【2022年版】カンボジアの製造業(主要産業・進出している日本企業)

【執筆者紹介】稲垣 達也
この記事の執筆者
稲垣 達也
【経歴】
テクノポート株式会社「海外Webマーケティング」サービスの責任者
名古屋工業大学大学院 電気機械工学専攻 博士前期課程卒業
同大学 機械工学科卒業

【保有資格】
TOEIC L&R:990/990、英検一級:合格、TOEFL iBT:108/120
稲垣 達也 が執筆した他の記事をみる

テクノポート株式会社の稲垣です。
BtoB企業向けの「海外向けWebマーケティング」サービスの責任者を務めています。

前回の記事では東南アジア最後のフロンティアとして日本企業の注目を集める「ミャンマーの製造業」について紹介しました。今回はそのミャンマーと同じく縫製業が盛んで、2020年のGDP成長率がASEAN最上位と予想されるカンボジアの製造業ついて紹介します。

カンボジアの製造業の最大の特徴は何といっても縫製業(繊維・衣類・履物)です。調査によると製造業のGDP全体の60%以上を縫製業が占めています。今回はカンボジアの製造業を、実際に同国に事業展開を果たした日本企業の紹介を交えて、日本企業の視点から調査しました。

global marketing

基本情報

  • 正式名称:カンボジア王国(Kingdom of Cambodia)
  • 首都:プノンペン(Phnom Penh)
  • 首相:フン・セン(1998年11月から)
  • 通貨:リエル(Riel)(1リエル=0.028円 ※2022年2月3日時点)
  • 人口:約1630万人
  • 面積:18万km2(参考:日本の面積38万km2)
  • 公用語:クメール語(カンボジア語)
  • 宗教:仏教(96.4%)イスラム教(2.1%)キリスト教(1.3%)その他(0.3%)
  • 平均寿命:男 62.4歳、女 67.5歳(日本:男 81.2歳、女 87.3歳)

経済の特徴

強み

  1. 縫製業:製造業全体の約60%を占める
  2. 炭化水素鉱床:カンボジア領海内に石油・天然ガスを所有(現在調査段階)
  3. 観光業:GDPの約16%を占め、年成長率7%で増加傾向
  4. 若年層人口:国民の50%以上が22歳以下

弱み

  1. インフラ整備不足:電気設備、交通ネットワーク基盤の未整備
  2. 熟練技術者不足:職業訓練不足、高い給与を求める転職などが原因
  3. 貧困:都市部と農村部での格差拡大、人口の35%は1日1ドル以下での生活

産業構造

カンボジアの産業構造を調査します。下の図は2017年のカンボジアのGDPにおけるサービス業(政府の活動、通信、輸送、財政、民間サービス業)、工業(鉱業、製造業、エネルギー産業、建設業)、農業(農業、 漁業、林業)における各部門の割合をしめしたグラフです。


データ引用元:Cambodia GDP – composition by sector | index mundi

グラフから以下のようなことが読み取れます。

  • 産業(鉱業、製造業、エネルギー産業、建築業)の割合は32.8%で近年増加傾向
  • 農業の割合が25.3%でASEANの中ではミャンマーに次いで大きい

現状

  • 1998年から2018年までGDPの年成長率約8%の増加を続け、急速に成長している
  • 主要産業として、縫製、軽工業、食料加工、不動産建設、観光業が成長を支えており、産業の多様化が課題

今後

  • 2020年現在、低所得国に分類されているが政府は2030年までに中所得国、2050年までに高所得国を目指している
  • インフラ不足や貧困問題による競争力不足に対処するために、IT産業に投資をシフトする見通し

製造業

次に、カンボジアの製造業全体についてです。下の図は2018年のカンボジアの輸出品目の付加価値額を示したグラフです。


出典:IS CAMBODIA POISED TO BECOME A MAJOR MANUFACTURING HUB? | intouch

現状

  • 2018年のカンボジアの労働人口割合は84.3%でASEAN諸国で最も高く、製造業従事者の割合は20%(サービス関連業48.2%、農業54.9%)
  • 製造業におけるテクノロジー導入が遅れており、生産効率の低さが原因で世界的な競争力は低い

今後

  • アジア開発銀行によると、縫製業の規模は緩やかに縮小し、新興産業として電子部品、自動車部品、自転車、精米、ゴムなどの規模が増加する見通し
  • カンボジア政府は税制優遇など、外資系の投資を積極的に受け入れており縫製業工場のほとんどは外資系企業(台湾28%、中国本土19%、香港17%、韓国13%)

日本企業の進出状況

ここからは、日本企業の視点からカンボジア製造業市場を調査した結果です。下の図は1992年から2018年までのカンボジア日本人商工会登録企業数の遷移を示したグラフです。カンボジア日本人商工会(JBAC)とは、日本とカンボジア両国の商工業および経済全般の発展に寄与することで社会貢献を果たすことを目的に設立された組織です。


出典:カンボジア日本人商工会議所2018

グラフから以下のような特徴が挙げられます。

  • 2018年の会員数は過去最多の261社, 3団体で発足当初の10社から20倍以上に成長
  • 製造業部会の会員数は64社・団体でJBACの7つの業種別部会(製造業、建築不動産、貿易、運輸、金融保険、商業、サービス)の中で最多

現状

  • カンボジア商工業会議所に登録されている日系企業の数も2010年から5年余りの間に10倍以上に増加
  • JETROの調査によると、カンボジアに興味を示す日本企業のパターンは2つあり、1つは新規市場開拓や生産拠点としての検討、2つ目は既にタイ、ベトナム、ミャンマーなどに進出済み企業の2次投資

今後

  • カンボジア政府は2025年までの産業開発政策で高度な産業を誘致し、産業構造の転換を図っている
  • 近年は労働賃金の上昇により採算が合わなくなり、同国から撤退する企業も目立つ(2017年時点で20社)

global marketing

カンボジアに進出した日本製造業企業

次に、実際にカンボジアに進出した日本企業を3社紹介します。

マサカツ鋼材

▶基本情報

  • 本社:大阪府枚方市
  • 従業員数:50名
  • 事業内容:鋼材販売、鋼材加工

▶概要

カンボジアの首都プノンペンにて2017年6月からカンボジア向上を本格稼働。すでにベトナムで実績を上げている鋼材加工をカンボジアでも開始。日本の高い加工技術によって付加価値を高め、競争力を上げるという日本企業の強みを活かした方法で事業を展開。材料の仕入れから製品までの仕事をすべて受けることで競合他社との差別化を実現。

株式会社 スワニー

▶基本情報

  • 本社:香川県東かがわ市
  • 従業員数:104名
  • 事業内容:手袋・鞄の製造販売

▶概要

2012年にカンボジアの経済特区にてカジュアル手袋を生産する新工場を建設。進出の主な理由に、カンボジアは縫製業が盛んであるため、安価な労働力の確保が容易であることを挙げている。加えて近年、中国国内の人件費の高騰が進み人材確保が厳しくなってきたため分散生産を可能にするという狙いもある。

日光金属株式会社

▶基本情報

  • 本社:栃木県矢板市
  • 従業員数:110名
  • 事業内容:自動車用耐熱・耐摩耗鋳造部品製造

▶概要

2013年5月に同社初の海外生産拠点としてカンボジアの首都プノンペンに工場を設立。主な目的は自動車メーカーの海外生産拡大への対応。カンボジアに進出を決めた理由は人件費の安さ首都の発展度合い、まじめで親日的なカンボジア国民の国民性などを挙げている。また、工業団地内は日系企業が多く情報交換ができる過ごしやすい環境が整備されていることなども理由の一つ。

まとめ

今回はカンボジアの製造業と産業構造を日本企業の視点から調査しました。個人的な見解としては、カンボジアでは縫製業をはじめとする労働集約型産業に頼っており、テクノロジーの導入による生産効率の向上には時間がかかると思われます。加えて、熟練技術者の不足が製造業の成長を鈍化させている原因の一つとして考えられます。

日本企業の視点から考えると、近年カンボジアの労働賃金水準は増加傾向にあり、労働賃金のみ削減を目的としたカンボジア進出は以前ほど魅力的ではなくなってきています。しかし、今回紹介した3社の様に明確な戦略と自社独自の強みを持った企業にとっては魅力的な市場であることに変わりわないと言えます。今回の内容がカンボジア進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

弊社(テクノポート株式会社)では、BtoB企業向けに「海外向けWebマーケティング」を支援しています。
壁打ち相談会(30分)」にてお客様の課題に合わせて、適切な施策をご提案をいたします。ぜひお気軽にお問合せください。

【2024年最新】調査レポートのご案内
BtoB企業の
海外向けマーケティングに関する
実態調査
資料イメージ

【調査期間】 2024年1月22日〜1月23日
レポートの詳細はこちら


この記事の執筆者
稲垣 達也
【経歴】
テクノポート株式会社「海外Webマーケティング」サービスの責任者
名古屋工業大学大学院 電気機械工学専攻 博士前期課程卒業
同大学 機械工学科卒業

【保有資格】
TOEIC L&R:990/990、英検一級:合格、TOEFL iBT:108/120
稲垣 達也 が執筆した他の記事をみる

関連記事