テクノポート株式会社の稲垣です。
BtoB企業向けの「海外向けWebマーケティング」サービスの責任者を務めています。
この記事では、プロフェッショナル向けのSNSとして知られている「LinkedIn」を利用した海外の新規顧客開拓の方法を紹介します。
先日公開した記事では、海外向けマーケティング活動におけるLinkedInの使い方の概要を紹介しました。
今回解説する内容は、特に海外の新規顧客を目的とした営業活動を検討されているBtoB企業の事業者の方に参考になるかと思います。
(本記事の内容は、新しい情報や知見が入り次第、随時アップデートしていく予定です)
この記事の目次
なぜLinkedInを使うのか?
まずはじめに海外の新規顧客開拓でLinkedInを使うべき3つの理由を解説します。
理由1:海外での高いシェア
先日執筆した記事「LinkedInを使った海外向けBtoBマーケティングの手法5選」で紹介した通り、LinkedInは海外において多くのユーザーが使用しています。
Country | LinkedIn Active Users |
---|---|
United States | 240 million |
India | 140 million |
Brazil | 78 million |
China | 58 million |
United Kingdom | 43 million |
France | 33 million |
Indonesia | 32 million |
Canada | 26 million |
Mexico | 25 million |
Italy | 22 million |
出典:LinkedIn Statistics 2025: Active Users Data (Worldwide)
最も多いアメリカを筆頭に、人口の多い国(例:インド、ブラジル、中国、インドネシア、メキシコ)や、ヨーロッパ諸国(例:イギリス、フランス、イタリア、スペイン)が並んでいることがわかります。ちなみに日本のユーザー数は現在4.5 million程度となっており、日本の総人口を考慮するとまだまだ普及は進んでいないといえます。
理由2:ビジネス用途のSNS
日本国内でLinkedInに登録するユーザーの多くは、LinkedInを就職活動や転職を目的に活用することが一般的ですが、海外ではそれらの目的に加えて、BtoB企業のマーケティング目的で活用されています。
調査によると、従業員100人以上の(アメリカ)企業の49.6%が2020年にマーケティングにLinkedInを使用し、翌年にはこの割合が50.3%に達すると予想されています。
出典:Data shows half of all businesses using LinkedIn for marketing
上記は従業員100名以上の企業に関するデータですが、中小企業にとってもLinkedInを使った営業活動は一般的です。
LinkedIn のデータによると、同社のビジネス ネットワーキング プラットフォーム上の専門家の 42% が、自分の会社を立ち上げ、LinkedIn を利用してビジネスを拡大している 3,500 万社以上の中小企業の 1 つになりたいと考えています。
出典:How New LinkedIn Tools Fuel SMB Growth | CO- by US Chamber of Commerce
今回は比較的費用のかからない営業手法を紹介するため、中小企業にとっても取り組みやすい内容になっています。
理由3:正確なターゲティング
LinkedInは他のSNSに比べて、BtoBユーザーをターゲティングするためのオプション(例:業界、企業規模、職種)が豊富にあり、自社のターゲットとなるユーザーをより正確に狙い撃ちできます。以下はターゲティング項目の一例を示したものです。(詳しくはLinkedIn公式のページをご覧ください)
ユーザー上記に関する情報を個人のプロフィールで設定しているため、それらのユーザーに営業・マーケティングを行う企業は自社のペルソナに近いユーザーを上記のターゲティングオプションの中から選択可能です。このLinkedIn独自のターゲティングを活用することで、営業をする側・される側の双方にとって無駄なコストや労力が減るメリットがあります。
LinkedInを使った海外の新規顧客開拓の進め方
次に本題のLinkedInを使った海外の新規顧客開拓の進め方を4つのステップに分けて解説します。
Step 1: 調査フェーズ
ここではLinkedIn上で自社がターゲットとするべき顧客企業を明確にし、それらの企業に属するターゲットユーザー(従業員)のリストアップを行います。ターゲット顧客企業の選定においては、最低限以下のような項目を明確にする必要があります。
- 業界:自社の製品・サービスが顧客の課題解決に貢献できる業界
- 部署:自社の製品・サービスの導入を検討する可能性が高い部署
- 職種:自社の製品・サービスの導入を決定することができる役職
- 国/地域:自社の製品・サービスに対して高い需要が見込める、競争力が発揮できる国や地域
- 企業規模:自社の製品・サービスを導入する予算が確保できる、導入することでメリットが大きい企業規模
上記を明確にした上で、LinkedIn上で上記で設定した自社のターゲット顧客企業として当てはまるユーザーを調査します。このプロセスにおいてLinkedIn公式のツールである「LinkedIn Sales Navigator」というツールが活用できます。以下は使い方のデモンストレーションになります。
出典:Sales Tool | LinkedIn Sales Navigator
このツールを使用すると、LinkedIn内でさまざまなセグメントで条件を絞り、条件に当てはまったユーザーの一覧を保存できます。この調査フェーズは全肯定の中で最も時間がかかるプロセスになります。
注意点
LinkedIn Sales Navigatorで条件を絞り込みユーザーを調査する際は、以下の点に留意する必要があります。
- 業界、職種、地域名を含むユーザーのプロフィール情報の記載方法はユーザーが独自で設定しているため、同じ意味を指す言葉が複数存在する(例:地域を”New York, United States”と設定するユーザーもいれば、”New York City Metropolitan Area”と設定するユーザーも存在するため、同じ地域に対しても複数の呼び方がないか確認する必要がある)
- ユーザーのプロフィール情報は必ず最新の情報に更新されているわけではないため、検索条件を満たすターゲットとして当てはまったユーザーであっても、プロフィールの情報が更新されているかは確認する必要がある
Step 2: 絞り込みフェーズ
次にStep1で洗い出した潜在顧客リストの中から、コネクト・メッセージを送るべき有望な顧客リストを洗い出します。絞り込んだユーザー全員対して「つながりリクエスト」や有料の「InMail(インメール)メッセージ」を送信することも可能ですが、どちらも上限回数が定められているため、上限に到達しない範囲で優先順位を決めて営業を行う必要があるといえます。
優先順位を決定する手法の一つとして、ユーザーの需要が喚起されたタイミングを把握するツールが利用できます。例えば以下の「Apollo.io」というツールを使用すると、ユーザーが需要が喚起されたタイミングを把握するためのヒントを得ることができます。
出典:B2B Lead Scoring and Signal-based Prospecting Software | Apollo
ツール上で設定したトピック(上記の画像における”Sales Process Automation”)について関心を持っている企業のユーザーを一覧として可視化できるため、需要が喚起された企業があればその企業に属するユーザーを優先的に絞り込むことができます。
補足
「Apollo.io」は他にも特定の企業に属するユーザーのコンタクト情報を一覧として出力できるため、LinkedInからのアウトリーチに加えて電話やEmailを使ったコンタクトを行うのに有効なツールです。(ただし中小企業に属するユーザーの情報は登録されていないことが多いです)
Step 3: つながりリクエスト/メッセージ送信フェーズ
次に絞り込んだユーザーに対して、「つながりリクエスト」や有料の「InMail(インメール)メッセージ」を送るステップになります。基本的にはまず「つながりリクエスト」を送信し、それでも反応がない場合に「Inmail」の送信を検討するという流れが良いです。(「Inmail」は有料な上に無視される可能性が高いため、まずは「つながりリクエスト」を送信し無料でメッセージを送れる状態を構築する方が効果的です)
「つながりリクエスト」の承認率は一般的に5〜20%程度になります。この承認率を高めるためには、リクエストを送る際に以下のような点に留意しておく必要があります。
ポイント1:自分のプロフィールを魅力的に見えるように整備する
「つながりリクエスト」が送信されていることに気づいたユーザーは、ほとんどの場合リクエストを承諾するか辞退するかを判断する前にリクエスト送信者のプロフィールを確認し、つながるに値する人物かを判断します。すなわちつながりの承認を得るためには、自分の魅力が伝わる形でLinkedInのプロフィールを整備しておくことが重要です。特に自分の業界に対する知見や自分のノウハウをまとめた投稿を作成しておくことで、自分の業界に対する知見の深さと権威性をアピールできます。
ポイント2:役員クラスのターゲットとつながるためには、まず同企業内の別の役職の従業員とつながる
大企業の役員クラスの従業員とつながる際は、事前に同企業に所属する別の従業員とつながりを作っておくと承認率が上がりやすい傾向があります。これはつながり申請を受けたユーザーが、つながり申請元のユーザーと自分の共通の知り合い(LinkedInにおける2ndコネクション)を把握できるような表示があるためです。(以下の赤枠の表示です)
人間の一般的な心理として、自分と共通のつながりを持つ人物の方が信頼できるという認識がされやすいため、特に重要度の高い人物につながり申請を送る際は事前に共通のつながりを作っておくと良いといえます。
ポイント3:営業目的と思わせないメッセージを添える
これは他のアウトバウンドの営業手法と共通だと思いますが、いきなり営業的なメッセージを全面に押し出さない方が良いです。ユーザーによっては、そのようなメッセージだと判断された時点で興味を失う可能性も高いためです。
上記のようなメッセージを送る代わりに、初回のメッセージはつながり申請先のユーザーとの「共通点」を言及した方が良いです。共通点は共通の知り合い、所属する業界、勤務先や出身大学、興味・関心といった情報が当てはまります。(これらの情報はLinkedIn以外のSNSのプロフィールや投稿を確認すると把握しやすいです)これらの情報をつながり申請時に言及することで、自分との関連性が把握できるため、辞退される可能性を下げられます。
ポイント4:つながり申請以外で関わりを構築する
LinkedIn上のつながりがないユーザーと関わる方法は、つながり申請以外にもあります。そのため、できる限りの方法でユーザーとの関わりを持ち、つながり申請を承諾してもらえる可能性を高められます。以下に例を表示します。
- 投稿への「いいね!」やコメント:ターゲットとなるユーザーが公開している投稿や記事に対して「いいね!」を押したり、コメントを残したりすることで、相手に自分の存在を認識してもらう
- コンテンツのシェアや引用:ターゲットユーザーが発信した情報や業界に関連する投稿をシェアし、自分なりの見解を加えて投稿することで、間接的なコミュニケーションのきっかけを生み出す
- LinkedInグループでの活動:ターゲットユーザーが所属するLinkedInグループに参加し、グループ内での業界や関心分野に関するディスカッションに参加することで自分の存在を認識してもらう
補足
2025年2月時点において「つながりリクエスト」は、送信先のユーザーと送信元である自分の関係性により送付方法がやや異なります。LinkedInにおける2ndコネクション(お互いに共通のつながりがあるユーザーが存在するユーザー)につながり申請を送る場合、相手のプロフィール画面に「Connect」というボタンが表示されます。(以下の添付画像の赤枠です)
一方、LinkedInにおける3rdコネクション(お互いに共通のつながりがあるユーザーが存在しない)につながり申請を送る場合、相手のプロフィール画面の「More」というボタンをクリックしその中に表示される「Connect」からつながり申請を送る必要があります。(以下の添付画像の赤枠です)
Step 4: メールアドレス獲得・商談
最後につながり申請を承諾してくれたユーザーとのメッセージを行い、商談設定を目指すフェーズになります。基本的に北米やヨーロッパのユーザーとのやり取りにおいてLinkedIn上でそのままコミュニケーションが続くことはないため、つながり申請を承諾してくれたユーザーに対しては早い段階で彼らの仕事用のメールアドレスを聞きそこからコンタクトを取ることをおすすめします。
獲得したメールアドレスは、自社の顧客管理システムにも登録しておくことで他のリード獲得手法と同じ形で管理することも可能です。ここまで到達すれば、あとはその他の商談と同じような形で進みます。LinkedInから発生した商談は、お互いの素性がよくわかった状態で進むため話が早いというメリットもあります。
まとめ
BtoB企業がLinkedInを使った海外の新規リードを獲得する方法を解説しました。海外企業の決裁権者に対してダイレクトでアプローチすることができるチャンスがあるという点で、LinkedInは他のSNSにはないメリットがあることがご理解いただけかと思います。今回の記事の内容が、少しでもお役に立てば幸いです。
弊社(テクノポート株式会社)では、BtoB企業向けに「海外向けWebマーケティング」を支援しています。
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