【2022年版】フィリピンの製造業(主要産業・進出している日本企業)

【執筆者紹介】稲垣 達也
この記事の執筆者
稲垣 達也
【経歴】
テクノポート株式会社「海外Webマーケティング」サービスの責任者
名古屋工業大学大学院 電気機械工学専攻 博士前期課程卒業
同大学 機械工学科卒業

【保有資格】
TOEIC L&R:990/990、英検一級:合格、TOEFL iBT:108/120
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テクノポート株式会社の稲垣です。
BtoB企業向けの「海外向けWebマーケティング」サービスの責任者を務めています。

前回の記事では製造業のGDPの60%以上を縫製業が占める「カンボジアの製造業」について紹介しました。今回は日本と同じアジアの島国である南国のフィリピンの製造業について紹介します。

フィリピンの人口は2014年に1億人を突破し2023年には日本の人口を上回る予想です。また、アジア2位の経済成長率と豊富な若者人口で注目を集めるフィリピンの製造業を日本企業目線から掘り下げていきます。

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基本情報

  • 正式名称:フィリピン共和国(Republic of the Philippines)
  • 首都:メトロ・マニラ(Metro Manila)
  • 大統領:ロドリゴ・ドゥテルテ(2016年6月から)
  • 通貨:ペソ(Peso)(1ペソ=2.24円 ※2022年2月3日時点)
  • 人口:約1億98万人
  • 面積:30万km2(参考:日本の面積38万km2)
  • 公用語:フィリピン語、英語
  • 宗教:カトリック(82.9%)その他キリスト教(9.6%)イスラム教(5%)その他(2.5%)
  • 平均寿命:男 65.9歳、女 73.1歳(日本:男 81.2歳、女 87.3歳)

経済の特徴

強み

  1. 若年者人口:1億人を超える人口の約50%を25歳以下が占める
  2. 出稼ぎ労働者:海外の出稼ぎ労働者からの仕送りがGDPの約10%を占める
  3. 貧困層の減少:フィリピン政府は0~14歳の健康と教育に投資することで極度の貧困の根絶を目指している
  4. 英語:人口の多くが英語を話せるため、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)分野でアジアのリーダー的な立ち位置

弱み

  1. インフラ未整備:交通渋滞の蔓延やスラム街など、インフラ未整備の地域が多い
  2. 所得格差:富裕層が全体の約1%であるのに対し、貧困層が全体の約60%を占める
  3. マネーロンダリング:銀行やカジノによる資金洗浄(マネーロンダリング)が横行

産業構造

フィリピンの産業構造を調べます。下の図は2018年におけるフィリピンのGDPにおけるサービス業、製造業、農業の割合を示したグラフです。


データ引用元:ASEAN Key Figures 2019

グラフから以下のことが読み取れます。

  • 製造業の割合は34.1%でASEAN諸国の平均36.6%をわずかに下回る
  • GDPに占めるサービス業の割合は57.8%でASEAN諸国の中で3番目に大きい

現状

  • サービス産業が増加傾向で製造業は緩やかに増加傾向
  • 農業はGDP全体の8%だが、労働力の約30%が農業に従事している
  • 1980年から2017年までの経済成長率は3.7%と緩やかだが、2012年から2017年の経済成長は6.1%と急速な成長を記録

今後

  • フィリピン政府は製造業とサービス業に投資をシフトしており、農業は衰退傾向
  • ドゥテルテ大統領は2014年から2033年の20年間で年平均4.8%のGDPの成長を目指すと宣言

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製造業

次にフィリピンの製造業全体について調べます。下の図は2019年におけるフィリピン製造業GDPにおける各セクターの割合を示したグラフです。


データ引用元:NATIONAL ACCOUNTS OF PHILIPPINES

グラフから以下のようなことが読み取れます。

  • 食品製造業が製造業全体の47.8%を占め、ここ数年増加傾向が続く
  • 化学および化学関連製品の割合はGDP全体の11.2%と2番目に大きい
  • ラジオ、テレビ、通信機器および家電分野は10.3%で3番目に大きい

現状

  • 製造業はGDP全体の34%を占めるが、従事している労働力は全体の16%で労働賃金も低い
  • 鉱業、鉱物処理産業、医薬品、造船、電子部品・半導体産業は近年政府が力を入れている

今後

  • 短期的な目標として、1. 優位性のある産業の保護、2. 新興企業の強化、3. 現存企業の強化を挙げている
  • 中期的な目標として、1. 高付加価値産業へのシフト、2. 業績が上向いている分野への投資、3. 製造業を農業、サービス業と融合、4. イノベーション産業の推進を挙げている
  • 長期的な目標として、1. 世界的な競争力の強化、2. 革新的な製造技術の強化を挙げている

日本企業の進出状況

ここからは日本企業の視点からフィリピンの製造業市場を調査した結果です。下の図は2008年から2017年までのフィリピンに進出した日本企業数(拠点数)の遷移を示したグラフです。


データ引用元:海外在留邦人数調査統計|外務省

グラフから以下のようなことが読み取れます。

  • 統計を開始した2008年から2017年の間に日系企業数は1.76倍に増加
  • 2017年におけるフィリピンの進出日系企業数は1502で8位

現状

  • 進出日系企業は経営上の問題点として原材料・部品調達の難しさ、調達コストの上昇、従業員の賃金上昇、品質管理の難しさ、税務の負担などを挙げている。(出典:ジェトロ『2018年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査』2018年12月)
  • 2020年2月のフィリピンの※製造業購買担当指数(PMI)は、新型コロナウイルスの影響を受けながらも0.2ポイントの増加を記録しASEAN首位

製造業購買担当指数(PMI)とは?
製造業の購買責任者を対象に、生産高や新規受注、在庫レベル、雇用状況、価格などの指数に一定のウエイトを掛けて算出する指数。0から100の間で変動し、50.0は「前月から横ばい」、50.0を超えると「前月比で改善や増加」を意味して景気拡大を示し、50.0未満は「前月比で悪化や減少」として景気減速を表す。

今後

  • 2023年のフィリピンの人口は1億2300万人と日本を追い抜くと予想されており、ASEANの経済大国としての地位を確立する見込み
  • 首都マニラでの月額法定最低賃金の上昇率は2019年で4.9%と上昇傾向だが、他のASEAN諸国(インドネシア:8.0%、マレーシア:10%、ベトナム:5.0%)と比較すると上昇率は小さい

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フィリピンに進出した日本製造業企業

次に実際にフィリピンに進出した日本企業3社を紹介します。

株式会社ティアンドエス

▶基本情報

  • 本社:埼玉県草加氏
  • 従業員数:64名
  • 事業内容:レーザ加工・曲げ加工・溶接加工・組立加工、その他板金加工全般

▶概要

2004年にフィリピンマカティシティに現地法人を設立。フィリピン国内および、アジア域内に進出済みの日系企業への部品の供給元としてレーザー加工、切削加工を行う。日本本社でトレーニングを受けたスタッフが様々な加工依頼に24時間体制で対応。

群馬合金株式会社

▶基本情報

  • 本社:群馬県伊勢崎市
  • 従業員数:99名
  • 事業内容:非鉄金属ダイカスト製造業

▶概要

1996年にフィリピン現地法人を設立。創業以来、自動車部品などに使用される軽量でリサイクル性に優れるアルミニウムダイカストのパイオニアとして事業を展開。フィリピン法人ではダイカストから切削加工まで一貫生産を手掛ける。現地では国内同様の生産体制を整え、現地日本企業の海外工場への供給基地として需要に応えている。

伊藤製作所

▶基本情報

  • 本社:三重県四日市市
  • 従業員数:120名
  • 事業内容:順送り金型設計製作、プレス部品加工、部品組立

▶概要

1995年に設立した合弁会社を2003年に100%独資にし現地法人を設立。輸出加工区である工業団地に拠点を設け、現地日本企業を対象とした高度な順送り金型の制作とプレス部品加工を行っている。英語力に優れた現地スタッフの教育と日本からの設備投資により生産体制を確立。

まとめ

今回はフィリピンの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。個人的には、豊富な若年層の労働人口と安価な労働賃金が企業の関心を集めている要因であると再認識しました。ただ、フィリピン国内ではインフラ未整備地域も多く、所得格差による貧困層と富裕層の壁が依然として残っていると感じました。

進出する日本企業の目線に立って考えると、今回紹介した3社のように現地のスタッフを雇い、日本企業の向けの部品加工や製品の供給をメイン事業にしていくスタイルが一般的だと思いました。今回の内容がフィリピン進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

弊社(テクノポート株式会社)では、BtoB企業向けに「海外向けWebマーケティング」を支援しています。
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名古屋工業大学大学院 電気機械工学専攻 博士前期課程卒業
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