調査レポート概要

調査実施者:テクノポート株式会社
調査概要:⼤⼿メーカーの購買担当者にインタビュー「サプライヤーの探し⽅と選定基準」
調査方法:インターネット調査
調査期間:2024年3月28日〜2024年4月7日
回答者:大手メーカー購買担当者5名

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調査結果

本調査レポートでは、大手メーカーにおける購買・調達部門の視点からサプライヤー選定プロセスの実態が明らかになりました。既存サプライヤーでは対応が難しい場合や、コストダウンの必要性に迫られた場面において、購買担当者が自らWeb検索を活用して新たな外注先を模索する動きが主流となっていることが分かりました。

検索行動においては、材料名や加工方法など、具体的かつ目的に即したキーワードを用いる傾向があるほか、実績や設備情報、更新状況など、Webサイト上の情報の「正確さ」と「わかりやすさ」が、初期接点としての役割を大きく担っていることが浮き彫りとなりました。

一方で、情報が古い、実績の記載がない、デザインが煩雑といった理由で、候補から除外されるケースも散見されました。技術力の優劣だけではなく、技術の伝え方の工夫や表現が、選定可否に大きな影響を与えている現実が見て取れます。

サプライヤー系の企業においてはメーカーから「見つけてもらう」→「選ばれる」ための鍵として、ユーザーの情報収集行動に沿って自社を露出させることと、分かりやすい技術訴求をすることの両軸が求められています。

質問内容

インタビュイーの紹介

Q1. 外注先を探すシチュエーション

概要

  • 既存サプライヤーで対応できない場合に新規を検討
  • コスト削減目的で新たに外注先を探すケースもある

考察

基本的には既存の取引先を優先する傾向があります。キャパオーバーやコスト、技術レベル的な観点から他の外注先に依頼せざるを得ない事情が発生した時に初めて検討が始まることがほとんどでした。日常的な探索があまりされていない分、メーカー側でこうした突発的な事象が起きた際にいかに自社を見つけてもらうかが鍵となりそうです。

Q2. 外注先の探し方(Web、商社、展示会など)

概要

  • ほとんどの場合Web検索が活用されている
  • 展示会は情報収集が目的で、取引先選定にはあまり活用されない
  • 商社や知人業者からの紹介も活用

考察

実際の調達プロセスでは、Web検索が起点となっていることが分かります。展示会はなかなか足を運べない、もしくはあくまで情報収集にとどまり、現場レベルでは時間やコストの制約からも、Webが重宝されているといえます。

Q3. Webを使う時の検索条件

概要

  • 加工方法や材質、製品名などの具体的キーワードで検索
  • 「安い」「コスト」など価格関連のワードはあまり使用されない

考察

Web検索では加工名や材質など、具体的なキーワードで検索されることがわかりました。 +安い、コストなどの価値的なキーワードに関しては、たとえニーズとして抱えていたとしても検索時には打ち込まれない傾向が見られています。「安さ」よりもまず「対応できるかどうか」が初期判断において重視されているため、加工名や材質軸でのSEOを実施の上、事例をなるべく多く掲載することが有効となります。

Q4. ホームページの確認内容

概要

  • まずは検索結果のタイトルを見てクリックするサイトを判断
  • 実績、設備、取引先、会社規模、主要銀行などが主にチェックされる
  • コストよりもまずは技術レベル、品質を確認

考察

サイト内で確認する内容としては会社としての信頼性が重視されており、取引実績や保有設備の具体的な情報が多く求められていました。また、設備投資状況や、コストダウンのためにどのような取り組みをしているか?といった内容もチェックされており、単なる技術・設備紹介にとどまらず、ものづくりに対する自社の姿勢をアピールする必要があることがわかります。

Q5. 相見積もりの社数

概要

  • 一般的には2〜3社、多くても5社程度に相見積もりを依頼
  • 新規企業は高い技術力がないと比較対象に入りにくい

考察

価格比較は当然ながらも、技術力とのバランスで判断されていることが分かります。既存の取引先企業と並んで新規企業が選ばれるハードルが高いため、まずは検討候補に入るよう、豊富な加工実績や自社技術の提供価値、品質への取り組み、アフターフォロー体制などと、メーカー側を安心させる要素をなるべく打ち出していく必要があります。

Q6. 外注先を決めるときの決定者

概要

  • 試作段階では設計部門が主導することが多い
  • 量産や高額案件では購買部門が最終決定する
  • 多くの場合、複数部門での連携判断となる

考察

設計と購買の双方が意思決定に関与するため、技術者にも購買担当者にも伝わる表現が求められます。また、設計 → 技術内容、購買 → 調達コスト と、主に気にするポイントが異なるため、Webサイトや提案資料ではどちらに向けた訴求かを意識して訴求していくことが重要です。

Q7. Webのデザインや構成について

概要

  • 見た目の綺麗さ、かっこよさよりも情報へのアクセスのしやすさが重視される
  • スマホ閲覧への配慮や、無駄な演出の排除が好まれる
  • 作業風景や工場内の様子が評価につながることもある

考察

サイトの見た目よりも「使いやすさ」が評価基準となっています。スマホで閲覧されることも多いため、レスポンシブ対応やメニュー構成の工夫が必要です。余計なアニメーションなどの演出はなるべく避け、見たい情報にすぐアクセスできる導線設計が鍵となります。

Q8. どういう企業は選ばないのか

概要

  • デザインが古過ぎるサイトは敬遠される
  • 数年以上更新されていないサイトは「動いていない」印象に

考察

デザイン性はQ7でも見られていた通り重視はされていないものの、見た目が古過ぎるとマイナスに作用することが分かります。安心感を持ってもらうためにも最低限の見た目は整備した上で、新着情報を定期的に更新するなどなるべくサイトとして「動いている」印象を与えることがポイントです。

Q9. 特化系、何でもできる系、どちらがいいか

※サイト上での訴求として、「〇〇素材のXX加工に特化」と絞られているか、「△△の加工はなんでもお任せください」等と広く謳われているかのどちらが好ましいか

概要

  • 多くの担当者が「特化している企業」に信頼を寄せている
  • 一貫生産などで広範な対応力がある企業も評価される
  • 得意分野の明示が重要視されている

考察

ピンポイントで必要な技術や製品を探して検索している担当者が多いこともあり、「何でもできます」よりも「得意なことが明確」なほうが信頼されやすい傾向にあります。得意な加工や分野ついてはTOPで大きく訴求、もしくは特設ページをつくるなどで、ユーザーを誘導することが有効的です。

Q10. SNSは見るか

概要

  • YouTubeなどで加工の様子を確認するケースは多い
  • XやInstagramは基本的に見ないという回答が多い

考察

XやInstagramなどでのテキスト・写真系の投稿よりも、具体的な加工の様子がわかるYouTube動画にニーズがあることが分かります。YouTube検索から問い合わせにつながる可能性もあるため、実際の加工シーンや設備の稼働の様子をアップすると、問い合わせへの後押しとしても効果的です。

最後に

今回の調査では、大手メーカーの購買・調達担当者に焦点を当て、「外注先がどのように探され、選定されているのか」という実態を明らかにしました。

それぞれの回答に共通していたのは、技術力や加工精度といったスペックだけでなく、それらを「どう伝えているか」「どう表現しているか」といった情報発信の質が、サプライヤー選定に大きく影響を与えている点です。古過ぎるデザインや見づらい構成、分かりにくい技術情報などは、それだけで選定対象から外れてしまうリスクをはらんでおり、製造業においてもWebサイト上のコミュニケーションが、受注機会を左右する時代に突入していることを再認識させられます。

また、業界特性や技術領域、調達フェーズ(試作/量産)、担当者によって、求められる訴求ポイントや判断基準も細分化されており、これらは時代の流れによっても変動していくと考えられます。「何が決め手となり、どこで比較され、どのように判断されているのか」を継続的に捉えていくことが、営業やマーケティング活動の精度を高める鍵となるはずです。

本レポートが、製造業における技術の伝え方を見直すきっかけとなり、皆さまのマーケティング戦略や情報設計の改善にお役立ていただければ幸いです。