調査レポート概要

調査実施者:テクノポート株式会社
調査概要:製造業の新規顧客獲得に関する実態調査
調査方法:IDEATECHが提供するリサーチPR「リサピー®」の企画による インターネット調査
調査期間:2024年2月26日〜同年3月4日
有効回答:Webマーケティングを実施しているBtoB製造業(従業員数100名以上)の マーケティング担当者・経営者・役員106名
※構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100 とはなりません。

登録無しでダウンロード可能です

調査概要

本調査レポートの結果から、製造業における新規顧客獲得の手段として、Web広告やSEOといった王道施策が依然として強い効果を持ちつつも、施策の精度次第で成果に大きな差が生じていることが明らかになりました。とくに、ターゲットの明確化や自社の強みを的確に伝えるコンテンツ設計ができていない場合、効果が限定的となり、成果を阻む要因となっている実態が浮き彫りとなりました。

一方で、多くの企業が動画マーケティングやSNS広告といった新しい手法への関心を高めており、既存施策の延長線だけでなく、新たな接点づくりへの投資意欲もうかがえます。ただし、ノウハウ不足や人的リソースの限界といった課題を抱える企業も少なくなく、今後は外部パートナーとの連携やCRMなどの仕組み活用による効率化が求められる状況です。

全体を通じて、従来の「施策を打てば成果が出る」という発想から、ターゲティング精度・強みの訴求力・実行体制の整備を重視する「戦略志向型」への転換が必要であり、Webマーケティングの実効性を高めるには、経営資源の活かし方そのものが問われていると考えられます。

Q1,2 新規顧客獲得のために実施したことのあるWebマーケティング施策

概要

製造業における新規顧客獲得のためのWebマーケティング施策としては、約6割の企業が「Web広告」を実施しており、最も利用率が高い結果となりました。次いで「SEO対策(49.1%)」「動画マーケティング(41.5%)」「SNSアカウントの運用(38.7%)」が続き、ウェビナーやSNS広告も3割強が取り組んでいます。

比較サイト掲載やリストマーケティングは2割前後にとどまり、「特にない」「わからない」と答えた割合は1割程度にとどまりました。

考察

この結果から、多くの製造業企業がまずは王道の「Web広告」や「SEO」といった施策に注力していることが見てとれます。一方で、動画やSNSなどの新しい施策も一定の割合で導入が進んでおり、顧客との接点を多様化させようとする動きが広がりつつあると考えられます。

特に製造業では、これまで展示会や既存の取引網に依存した営業活動が主流でしたが、今回の結果は「オンラインでの情報発信や比較」が当たり前の前提に変化しつつある兆しを示しています。単に施策を導入するだけではなく、自社の強みや技術をWeb上で伝わりやすい形に整備することが、今後の顧客獲得において決定的な差になるといえるでしょう。

Q3,4 Webマーケティング手法と効果

概要

調査の結果、Webマーケティング施策において「非常に効果があった」「やや効果があった」と回答した割合は合計64.2%にのぼり、多くの企業が一定の成果を実感していることが明らかになりました。一方で「あまり効果がなかった」「全く効果がなかった」と答えた層も約28%存在し、施策の成否に差が出ている実態も示されています。

さらに、効果を実感した企業に費用対効果の高い施策を尋ねたところ、「Web広告」と「SEO対策」が同率19.7%で最多となり、次いで「ウェビナー(14.8%)」「SNS運用(11.5%)」が続きました。これに対して、比較サイトや動画マーケティングは相対的に低い割合にとどまりました。

考察

今回の結果は、多くの企業がWebマーケティングを成果につなげられている一方で、施策ごとに費用対効果の差が大きいことを示しています。特にWeb広告とSEOは、比較的短期で効果を確認しやすく、成果実感に直結しやすい施策といえます。一方で、動画マーケティングや比較サイトの活用は効果が限定的であり、運用ノウハウや目的設定の不足が影響している可能性が考えられます。

また、「やや効果があった」との回答が約半数を占めることから、多くの企業が“部分的な成果”を得つつも、本格的な新規顧客開拓に直結していないケースが多いと推察されます。つまり、施策そのものの有効性よりも、ターゲティングの精度や強みを伝えるコンテンツ設計、運用体制の成熟度が成果の分かれ目となっていると考えられます。

今後は、王道のWeb広告・SEOに加え、効果が相対的に低く出ている施策をどう組み合わせ、全体最適化を図るかが重要なテーマになるでしょう

Q3,5 効果が出なかった要因

概要

効果が出なかった要因としては、「自社の強みを十分にアピールできなかった」(44.4%)が最多で、次いで「施策に関するノウハウ不足」(40.7%)、「ターゲット設定・分析の不十分さ」(37.0%)、「適切な施策が分からなかった」(37.0%)が続きました。

考察

成果を得られなかった理由の多くは、施策そのものよりも「戦略や準備不足」に起因している点が特徴的です

とくに製造業では、自社技術やサービスを分かりやすく表現する力が不足しがちであり、強みを明確に打ち出せないまま施策を実施すると効果が限定的になってしまいます。また、ターゲティングや分析の甘さが続くと、そもそも適切な顧客層に情報が届かないため、成果を得られない構造に陥りやすいと考えられます。

つまり、Web広告やSEOといった施策の種類以上に、「誰に・何を・どのように伝えるのか」を設計する段階の質が成果を分ける要因になっているといえます。今後は、単発的な施策導入よりも、自社の強みを可視化し、ターゲットに合わせた情報発信を継続的に行う体制づくりが不可欠になっていくでしょう。

Q7 新規顧客獲得の際に重要だと感じたこと

概要

Webマーケティングで新規顧客獲得を進めるうえで重要だと感じる点については、「ターゲットの明確化」が62.1%で最も多く、半数近くが「自社の強みをアピールするためのコンテンツ」(49.5%)を挙げました。次いで「自社と合った施策の選定」(33.7%)、「競合の調査」(26.3%)、「人的リソースの確保」(24.2%)が続きました。KPI設定やノウハウ不足といった運用面よりも、ターゲティングとメッセージの明確さに重きが置かれていることが特徴です。

考察

この結果は、施策の種類そのものよりも「誰に向けて何を発信するか」という戦略設計の重要性が認識されていることを示しています。製造業においては技術力や製品の差別化が分かりにくいケースが多いため、自社の強みを整理し、的確に伝えられるコンテンツが不可欠です。

一方で、「施策に関するノウハウ」「人的リソース」「KPI設定」も2割前後の回答があり、現場での実行力が不足しがちな状況もうかがえます。つまり、多くの企業が「何を伝えるか」では方向性を理解しているものの、それを継続的に運用する仕組みや体制づくりに課題を抱えているといえます。

今後は、ターゲティングと強みの明確化を基盤に据えつつ、適切な人材・ノウハウの確保や運用プロセスの標準化を進めることで、施策全体の効果を底上げできると考えられます。

Q9 今後も継続していきたいと考えているWebマーケティング施策

Screenshot

概要

今後も継続していきたいWebマーケティング施策として最も多く挙げられたのは「Web広告(43.2%)」と「検索エンジン最適化(SEO対策)(42.1%)」でした。続いて「動画マーケティング(29.5%)」「SNSアカウントの運用(28.4%)」が3割前後で支持されており、ウェビナーやSNS広告は2割前後にとどまりました。比較サイト掲載やリストマーケティングを今後も続けたいとする回答は少数派でした。

考察

この結果から、多くの製造業企業が今後も「成果が見えやすい施策」に投資を継続していく意向を持っていることがうかがえます。Web広告やSEOは効果測定が比較的容易で、確実にリード獲得につながりやすいため、企業にとって安心感のある手段として定着していると考えられます。

一方で、動画やSNS運用への支持も3割近くあり、従来型の広告・SEOに加えて「顧客接点の多様化」を模索する傾向も広がっています。ただし、ウェビナーや比較サイトなどは優先度が下がっており、企業にとって費用対効果や運用負担の面で課題があることを示している可能性があります。

つまり、今後の方向性としては、王道の広告・SEOを基盤に据えつつ、動画やSNSといった成長領域をどうバランスよく組み込むかが課題となるでしょう。継続性が重視されていることから、単発的な施策ではなく、中長期的な戦略に基づいた「運用の仕組み化」が成果の鍵になると考えられます。

Q10 今後新たに試そうと考えているWebマーケティング施策

概要

今後新たに試してみたいWebマーケティング施策としては、「動画(YouTube)マーケティング」(14.2%)が最も多く、次いで「SNS広告」(12.3%)、「ウェビナー」(11.3%)が続きました。リストマーケティング(10.4%)、Web広告(8.5%)、比較サイト掲載(8.5%)なども一定の関心を集めています。一方で「特にない」と回答した割合も36.8%と高く、新規施策に積極的ではない企業が3割強存在することも明らかになりました。

考察

既存の王道施策(Web広告やSEO)を継続する一方で、新しい取り組みとして動画やSNSを模索する動きが広がっていることがうかがえます。とくに動画マーケティングは、自社の強みや技術をわかりやすく伝える手段として注目されており、BtoB製造業においても導入意欲が高まっていると考えられます。また、SNS広告も新規接点の獲得やターゲティング精度の高さから期待されているとみられます。

一方で、「特にない」と回答した割合が突出して高い点は注目すべきです。多くの企業が新しい施策への投資に慎重であり、現状の施策を深めることに重きを置いている可能性があります。これは、人的リソースやノウハウ不足への懸念、あるいは効果測定が難しい新施策への不安が背景にあると考えられます。

今後は、動画やSNSといった新しいチャネルを「単発の実験」としてではなく、既存施策(広告・SEO)とどう組み合わせて全体最適を図るかが鍵になります。特に製造業では、強みを視覚的に伝えられる動画や、特定業界層に届きやすいSNS広告は、競合との差別化に直結する可能性が高いといえます。

最後に

今回の調査では、製造業のマーケティング担当者や経営層の声をもとに、Web施策が「どのように活用され」「どのような成果や課題が生じているのか」という実態を明らかにしました。
特に、Web広告やSEOといった王道施策が依然として成果を生みやすい一方で、その効果は「自社の強みの伝え方」や「ターゲット設定の精度」といった情報設計の巧拙に大きく左右される点が浮き彫りとなりました。

今後は、ターゲットとする業界や市場環境、企業規模や技術領域によって、求められるアプローチや有効なチャネルが変化していくことが想定されます。だからこそ、顧客が「どこで情報に触れ」「何を基準に判断しているのか」を継続的に把握することが、営業・マーケティング活動の精度を高めるうえで不可欠だと考えられます。

本レポートが、製造業における新規顧客獲得のあり方を見直すきっかけとなり、皆さまの戦略立案や施策検討に役立つ視点を提供できれば幸いです。