【2026年版更新】イタリアの製造業(主要産業・進出している日本企業)

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今回は世界の製造業ヨーロッパ編の第三弾として「イタリアの製造業」を紹介します。

イタリアは、ファッションや食品、観光のイメージが強い一方、欧州を代表する製造業国でもあります。特に北部を中心に、機械・自動車関連、ファッション・皮革、医薬品など高付加価値産業が集積し、中堅・中小企業が専門分野で世界市場を獲得する産業構造が特徴です。2026年現在は、人口減少や高齢化、エネルギーコスト、地政学リスクといった課題を抱えながらも、「国家復興レジリエンス計画(PNRR)」や企業のデジタル・省エネ投資を促す「トランジション5.0」を軸に産業高度化が進んでいます。

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基本情報

  • 正式名称:イタリア共和国(Italian Republic)
  • 首都:ローマ(Rome) 
  • 大統領:セルジョ・マッタレッラ
  • 首相:ジョルジャ・メローニ(2022年10月就任)
  • 通貨:ユーロ。1ユーロ=185.70円(2026年8月26日)
  • 人口:約5,894万人
  • 面積:約30.2km2
  • 言語:イタリア語
  • 宗教:カトリックが多数、このほか、イスラム教、プロテスタント、ユダヤ教など
  • 平均寿命:男性81.7年、女性85.7年

産業構造(現状・今後)と経済の特徴(強み・弱み)

イタリア経済はサービス業が中心ですが、製造業の存在感が大きい点が特徴です。OECDの2026年版イタリア経済調査に掲載された2024年データでは、付加価値に占める割合はサービス業72.8%、工業・建設業25.0%、農林水産業2.2%でした。観光・小売・金融などのサービス業に加え、北部のロンバルディア州、ピエモンテ州、ヴェネト州、エミリア=ロマーニャ州などには機械、自動車、化学、医薬品などの産業集積があります。

強みは、価格だけでなく設計力、ブランド力、加工技術、少量多品種生産などで差別化できる企業が多いことです。工作機械では2025年にイタリアが世界第5位の生産国、第4位の輸出国となるなど、BtoB分野でも「Made in Italy」の競争力は健在です。

一方、弱みとして無視できないのが低成長と人口動態です。欧州委員会は2026年5月時点で、イタリアの実質GDP成長率を2025年、2026年ともに0.5%と見込み、2026年の政府債務残高をGDP比138.5%と予測しています。

さらにISTATによれば、2025年の合計特殊出生率は過去最低水準の1.14、2026年初の65歳以上人口は1,482万人、総人口の25.1%に達しました。生産年齢人口の縮小は製造現場の技能人材不足を深刻化させ、中長期的には自動化・省人化投資を促す要因になります。

伝統的に指摘されてきた南北間の経済格差も完全には解消されていません。現在の南部は農業だけの地域ではなく、航空宇宙、自動車、食品などの製造拠点もあります。2025年の実質GDP成長率は南部が0.6%と北西部・北東部・中部の各0.5%をわずかに上回りましたが、OECDは地域間の生産性・雇用・経済機会の格差を引き続き構造課題と位置付けています。

製造業全体(現状・今後・最新の政権と政策が製造業に与える影響)

2026年の製造業は、長期的な低迷から緩やかな持ち直しを探る局面です。ISTATによれば、2026年1~6月の鉱工業生産は前年同期比0.5%増となりました。ただし6月単月は前年同月比0.6%減で、輸送機器がプラスとなる一方、繊維・衣服・皮革や一般機械では減少するなど業種間の差が大きくなっています。

メローニ政権下で製造業の投資環境を左右するのが、EU復興基金を活用した国家復興レジリエンス計画(PNRR)です。PNRRの総額は約1,944億ユーロで、うち補助金718億ユーロ、融資1,226億ユーロ。デジタル化、再生可能エネルギー、交通インフラ、行政改革などを通じて生産性向上を図る大規模計画で、2026年は計画完遂に向けた重要な年です。

企業の設備投資では「トランジション5.0」も重要です。2024~2025年の税額控除型制度を引き継ぐ形で、2026年には新制度「Nuovo Piano Transizione 5.0」が始動しました。先端デジタル設備や再生可能エネルギーの自家発電設備への投資を対象に、取得費を税務上割り増して償却できる「Iperammortamento」方式へ移行しています。2026年6月12日にはGSEで優遇措置の予約受付が開始され、7月21日には、取得費の20%に達する前払金の支払いを確認する手続きも開始されました。

DX、省エネ、自動化が同時に求められるため、ロボット、工作機械、センサー、産業ソフトウェア、エネルギーマネジメントなどを提供する日本のBtoBメーカーにとっても商機が広がると考えられます。これは人口減少による省人化需要とも方向性が一致しています。

製造業の主要産業と製造業の代表企業

TOP1:機械・自動車・自動車部品

イタリアは産業機械、工作機械、ロボット、自動車、モータースポーツ関連で強い技術基盤を持っています。UCIMUによると、2025年の工作機械・ロボット・オートメーション生産額は63億9,100万ユーロで前年比1%増、輸出額は37億6,000万ユーロでした。

代表企業のFerrariは2025年の売上高が71億4,600万ユーロと前年比7%増、出荷台数は1万3,640台でした。営業利益率は29.5%に達し、2026年上半期決算では通期売上高見通しを従来の約75億ユーロから約76億ユーロへ上方修正しています。

TOP2:ファッション・繊維・皮革

ファッションはデザイン産業であると同時に、繊維、染色、縫製、皮革加工、靴、金属部品まで裾野の広い製造業です。イタリアファッション協会(CNMI)は2025年時点で、国内に約6万社、約60万人が関わる主要産業と位置付けています。

代表企業のPrada Groupは2025年の売上高が57億1,800万ユーロで前年比9%増、リテール売上は51億200万ユーロでした。Miu Miuのリテール売上は前年比35%増となり、2025年12月にはVersaceの買収も完了しています。

TOP3:医薬品・化学

近年、特に存在感を高めているのが医薬品です。Farmindustriaが2026年に公表したデータでは、2025年のイタリア国内医薬品生産額は740億ユーロ、輸出額は690億ユーロ超に達しました。輸出は生産額のおよそ9割を占め、イタリアの製造業輸出全体の11%超を担っています。

代表的なイタリア系製薬会社Menariniは、2025年の連結売上高が48億8,700万ユーロとなりました。世界140カ国で事業を展開し、1万7,000人超の従業員と18の生産拠点を持つなど、国際展開型の製薬企業となっています。

日本企業の進出状況(現在・今後)とイタリアに進出した日本製造業企業

外務省は2026年7月、2025年10月1日時点の「海外進出日系企業拠点数調査」を最新結果として公表しました。同調査は日本企業の支店、100%出資現地法人、10%以上を出資する合弁企業などを対象としています。

また、イタリア政府側の2025年の日伊経済関係資料では、イタリア国内には約430社の日本企業が存在し、約4万9,000人を雇用、売上高は約253億ユーロとされています。外務省の「拠点数」とイタリア側の「企業数」は集計定義が異なるため単純比較はできませんが、日本企業が一定規模の産業基盤を形成していることが分かります。

特に近年は販売拠点の設置だけでなく、現地企業を買収して技術、人材、生産能力、販売網を一度に獲得するM&A型の進出が目立っています。

株式会社瑞光

株式会社瑞光は2024年、イタリアの衛生用品製造機械メーカーDelta S.r.l.の株式90%を取得して子会社化しました。瑞光は紙おむつや生理用品などの製造機械を手掛けていますが、日本・中国など人口減少が進む市場への依存を補完するため、Deltaが持つ欧州を中心とした顧客基盤を活用します。両社は製品価格帯や製品群にも補完関係があり、欧州に加えてインド・アフリカなどへの販路拡大にもつなげる狙いがあります。

株式会社ソディック

株式会社ソディックは2024年、イタリアの金属3DプリンターメーカーPrima Additiveへ資本参加し、2025年に子会社化し、同年12月にAltForm S.r.l.へ商号を変更しました。ソディックにとって金属3Dプリンターは次世代の成長事業であり、Prima Additiveが持つPBF・DED方式の技術や欧州の研究開発・販売ネットワークを取り込むことで、開発期間の短縮と欧州市場への展開強化を目指しています。デザイン、精密加工、先端機械産業の集積を持つイタリアを技術拠点として活用する事例です。

中国塗料株式会社

中国塗料株式会社は2025年、イタリアの塗料メーカーITALO BELGE COLORI S.r.L.を100%買収しました。さらに同年8月には、イタリアの販売会社CHUGOKU-BOAT Italyを完全子会社化しています。現地メーカーの買収によって欧州域内に新たな生産能力を確保し、製品供給のリードタイム短縮や販売網強化を図る戦略です。船舶・プレジャーボート分野を含め、イタリアを欧州市場の生産・販売拠点として活用する体制が強化されています。

まとめ

2026年のイタリア製造業は、低成長や人口減少、少子高齢化、南北格差、財政負担といった構造問題を抱える一方、機械・自動車、ファッション・皮革、医薬品など、高付加価値分野では世界的な競争力を維持しています。

今後の重要なテーマは、PNRRとトランジション5.0を活用したDX、脱炭素、省エネ、自動化です。日本企業にとっては製品輸出だけでなく、瑞光、ソディック、中国塗料のように現地企業をM&Aで取り込み、技術・人材・生産設備・顧客網を獲得する進出方法も有力な選択肢となっています。成熟市場でありながら高度な製造業集積を持つイタリアは、欧州市場を開拓する日本のBtoBメーカーにとって、販売先であると同時に技術・生産パートナーを獲得する拠点としても重要な市場といえます。

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【調査期間】 2026年6月29日〜同年7月3日
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