AI検索の普及により、BtoB製造業におけるWebマーケティングの考え方は大きく変わりつつあります。従来のSEO対策では、検索ボリュームのあるキーワードを見つけ、そのキーワードに対応するコンテンツを制作することが中心でした。しかしAI検索では、ユーザーが単語ではなく、より具体的な質問文で情報を探すケースが増えています。
このような変化に対応するには、従来のようにキーワード単位で施策を考えるだけでは不十分です。ユーザーが技術や製品を検討し、最終的に購買・問い合わせに至るまでの流れを整理したうえで、各段階で必要とされる情報を設計する必要があります。
本記事では、AI検索&SEO対策戦略を立てるうえで重要となる「購買フローマップ」の考え方と、それをもとにした戦略設計の進め方について解説します。
この記事の目次
AI検索&SEO対策戦略の基本的な考え方
AI検索&SEO対策戦略を立てるうえでは、まず前提となる考え方を押さえておく必要があります。特に重要なのは、ユーザーの購買フローをもとに戦略を立てること、ターゲットユーザーの解像度をこれまで以上に高めること、そしてAI検索対策とSEO対策を両輪で進めることです。ここでは、それぞれの考え方について解説します。
ユーザーの購買フローをもとに戦略を立てる
AI検索&SEO対策戦略を立てる際に、最初からキーワードや記事テーマを考えるのは得策ではありません。まず行うべきは、ユーザーが技術や製品を購買する際の流れを整理することです。
BtoB製造業の商材は、高額であったり、導入リスクが大きかったりするケースが多く、ユーザーは慎重に情報収集を行います。そのため、いきなり「〇〇 メーカー」や「〇〇 製品」と具体的な技術・製品を検索するとは限りません。
たとえば、ある技術課題が発生した場合、初期段階のユーザーは、なぜ不具合が起きているのか、同じような事例はあるのか、どの領域に原因がありそうなのかといった情報を探します。さらに、どのような解決方法があるのか、既存の方法ではなぜ解決できないのかといった点も確認しながら、課題の全体像を把握しようとします。
その後、課題の原因や解決策が見えてくると、検索行動は少しずつ変化します。どの技術が自社の課題に適しているのか、その技術に対応できる企業はどこなのか、各社にはどのような違いがあるのか、導入実績はあるのか、最終的にどの会社へ相談すべきなのかといった、より具体的な比較・検討に移っていきます。
このように、購買フェーズごとにユーザーの知りたいことは変わります。したがって、AI検索&SEO対策では、購買フローの各段階に対して、どのようなプロンプト、キーワード、コンテンツが必要かを配置することが重要です。
購買フローマップを活用すれば、認知前の段階から、課題の顕在化、解決策の比較、外注先の探索、問い合わせ直前まで、ユーザーとの接点を広く設計できます。結果として、単発の記事制作ではなく、購買プロセス全体を見据えた戦略的なコンテンツ設計が可能になります。
ターゲットユーザーの解像度をこれまで以上に高める
AI検索時代のコンテンツ設計では、ターゲットユーザーの解像度をこれまで以上に高める必要があります。
従来のSEOでは、検索ボリュームのあるキーワードを見つけ、そのキーワードに対応する記事を作る考え方が中心でした。もちろん、今後も検索需要の把握は重要です。しかしAI検索では、ユーザーが単語ではなく、具体的な質問文で情報を探すケースが増えていきます。
そのため、単に「製造業の技術者向け」や「設計者向け」といった大まかな理解だけでは不十分です。そのユーザーがどの業界や用途で技術を使うのか、設計、開発、生産技術、品質保証、購買などのうち、どの立場の人なのかを具体的に捉える必要があります。
また、現在どのような課題や不具合に直面しているのか、原因調査中なのか、解決策を比較しているのか、外注先を探しているのかといった検討段階も重要です。さらに、どのような専門用語や業界特有の表現で情報を探すのか、最終的にどのような判断材料があれば問い合わせに進めるのかまで考える必要があります。
AI検索では、ユーザーの質問が具体的になる分、浅い一般論のコンテンツは選ばれにくくなります。逆に、特定の課題、用途、判断場面に対して深く答えているコンテンツは、AI検索でもSEOでも評価されやすくなります。
このようなコンテンツを作成するためには、ターゲットユーザーの業務、課題、検討プロセス、検索時の言葉遣いを深く理解する必要があります。AI検索&SEO対策においては、検索キーワードだけでなく、その背後にあるユーザーの状況や意思決定プロセスまで捉えることが、成果につながるコンテンツ設計の前提になります。
AI検索対策とSEO対策は両輪で進める
AI検索対策は、SEO対策と切り離して考えるものではありません。両者は連動して進める必要があります。その理由は主に3つあります。
1. AIが検索エンジンの情報を参照するため
AIは回答を生成する際に、検索エンジン上の情報を参照する場合があります。そのため、検索結果で評価されているコンテンツは、AI検索でも引用・参照される可能性が高まります。
つまりSEO対策は、検索エンジンからの流入獲得だけでなく、AI検索において自社情報が参照されるための土台づくりにもなります。AI検索での露出を高めたい場合でも、まずは検索エンジン上で評価されるコンテンツを整備することが重要です。
2. AIと検索エンジンの評価基準が類似しているため
AI検索も検索エンジンも、ユーザーにとって有益で信頼できる情報を評価します。専門性、正確性、網羅性、信頼性の高いコンテンツは、SEOにおいてもAI検索対策においても重要です。
特にBtoB製造業では、技術情報の正確性や専門性が重視されます。単なる一般論ではなく、自社の知見、技術的な根拠、用途別の考え方、導入判断に役立つ情報を含めることで、検索エンジンにもAIにも評価されやすいコンテンツになります。
3. AI検索のボリュームが推定できないため
SEOでは、検索ボリュームや関連キーワードを調査することで、一定程度ユーザーの需要を把握できます。一方、AI検索では、どのプロンプトがどれくらい使われているかを正確に把握することが難しいのが現状です。そのため、AI検索対策だけを単独で進めると、需要の少ないテーマに過剰なリソースを投下してしまう可能性があります。
現実的には、まずキーワードベースで検索ボリュームや関連キーワードを確認し、ユーザーの需要を把握することが有効です。そのうえで、需要のあるテーマをAI検索向けの質問や文脈に展開していきます。つまり、SEO視点で検索需要や評価基盤を確認しながら、AI検索でも引用・参照されやすいコンテンツへ最適化していくことが重要です。
AI検索対策とSEO対策は別々の施策ではなく、同じユーザーの情報収集行動を異なる検索環境で捉えるための両輪です。検索エンジンで見つけてもらい、AI検索でも参照・推薦される状態を作ることで、購買フロー全体における接点を強化できます。
AI & SEO検索対策戦略の立て方
ここからは、購買フローマップをもとにAI検索対策とSEO対策の戦略を立てる具体的な流れを解説します。
基本的な進め方は、まずユーザーの購買フローを整理し、その各フェーズで発生する検索行動を分解したうえで、AI検索向けのプロンプトとSEO向けのキーワードを設計します。その後、実際の検索結果や露出状況を調査し、最終的にコンテンツ制作や既存ページの改善方針へ落とし込んでいきます。
1. 購買フローマップを作成
最初に行うべきことは、ターゲットユーザーが課題を認識してから外注先を選定するまでの流れを整理することです。
BtoB製造業では、ユーザーがいきなり製品名やメーカー名で検索するとは限りません。多くの場合、まず現場で何らかの不具合や技術課題が発生し、その原因を調べるところから情報収集が始まります。その後、解決策を探し、複数の技術や方式を比較し、対応できる企業を探し、最終的に発注先を選定するという流れをたどります。
そのため、AI検索&SEO対策戦略を立てる際には、「課題発生」「原因特定」「解決策の模索」「外注先探索」「比較・選定」といった購買までの段階を可視化することが重要です。

ここで大切なのは、いきなりキーワードを考えないことです。検索ボリュームのあるキーワードから施策を考えるのではなく、まずユーザーの検討プロセスを起点にします。ユーザーがどの段階で、どのような疑問を持ち、どのような情報を必要とするのかを整理することで、AI検索とSEOの両方に対応した戦略の土台を作ることができます。
2. 購買フェーズごとに検索視点を分解する
購買フローマップを作成したら、次に各フェーズでユーザーが何を知りたいのかを分解します。これが「検索視点」の整理です。検索視点を整理する際に重要なのは、同じ購買フェーズの中でも、ユーザーの思考プロセスや検索の切り口によって、必要とする情報が変わるという点です。
たとえば「課題の発生・原因特定」というフェーズでも、課題が発生した直後は、「何が起きているのか」「なぜ不具合が発生しているのか」といった現象把握が中心になります。その後、原因を特定する段階に進むと、「どの領域に問題がありそうか」「原因をどのように切り分けるべきか」「品質や生産性にどのような影響があるのか」といった視点に変化します。
解決策を模索する段階でも同様です。最初は「どのような解決方法があるのか」と広く情報を集めますが、次第に「各方式の違いは何か」「自社の条件にはどの方法が適しているのか」「導入時のリスクは何か」といった比較・検討の検索へ移っていきます。
実際に当社が行った製造業従事者向けの調査でも、生成AIの利用用途として多かったのは「技術課題の整理・原因仮説の洗い出し」「課題解決策の検討」「技術・製品の基礎理解」「類似課題の解決事例・ベストプラクティスの調査」でした。一方で、「サプライヤー/外注先/代替部材・製品の探索」は、それらと比べて低い割合にとどまっています。
この結果からも、AI検索は技術・製品そのものやメーカーを探す段階だけでなく、その前段階にあたる課題整理や解決策調査で使われる機会が多いと考えられます。
そのためAI検索&SEO対策では、製品名やメーカー名の検索だけを対象にするのではなく、課題、原因、解決策、比較、選定といった検討途中の検索行動まで細かく分解することが重要です。この作業によって、購買フロー上のどこにコンテンツの不足があるのか、どの段階でユーザーとの接点を作るべきかが見えやすくなります。
3. 検索視点ごとに対策クエリを考える
検索視点を整理したら、それぞれに対して対策クエリを設計します。ここでいう対策クエリとは、AI検索向けのプロンプトと、SEO向けのキーワードの両方を指します。
AI検索では、ユーザーは単語ではなく自然文で質問するケースが多くなります。たとえば、「〇〇の原因は何か」「〇〇と△△の違いを比較して」「〇〇に適した解決策を教えて」といった形です。そのため、AI検索対策では、ユーザーが実際にAIへ入力しそうな質問文を想定しておく必要があります。
一方、SEO対策では、自然文の質問をそのまま使うだけではなく、検索キーワードとして整理します。たとえば、「〇〇 原因」「〇〇 比較」「〇〇 メーカー」「〇〇 選定基準」「〇〇 事例」といった形です。
放熱部材「コールドプレート」の購買における「解決策の模索」フェーズを整理した例

同じ検索意図であっても、AI検索とSEOでは入力される言葉の形が異なります。そのため、検索視点ごとに、AI検索ではどのようなプロンプトになるのか、SEOではどのようなキーワードになるのかをセットで整理することが重要です。
この工程を行うことで、AI検索で参照されやすいコンテンツと、検索エンジンで流入を獲得しやすいコンテンツを同時に設計しやすくなります。
4. 検索クエリをもとに調査を行う
対策クエリを設計したら、それをもとに調査を行います。調査はAI検索とSEOの両面で実施します。

AI検索では、作成したプロンプトを使って検索を行い、自社が回答内に露出しているか、競合企業が引用・紹介されているか、どのようなWebページや情報が参照されているかを確認します。自社がまったく露出していない場合や、競合だけが紹介されている場合は、優先的に対策すべきテーマと判断できます。
また、AI検索結果で参照されているページの内容も確認します。製品ページが参照されているのか、技術コラムが参照されているのか、導入事例や比較記事が参照されているのかを見ることで、どのようなコンテンツタイプが有効なのかを把握できます。
SEOでは、対象キーワードの検索需要、自社サイトの順位、上位表示されているページの内容や構成を確認します。検索ボリュームがあるキーワードはもちろん重要ですが、BtoB製造業では検索数が小さくても商談に直結しやすいテーマがあります。そのため、検索ボリュームだけで判断するのではなく、問い合わせや案件化への近さも含めて優先度を判断することが重要です。
この調査によって、どのテーマに需要があるのか、自社が現在どの位置にいるのか、競合がどのような情報で評価されているのか、どのコンテンツを作れば勝ち筋があるのかが見えてきます。
5. 調査結果をもとに実行戦略をまとめる
最後に、調査結果をもとに実行戦略をまとめます。
まず、どの購買フェーズのどの検索視点から対策するのかを決めます。AI検索で競合だけが露出しているテーマ、SEOで自社が圏外になっているキーワード、検索需要は小さくても商談に近いテーマなどは、優先度を高く設定します。
次に、新規で作成するコンテンツ、リライトする既存ページ、強化すべき製品ページや事例ページを整理します。たとえば、課題発生や原因特定のフェーズでは技術コラムや課題解説記事が有効です。解決策の比較フェーズでは、方式比較記事や選定基準の記事が必要になります。外注先探索や比較・選定のフェーズでは、製品ページ、技術紹介ページ、導入事例、FAQなどが重要になります。
最終的には、コンテンツ数、コンテンツタイプ、記事構成、対策するプロンプトやキーワード、制作・改善の優先順位を一覧化します。これにより、単発の記事制作ではなく、購買フロー全体を見据えたAI検索&SEO対策の実行計画を作ることができます。
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AI検索の普及により、BtoB製造業のWebマーケティングでは、キーワード起点だけでなく、ユーザーの購買フローを起点にした戦略設計が重要になっています。
ユーザーは、最初から製品名やメーカー名で検索するとは限りません。課題の原因を調べ、解決策を比較し、対応できる企業を探し、最終的に問い合わせ先を選定していきます。そのため、各購買フェーズでどのような疑問や検索行動が発生するのかを分解し、AI検索向けのプロンプトとSEO向けのキーワードを整理することが必要です。
また、AI検索対策とSEO対策は切り離して考えるものではありません。SEOで検索需要や評価基盤を確認しながら、AI検索でも引用・参照されやすいコンテンツを整備することで、課題の発生段階から比較・選定、問い合わせ直前まで、ユーザーとの接点を体系的に作ることができます。
AI & SEO検索対策をどのように進めればよいかお困りの方は、ぜひテクノポートへお気軽にご相談ください。BtoB製造業のWebマーケティング支援で培った知見をもとに、貴社の商材やターゲットに合わせた戦略設計からコンテンツ制作までサポートいたします。
