ものづくり企業を支援するかめやま特許商標事務所の弁理士、亀山と申します。今月からものづくり経革広場へ記事を投稿させて頂くことになりました。これからよろしくお願いします。
この記事の目次
海外進出の際、知的財産的に何を注意すればよいですか?
先日の話です。
お知り合いの経営者と雑談していたところ、
1年前にリリースした新商品が、海外でも引き合いがあって・・・海外進出の際、知的財産的に何を注意すればよいですか?
と質問されました。
その方との出会いは、3年前。出会った当時は「知的財産?なにそれ?」という方でしたが・・・。冒頭のような質問が出るということは、知的財産に対する意識が高まっている証拠です。さて、冒頭の質問「海外進出の際、知的財産的に何を注意すればよいですか?」について考えていきたいと思います。
(知的財産のことは少し忘れて・・・)海外進出の際に検討したいことは何でしょうか?
まずは・・・
- 自社商品・サービスが、現地で受け入れられるか?
そして・・・
- 自社商品・サービスの提供により収益があがるか?
いずれも大切です。しかし、大切なことは、これだけではありません。
それは、
- 自社商品・サービスを、現地で合法的に販売できるか?
です。
1、よくあるトラブル事例(現地の展示会に出展した場合)
展示会に出展し、反響は良好・・・。販売数も徐々に立ち上がってきて、上々の滑り出し・・・。そこで、突然、商標権侵害の警告状が届きます。
商標権侵害・・・。つまり、当該国において、自社商標(店舗名、サービス名、商品名等)の使用に違法性がある、ということです。
2、警告状の対処方法
警告状の対処方法としては、基本的には、以下の2つが考えられます。
- 自社商品の名称変更
- ロイヤリティの支払うことを前提に、商標を使用する。
在庫品ラベルの変更費用やチラシの変更費用を考慮すると・・・。現時点での名称変更は避けたく・・・このまま使用したい!
と思われる方が多いと思います。しかしながら、ここは、相手(権利者)の合意が必要ですので、必ず使用できるとも限りません。したがって、名称変更をせざるを得ない、となることが多いのが実態です。
3、問題の所在はどこに?
商標法、特許法、意匠法などの知的財産法では、日本の権利と外国の権利は別個のものと取り扱います。このため、日本の権利を持っているからといって、当然に、当該国でも同様の権利が認められる・・・とはなりません。
したがいまして、当該国へ進出する前にすべきことは、自社商品の名称等の使用が合法であるか否か?つまり、当該国において、自社商品の名称等が、他人の登録商標になっていないか?となります。
4、どうすれば?
このようなリスクを回避するためにはどうすればよいでしょうか?まずは、当該国において、「自社の事業の障害となる他人の登録商標の有無」について調査(クリアランス調査)する必要があります。クリアランス調査を行わない場合、上記のような、商標権侵害などの警告状を現地企業からもらうリスクが高まります。
また、現地の代理店と提携している場合、現地の代理店から、「商標権侵害の有無はチェックしたのか?現地での商標登録は済んでいるのか?」と確認される場合もあります。
したがって、当該国において、事業の合法性を担保する意味でも、クリアランス調査は必須項目となります。
※今回は、商標権のリスクについて述べましたが、特許権や意匠権についても同様のことが言えます。
5、まとめ
海外進出の際に検討したいこととしては、
- 自社商品・サービスが、現地で受け入れられるか?
- 自社商品・サービスの提供により収益があがるか?
も大切な検討事項ですが、それよりも、前に・・・
- 自社商品・サービスを、現地で合法的に販売できるか?
となります。何かの参考になれば幸いです。