テクノポートの徳山です。これまで数多くのサプライヤー企業のWebマーケティングを支援してきましたが、顧客ターゲットの絞り方一つで成果に大きな差が出ることが多いと感じています。初めてWebマーケティングに取り組もうと考えている方が、第一歩の成果を挙げる際に最も重要なポイントとなると言っても過言ではありません。
今回は「顧客ターゲットの絞り方」について、具体的な手法を事例とともに解説します。
この記事の目次
なぜターゲットを絞る必要があるのか
ターゲットを絞ったほうが良いとされる理由の一つに、オンラインユーザ(特にBtoB)は目的を明確に持って行動するため、自身の目的が確実に達成される選択肢を選ぶことが多い、ということが挙げられます。
そのため、オンラインの世界では何でも取り扱っているような百貨店スタイルよりも、専門性の高い専門店スタイルのWebサイトのほうが好まれます。つまり、オンラインの世界では「何でもできます」と謳うのは「何もできません」と言っているのと同じとなってしまう、ということです。
例えば、溶接加工を外注したいと考えている発注者がいたとします。A社は「溶接加工専門」、B社は「板金加工から組立て・溶接まで何でもお任せ」と謳っていた場合、発注者に好まれやすいのはA社となります。
これは専門性の高い業者のほうが「品質が高そう」「コストが安そう」などといった印象を自然と与えることができるためです。
3Cの視点でちょうど良いターゲットに絞る
顧客ターゲットを絞る際のポイントは以下の3つです。
- 顧客の需要がそれなりにある市場を選ぶこと(顧客視点)
- 自社の強みが十分に活きる市場を選ぶこと(自社視点)
- 競合企業が少ない市場を選ぶこと(競合視点)
つまり、顧客(Costomer)、自社(Company)、競合(Competitor)の3Cの視点で考えることが重要です。とりわけ初めてWebマーケティングに取り組むサプライヤー企業にとっては「顧客の需要がそれなりにある市場」を選ぶのがよいでしょう。なぜなら、いきなり大きな市場を狙ってしまうと、それに対する競合サイトが多く新参者は埋もれてしまう可能性が高くなってしまいます。
それよりも、まずは小さな市場でも良いので、自社の強みが活きる相性のよい市場を見つけ出したほうが成果が出る可能性が高くなります。
“オンライン営業版”3C分析を活用する
ここからは、“オンライン営業版”3C分析の手法を用いた顧客ターゲットの絞り方についてご紹介します。オンライン営業版の3C分析は、一般的な3C分析と違い、インターネット上で取得できる情報をもとに進めます。そのため、情報が集まりやすく、非常に効率的な方法と言えます。
自社分析
自社分析では、一般的な3C分析と同じように、自社の強みは何かを洗い出したり、強みの根拠となる経営資源は何か(設備、職人、ノウハウなど)、といった情報を整理したりします。
市場・顧客分析
ターゲット顧客のニーズや発注先の選定基準、インターネットで新規発注先を探す際の動機などを考えます。ターゲット顧客が使いそうな「キーワード」の検索需要をキーワードプランナーで調べることで、そのデータを一般的な3C分析における「市場規模」の代わりとして使用していきましょう。
↑Google広告のアカウントがあれば使用できる「キーワードプランナー」を使えば、対策したいと考えているキーワードの検索需要を簡単に調べることができます。
競合分析
市場・顧客分析で使用した検索キーワードを使いGoogle検索した際に上位表示する企業と自社を見比べます。オンライン上で競合となる企業の情報であれば、未上場の会社であっても簡単にWebサイトから情報収集できます。
また、検索した際の検索HIT数を「競合数」、競合企業のWebサイトのインデックス数を「競合の競争力」と見立てることで、その市場がどれほどの寡占状況にあるのかを把握できます。
↑Google検索した際に表示される検索HIT数を競合企業数として考えます。
↑競合サイトのインデックス数の調べ方は上図のとおりです。インデックス数が大きいWebサイトが多く上位表示するようなキーワードは、SEO難易度が高く、検索上位表示させることが難しいので、なるべく避けるようにしましょう。
情報が整理できたら、3つのポイントに従い全体のバランスを見ていきます。
- 顧客の需要がそれなりにある市場を選ぶこと(顧客視点)
→キーワードの検索需要はそれなりにあるか。はじめに中小企業が狙う規模感としては、月間の検索ボリュームが3桁台あれば十分です。 - 自社の強みが十分に活きる市場を選ぶこと(自社視点)
→選定したキーワードで検索する顧客のニーズを思い浮かべ、自社の強みと相性が良いかどうかを検討します。 - 競合企業が少ない市場を選ぶこと(競合視点)
→検索HIT数や競合サイトのインデックス数は少なければ少ないに越したことはありません。なるべく競合企業が少ない市場を選びましょう。
いくつかの市場を想定したうえで、1〜3をチェックし、最もバランスの良さそうな市場を選定し、ターゲットとしていきましょう。
顧客ターゲットの絞り込みパターン
3C分析による分析手法をご紹介しましたが、どのような観点から顧客ターゲットを絞り込むかについてはセンスが問われるところです。ここでは、秀逸な顧客ターゲットの絞り込みを行い、大きな成果を挙げている企業の事例をパターン別にご紹介します。
特定の“材料“で絞るパターン(ティケイワイプロダクツ)
機械加工業を営むティケイワイプロダクツは、5軸マシニングセンタをはじめとした多種多様な設備を有しており、どのような形状の金属部品でも加工が可能な会社です。
これだけ豊富な設備を有していると「なんでも削れます」と謳いたくなるところですが、たまたま加工経験の多かった材料であった低膨張熱材「ノビナイト」の加工にターゲットを絞り、単価の高い引合いを多く獲得することに成功しています。
「ノビナイト」や「ノビナイト加工」は検索需要の少ないキーワードですが、競合サイト数が圧倒的に少ないことから、短期間で検索上位表示を達成しました。
Webサイトでは、ターゲットユーザが抱えている「初めて加工する材料だから知らないことが多い」や「高価な材料なので失敗するわけにはいかない」といった不安に着目しました。
ノビナイト材の特性や、豊富な加工実績を紹介することで高い専門性をアピールすることで、ユーザへ安心感を与えています。
特定の“技術”で絞るパターン(昭和電器)
昭和電器は、樹脂金型設計・製造〜成形まで一貫でできることがウリの中堅のサプライヤー企業です。同社のWebサイトでは、競争の激しい「樹脂加工」市場全体を狙うのではなく「金属の樹脂化による軽量化技術」に焦点を当て、ターゲットを絞り込んでいます。
キーワード対策では、金属から樹脂へ材質転換をする際によく使われる「PPS材」周辺のキーワードに目をつけ、対策を行いました。その結果、多くのユーザからのアクセスを獲得することに成功し、軽量化ニーズの高い業界から量産案件の相談が寄せられ、多くのリード獲得に成功しています。
金属製品を樹脂化することは発注者であるメーカーにとっても未経験であることが多いため、あらかじめメリット・デメリットになる点を知りたいというニーズや、試作から量産化まで一貫対応してくれる会社に頼みたい、といったニーズに応えられるようなコンテンツをWebサイト上に掲載しています。
特定の“業界”で絞るパターン(星製作所)
筐体製造を中心とした板金加工業を営む星製作所では、IT業界における板金筐体製造分野(サーバ筐体など)にターゲットを絞り成功を収めています。
筐体業界の中でも「製造」に関する知識の低いサーバ筐体業界に目をつけることで、それまで長年付き合ってきた業界の取引先とは比較にならないほどの高利益率の仕事の獲得を実現しています。
同社が運営する「板金ケース.com」はユーザが求めるインタフェースにとことんこだわって設計がされています。ターゲットはIT業界のユーザとなるため、製造業界と違い、できるだけWeb上でコミュニケーションを完結したい、製造業の職人と話すのは苦手、といったニーズを持っています。
そのため、セミオーダー形式を取り入れ、なるべくWeb上でのやり取りだけで発注が完結できるようにしています。そのようなターゲットに適したインタフェースがユーザから評価され、多くの新規顧客獲得につながっているそうです。
特定の“ニーズ”で絞るパターン(共栄精機)
精密板金加工業を営む共栄精機は、「とにかく早く欲しい」という超短納期ニーズを持ったユーザにターゲットを絞り成功を収めています。
Webマーケティングへの取り組みは15年近くに渡り、取り組みを開始した頃は競合となるWebサイト数は少なかったのですが、競合他社が徐々にオンライン営業に取り組みだし、競争が激しくなる中で、会社として特徴を出してく必要性に迫られます。
そこで自社の強みと顧客のニーズが合致するという観点から、顧客の「早くほしい」というニーズに着目し、Webサイトをリニューアルしました。
顧客にニーズに合わせるために営業体制と生産体制を刷新。「見積り最短5分」を掲げるなど、超短納期で製品を製造・提供できる仕組みを作り上げています。
ターゲットユーザはとにかく急いでいるため、受注可否および見積り金額を早く知りたいといったニーズを持っています。そのようなターゲットユーザの期待に応えるため「1時間以内にほとんどの見積もり回答ができる」を実現しました。
これを実現するために、外注費をも社内で見積ってしまう体制や、一発で顧客が求めるベストプライスを提示できるノウハウをも構築していることろが同社の最大の強みとなっています。
まとめ
以上、顧客ターゲットの絞り方がWebマーケティングの成否を分けることをお分かりいただけましたでしょうか。顧客ターゲットを絞る際は、“オンライン営業版”3C分析を活用し、ちょうど良いターゲットを見つけましょう。
また、いくつかの企業の事例のように、ターゲットユーザが求めるものに合わせ、Webサイトのコンテンツ掲載するとともに、ユーザインタフェースを工夫することも大事です。
さらには、Webマーケティングは問い合わせを獲得した後の営業対応も大事です。戦略に一貫性を持たせるために、問い合わせ後の営業対応も努力して磨きましょう。