製造業の営業手法9選(中小製造業の新規開拓)

【執筆者紹介】小林(井上) 正道
この記事の執筆者
小林(井上) 正道
会社名:テクノポート株式会社
役職:取締役
【経歴】
製造業のWebマーケティング支援を15年以上。
製造業への訪問実績3000件を超える。
幅広い加工知識と市場調査をもとに、製造業の新規顧客開拓の支援を行う。

日本工業大学技術経営学修士号(MOT)
研究テーマ「Webを活用した用途開発マーケティング」

【専門領域】
製造業 × 企画コンサルティングスキル × Webスキル(SEO中心)

【寄稿実績】
・Webリニューアルが逆効果に? 問い合わせを減らさない製造業のサイト改革(MONOist)
・新規顧客が集まらない製造業のWebサイト、活用を阻む3つの壁(MONOist)
・技術PRのために最適なWeb戦略は何か、「アンゾフの成長マトリクス」の活用(MONOist)
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コロナ禍を機に、製造業の営業活動はさらに多様化しており、企業の立ち位置や目的によって様々な手法が用いられています。中でも中小製造業(サプライヤー)における営業活動には多くの課題があり、状況に応じて適切な営業手法を選択する必要があります。本記事では、中小製造業の営業活動について、新規開拓を中心にご紹介します。

コロナ禍を機に、製造業の営業活動はさらに多様化しており、企業の立ち位置や目的によってさまざまな手法が用いられています。中でも中小製造業(サプライヤー)における営業活動には多くの課題があり、状況に応じて適切な営業手法を選択する必要があります。本記事では、中小製造業の営業活動について、新規開拓を中心にご紹介します。

新規開拓手法の種類とおすすめ度

ここからは新規開拓を中心とした営業手法について、以下の9選をご紹介します。

新規開拓手法 効果 コスト 労力 おすすめ度
紹介営業 ★★★★☆
飛び込み営業 テレアポなど ★★☆☆☆
専門雑誌・新聞などへの広告宣伝 ★★☆☆☆
展示会・商談会 ★★★☆☆
オンライン展示会・商談会 ★★★☆☆
Web広告 ★★★★☆
HP活用 ★★★★★
SNSマーケティング ★★☆☆☆
メールマーケティング ★★★★☆

1:紹介営業 おすすめ度 ★★★★☆

紹介営業は製造業に限らず、どんな業種においても古くから行われてきた営業手法です。ある程度の関係構築があり、自社業務を理解してもらっている場合が多いため、受注から製造、納品にいたるまで非常に話が早いことがメリットです。一方で、紹介営業は長年にわたり各企業が行ってきた手法のため、昨今ではなかなか広がりを持つことが難しくなっています。また、業種に偏りが生じてしまうこともデメリットといえます。

2:飛び込み営業、テレアポなど おすすめ度 ★★☆☆☆

飛び込み営業やテレアポは、発注者側の話を直接聞くことができるため、タイミングさえ合えばスピード感を持った受注獲得が可能です。しかし、タイミングを捉えることは非常に難しく、人員や時間といった労力が相当かかるうえ、足元を見られたり冷遇されたりすることも多い手法です。

3:専門雑誌・新聞などへの広告宣伝 おすすめ度 ★★☆☆☆

広告宣伝はコストがそれなりにかかりますが、業種をある程度絞ることで、より明確なターゲット層へアプローチできます。また、専門雑誌や新聞といった媒体はユーザーからの信頼性も高く、無料で手に入るインターネット情報と比較しても発注にいたる可能性が高い手法です。

4:展示会出展 おすすめ度 ★★★☆☆

展示会出展は、飛び込み営業やテレアポと同様に、発注者の話が直接聞けるため、具体的な商談へと発展する可能性が高い手法です。また、自社が扱うテーマやカテゴリーに興味関心を持つ「見込み顧客」の情報を大量に収集できます。

しかし、出展にはそれなりにコストがかかるうえ、多くの人員・労力が必要になります。また、明確な効果測定をするのが難しいこともデメリットといえます。

5:オンライン展示会・商談会 ★★★☆☆

オンラインでの展示会や商談会は、コロナ禍を機に大きく需要を伸ばしています。通常の出展に比べて費用を抑えられることや顧客情報を収集できること、また距離や天候などの影響がないことなどさまざまなメリットがあります。

一方で、出展のためのサイト構築など手間と人員がかかるうえに、PR手法としてはまだ確立できていないため、その効果は不明瞭です。

6:Web広告 おすすめ度 ★★★★☆

Web広告は低コストで始められるうえに、短期間で成果を得やすいという特徴があります。また、ニーズのある企業にピンポイントで配信・リーチできることも大きなメリットです。しかし、長期間成果を挙げつづけるためには継続的な投資や、日々の改善が不可欠です。

7:HP活用(SEO対策など)おすすめ度 ★★★★★

HPを活用した営業は、ニーズのある企業を含め幅広い層に認知してもらえる他、施策が軌道に乗れば継続的なアクセス、問い合わせを獲得できるメリットがあります。また、SEO対策によるアクセスアップは広告と違い、蓄積されつづけるため、会社の財産となる点が非常に良いポイントです。他の媒体を見た後にHPを確認するなど、他の施策と組み合わせることで相乗効果が期待できます。

しかし、昨今ではコロナ禍の影響もありWebにおける競合も増加傾向にあるため、より適切な対策、運用ノウハウが求められます。

8:SNSマーケティング おすすめ度 ★★☆☆☆

SNSマーケティングとはその名のとおり、FacebookやTwitter(X)、InstagramなどのSNSを活用した営業活動のことです。

SNSマーケティングは情報の伝達、拡散が速いため、つながりのない人にも広く知ってもらうことができます。また、SNS自体は無料で始められるため、低コストでの運用が可能であり、導入に対するハードルが低いことも大きなメリットです。

一方で、業界的に口コミが広がりづらいことや、運用のための情報、人員を確保することが難しいこと、拡散による炎上リスクが伴うことなど、デメリットも存在します。

9:メールマーケティング おすすめ度 ★★★★☆

メールマーケティングとは、メールを活用したマーケティング活動のことです。メールマガジンと混同されがちなメールマーケティングですが、メールマガジンとは違い、顧客に対して商品、サービスの利用など明確な行動を起こさせることを目的としており、いわゆる「リードナーチャリング」要素がより強い手法です。

メールマーケティングは低コストで運用可能であり、継続的な顧客接点ができるため、認知度向上に非常に効果があります。また顧客ひとりひとりに合わせた情報配信を行うことで、特別感を演出したアプローチが可能です。しかし、継続して運用していくための情報、人員といったリソースが不足することも多く、顧客動向や情勢など、さまざまな変化に常に対応しつづけなくてはいけません。

HP活用を一番おすすめする理由

新規開拓で取り組むべき重要課題は、新規発注したいとユーザーが考えるタイミングを効率よくとらえることです。中小製造業の置かれている状況と製造業特有の問題を理解することで、その理由の説明ができます。ここでは顧客、競合、自社の3つ観点で説明します。

タイミングが重要視される業界特有の構造

顧客:下請け構造による問題

顧客との関係性で受託加工という性質上の問題が考えられます。

■立場上、足元を見られやすい
案件を獲得しようとこちらからアプローチをかけても、そもそもメーカー側ではすでに頼んでいる加工業者が存在します。切り替えにはリスクが伴うため、何かしらのメリットでもない限り、新たな加工業者に依頼することはありません。そのため「大幅に安くなるなら考えるよ」程度で終わってしまいやすい現状があります。

■発注のタイミングが捉えづらい
既存業者で加工不可、キャパオーバー、不具合が起こった場合など、新規の加工業者を探すタイミングがイレギュラーで発生します。そのタイミングは密な連絡をとっていない限り、外部から知ることはできません。そのため、付き合いのない会社がそのタイミングを知ることはハードルが非常に高いといえるでしょう。

■口コミ紹介で広がりづらい
すごく良いサービスを受けたり、良い製品を購入したりした際に、人は誰かに伝えたくなります。特に個人ではその性質が強いと言えます。しかし、ものづくりの業界では、「できれば自社の仕事を優先的に受けてもらいたい」という考えがあります。なぜなら設備的なキャパの限界があり、他の仕事を受けて、自社の仕事を受けてもらえなくなる恐れがあるためです。そのため、一般的な口コミ紹介は広がりにくく、大企業では同じ会社の他部署でさえ情報が共有されていないこともあります。

競合:技術の特性的な問題

■自社製品販売と比べ技術は伝えづらい
製品というものは、なにかしらの用途で利用するために設計されています。そのため、利用上のメリット・デメリット、価格など説明する内容を顧客の利用シーンに合わせて提案できます。一方で、技術は用途が限定されず、同じ案件というものはほとんど存在せず、図面ごと、数量、納期によって提供できる価格が異なります。そのため、顧客が求めるものを探りながら、それに合わせたメリットの提供・提案をする必要があります。

■他社技術との差別化がしづらい
加工業者の保有する設備は自社オリジナル加工機というものはほとんどなく、汎用性の高い工作機械を使って加工を行っています。そのため、保有する設備は最新式のもの、海外製のハイスペックマシンなどの特徴の機械はあるものの、ほとんど同じような加工機で多くの会社が競い合っています。また、使い方も、工具や治具、加工条件などにノウハウはあるものの、ユーザーに競争優位性を説明できるような数字で提示することは非常に難しいといえます。

自社:自社の保有するリソースの問題

■技術知識と営業スキルを兼ね備えた営業人材が少ない
欲を言うなら、やはり工場の経験を積んだ営業人材が欲しいところです。単なる御用聞きではなく、図面を理解したうえでの提案や、やり取りがスムーズになるためです。ただ、そのような人材を新たに雇うことは非常にハードルが高く、社内で工場から営業へ転属させても、営業の向き不向きの問題もあります。

■自社の保有する設備以上の案件は受けられない
どんなに良い案件があっても、自社の稼働が目いっぱいでは仕事を受けることはできません。需要があればあるだけ作ればよいというような製品販売側とは違った稼働力という制限があります。もちろん協力工場との連携でカバーする手段もありますが、協力工場との良好な関係作り、協力工場の稼働状況なども把握する必要があります。

■営業と工場とのコミュニケーションに障害が起きやすい
営業側が頑張って案件を獲得しても、工場側では稼働力の問題や、新しい案件への抵抗などから非協力的というケースはありがちなお話です。案件受注率のアップには、営業側と工場側の密な協力体制が必要となります。

以上のような状況の中で言えることは、「営業はできても、発注を考えるタイミングでなければ受注につなげることはできない」ということです。

そのため、「発注を考えるタイミングをどうすれば効率よくつかむことができるか」という課題がもっとも重要となります。

ユーザーが発注を考えるタイミングはいつか??

下記にメーカーの設計開発者に対してインタビュー形式の調査を行ったレポートがあります。

製造業の新規開拓
ユーザーの発注心理1製造業の新規開拓
ユーザーの発注心理2

既存の取引先に対し、対応不可の場合に新たに外注先を探すこと、また、探す手段としてWebを活用することがほとんどだったことが調査からもわかっています。そのため、受注側の中小製造業もWebを活用することが理にかなっているといえます。

資料は下記より無料ダウンロードできます。

大手メーカー開発設計者へのインタビュー調査「サプライヤーの探し方と選定基準」:https://marketing.techport.co.jp/archives/23889/
大手メーカー購買担当者へのインタビュー調査「サプライヤーの探し方と選定基準」:https://marketing.techport.co.jp/proposal-report/202404-2/

中小製造業がWebマーケティングと相性が良い3つの理由

中小製造業とWebマーケティングの相性が良い理由は他にもあります。

ユーザーの発注形態に合っている

新規加工依頼先を必要と感じた発注側から探してくるため、こちらからではわからなかった発注のタイミングがつかめます。

受注につながりやすい(立場上の問題を解決)

こちらからの提案ではコスト勝負になりやすいですが、先方からの相談はコスト以外の課題を抱えているケースもあり、提案次第で受注になりやすいです。(納期、品質、技術面など)

スモールスタートができる

やりかたにもよるが月数万程度の費用からでもスタート可能です。しかも、右肩上がりにアクセスを蓄積できるので、広告とは違い、取り組みを辞めてもアクセスがゼロになることはなく、会社の資産として効果は継続します。

新規開拓営業活動の必要性

この記事を見られている方には今さらですが、新規開拓がなぜ必要なのか、現状、仕事がいっぱいだから必要がないと思っている社員さんに説明できるようにその理由を紹介します。

営業活動の目的は、もちろん売上や利益を伸ばすことです。しかし、それは短期的な目的であり、あくまで数値化された目標といえます。会社としての目的はその先にあり、具体的には以下のようなものが挙げられます。

リスクの分散

取引がこの先も常に続く保証はないため、業界問わず取引先を増やしていく必要があります。業界ごとの波を緩和させる仕組みづくりが不可欠です。

仕事の波の低減

仕事の波を抑えるためには、繁忙期、閑散期に左右されず営業活動ができる仕組みづくりが必要です。特に、閑散期に営業をかけても受注のタイミングを逃してしまう場合が多く、協力企業と連携しキャパシティをコントロールすることが重要です。

利益率向上

顧客候補を増やすことで、自社として関係を持ちたい会社を選択できるようになります。その結果、不当なコスト協力を回避し、利益率の高い仕事を追求することが可能です。また前述同様に、協力企業をうまく活用することで、それぞれの得意分野で付加価値の高い仕事ができるため、利益率向上にもつながります。

あらたなビジネスのきっかけをつかむ

これまでやってきた事業が、形を変えずにこの先何十年も続いていくと思っている経営者はほとんどいません。また、いつか業務は平準化され、さらに自動化されるものも多いでしょう。積極的に新しい案件に取り組むことで、自社事業の可能性を常に模索し、新たな事業のきっかけをつくる取り組みが求められています。

いかがでしたか?Webマーケティングの取り組みで成果を上げている中小製造業はたくさんいます。

受託加工の性質上、技術だけで差別化をすることは非常に難しい業態です。一方でPRの仕方次第で仕事の流れは大きく変わります。自社の新規開拓の取り組みについて、ホームページを見直してみてはいかがでしょうか?

弊社では、お持ちのホームページの現状を理解するために、無料診断も行っております。こちらからお気軽にご相談ください。

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小林(井上) 正道
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幅広い加工知識と市場調査をもとに、製造業の新規顧客開拓の支援を行う。

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【専門領域】
製造業 × 企画コンサルティングスキル × Webスキル(SEO中心)

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