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中小製造業の新規事業立ち上げ
中小製造業が持続的に成長するためには、既存事業だけに依存しない収益源を確立し、景気や需要変動の影響を受けにくい体制を整えることが重要となります。そこで有効的な手段の一つとして考えられるのが製造業の「サービス化(サービタイゼーション)」です。今までの自社の技術・製品やノウハウは生かしたまま提供体系を変えたり、自社の上流・下流工程も巻き込んだトータルサービスとしての提案をしたりと、従来の「加工品・製品提供」という枠組みを超えて事業を広げる切り口がいくつか考えられます。当記事では製造業におけるサービス化事例と、Webを活用した拡販手法を紹介します。
製造業におけるサービス化事例(手法別)
料金体系の変更
サービスの軸となる技術や製品はそのまま、一部付加価値を加えて料金体系を変えることでサービス化するケースです。サブスクリプション型(定額課金)⇄ 従量課金型 の変更がよくある例の一つです。
成形メーカー:金型メンテナンスのサブスク
■ 共栄プラテクス株式会社
金型設計・製造・メンテナンスから射出成形まで一貫対応できる同社では、サブスクリプション型(定額制)の金型メンテナンスサービスを提供。無料で1年1回、金型をオーバーホールしてもらえるなどのサービスのほか、配送コスト低減や量産成形の代行などの特典も用意されており、導入顧客からも高い評価の声が寄せられています。
レーザー加工機メーカー:部品単位での課金モデル
■ TRUMPF(トルンプ)
レーザー加工機メーカーである同社は、高額設備を導入したものの稼働率が伸びず悩むユーザーに対し、加工完了した部品単位で従量課金するモデルを提供。設備投資無しに最新鋭マシンを使えるため、小ロット・多品種の需要を抱えるサプライヤーに高い需要があります。モニター顧客への実施では、生産性が最大50%向上したとの結果も挙げられていました。
対応範囲の拡大
自社の加工範囲の前後工程の取り込み、もしくは同工程に関係するサービスに対応範囲を広げる方法です。エンドユーザーへの一貫対応としての提案や、既に取引のある顧客に抱き合わせで販売できる可能性があります。
精密板金加工業:セミオーダー発注サービス
■ 株式会社星製作所
多くの板金加工企業は図面がないと仕事を受けないケースが多く、またオンラインでのコミュニケーションに不慣れなこともあり、(オンラインが主流な)IT企業が加工依頼する際のハードルが高い状況に。そこで精密板金加工業を主軸とする同社では、図面がなくても発注できる「セミオーダータイプの発注サービス」を提供。板金ケースを必要としていたサーバ製造メーカー、SIer、ITベンチャー企業からの仕事が増加しました。
ネジ製造・販売業:在庫管理サービス
■ 有限会社奥山製作所
ねじの欠品はライン停止に直結する重大リスクとなります。ネジ・ボルトの販売や組み込みを手がける同社は「在庫管理支援サービス」を提供。同社社員が定期的に顧客企業に訪問し、部品庫をチェック。少量になっている商品をピックアップして購買担当者に確認後、受注/納品を実施するシステムとなっており、現場の生産性向上に寄与するサービスとなっています。
真空機器メンテナンス業:中古装置リニューアル
■ アルバックテクノ株式会社
真空装置・機器のメンテナンス事業を中核としている同社では、中古装置のメンテナンスにとどまらず完全リニューアルサービスを展開。高機能だが高額な真空装置を“中古+再生”で提供。装置の解体、オーバーホール、改造、据付、立ち上げまで一貫で対応しています。
同業界の売買仲介
業界内でのノウハウを活かして、同業界の売買を仲介するといった手法も考えられます。仲介費としての利益確保以外にも、業界内でのポジショニングの獲得のほか、顧客がどのような情報や機能を求めているのか?といった生きたマーケット情報を蓄積することが可能です。
機械加工業:加工技術マッチングプラットフォーム
■ 株式会社丸菱製作所(ASNARO)
エレベータ・エスカレータ重構造部品製造を主軸とした機械加工を手掛けている同社は、そのノウハウを活かしマッチングサービスを運営。「加工技術のフリマサイト」として、全国の町工場の保有機械や加工実績、空き日程をデータベース化し、依頼案件とマッチング。発注側はタイムリーに加工依頼先を確認でき、受注側は遊休設備を活用できるという両社にとって嬉しいサービスとなっています。
化学メーカー:天然素材の売買マッチングサイト
■ 住本化学株式会社(Biondo)
化学メーカーである同社のノウハウにより、素早く高度な分析技術を提供し、素材を売りたい人と買いたい人をつなぐデジタルサービスを展開。買い手は成分の詳細分析データを確認しながら直接取引できるため、購買リスクを最小化できます。
Webを活用したテスト実施や情報発信が効果的
新規事業を立ち上げる際は、本格的に始動をする前に「事業が本当に市場ニーズを満たせているか」や「事業として確立できそうかどうか」を確認する必要があります。そのために効果的なのが、Webを活用したテスト実施・情報発信です。他のオフライン施策よりも比較的低コスト・短期間でコンテンツを準備することができ、実際の反応をデータで分析することが可能です。大規模な投資をする前に、顧客の評価を定量的に把握し、ビジネスモデルの妥当性を確認できます。
Web上での拡販の流れ
1. サービス紹介用のコンテンツを作成
まずはサービス紹介用のコンテンツを作成します。既存のサイト内に新規ページの追加、もしくは専用のランディングページを立ち上げ、サービスの要点と、ユーザーがそのサービスを導入することの価値を明示します。ページの構成や内容は実際のユーザーの反応に応じて改善していくことが推奨されるため、初期公開をするコンテンツ作成ばかりに時間をかけすぎないようにしましょう。
2. 一部ユーザーへテスト実施・検証
既存顧客や業界ネットワークから数社を対象に、パイロット導入を提案します。実際にサービスを提供しないと分からない課題や、喜ばれるポイントなどもあるため、可能な限りテスト実施を挟むことをおすすめします。サービスとして未確立である分、テストを受けてくれる顧客が最初は見つかりにくい可能性があるため、モニター価格として提供するのも一つです。
3. 対外的に広く情報発信
テスト導入で得た内容を反映の上、サービスとして正式に提供・告知開始します。メールマガジン等による既存顧客への周知のほか、プレスリリースやWeb広告の配信、サービスに関連するキーワードでのSEO対策など、有効なアプローチ方法はいくつか存在します。マーケティング予算や、成果が出るまでの期間、媒体特性などを総合的に見て最適な手段を選定していきます。
まとめ
以上、中小製造業が新規事業を立ち上げる際のテーマとして「製造業のサービス化」における事例と拡販手法についてまとめました。
製造業のサービス化事例
1. 料金体系の変更
サービスの軸となる技術や製品はそのまま、一部付加価値を加えて料金体系を変える
2. 対応範囲の拡大
自社の加工範囲の前後工程の取り込み、もしくは同工程に関係するサービスに対応範囲を広げる
3. 同業界の売買仲介
業界内でのノウハウを活かして、同業界の売買を仲介する
新規事業の創出や、売上拡大を検討されている方に少しでも参考になれば幸いです。
また、弊社テクノポートでは新サービス拡販のためのWebマーケティング戦略立案から施策実行、効果測定・改善までを一貫で承っております。まずはご相談からで構いませんので、お気軽にお問い合わせください。