中小企業・個人事業主を支援する弁理士の亀山夏樹です。今回は、「集客に寄与する店舗名・商品名の考え方」についてお話したいと思います。
この記事の目次
1.ある日の商標相談
お客様は、新商品の商品名について商標登録をされたい方。
お客様 :事務所ホームページの記事を見てきたのですが・・・
かめやま:ありがとうございます。
お客様 :商標登録の活用についてどのように考えればよいのですか?
かめやま:商標は、ご商売の目印。いわば看板です。
お客様 :えぇ。そうですよね。
かめやま:魚屋さんを例にとってみると・・・同じ魚屋さんでも、みな持ち味が違う。気に入るお店もあれば、そうでないお店もある。気に入ったお店には、次回も来たくなる。当然、他の友達にも伝えたくなる。お友達は、何を目印にお店に向かえばよいですか?その目印をどう伝えますか?
お客様 :場所とかですか?
かめやま:そうですね。角の銀行の向かいにあるお店・・・というのもあります。でも、それだけではないですよね?
お客様 :看板とか。
かめやま:そうです。店名とか、サービス名とか。例えば、店名「魚屋さくらや」。これが表に出ていれば、始めていく人も、「記憶にあるあの店」と「目の前にある店」がつながる。
お客様 :なるほど。
かめやま:「記憶にあるあの店」が「目の前にある”隣の店”」では困りますよね。
お客様 :お客様がよそへ流れていってしまう。
かめやま:だから、その目印となる商標は大事。なぜならば、商標は集客動線を構成するので。したがって、「集客に寄与する商標であれば自社で独占したい!」となりますよね。
お客様 :店名以外にも商標登録しておいたほうが良いものはありますか?
かめやま:例えば、キャッチコピー的なものですね。カメラのさくらやではないですが、「鮮度爆発」みたいなものです。そのお魚屋さんの差別化要素が、お客様の心をフックする言葉がよいですよね。
お客様 :たしかにそうですね。
2.商標登録の際に検討したい3つのポイント
かめやま:商標登録の際に検討したいのは、次の3つです。
- 自社の差別化要素の把握
- 差別化要素を利用した集客の動線づくり
- 自社水路の確保
お客様 :なるほど。
かめやま:1の「自社の差別化要素」が「鮮度」であれば。2の「集客の動線づくり」として、店名「魚屋さくらや」もよいですが、「鮮度爆発」のようなキャッチコピー的な要素があるとよいですよね。
お客様 :となると、守るべきは、「魚屋さくらや」だったり「鮮度爆発」になるのですね。
かめやま:そうです。中でも、自社が使い続けたいものや、自社だけが使いたいものを優先して守りたいですよね。
お客様 :それが、3の「自社水路の確保」につながるのですね。
かめやま:そうです。その目印を商標登録することによって、動線となりえる目印を他社が使えなくなる。結果、自社水路の確保が達成される。
お客様 :なるほど。よくわかりました。商標登録って、営業とか販売促進の考え方に近いものがありますね。
かめやま:そうなんです。営業戦略に基づいて商標登録を活用する方法もあるんです。
3.まとめ
商標登録の際に考えたい3つのこと。
1、自社の差別化
例 魚屋であれば「鮮度」
2、差別化を利用した集客の動線づくり
例 「鮮度爆発」によって、差別化要素「鮮度」を際立たせる
3、自社水路の確保(動線となりえる目印を他社に使わせない)
- ア 「動線となる目印」の商標登録を済ませておく。
- イ アにより、他社が「動線となる目印」を無断使用する行為は、商標権侵害となる。
- ウ イにより、他社は「動線となる目印」を自由に使えなくなる結果、自社水路の確保が達成される。
お客様のご商売繁盛の参考になれば幸いです。