製造業の購買活動における生成AIの利用用途を職種別に深掘り

【執筆者紹介】徳山 正康

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この記事の執筆者
徳山 正康
テクノポート株式会社 代表取締役

製造業専門のデジタルマーケティング事業を手がけるテクノポートの代表を務める。「技術の“伝わらない”をマーケティングで解決する」を経営理念に、これまでに数名の町工場から東証プライム市場に上場しているメーカーまで、累計1,200社を超える製造業を支援し、数多くの企業の新市場開拓や技術の用途開発を実現。

グロービス経営大学院(MBA)卒業、(社)日本ファミリービジネスアドバイザー協会 フェロー、(社)Reboot 理事、(社)Glocal Solutions Japan 認定専門家

【寄稿実績】
間違いだらけの製造業デジタルマーケティング(MONOist)
精密板金企業が「Webでの引き合い」を売上につなげることができた、たった一つの理由(ビジネス+IT)
製造業のSEO対策を基礎から解説、「加工事例」が超重要なワケとは(ビジネス+IT)
製造業の「技術マーケティング」戦略、事例で読み解く自社技術の可能性を広げる方法(ビジネス+IT)
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テクノポートの徳山です。製造業においても生成AIの活用は急速に広がり、情報収集や課題整理のあり方に大きな変化が生まれています。本記事では、「製造業における情報収集・購買プロセスの生成AI利用実態調査」をもとに、購買活動の中で生成AIがどのように使われているのかを解説します。特に利用用途に焦点を当て、実務に即した活用方法を具体的に紹介していきます。

※本記事で紹介した調査レポートはこちらからダウンロードできます。

製造業の購買活動における生成AIの利用実態調査

本調査は、製造業従事者を対象としたアンケート調査および個別インタビューによって実施されており、日々の業務においてどのように情報収集が行われているのか、また生成AIが購買行動にどのような影響を与えているのかを明らかにしたものです。

調査では、技術課題の解決や製品・サプライヤーの探索といった実務における情報収集の実態に加え、生成AIの利用頻度や活用用途、さらにはAIを起点とした購買行動の変化についても多角的に分析しています。特に、従来の検索エンジン中心の情報収集から、「まずはAIに聞く」という行動へのシフトや、AIによる一次情報収集と人による精査を組み合わせた意思決定プロセスの変化は、今後の製造業のマーケティングや営業活動を考える上で重要な示唆を含んでいます。

調査レポート:製造業の購買活動における生成AI活用の実態調査【2026年版】

       
  • 製造業従事者317名へのアンケートと6名への個別インタビューを実施
  • 製造業の購買プロセスに浸透し始めた生成AIの活用実態と、AI時代に企業が取るべき対策とは

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資料イメージ

本調査の中でも印象的だったのが、「購買活動における生成AIの利用用途」です。生成AIは単なる検索の代替ではなく、課題の整理や解決策の検討といった購買プロセスの上流に深く入り込み、意思決定の前段階を支援する存在へと変化しています。一方で、最終的な比較検討や導入判断といったフェーズでは、依然として企業のWebサイトや検索エンジンを活用した情報収集が重要な役割を担っていることも明らかになりました。

本記事では、こうした調査結果の中でも特に重要な「生成AIの利用用途」に焦点を当て、具体的にどのような場面で使われているのか、ユーザーは何を求めているのかを深掘りして解説していきます。

製造業は購買活動の中で生成AIをどのような用途で活用しているのか

以下のアンケート結果(購買活動における生成AIの利用用途)は、製造業における一般的な購買プロセスを複数のフェーズに分解し、それぞれの段階で生成AIがどのような用途で活用されているのかを把握するために設計されたものです。各フェーズに対応する具体的な利用用途を選択肢として設定し、アンケート形式(複数回答可)で回答を収集しています。

購買活動における生成AIの利用用途(n=317)

生成AIの活用用途を見ていくと、利用シーンには明確な傾向が見られます。

まず上位には、
「技術課題の整理・仮説出し(53.9%)」
「解決策の検討(50.2%)」
「基礎理解(47.3%)」
「事例・ベストプラクティス調査(42.3%)」
といった項目が並びます。

これらはいずれも、購買活動における初期段階、いわゆる「情報収集・検討の前半」に該当する内容です。この結果から、生成AIは主に購買プロセスの上流、つまり課題の整理や方向性検討といったフェーズで活用されていることが分かります。

一方で、
「サプライヤー探索(27.1%)」
「比較検討(26.5%)」
「導入事例(15.8%)」
といった項目は相対的に低い数値となっています。

これらは「意思決定・購買フェーズ」に該当する領域ですが、この段階では導入判断や比較検討といった意思決定が伴うため、情報の正確性・信頼性・最新性がより強く求められます。生成AIは思考整理や選択肢の提示には優れる一方で、最終判断に必要な詳細仕様や一次情報の確認には限界があります。そのため、ユーザーは最終的に企業のWebサイトや公式情報へアクセスし、自ら確認する行動を取っていると考えられます。

このような変化を踏まえると、これまで製造業がコンテンツマーケティングで行ってきた基礎的な技術解説や、技術課題・解決策に関する情報は、生成AIの回答によって代替される可能性があります。結果として、ユーザーが企業のWebサイトに訪問する機会が減少するリスクも無視できません。

今後、Webサイトへの訪問を促すためには、単なる一般情報ではなく、独自性の高い一次情報の掲載がより重要になります。具体的には、自社ならではの技術データ、事例、ノウハウなど、生成AIでは容易に再現できない情報の充実が求められます。

また、「意思決定・購買フェーズ」においては、引き続き検索エンジンを起点とした行動が主流であり続ける可能性が高いと考えられます。生成AIの活用が広がったとしても、最終的な目的である問い合わせや資料ダウンロードを達成するために、企業のWebサイトへ訪問する流れ自体は大きく変わらないでしょう。

だからこそ、ユーザーのより具体的でニッチな検索ニーズに対応できるよう、技術情報や製品情報のコンテンツを一層充実させていくことが重要です。検索とAI、それぞれの役割を踏まえた情報設計が、これからの製造業のマーケティングにおいて鍵となるでしょう。

職種別の利用用途の違い

先ほどのデータを職種別に分けて集計したところ、使われ方が職種によって大きく異なることが分かりました。当データからは、「どの業務で、どのようにAIが価値を発揮しているのか」がより具体的に見えてきます。

製品開発

まず製品開発においては、全体的に活用度合いが高いのが特徴です。特に「基礎理解」「課題整理」「解決策の検討」といった上流工程での利用が目立ち、設計やアイデア創出のスピードと質を高める役割を担っています。一方で、導入判断やROI検討といった意思決定領域での活用はまだ限定的であり、あくまで検討材料を広げるためのツールとして位置づけられているといえるでしょう。

研究開発

研究開発に目を向けると、「課題整理」や「関連情報の調査」など、探索・整理用途での活用が中心となっています。研究領域は新規性や専門性が高く、アウトプットの信頼性や独自性が強く求められるため、生成AIはあくまで補助的な情報収集ツールとして使われる傾向が見られます。解決策の決定や重要な判断に直接使われるケースはまだ少ないものの、思考の効率化という観点では確実に価値を発揮しています。

生産技術

生産技術では、「事例・ベストプラクティスの調査」において特に活用が進んでいます。類似課題の解決事例を収集し、現場改善に応用する使い方が中心であり、生成AIはナレッジ検索ツールとして高い価値を持っています。ゼロから考えるのではなく、既存の成功事例をベースに改善を進めるという文化と非常に相性が良く、横展開や標準化の効率化に寄与している点が特徴的です。

生産管理

生産管理では、「解決策の検討」における活用が比較的高く、業務上の意思決定を支援するツールとして使われています。需要や制約条件を踏まえた調整や改善案の検討など、具体的なアクションを導く場面で役立っていると考えられます。ただし、導入判断やROI評価といった経営に近い意思決定にはほとんど活用されておらず、あくまで現場レベルの意思決定支援にとどまっているのが現状です。

品質管理

品質管理は、今回の中でも特に「判断支援」に近い使い方が進んでいる領域です。原因分析から対策立案までの一連のプロセスで活用が進んでおり、不良対応や改善活動のスピード向上に寄与していると思われます。ロジカルな整理や網羅的な検討が求められる業務特性と生成AIの相性が良く、AIの提案をもとに意思決定を行う場面も増えつつあります。ただし、最終判断は依然として人が担っており、AIはあくまで補助的な役割にとどまっているようです。

製造

最後に製造現場では、基礎理解や課題整理など幅広い用途で活用されているものの、その使い方は比較的浅く、「調べる」「確認する」といったレベルにとどまっています。日常業務の補助としての利用が中心であり、意思決定や改善提案への活用はまだ限定的です。個人単位での利用が多く、業務プロセスへの組み込みや活用の標準化が今後の課題といえるでしょう。

生成AIは職種ごとに役割を変えながら浸透していることが分かります。共通して言えるのは、どの領域においても「最終的な意思決定を代替するもの」ではなく、「思考や検討を加速させるツール」として活用されている点です。今後は、こうした各職種ごとの使われ方を踏まえたうえで、業務プロセスへの組み込みや活用方法の最適化を進めていくことが、生成AIの価値を最大化する鍵になるでしょう。

代表的な7つの利用用途を深掘り解説

これまでのデータでご紹介した7つの代表的な利用用途について、実際の現場ではどのようなシチュエーションで活用され、ユーザーが何を求めているのか、さらに各用途でどのようなプロンプトが使われているのかを具体的にご紹介します。

技術・製品の基礎理解(用語・仕組み・メリットデメリット)

新しい技術や製品に関わる際、まず必要になるのは全体像の把握です。短時間で用語や仕組みを理解し、メリット・デメリットや適用範囲を整理したいという場面で活用されます。従来であれば複数の資料やサイトを横断的に確認する必要がありましたが、生成AIを使うことで一度に整理された形で理解を深めることが可能になります。

■ 製品開発のプロンプト例

「溶射プロセスの原理を、皮膜形成メカニズムと密着強度の観点で分かりやすく説明して」
「電動機の回路特性について、トルク・効率との関係を図解イメージで説明して」

■ 研究開発のプロンプト例

「半導体のpn接合の原理と、実際のデバイス特性への影響を専門レベルで解説して」
「磁性材料の種類ごとの特性と用途の違いを整理して」

■ 製造現場のプロンプト例

「プレス加工の基本工程と、各工程での不良が発生しやすいポイントを教えて」
「不織布の製造方法を工程ごとに簡潔にまとめて」

技術課題の整理・原因仮説の洗い出し(トラブルシュート含む)

不具合や品質問題が発生した際に、「何が原因なのか分からない」という状況は珍しくありません。このような場面では、考えられる原因を網羅的に洗い出し、検証の方向性を整理する用途で活用されます。生成AIは、人では見落としがちな観点も含めて広く仮説を提示できるため、初期の切り分けを効率化します。

■ 品質管理のプロンプト例

「射出成形で寸法ばらつきが大きい場合に考えられる原因を、設備・材料・条件ごとに整理して」
「表面に錆が発生する要因を、空気滞留・湿度・材料特性の観点で洗い出して」

■ 生産技術のプロンプト例

「ワーク冷却が不十分な場合に起きる不具合と、その原因を工程ごとに整理して」
「プレス加工でバリが増えた原因として考えられる要因を網羅的に挙げて」

■ 製造のプロンプト例

「この現象(モーター異音・発熱)の原因として考えられる項目を優先度付きで整理して」

課題解決策の検討(代替案、設計案、改善案の提案)

原因の見当がついた後は、具体的な解決策の検討に移ります。このフェーズでは、複数の代替案を提示させ、メリット・デメリットや実現性を比較する使い方が中心です。特に「一つの正解」ではなく「複数の選択肢」を得られる点が生成AIの強みです。

■ 製品開発のプロンプト例

「この機構で耐久性を向上させるための設計改善案を3案出して、メリットデメリットを比較して」
「材料AとBの組み合わせで強度と軽量化を両立する案を提案して」

■ 品質管理のプロンプト例

「射出成形のばらつきを抑えるための具体的な対策を、工程条件・金型・材料ごとに提案して」
「錆対策として有効な表面処理方法を複数挙げて比較して」

■ 生産管理のプロンプト例

「この工程のボトルネックを改善するための施策を複数案出して、効果と実現性で評価して」

類似課題の解決事例・ベストプラクティスの調査

ゼロから考えるのではなく、過去の成功事例を参考にしたい場面でも生成AIは有効です。業界のベストプラクティスや一般的な対応方法を把握することで、効率的に改善の方向性を定めることができます。特に生産技術や品質管理など、再現性の高い領域と相性が良い用途です。

■ 生産技術のプロンプト例

「プレス加工の精度向上に関する一般的な改善事例を複数教えて」
「射出成形で寸法安定性を高めた事例と、その具体的な対策を整理して」

■ 品質管理のプロンプト例

「表面処理の耐候性向上に関する業界のベストプラクティスを教えて」

■ 製造のプロンプト例

「モーター組立工程で不良率を下げた事例を教えて」

サプライヤー/外注先/代替部材・製品の探索

新たな調達先や代替材料を探す場面でも生成AIは活用されています。条件をまとめて入力することで、複数の候補とその特徴を一覧で把握することができます。従来の検索では拾いきれなかった企業や製品に出会える点も特徴です。

■ 生産技術 / 調達のプロンプト例

「東京近郊で精密プレス加工が可能な企業を10社リストアップし、得意分野と特徴を整理して」
「海外のゴムメーカーで、自動車用途に強い企業を複数挙げて比較して」

■ 設計のプロンプト例

「この用途に適した産業用バルブメーカーと製品の特徴を教えて」

■ 製造のプロンプト例

「レーザー加工機を短期レンタルできるサービスを地域別に教えて」

導入候補の比較検討(性能・コスト・納期・リスク・互換性)

複数の設備や材料から選定する際には、比較整理が欠かせません。生成AIを使うことで、評価軸を揃えた比較が短時間で可能になります。ただし、この段階では最終判断のために企業のWebサイトや仕様書の確認が不可欠であり、AIはあくまで整理・比較の補助的な役割となります。

■ 生産技術のプロンプト例

「A社とB社のレーザー加工機を、加工精度・コスト・メンテ性で比較して」
「ハンドプレスとエアシリンダ方式の仕様を比較し、この用途で使用可能か評価して」

■ 製品開発のプロンプト例

「材料AとBの物性(強度・耐熱・耐候性)を比較して、用途ごとに適した選択を提案して」

■ 生産管理のプロンプト例

「産業PCのレンタル会社をコスト・納期・サポート体制で比較して」

導入・適用の事例調査(導入プロセス、ROI、失敗要因)

設備導入や工程変更の意思決定においては、投資効果やリスクの把握が重要になります。この用途では、成功事例だけでなく失敗事例も含めた情報収集に生成AIが活用されます。ただし、最終的な意思決定にはより詳細な一次情報が必要となるため、活用は限定的です。

■ 生産管理のプロンプト例

「産業設備導入のROIの算出方法を、具体的な数値例付きで説明して」
「生産ライン自動化の導入事例と、投資回収期間の目安を教えて」

■ 生産技術のプロンプト例

「レーザー加工機導入の成功事例と失敗事例を比較し、注意点を整理して」

■ 品質管理のプロンプト例

「表面処理工程の変更による品質改善事例と、導入時のリスクを教えて」

これら7つの用途を俯瞰すると、生成AIは単なる検索ツールではなく、「理解・整理・検討」といった思考プロセス全体を支援する存在として活用されていることが分かります。一方で、最終的な意思決定や導入判断といった領域では、人による確認や一次情報の重要性は依然として高く、AIはあくまで補助的な役割にとどまっています。

今後は、こうした用途ごとの特性を踏まえながら、どの場面でAIを活用し、どこで人が判断するのかを整理していくことが、実務における活用をさらに進める鍵になるでしょう。

◇◇◇

生成AIは、製造業の購買プロセスにおいて、課題整理や解決策検討といった上流工程を中心に活用が進んでいます。一方で、最終的な意思決定や導入判断は依然として人とWebサイトが担っており、AIは思考を支援する役割にとどまっています。

今後は、AIと検索の役割を踏まえた情報設計とコンテンツ戦略が重要になります。製造業のAI検索対策ならテクノポートへご相談ください。

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徳山 正康
テクノポート株式会社 代表取締役

製造業専門のデジタルマーケティング事業を手がけるテクノポートの代表を務める。「技術の“伝わらない”をマーケティングで解決する」を経営理念に、これまでに数名の町工場から東証プライム市場に上場しているメーカーまで、累計1,200社を超える製造業を支援し、数多くの企業の新市場開拓や技術の用途開発を実現。

グロービス経営大学院(MBA)卒業、(社)日本ファミリービジネスアドバイザー協会 フェロー、(社)Reboot 理事、(社)Glocal Solutions Japan 認定専門家

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