テクノポートの徳山です。今回は「BtoB製造業におけるオウンドメディアの在り方」について、「オウンドメディア」という言葉を聞いたことがあっても、その意味や役割について詳しく知らないという方も多いと思いますので、具体的な事例と共に解説します。
この記事の目次
時代と共に変わりゆくWebサイトの役割
時代の流れと共にWebサイトの役割や在り方も変わってきています。昔は会社名で検索した時に確実に検索エンジンにHITし、会社紹介の役割を果たすことができれば良かったのですが、徐々に「新規顧客獲得」や「採用活動(人材獲得)」など、その役割は変化していきました。最近では、1企業が複数のWebサイトを持つことは当たり前で、その役割も増え、複雑になってきています。
オウンドメディアという言葉の誕生
ホームページという言葉は、もともと会社紹介を行うためのWebサイトという意味合いがあったと思います。最近では、その言葉の代わりにコーポレートサイトという言葉が使われることが増えてきました。その他にも、サービス紹介を行うWebサイトはサービスサイト、採用情報に特化したWebサイトはリクルートサイト、といった感じでその目的に応じて呼び名が変化していっています。
その中で、ユーザにとって有益な情報を提供することでユーザとの関係性を創造するWebサイトは「オウンドメディア」と呼ばれ、その活用がBtoBでもトレンドになってきています。
※オウンドメディアの定義は各社によって異なることをご了承ください。狭義な表現にはなりますが弊メディアでは上述したものを定義とします。
様々な役割を担うオウンドメディア
オウンドメディアへ課す役割や期待する効果は多様化しています。オウンドメディアの役割が単純だった頃は、新規顧客獲得による売上向上だったり、人材の獲得、などといったように、その効果を容易に数値化することができましたが、最近では容易に数値化できないような役割をオウンドメディアに課すことが増えているようです。
具体的には自社のブランディング、顧客との新たな関係性の創出、用途開発、などが挙げられます。また、ソーシャルメディアの普及により、企業が活用できるメディアの種類が増え、その活用法は更に多様化しています。オウンドメディアの活用法について、具体的な事例をいくつかご紹介します。
事例:オムロンの「Edge-Link」
こちらのサイトは同社が手掛けているオウンドメディアの一つです。各メディアを運営する目的は「コーポレートブランディングを高め、パートナー企業の発掘と人財の獲得」です。その結果、「キャリア応募の数」とオウンドメディアなどを経由した「企業からのオープンイノベーションの問い合わせ数」を多く獲得できているそうです。
事例:ロームの「TechWeb」
「TechWeb」には、電源やパワーデバイスにおける基礎知識や設計マニュアルなどの技術資料が無料で見られるようになっています。技術資料を無料で配布することで顧客(将来的に顧客化する見込顧客を含む)との関係性を深め、グリップを強くし、顧客生涯価値の最大化を目指しています。
事例:メトロールの「Facebookページ(海外版)」
位置決めセンサーの開発・製造を行っているメトロール社が運営するFacebookページです。このページでは、自社の顧客へメトロール社センサーの利用シーンを自由に投稿することを促しています。それをきっかけに顧客同士のつながりを生み出し、顧客間交流というBtoBでは珍しい新たな価値を創出しています。
事例:蒲田工業の「表面処理ガイド.com」
「表面処理ガイド.com」には、表面処理技術の種類、機能、事例について細かくまとめられています。社内で蓄積した技術を惜しみなく披露して技術データベース化することで、新規顧客獲得に役立てています。これは私の想像ですが、社内の技術情報をこのサイトに集結することでナレッジマネジメント(※)にも活用しているのではないかと考えています。
※ナレッジマネジメント:個人のもつ暗黙知を形式知に変換することにより、知識の共有化、明確化を図り、作業の効率化や新発見を容易にしようとする企業マネジメント上の手法(wikipediaより)
事例:パナックの「plasticfilm-labo.com」
プラスチックフィルムに関する様々な情報が掲載されている「plasticfilm-labo.com」のユニークなポイントは、ユーザから「あったらいいな」を募集して新たな用途開発に繋げていることです。過去に無印良品が顧客から商品開発アイディアを募集し、商品開発へ繋げていましたが、同社の取組はそのBtoB版と言えます。
事例:東海バネ工業の「ばね探訪」
「ばね探訪」では、ばねに関する技術情報を事例という形式ではなく取材という形式で読み物として一般の人にも分かりやすく自社技術を紹介しています。一見地味に思われがちなバネ業界を少し違った切り口から垣間見ることで、業界に対する魅力を感じることができます。このメディアはバネ業界全体のブランディング向上に役立っているのではないでしょうか。
BtoB製造業におけるオウンドメディア運営の注意点
上述したように、BtoB製造業でもオウンドメディアは顧客満足度の向上、従業員満足度の向上、CSR的な活動など、様々な目的を果たすことができます。しかし、いずれも直接的に売上向上に繋がる施策ではないので、運営の意義を常に会社全体で共有する必要があります。
また、大手ではこれまでメディアを運営する部門は広報部などが中心でしたが、目的の多様化によりその他部門で運用する機会も増えるので、運用体制を考慮する必要が今まで以上に大きくなりそうです。いずれにせよ、短期的な視点ではなく中長期的な視点で辛抱強く続ける姿勢が大事ではないでしょうか。
モノカク内にオウンドメディア運用のヒントにも繋がるWebマーケティング手法をまとめた記事もございますので、こちらもご参照下さい。
技術の効果的な情報発信手法である「コンテンツマーケティング」については、下記記事に詳しく書かれていますので、こちらもご参照下さい。
コンテンツマーケティングの進め方(BtoB製造業・メーカー向け)