあります。
今や広告、SEO、SNS、製造業関連のWeb媒体への露出など集客手法はさまざまです。成果を出すまでの期間やコスト、届けたいターゲットの特性などによって、よく選定する必要があります。
項目 | メリット | デメリット |
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SEO |
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オンライン広告 |
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SNS |
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・自社のターゲットを適切に集客できていない
いくらアクセスがあつまっても自社のターゲットでなければ意味がありません。特に製造業の場合、専門的な用語を用いるために、純粋にその用語の意味を知りたいだけのユーザーの検索流入が増えることがよくあります。
新規顧客開拓を狙うにはユーザーの検索意図を考慮し、単なる製品名・技術名のキーワードだけではなく、自社の見込み顧客がどのような検索行動に出るかを想定して流入対策することが重要です。
例)樹脂成形加工業の場合
技術名のキーワード:「射出成形」
自社の見込み顧客が使うと考えられるキーワード:「成形 大型」「PP 成形」「樹脂成形 東京」
訴求活動編
・「何をできる会社か」が一目でわかりづらい
Webサイトの中でも特にTOPページについては、自社がどのような会社かを表すのに最も重要なページとなります。特にファーストビュー(TOPをクリックして一番最初に目に入る部分)はユーザーの印象を左右するため、ここで「自社の事業が何か」「どんな価値を提供できるか」を伝えたいところです。
・訴求表現が曖昧(広げすぎている)
問い合わせを逃したくないという心理から「どんな加工もお任せください」などと、広い表現をすることはあまりおすすめしません。自社の強みがブレてしまい、より専門的な強みを打ち出している競合他社へ流れてしまう恐れがあります。自社の技術についてはより細かく訴求していきましょう。
例)溶接加工業の場合
△「溶接はお任せください!」
◯「0.05mm〜の薄板溶接はお任せください!」
まとめ
製造業Webサイトにおいて考えられる失敗パターンをご紹介しました。自社のWebサイトの改善点を見つける一助となれば幸いです。