弊所は、中小企業200社以上の相談実績があります。これまでのお客様の相談内容を振り返りながら、特許出願の際に検討したいことについて述べたいと思います。
この記事の目次
1.ある日の特許相談
先日の特許相談。
特許出願を検討されているお客様。特許出願を検討している背景として
- 研究成果による差別化
- 差別化の維持
があり、「差別化要素を保護するために特許を取りたいです!」とのことでした。
ここまでは、いつもの特許相談とほぼ同じなのですが、どこかスッキリしいない違和感を覚えていました。翌々考えてみると「なぜ、お客様が守りたいと言っている部分は、本当にお客様のビジネスにとって大切なものなのか?」という疑問が払拭できずにいたためです。そこを深堀りすべく、相談時間をいつもより長くとり、いろいろな質問を投げかけました。
すると、でてきました!
特許取得の背景の3番目(事情により非公開です)
その背景は、お客様の業界構造の特性等によるものです。条件が揃えば、こういう特許の使い方もあるのだと、感心します。
2.特許出願の目的は何?
特許出願を検討されている背景として
- 研究成果による差別化
- 差別化の維持
が相場です。
その背景には、事業における特許の活用が特許出願の前提であるのです。そうであるならば、単なる特許取得ではなく、
- その企業にとって事業基盤を保護できる特許
- その企業にとって事業に活用できる特許
が重要です。
そのために特許事務所としては「技術内容の把握」はもちろんなのですが、それだけでは足りません。どちらかというと、お客様の業界構造やビジネスモデルを把握した上で、「他社から守るべきはどこ?」を検討する必要があります。
しかし、そこは特許事務所だけが検討することはできず、弁理士とお客様が一緒になって検討することが重要なのだろう、と再認識しました。
3.特許活用のために、検討すべきこと
つまり、事業における特許の活用のためには
- 事業環境とビジネスモデル
- 保護すべき技術
- 法律
の検討が必要です。しかしながら、実際のところ、特許相談に来られるお客様のほとんどは、
- 保護すべき技術 を説明し、
- 法律 の見解を求める
といったケースが多いです。
しかし、特許の活用を考えると、
- 保護すべき技術
も当然ですが、
- 事業環境とビジネスモデル
も伺った上で、
- 法律の活用
についてコメントしなければ、折角取得した特許も、ビジネス上の実効性が乏しい特許に、つまり、活用しにくい特許になってしまう・・・
これでは、お客様と弁理士との双方にとって、アンハッピーな結果になってしまいます。折角の特許なのですから、自社の利益に結び付くような活用をしたいですよね。
4.まとめ ~特許出願の際に考えたい3つのこと~
1.事業環境とビジネスモデル
- どのようなビジネスモデルを考えていますか?
- なぜそのようなビジネスモデルを検討しているのでしょうか?
このプロセスを経て初めて、活用できる特許の道が開けます。冒頭のお客様のように、特有の事業環境が鍵を握っている場合もあります。
2.弱みとなる部分の検討
- このビジネスモデルの強みはどこにありますか?
- その強みは、模倣されやすいでしょうか?
模倣されやすい強みは、弱みになりやすいためです。
3.法律の活用
模倣による弱みを補うために法律を活用します。弱みの種類によっては特許でカバーできない場合もあります。そのため、当初の相談は、特許の内容であっても、意匠登録、商標登録や契約で対応することも珍しくありません。
皆様のご商売の参考になれば幸いです。