海外BtoB企業がLinkedIn運用に取り組む5つの理由・事例

【執筆者紹介】稲垣 達也
この記事の執筆者
稲垣 達也
【経歴】
テクノポート株式会社「海外Webマーケティング」サービスの責任者
名古屋工業大学大学院 電気機械工学専攻 博士前期課程卒業
同大学 機械工学科卒業

【保有資格】
TOEIC L&R:990/990、英検一級:合格、TOEFL iBT:108/120
稲垣 達也 が執筆した他の記事をみる

テクノポート株式会社の稲垣です。
BtoB企業向けの「海外向けWebマーケティング」サービスの責任者を務めています。

この記事では、海外企業を中心に近年増加している「LinkedIn」を利用した情報発信の重要性について解説します。
先日公開した記事では、LinkedInの個人アカウントを使った営業の手法について紹介しました。
今回解説する内容は、企業アカウントを使った情報発信により業界内の認知度向上を実現する方法です。

(本記事の内容は、新しい情報や知見が入り次第、随時アップデートしていく予定です)

【2024年最新】調査レポートのご案内
BtoB企業の
海外向けマーケティングに関する
実態調査
資料イメージ

【調査期間】 2024年1月22日〜1月23日
レポートの詳細はこちら


LinkedInに注目しているBtoB企業が増えていることを示すデータ

1. 登録企業数

以下のグラフはLinkedInに登録された企業の数の推移を表したグラフです。

LinkedIn企業アカウント数の推移

グラフを見ると、LinkedInを活用する企業の数は年々増加しており、LinkedInが企業にとって有益なツールとして機能していることがわかります。

出典

2. 企業ページからの投稿頻度

以下のグラフは、ブランドのLinkedInからの企業ポストの投稿頻度を表したグラフです。

会社ページからの投稿に関するデータ

上記の結果から、中央値は「週に3.3回の投稿」であり、多くの企業が高頻度でLinkedInでの投稿を行なっていることがわかります。

出典

3. BtoBマーケターからの支持

最後に、BtoBマーケターがLinkedInの活用に力を入れていることを示すデータを紹介します。まず以下は、LinkedInをBtoB企業のコンテンツマーケティングに活用するBtoBマーケターの割合を示したデータです。

An overwhelming 97% of B2B marketers include LinkedIn in their content marketing strategy. This underscores LinkedIn’s integral role in B2B marketing efforts. (B2B マーケティング担当者の 97% が、コンテンツ マーケティング戦略に LinkedIn を取り入れています。これは、B2B マーケティング活動における LinkedIn の重要な役割を強調しています。)

次にBtoBマーケターがLinkedInをプラットフォームとしてどのように評価しているかを示したデータです。

In CMI’s most recent research, 84% of B2B marketers say LinkedIn delivers the best value among social media platforms, and 72% increased their presence in the last year. (CMI の最新の調査では、B2B マーケティング担当者の 84% が、ソーシャル メディア プラットフォームの中で LinkedIn が最も価値を提供していると回答し、72% が過去 1 年間で存在感・露出を高めました。)

最後にLinkedInから投稿の有効性を示すデータです。

According to 77% of content marketers, LinkedIn is the top performer in delivering organic results. This suggests that organic content on LinkedIn has a substantial reach and impact. (コンテンツマーケターの77%が「オーガニック投稿で最も成果を出しているのはLinkedIn」と回答しています。これは、LinkedInにおけるオーガニックコンテンツ(広告を使わない自然な投稿)が、非常に高いリーチと影響力を持っていることを示しています。)

出典

LinkedIn企業ページからの情報発信を行うべき5つの理由

1. リード獲得の強化

BtoB企業にとって、LinkedInは他のSNSよりもリード獲得に適していることが明らかになっています。実際、BtoB企業がSNS経由で獲得したリードのうち、約80%はLinkedIn経由のリードであるとの調査結果があります(出典:100 Essential LinkedIn Statistics and Facts for 2025)。SNSを活用したリード獲得に取り組んでいるBtoB企業にとって、LinkedInは有力な選択肢の一つになるといえます。

2. Webサイトへのアクセス増加

LinkedInからのWebサイトへの流入数は、特にBtoB企業において顕著です。ある調査では、BtoB企業のソーシャルメディア経由のトラフィックのうち約50%がLinkedIn経由であることがわかっています(出典:Important LinkedIn Statistics Data & Trends)。これはLinkedIn企業ページからの定期的な情報発信を通して、Webサイトにも良い影響を与えることを示しています。

3. 採用の強化

LinkedInは採用にも効果的なプラットフォームです。実際、積極的な情報発信を行っている企業は、求職者からの関心が高まり、採用効率が向上しています。ある電力管理企業の事例では、LinkedIn経由で自社のコンテンツに触れた求職者は、そうでない求職者に比べて約3倍も採用担当者に返信する可能性が高く、実際の採用に至る可能性は約6倍も高いという結果が報告されています(出典:Eaton)。

4. 業界の第一人者としての地位の確立

LinkedInを活用した情報発信により、企業は業界内での認知度や権威性を高めることができます。BtoBマーケターの調査では、77%がLinkedInはオーガニック投稿で最も成果を出せるSNSと回答しており、オーガニックなコンテンツでも高いリーチやエンゲージメントを得られることが実証されています(出典:Important LinkedIn Statistics Data & Trends | LinkedIn)。定期的に価値あるコンテンツを提供することで、特定の業界において自社が想起される可能性を高めることにも貢献できます。

5. パートナー企業の開拓

LinkedIn上での情報発信は、新たなパートナー企業との接点を作ることにも役立ちます。定期的に有益な情報を発信していくことで、潜在的なパートナーや協業先企業の目に留まり、協業の機会が生まれやすくなります。特にBtoB業界では、意思決定者や担当者がLinkedInをビジネス情報収集や交流目的で積極的に活用しているため、他のSNSに比べて協業やパートナー開拓に直結するケースが多くあります。

LinkedIn企業ページからの情報発信を活用している企業5選

XCMG(機械製造)

XCMG参照:XCMG Group: Overview | LinkedIn

企業概要

XCMG(徐工集団)は、中国を拠点とする世界的な建設機械メーカーです。建設機械業界においては世界トップクラスのシェアを誇り、特に海外市場でのブランド認知拡大を積極的に推進しています。

LinkedIn活用の目的

  • 海外市場でのブランド認知向上
  • 海外における質の高いリード獲得
  • グローバル市場への情報発信強化

LinkedIn活用による具体的な成果

  • LinkedInのフォロワー数が2022年までに10万人を突破(中国の建設機械業界では初めての規模を達成)
  • 海外市場向けにローカライズした投稿で、エンゲージメント率が前年比30%増加
  • LinkedIn経由でのWebサイト訪問者数が約20%増加
  • LinkedIn経由のリードのうち、65%が営業チームのフォローアップが可能な「質の高いリード

出典

Lincoln Electric(溶接)

Lincoln Electric
参照:Lincoln Electric: Overview | LinkedIn

企業概要

Lincoln Electric(リンカーン・エレクトリック)は、米国を拠点とする世界的な溶接機器および溶接材料メーカーです。特にBtoB市場向けに高い技術力を活かした溶接サービスを提供しています。

LinkedIn活用の目的

  • ブランド認知の向上および維持
  • 質の高い見込み顧客(MQL:Marketing Qualified Lead)の獲得
  • 意思決定層(マネージャー以上)への効率的なアプローチ

LinkedIn活用による具体的な成果

  • LinkedInを活用した包括的なキャンペーンにより、設定したリード獲得目標(MQL数)を167%達成
  • コンテンツへのクリックの73%がターゲットである意思決定層(マネージャー以上)からのものとなり、狙った層へのリーチに成功
  • LinkedInキャンペーンを通じて、広告費の77%に相当する約7,000ドル分のエンゲージメント(いいね・コメント・シェア)という「Earned Media(獲得メディア露出)」を獲得し、高い投資対効果(ROI)を実現

出典

Schneider Electric(電気・電子機器製造)

Schneider Electric参照:Schneider Electric: Overview | LinkedIn

企業概要

Schneider Electric(シュナイダーエレクトリック)は、フランスに本社を置き、エネルギー管理および自動化のデジタルソリューションをグローバルに提供しています。

LinkedIn活用の目的

  • ブランド認知の拡大・維持
  • 展示会などのイベントを通じた質の高いリード獲得
  • 複雑なターゲット層(OEMや産業用オートメーションのシニアマネージャー層)への的確なリーチ
  • イベント参加者との継続的なコミュニケーション構築

LinkedIn活用による具体的な成果

  • LinkedInキャンペーンにより、展示会開催中・開催後ともにブランド認知度が大幅に向上
  • 展示会の参加登録およびリード獲得において設定した目標を超える成果を達成
  • LinkedInを通じて、営業およびマーケティングファネルにおける新規かつ質の高いリードデータを獲得

出典

Innodisk(電子機器)

Innodisk Corporation
参照:Innodisk Corporation: Overview | LinkedIn

企業概要

Innodisk(イノディスク)は台湾を拠点とし、産業用・組み込み型ストレージやメモリ製品の開発・製造を行う企業です。主に産業分野やBtoB市場に特化した製品とサービスをグローバルに提供しています。

LinkedIn活用の目的

  • グローバルな認知拡大およびブランド露出の強化
  • 製品および技術力を示すことで、高品質なリード(MQL)を獲得
  • Webサイトへの誘導および新規訪問者数の増加

LinkedIn活用による具体的な成果

  • LinkedInを中心としたフルファネル(認知~リード獲得)マーケティングキャンペーンを実施した結果、Webサイトへの訪問者数が143%増加
  • Webサイト訪問者のうち88%が新規訪問者であり、LinkedInを通じて新しい潜在顧客層へのリーチに成功
  • フルファネル型キャンペーンの成果を受け、同様のキャンペーンを年2回実施する仕組みを定着化し、安定的なリード獲得を実現

出典

Fuji Electric(エネルギー)

Fuji Electric Co., Ltd.
参照:Fuji Electric Co., Ltd.: Overview | LinkedIn

企業概要

Fuji Electric(富士電機)は、日本を拠点とする世界的な電機メーカーで、パワーエレクトロニクス技術を中心に、産業用インフラやエネルギーマネジメントのソリューションを提供しています。

LinkedIn活用の目的

  • グロバール市場におけるブランド認知の向上
  • 展示会や対面営業に依存しない高品質なリードの獲得
  • 専門的な技術や製品の情報発信を通じた、業界内でのプレゼンス強化

LinkedIn活用による具体的な成果

  • LinkedInのリード獲得広告を活用し、業界平均の1.4倍のフォーム入力率(リード獲得率)を達成
  • LinkedInを通じて獲得したリードは、従来の展示会などで獲得するリードよりも質が高く、特定ターゲット企業との商談設定にも成功
  • オーガニック投稿でも業界標準を超える高いエンゲージメント率(業界平均の1.2倍)クリック率(1.3倍)を記録

出典

LinkedInを使った情報発信の始め方

STEP 1:ペルソナの策定

LinkedInで情報発信を始めるにあたり、まず誰に対して発信をするか(どのような見込み顧客に対して認知させたいか)を決めます。

基本的に投稿するコンテンツは自社が発信したい内容ではなく、見込み顧客が興味関心のある内容を基点に考える必要があるため、このステップを飛ばして投稿を始めても反応が得られにくいです。

ペルソナを作成する際は、市場調査の結果から仮説を作り、その内容を以下のような情報で具体化すると具体性の高いペルソナを策定できます。

有効な情報源

  • 既存顧客に関する定量データ(例:企業規模、業界、売上)
  • 既存顧客に関する定性データ(例:問い合わせに至った背景、発注に至った理由)
  • 既存顧客インタビュー結果
  • 見込み顧客インタビュー結果

複数のペルソナを作成する場合は、以下のような形で結果をスプレッドシートに整理します。

ペルソナ結果

STEP 2:コンテンツ案の作成

設定したペルソナに対し、「有益かつ興味を引く情報」を提供するためにコンテンツ案を作成します。
コンテンツは自社の保有するアセットにとらわれすぎず、見込み顧客が求める情報、気になるトピックがあれば一から準備する姿勢が重要です。

この時点で作成したコンテンツ案は、後に投稿を開始する際に参考にします。
投稿案

STEP 3:LinkedIn企業ページの整備

LinkedInで情報発信を始めるにあたり、企業ページの整備は重要です。
企業ページはWebマーケティングにおけるランディングページと同じで、LinkedInの投稿を経由して企業ページを見た訪問者が、企業としてフォローするに値するかを判断する場所になります。

基本的な情報はすべて入力した上で、有料プランの場合は以下のような採用向けの特設ページも設置できます。

cisco
参照:Cisco: Life | LinkedIn

STEP 4:投稿の作成・分析

最後に企業ページの準備が整ったら、投稿を作成・発信し、効果を分析する段階です。
定期的に投稿を行い、その成果を分析して次回の投稿を改善するサイクルを定期的に回していくことで、精度の高い投稿を実現できます。

KPIの例

  • 投稿のインプレッション数(閲覧回数):投稿がLinkedInユーザーにどのくらい閲覧されたかを示す指標
  • エンゲージメント率(いいね・コメント・シェア数):投稿への反応や関与の度合いを示す指標
  • クリック率(CTR:Click Through Rate):LinkedInの投稿内に設置したリンクがクリックされ、外部のWebサイトに訪問した割合
  • LinkedIn経由のWebサイト訪問数:LinkedIn投稿を通じて企業サイトに訪問したユーザーの数
  • LinkedIn経由の問い合わせ・リード数:LinkedInをきっかけに獲得した、具体的な問い合わせやリード(見込み顧客)の件数
  • フォロワー数:企業ページをフォローするユーザーの数

まとめ

LinkedIn企業ページからの情報発信の重要性とメリットを解説しました。LinkedInはBtoB企業にとって、Webサイト以外でオンラインにて自社の認知を獲得するツールとして相性が良いです。今回紹介した取り組みをご検討されている企業様がいらっしゃいましたら、お気軽に弊社(テクノポート株式会社)までご連絡ください。

【2024年最新】調査レポートのご案内
BtoB企業の
海外向けマーケティングに関する
実態調査
資料イメージ

【調査期間】 2024年1月22日〜1月23日
レポートの詳細はこちら


この記事の執筆者
稲垣 達也
【経歴】
テクノポート株式会社「海外Webマーケティング」サービスの責任者
名古屋工業大学大学院 電気機械工学専攻 博士前期課程卒業
同大学 機械工学科卒業

【保有資格】
TOEIC L&R:990/990、英検一級:合格、TOEFL iBT:108/120
稲垣 達也 が執筆した他の記事をみる

関連記事