マーコム・サポーターの椎名です。中小企業や個人事業主のマーケティング活動をサポートする傍ら、ライティング活動も行っています。今回は、Web(インターネット)広告と、その代表選手でもある「Google広告」について取り上げます。
昨今、どんな企業でもWebサイトを活用した見込み客の獲得に力を入れています。リレーションのある少数の顧客に対してのルート営業を主軸としていたBtoB製造業でも例外ではありません。コロナ禍で非対面の営業スタイルが浸透したことや、環境の変化に備えて新しい市場、顧客を開拓する必要性が出たことで、
「自社製品をWebサイトで紹介し、新たな見込み客を集めたい」
としてデジタルマーケティングの体制強化を図る企業も多いようです。実際、ウェビナーや動画コンテンツの活用を増やしたり、自社ブログやオウンドメディアを立ち上げたりするBtoB企業がこの1-2年で一気に加速しています。
ここで、オンラインで未知の見込み客に働きかける手段の一つとして考えられるのが「広告」です。
今回はこの「広告」について取り上げていきます。
この記事の目次
広告の種類
一概に「広告」といっても、雑誌や新聞、テレビなどのリアルな媒体を通じた広告から、インターネットを活用した広告までさまざまな種類が存在します。
広告を配信したいターゲットや目的によって最適な媒体は異なりますが、中でも近年市場の発展が見られるのはWeb(インターネット)広告です。
2021年に株式会社電通が発表した調査においても、2021年の日本の総広告費のうち「インターネット広告費」が初めて「マスコミ四媒体(新聞・雑誌・ラジオ・テレビメディア)広告費」を上回ったとの結果が見られます。
また、2025年にかけてもインターネット広告市場の継続的な拡大が見込まれており、今後インターネット広告を活用する企業の増加や、広告投資額の増大が考えられます。
(参考資料)
https://www.dentsu.co.jp/news/release/2022/0309-010503.html
https://www.group.dentsu.com/jp/news/release/000888.html
Web広告とは
そもそもWeb(インターネット)広告とは、ネット上の各種媒体に出稿する広告のことを指します。
媒体別に見ると、以下のような種類が挙げられます。
①専門メディア(記事内やサイト上に広告を表示)
・ニュースサイト
・製造業系オウンドメディア
②検索エンジン(検索結果や関連媒体に広告を表示)
・Google
・Yahoo!
・Microsoft(Bing)
③SNS(SNS上に広告を表示)
・Facebook
・Twitter
・Instagram
・YouTube
製造業のWeb広告活用
前述のように成長が見られるWeb広告ですが、BtoB製造業においてもその活用が進んでいます。
BtoB製造業の場合、かつて「Web広告」といえば専門メディアへのバナー広告やPR記事が主流でした。しかし、ここ数年ではGoogleなどの検索エンジンが提供する広告出稿サービスやSNS広告が普及してきています。
中でも、BtoB製造業にとっては、検索エンジンが提供する広告の活用が特に効果的だと考えます。
検索エンジン(検索結果や関連媒体に広告を表示)
・Google
・Yahoo!
・Microsoft(Bing)
その理由は「見込み顧客の行動フロー」にあります。
見込み顧客の行動フローに合わせた広告配信
自社(BtoB製造業)の未知の見込み顧客が新規取引先を探す際、情報収集から問い合わせ先選定までに複数の行動フローが考えられます。
見込み顧客はその各ステップに合わせ、あらゆる切り口でキーワードを打ち込み、情報を検索します。ここで効果を発揮するのが、検索エンジンが提供する広告です。
検索エンジンが提供する広告であれば、検索結果に応じて広告を表示できます。そのため、業務中で忙しく、複数の媒体を確認する時間がない中でも、必要な時にピンポイントに情報を届けることができます。
どの検索エンジンの広告を使うべきか
代表的な広告としてはGoogle、Yahoo!、Bingが挙げられます。それぞれにメリットがありますが、どれから始めるか迷っている場合はGoogle広告をおすすめします。国内で最も利用者の割合が多く、より幅広い人に見てもらえる可能性があります。
Yahoo! | Bing | ||
---|---|---|---|
利用者割合 (日本) |
76.27% | 16.85% | 6.29% |
配信先 | ・Googleの検索結果 ・Googleの他のサービス媒体(YouTube,Gmail など) ・外部の提携サイト (livedoor, BIGLOVE など) |
・Yahoo!の検索結果 ・Yahoo!の他のサービス媒体(Yahoo!ニュース、Yahoo!知恵袋 など) ・外部の提携サイト (Bing, 朝日新聞DIGITAL など) |
・Bingの検索結果 ・外部の提携サイト (Yahoo!,AOL など) |
ユーザー層 | 若年層(20〜30代)が中心 | 高年層(50〜60代)が中心 | 高年層(50〜60代)が中心 |
デバイス (どのデバイスでよく見られるか) |
PC・スマホ | PCが中心 | PCが中心 |
ターゲティング設定 (誰に向けて配信するか) |
◎ 最も豊富 |
◯ Googleよりは少ない |
◎ Googleと同程度 企業や業界ごとへの配信が可能 (LinkedInのプロフィールを活用) |
表示オプション (広告上に表示する内容) |
◎ 最も豊富 |
◯ | ◯ |
Google広告とは?
Google広告は、Googleが提供するサービスです。Google AdSenseというサイト運営者向けの広告配信サービスから、広告を世界中のWebサイトに表示させることができます。クリック課金型の広告で、リンクのクリックによって費用が発生します。
Google広告のメリット
- より多くの人に見てもらえる可能性がある
- 自由な配信設定が可能
- 広告データの分析昨日が充実
前述のように、Googleは国内で最も利用されている検索エンジンのため、より多くの人に見てもらえる可能性があります。広告内容の設定も豊富にあり、また管理画面上で確認できる分析データやレポートが充実しています。
また、Webサイトの分析でGoogleアナリティクスを活用されている方は、Google広告のデータを連携させることで「どの広告がお問い合わせに効果があったか?」などより詳しい分析が可能になります。
Google広告のデメリット
- 競合が多い恐れがある
利用者が多く、サービスも充実している分、出稿する企業も多いため競合となる広告が多い恐れがあります。
広告の掲載可否や順位は入札価格や、競合と比較した広告の質によって決まるため、なかなか広告が表示されなかったりクリック単価が高騰してしまうケースもあります。
Google広告の種類
Google広告の費用はオークション形式で決まります。そのため、競合と広告の品質で掲載の優先度が変わります。広告は全部で5種類。検索連動型広告、ディスプレイ広告、ショッピング広告、動画広告、アプリ広告です。
BtoB製造業で主に使われる広告は以下の3種類です。
- 検索連動型広告(リスティング広告)
- ディスプレイ広告
- 動画広告
それぞれ、簡単に紹介します。
検索連動型広告(リスティング広告)
検索エンジンでユーザが検索するキーワードに関連する広告を検索結果の画面に表示するものです。広告は、検索窓のすぐ下か一番下に掲載されます。
能動的に情報収集しているユーザに対して表示されるので、目的やニーズが顕在化したターゲット層へのアプローチに適しています。また、ターゲットをさらに絞り込むことも可能です。地域や曜日、時間帯、ターゲットの興味関心などで絞り込みできます。
ディスプレイ広告
ディスプレイ広告は、Googleディスプレイネットワーク(GDN)と呼ばれています。Googleと提携するWebサイトやアプリに配信される広告のことです。提携サイトのバナー枠で配信されます。静止画像、動画、テキスト形式で配信できます。
Google提携サイトは非常に多く、広い範囲のユーザに訴求できます。漠然としたニーズをもつ潜在層へのアプローチにも有効です。非常に詳細なターゲット設定が可能で、地域、年齢、性別はもちろん、家族構成や世帯年収、興味関心分野、購買意欲の高さ、サイトの閲覧履歴などから細かく指定できます。一度自社サイトに来訪したユーザに対してリマーケティングできるのもディスプレイ広告の特長です。
動画広告
YouTubeに掲載される広告です。「インストリーム」「ディスカバリー」「バンパー」「アウトストリーム」「マストヘッド」の5タイプあり、掲載場所や時間、課金方式が異なります。
YouTube広告は広告の目的によって配信すべきタイプが異なります。ブランディングや認知度アップに向いているのは、動画の中で再生されるインストリーム広告やバンパー広告です。一方、商品の比較検討や購買促進には、YouTube内の検索結果や関連動画の横に表示されるディスカバリー広告が向いています。
Google広告で費用対効果を測る指標
広告の導入を検討する上で気になるのはやはり費用対効果の面ではないでしょうか。まず、費用対効果を測るための指標例を以下にてご紹介します。
広告費用の回収率(ROAS)
広告にかけた予算に対して、「どれだけ売上をあげることができたか?」を%で表す指標です。
ROAS = 広告を通じて獲得した売上 ÷ 広告費 × 100(%)
例)広告費:10万円 売上:50万円の場合
ROAS = 500% (50万円(売上)÷ 10万円(広告費)×100%)となります。
言い換えると広告費1円で5円(=1×500%)の売上を獲得した、ということになります。
この指標により、広告からどれぐらい売上を回収できたのか、どれほど売上に寄与しているのかを測ることができます。
顧客獲得単価(CPA)
「自社が設定する広告の成果を1回得るのにどれほど費用がかかったか?」を示す指標です。
※成果は企業によって、広告を通じた資料ダウンロードや、お問い合わせ獲得などさまざまな内容が考えられます。
CPA = 広告費 ÷ 成果数(資料ダウンロード・お問い合わせなど)
例)広告費:10万円 資料ダウンロード:10件の場合
CPA = 1(10万円(広告費)÷ 10件(成果数))
CPAが低いほど、低い広告費で成果を得られていることになるため、費用対効果の高い広告であると言えます。
Google広告の費用対効果を最大化する3つの施策
では、この費用対効果を向上させるにはどういった施策が考えられるのか、以下に3つご紹介します。
広告運用だけでなくWebコンテンツの見直しもセットで行う
リスティング広告の費用対効果を高めるために、広告キーワードや広告文の見直しを行うことが多いかと思いますが、広告運用の範疇で対策できることは限られていますし、それだけでは不十分です。SEO対策を行う時と同じように、分析ツールを使いながらWebコンテンツを定期的に改修していくことを広告運用とセットで行うことで費用対効果は最大化します。具体的には下記3つの施策を行っていくことをオススメします。
①広告品質スコアを高める
広告品質のスコアとは、広告の内容や広告のリンク先のページの内容などがキーワードに適したものかを検索エンジンが点数付けしたものです。このスコアにより広告の公平性や検索サービスの信頼性が確保されています。リスティング広告の掲載順位は、入札単価だけで決まるのではなく、入札単価×広告品質で決まってきます。なので、広告品質を高めれば必然的にクリック単価が下がり、少ない広告料金で広告運用できるようになります。
品質スコアを決める要素として、広告をクリックした後に表示されるWebページの品質が大きく関わってきます。ユーザが検索したキーワードとの関連性が高く、ユーザが求めている情報を適切に提供しているか、といったことで評価されるので、Webコンテンツの見直しが必須となります。広告の費用対効果を上げたいなら、広告運用のテクニックでどうにかするよりも品質スコアを高める方が効率的なのです。
②サイトマップとランディングページの見直し
リスティング広告を運用する上で下記のような指標を計測しながら改善を行っていきますが、これらの指標の中で最も大事なものが「直帰率」だと考えています。
- 表示回数
検索ユーザが設定したキーワードで検索した際に広告が表示された回数。 - アクセス数
ユーザが広告をクリックし、Webサイト内にアクセスした回数。この時点で広告費用が発生します。 - 直帰率
アクセスしたユーザが次のページへ遷移したり、問合せなどのアクションを起こすことなく離脱してしまった割合。 - コンバージョン数
問合せや資料請求など、ユーザがGOALとなるアクションを行った回数。
直帰率が最も重要である理由
リスティング広告の料金は広告をクリック(=アクセス)した時点から広告料金が発生するので、アクセスしたユーザをいかにコンバージョンまで誘導するかが課題です。その中で「直帰率」は広告料金をかけて獲得したユーザを取り逃したしまった割合という極めて重要な指標であり、直帰率が高いということは広告料金を捨ててしまっていることと同じになります。
直帰率を下げるための対策
直帰率を改善するには、ユーザがアクセスした際に瞬時に「このページには自分が求めている情報が掲載されている」と思わせることです。直帰率を下げるための対策として最も効果的なのが、選定した広告キーワードに合わせた「サイトマップ策定」とユーザへ情報を効率的に伝えるための「ランディングページ作成」です。ユーザが持っているニーズをカテゴリ分けし、ニーズに沿ったランディングページをそれぞれ作成することでユーザの離脱を低下させることができます。
③クロージング方法を工夫する
広告主が最も期待しているユーザの行動(=コンバージョン)は、商品の購入、もしくは購入につながる問合せの獲得だと思います。しかし、アクセスしたユーザの大半はその行動を起こすことなく離脱していきます。そのため、どのような方法でユーザをコンバージョンさせるか(=クロージング方法)を考えることは、広告の費用対効果を高める上で重要なポイントです。
クロージング方法を見直す上で考えるべきポイント
- 売上増加のための新規顧客獲得なのか、技術の用途開発のためのテストマーケティングなのか、Webサイト運用の目的を明確にして、クロージング方法を考える。
- とにかく問合せ件数を増やすことを優先するのであれば、技術資料ダウンロードなど、問合せハードルの低いものをコンテンツとして用意する。
- 他部門と連携する場合は、実際に問い合わせ対応行う部門とよく相談の上、クロージングコンテンツを検討する。
特に広告を運用する部署と営業部署とが異なる場合、両者でよく話し合って最善策を考えていきましょう。
Google広告の運用改善事例
弊社(テクノポート)でのBtoB製造業での運用改善事例を2つご紹介します。
測定機メーカー様の改善事例
・キーワードのマッチタイプを再検討
測定機を扱っている会社様の運用状況を見ると、キーワードが全て部分一致で登録されており、表示やクリックされている検索語句に関連性の低いものが多く含まれていました。
部分一致はDDA(データドリブンアトリビューション)の初期段階としてGoogleは奨励していますが、このお客様は運用開始から長期間が経過しており、効果の高いキーワードへの絞り込みをするには十分でした。
そこで、過去コンバージョンを獲得しているキーワードを中心に関連性の高いキーワードを完全一致とフレーズ一致で入稿することで、CPAの削減と反響数の向上を実現できました。
・製品の類語の追加
製造業では製品名称が市場で何通りも使われているケースが多いです。これはツールや類語辞典を使っても調べることはできず、業界知識がないと気づくことができません。例えば、雷サージ対策のデバイスにSPD(Surge protective device)という製品がありますが、SPDの他に保安器、避雷器、アレスタ、バリスタなどと呼ばれる場合があります。
この測定機メーカー様の場合でも、製品名として1キーワードしか登録していませんでしたが、市場で流通している言い換えを複数パターン入稿することで、広告表示機会損失を減らすことができました。
作業服メーカー様の改善事例
・ランディングページの改修
こちらの例では広告だけでなく、LP(ランディングページ)の改修も行い反響率の向上を実現しました。弊社ではサイト制作の支援も行っており、ユーザビリティの改善やコピーライティングも行うことができます。
多くの場合、広告の改善ではクリック率の向上は見込めますが、コンバージョン率の向上を考えるとランディングページの改善の方が重要な場合が多いです。広告とランディングページの両面から反響数や反響率を検証していくことが重要です。
・入札戦略の変更
入札戦略が「コンバージョン数の最大化」に設定されていましたが、自動化が働くまでのコンバージョン数が一定期間取れていませんでしたので、「クリック数の最大化」の入札戦略に変更しました。この結果、クリック単価が下がってより多くの流入が入り、反響数の改善にも繋がりました。
BtoB製造業における広告キーワードの特徴
BtoB製造業におけるキーワードは、業界特化の用語が多く、基本、一般の個人が検索することはほとんどありません。そのワードで検索されている時点で、ほぼ関係者による情報収集ということになります。それが見込み客の可能性も高いです。つまり、その検索ワードに対して検索連動型広告を出稿することで、具体的に情報収集している顕在化した「未知の見込み客」に効率よくアプローチできます。
例えば、「協働ロボット」というキーワードで検索すると、以下のようにロボットメーカーや、部品メーカーの広告が上位にズラリと並びます。
検索連動型広告でも競合が多いキーワードだと、自社の広告を上位に表示させるために工夫が必要となります。Google広告はオークション形式ですが、単に入札単価をあげれば広告が上位に表示されるわけではありません。検索キーワードと広告文がどれだけ関連性が高いかや、リンク先のランディングページの利用のしやすさ、広告文との親和性なども影響します。
どのキーワードで広告を出稿するかは、Googleが提供している「キーワードプランナー」というツールで調査してから決めるといいでしょう。検索ボリュームや入札単価の範囲、競合がどれだけ多いかなどを調べることができます。
まとめ
Webサイトで未知の見込み客を集める方法として、Web広告は有効な手段です。Google広告は代表的なWeb広告のひとつです。広告は全部で5種類ありますが、BtoBでは、検索連動型広告、ディスプレイ広告、動画広告がよく使われます。
中でも、少額から始められて、ニーズが顕在化した情報収集中の顧客に有効な広告が検索連動型広告(リスティング)です。BtoB製造業におけるキーワードは、見込み客による可能性が高いので、効率よくアプローチできます。
Google広告はオークション形式ですが、単に入札単価をあげても広告が上位に表示されるわけではありません。検索キーワードと広告文、ランディングページとの親和性や使い勝手が影響します。ターゲットのニーズに寄り添った質の高いコンテンツが必要です。
製造業のWeb広告活用についてさらに詳しく知りたい方は、他にも広告に関する記事を複数掲載しておりますのでぜひこちらからご覧ください。