
調査レポート概要
調査実施者:テクノポート株式会社
調査概要:自動車製造業のEV普及に関する意識調査
調査方法:インターネット調査
調査期間:2023年9月27日~同年9月28日
有効回答:自動車部品の製造を行う企業の経営者・役員・経営企画103名
※構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100とはなりません。
調査結果

本調査レポートの結果から、自動車製造業におけるEV普及の進展が、売上や雇用の維持、さらには事業構造そのものに対して強い危機感をもたらしていることが明らかになりました。とくに、取引先からのEV対応要求が高まるなかで、多くの企業が現行事業の限界を見据え、新市場開拓や技術開発といった打開策を模索している様子が浮き彫りとなりました。
一方で、自社技術の転用可能性や、異業種への展開に関する情報不足、市場の見つけ方・接点づくりへの課題を抱える企業が多く、従来の「ものづくり」中心の経営から「市場志向型」への転換が求められていることもわかりました。また、売上や雇用の不安に対する対応力には、企業規模や経営資源の差も影響していると考えられ、資金調達や連携体制の構築など、多面的な支援が今後ますます重要になると推察されます。
Q1. EVの普及予測に関する認識

概要
- 回答者の84.4%(「非常にそう思う」38.8% +「ややそう思う」45.6%)が、「EVは今後さらに普及する」と考えている。
- 「あまりそう思わない」「全くそう思わない」は合わせて1.9%と少数。
考察
自動車部品メーカーの経営層は、EVの普及が「不可避」であるという強い共通認識を持っています。これは単なる予測ではなく、すでに業界が進み始めた道であり、EVシフトが事業環境に大きな影響を与えることを前提とした「戦略的準備の必要性」を物語っています。
- EV市場の成長を前提とした中長期計画(設備・人材・研究開発)を今のうちに立てる必要がある。
- 既存製品がEVに対応可能かを評価し、非対応なら新たな提供価値を創出することが急務
Q2. 取引先からのEV対応要求

概要
- 約8割(「非常にそう思う」26.2% +「ややそう思う」49.5%)の企業が、取引先からEV部品への対応を求められている。
考察
実際に8割近い企業がEV部品対応を要請されており、「取引先主導のイノベーション」によるサプライチェーン変革が進行中です。これは一部の先進企業の話ではなく、多くの企業にすでに“外圧”として訪れている実情です。
- 受け身ではなく、積極的にEV対応提案ができる体制づくりが競争優位を生む。
- 取引先の開発動向や中期方針を先読みし、自社技術のロードマップを調整すべき。
Q3. 売上維持への不安

概要
「非常に感じる」20.4% +「やや感じる」42.7%=63.1%が「EV普及によって10年後に売上維持が難しくなる」と不安を感じている。
考察
EVの進展が「ビジネスモデルの根幹(=売上構造)」を脅かすという不安が強く、多くの企業が現在の製品群では将来的に市場から取り残される可能性を感じています。これは“製品寿命の終わり”が見えているという状態でもあります。
- 自社の主力製品がEV時代に通用するかのポートフォリオ分析を行い、非対応領域には新製品・新技術を準備すべき。
- 顧客のKPI変化(CO2削減、安全性、軽量化等)を先取りし、それに沿ったソリューション提案が重要。
Q4. 雇用維持への不安

概要
「非常に感じる」16.5% +「やや感じる」41.7%=58.2%が、雇用の維持に不安を感じている。
考察
売上の変動だけでなく、それに伴う労働力の再構成・人材最適化の必要性が見えています。特に技能的な職種において、EV化により不要になる工程や技術が顕在化しつつあり、再教育やリスキリングが急務です。
- 技能継承から技術転換へのシフトが求められ、「作る力」だけでなく「開発・設計・解析する力」への強化が必要。
- 若手社員へのEV分野の専門教育や、職種変更の可能性を前提とした人材開発戦略が欠かせない。
Q5. 打開策としての取り組み

概要
※不安を感じている70名が対象
- 新市場開拓(58.6%)が最多
- 続いて「EV部品製造のための技術開発(50.0%)」「自社製品の開発(27.1%)」などが挙がる。
考察
最も多かった「新市場開拓」は、既存事業の限界を感じている証拠。注目すべきは、EV対応の“延長線”ではなく、まったく別の市場や事業を模索する声が増えていることです。つまり、EVに対応するだけでは不十分で、「脱・自動車部品」の動きも視野に入っているということです。
- 新市場開拓=他業界への参入。自社のコア技術を“再定義”して横展開する視点が必要。
- 市場ありきの発想(顧客視点)を導入し、自社技術との接点をマーケティング的に分析することが成果への鍵。
Q6. 自由回答での取り組み

概要
自由回答では以下のような取り組みが挙がっている
- 医療機器分野の拡充
- 新規事業の開拓
- 技術提案力の強化(例:防振システムなど)
考察
医療機器や防振システムなど、「ニッチだけど成長性が高い市場」に向けた転換が見えます。これは、すでに一部企業が自動車以外の成長分野へ具体的に動き出している証左です。つまり、多様化の初期段階にあり、今後さらに広がると考えられます。
- 専門技術を持つ企業は、用途の見直しにより競合が少ない市場を狙えるチャンスがある。
- 今後のキーワードは「技術の越境活用」。医療、ロボティクス、宇宙、エネルギーなどが候補。
Q7. 新市場開拓の課題

概要
※Q5で「新市場開拓」と回答した41名が対象
- 「自社技術がどの業界にニーズがあるかわからない」(51.2%)が最多
- 他にも「販売チャネルの確立」「人材不足」「初期費用の高さ」など
考察
「自社技術のニーズがどこにあるかわからない」という声が最多であり、これは“営業・マーケティング機能の弱さ”を浮き彫りにしています。ものづくり力はあっても、市場探索力(マーケット・インの発想)が不足しているのが根本課題。
- 技術マーケティングや市場調査、顧客インタビューなど、製造業にとって異質な手法の導入が求められる。
- Webマーケティングや展示会出展、顧客分析など、営業の高度化・データ活用が鍵となる。
Q8. 新規開拓を行う上での課題(わからない/答えられない以外の回答者)

概要
- 日本メーカーのEV化の出遅れ
- モノづくり手法の違い
- 資金不足
- 技術力向上の必要性
- 対象企業との商談獲得の難しさ
考察
資金、技術力、日本市場の遅れ、商談獲得の困難といった、構造的・外的な課題が複数出ています。これらは一社単独での解決が難しく、産業支援策や他企業との連携による対応が必要です。
- 補助金や業界支援策の積極活用、大学・研究機関との連携、異業種とのアライアンスなどが重要。
- 資金不足は、VC・CVCとの連携や業界団体による共同研究など“第三者との関係構築”で打開可能。
最後に
今回は自動車部品製造業を中心とした企業のEV対応に関する意識を調査した結果ですが、今後は対象とする業種や企業フェーズ(中小企業・大企業)、参入を目指す新市場の特性によっても、取るべき戦略やマーケティング施策が大きく異なってくることが予想されます。今後の事業展開や営業戦略を検討するうえでは、こうした企業ごとの認識や課題感の違いを丁寧に捉えることが肝要です。
本調査レポートが、製造業に携わる皆様のEVシフト対応や新規市場開拓に向けた戦略立案の一助となれば幸いです。