テクノポートの徳山です。前回の記事「リード獲得(リードジェネレーション)の具体的手法」に続き、今回は獲得したリードを育成し受注につなげるために何をしていけばよいのか、その進め方についてご説明します。
※リードの意味をはじめデジタルマーケティングについてイチから知りたい方はこちらの記事をご覧ください(記事:製造業のためのデジタルマーケティング)。
この記事の目次
リードナーチャリングとは
リードナーチャリングとは、リードを育成し顧客化するための活動のことです。その目的はリードへ定期的なコミュニケーションを取ることで関係性を向上(エンゲージメント)させていき、最終的に受注することです。技術系企業が行うリードナーチャリングは、メルマガ送付、技術資料の提供、技術セミナーの開催などが主な活動となります。リードには「短期的に顧客化できるリード(今すぐ客)」と「中長期的に顧客化するリード(これから客)」の2種類あり、それぞれのリードにとって役立つ情報が異なることに注意が必要です。
リードナーチャリングが重要な4つの理由
①ボリュームゾーンである「これから客」との関係性を築ける
技術マーケティングにおいて、短期的に受注につながるリード(=今すぐ客)は全体のごく僅かです。Webマーケティングの戦略でそこだけにターゲットを絞ることは可能ですが、それでは十分な顧客獲得に繋がりません。逆に「今すぐ客」だけで受注量が十分だという会社はデジタルマーケティングに取り組む必要はないでしょう。受注量を最大化させるためには、ボリュームの多い「これから客」と関係構築が非常に重要です。
例えば「工業用CT市場」において「今すぐ客」と「これから客」がどのようなキーワードで検索するかの違いは下記の通りとなります。
キーワード調査に関しては、MFTフレームワークを使用するとうまくまとめることができます。規格化された製品を販売するメーカーの場合は、Market寄りのキーワードが「今すぐ客」、Technology寄りのキーワードが「これから客」に分類される場合が多く、受託型のビジネスを行う加工業者などは逆になることが多いです。
②「これから客」が比較検討段階に入った時に優位に立てる
これから客と早い段階で接点を持ち、関係を構築することで、いざ導入段階に入り他社と比較検討される際にその関係性が優位に働き、競合他社よりも貴社が選ばれる可能性が高まります。技術系企業の場合、検討の早い段階から相談レベルの問合せが入ることが多く、この段階から親切丁寧にリードと関係を築いておくことは、その後の受注確率を大きく向上させます。
③マーケティング活動の中で獲得した全てのリードを無駄にしない
マーケティングに力を入れている技術系企業であれば、専門展示会の出展をしたことがある企業がほとんどだと思います。しかし、展示会で獲得した名刺を適切に管理している企業は少ないのではないでしょうか。リードナーチャリングを行うことにより展示会をはじめ、様々なマーケティング活動の中で獲得したリードを無駄にせず、関係構築し、顧客化することに繋げることができます。
④技術の用途開発に繋がる
これから客は、自社で発生した技術課題に対し、どのような解決手段があるのかを探索しているフェーズにいる場合が多いです。そのフェーズに属するリードと接点を持ちコミュニケーションを取ることで、様々な情報を取得することができます。その情報が、自社技術がどのような分野で活用できるのか、どのような技術課題を抱えている技術者の役に立つのか、といった用途開発アイディアに繋がっていくことがあります。
リードナーチャリングの進め方
1、技術系企業における購買プロセスを把握する
リードが顧客化するまでのプロセスを考えておくことで、提供するコンテンツの内容が明確になってきます。技術系企業であれば下記のようなプロセスになる場合が多いと思いますが、業界・分野に応じて更に細かな購買プロセスを考えておくとよいでしょう。
①自社の技術課題の認知
社内で何らかの技術課題が発生。技術課題の原因や解決手段の探索をし始める。
②技術課題における解決手段の探索
発生した技術課題の解決手段を専門誌やインターネットにより調べる。インターネットであれば検索キーワードは技術課題や解決手段を使うことが多い。
- 検索キーワード、閲覧ページなどのデータをもとにしてリードが求めている技術課題に関する情報を定期的に配信すると良い。
- このフェーズのリードに対し、技術課題解決のプロフェショナルとして対応できるかが重要。
- この段階で問合せを行うリードに対しては、自社技術が最も良い解決手段なのかを見極めながら対応する必要がある。またビジネスになるまで少し時間がかかることがあるので辛抱強く付き合う。
③解決手段の比較検討
解決手段の探索を一通り行い、解決するための手段に目星をつけた段階。その手段(技術)を持っている会社の探索を行う。
- インターネットであれば検索キーワードは解決手段となる技術・製品名になる。
- このフェーズに属するリードはすぐに受注に至る可能性が高い。
- この時に②のフェーズでエンゲージがあるリードから比較検討フェーズを飛ばして受注できることがある。
④意思決定
購買先を決定する。
2、リードスコアリングを設定する
MA(マーケティング オートメーション)のスコアリング機能を使って、それぞれのリードが1で作成した購買プロセスのどの段階にいるのかをグループ分けしていきます。どのような行動を取ったリードをどのフェーズに属するリードなのか、独自の定義を決めていきます。
具体的には、下記のような行動を取ったリードにそれぞれ点数付けし、点数ごとにグループ分けしていくイメージです。
- 特定のWebページの閲覧 →1点
- メルマガの開封・回帰 →5点
- 技術資料のダウンロード →10点
- セミナーの参加 →15点
など
3、フェーズごとにコンテンツを配信する
2によって分けたリードグループごとにどのようなコンテンツを配信していくかを考えます。①②のフェーズにいるリードへは、業界情報や技術資料などの提供、③④のフェーズに入っているリードへは自社技術・製品のPRコンテンツや顧客事例などを配信すると良いでしょう。具体的にどのようなコンテンツを配信すべきなのか、に関してはまた別記事にて紹介する予定です。
4、最終フェーズに入ったリードへは直接営業する
最終フェーズに入ったリードへは営業担当から直接コンタクトします。技術系企業の場合、当フェーズに入るよりも前に問合せが入ることも多いですが、過去に接点のある企業に対しても、最終フェーズに入ったリードへは適切なフォローを行っていくことが大事です。
まとめ:技術マーケティングにおいてフェーズ②のリードを獲得することが重要
技術系企業のデジタルマーケティングにおいて、フェーズ③④の「今すぐ客」にターゲットを絞ると母数が少なすぎて十分な顧客獲得つながりません。よって、フェーズ①②の技術課題解決手段の探索を行っている「これから客」と早い段階で関係を作っていくことが重要となります。
技術マーケティングの場合、フェーズ①②がボリュームゾーンになるのと、②の時点で直接問合せを行うケースが多いので、対応に少し手間はかかるものの、このフェーズでリードとしっかり関係性を深めておくと顧客獲得に繋がりやすいです。関係性を深めるためにも、関係性が途絶えないようにするためにも、リードナーチャリングという行動が重要になるのです。