テクノポートの徳山です。当記事では、技術マーケティングに成功した弊社クライアント7社の事例を取り上げ、取り組みの内容を紹介するとともに成功要因を考察します。自社技術のマーケティングに取り組んでいらっしゃる方はぜひご覧ください。
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この記事の目次
技術マーケティングとは
技術マーケティングとは、技術シーズと顧客ニーズが合致する市場(用途)を発見したり、その市場において自社技術の優位性を分かりやすくユーザーへ伝えることで、新規顧客獲得につなげたりするまでの一連の活動のことです。
前者の目的「市場(用途)の発見」と、後者の目的「分かりやすく技術を伝える」では、アプローチの方法が異なります。両者を同時並行で行うことはできますが、戦略を考える際には分けて考えることをおすすめします。
ここからはそれぞれの目的に応じた成功事例をご紹介します。
広く技術を認知させ、新たな用途を開拓する
一つ目の目的である「市場(用途)の発見」を目指す企業が抱えている課題としては、以下のものが挙げられます。
- 画期的な技術を開発したがどのような用途で活用できるか分からない
- 既に特定の市場では大きなシェアを獲得できているが、それ以外の市場が開拓できていない
これらの課題を解決するためには、想定(ターゲティング)できている市場以外のユーザーにも技術を幅広く認知させる必要があります。そのため、ターゲットを絞りすぎず、さまざまな分野のユーザーへ技術を周知させていく必要があります。
以下より、技術マーケティングにより「市場(用途)の発見」に成功した企業の事例をご紹介していきます。
NISSHA株式会社(摩擦・せん断力センサー)
(参照:NISSHA株式会社)
技術マーケティングの目的
自動車業界向けに開発された摩擦・せん断力センサーを、他の有望な分野へ用途展開させること。
施策の内容
- MFTフレームワークで技術を棚卸し
- 技術紹介を行うためのオウンドメディアを構築
- 多方面の技術者へ技術を知ってもらうために、SEOを目的としたWebコンテンツの制作やWeb広告を実施
- アクセスデータと問い合わせ内容を分析し、用途仮説の立案・検証を繰り返す
成果
技術マーケティングにより、自動車業界以外の有望な用途としてロボット業界を見出し、当業界向けの技術開発を本格展開するに至った。
株式会社リソー技研(超音波はんだ技術)
(参照:株式会社リソー技研)
技術マーケティングの目的
自社製品である超音波はんだごて「Velbond(ベルボンド)」の拡販、および超音波はんだ技術の用途を広げること。
施策の内容
- 超音波はんだごて「Velbond(ベルボンド)」の販売および、超音波はんだ技術のアプリケーションを紹介するためのオウンドメディアを構築
- 定期的なアクセス分析により用途仮説を立案
- 用途仮説を実証するためのWebコンテンツ(主に技術コラム)を作成
成果
ニーズがある機能として「誰でも簡単に接合できる」「異素材同士を接合できる」を想定していたが、新たに「低温で接合できる」という方向性を見出した。その結果、「アルミ同士の接合」という用途仮説を導き出し、多くの顧客獲得に成功した。
株式会社グリムファクトリー(剥がれないデジタルカラー塗装印刷)
(参照:株式会社グリムファクトリー)
技術マーケティングの目的
特許取得した技術「剥がれないデジタルカラー塗装印刷」の用途を開拓すること。
施策の内容
- 当技術を分かりやすく伝えるためのWebページや動画を制作
- クラウドソーシングで当技術を使った用途アイデアを募集
成果
金属カードの印刷、医療、屋外塗装などといった開発段階からの相談や、既存加工方法の代替手段として使えないかといった問い合わせを多数獲得。また、剥がれない印刷というキーワードで検索上位表示を実現。
用途開発を実現した3社の事例から考察する成功ポイント
- ターゲットを絞りすぎず、さまざまな分野のユーザーへ情報を届けることを意識する
- その技術に対し知識がないユーザーが閲覧しても分かりやすいようなコンテンツ(テキスト、画像、動画を活用)を作成する
- 情報発信した結果を踏まえ、新たな用途仮説を立案したり、立案した仮説から新たなコンテンツを生み出している
技術の用途開発を実践する方法については以下の記事もご覧ください。
ターゲティングした用途における市場で顧客を獲得する
二つ目の目的である「技術を分かりやすく伝える」を目指す企業が抱えている課題は以下のものが挙げられます。
- いくつか有望な市場(用途)は見えているが、うまくターゲティング(絞り込み)ができていない
- 有望な市場(用途)を選定できているが、技術の価値をうまく伝えられていない
これらの課題を解決するためには、ターゲットの解像度を上げたうえで、どのように技術の優位性を伝えていくかを考える必要があります。
以下より、技術マーケティングにより技術を分かりやすく伝え、多くの顧客獲得に成功した企業の事例をご紹介していきます。
昭和電器株式会社(金属部品の樹脂化提案)
(参照:昭和電器株式会社)
技術マーケティングの目的
PPS材を用いた金属部品の樹脂化提案を行うことで、PPS成形金型および成形による部品加工を外注したいメーカーからの新規取引を獲得すること。
施策の内容
- 幅広い樹脂成形分野の中から、技術難易度・付加価値の高いPPS樹脂成形分野にターゲットを絞ることを意思決定
- 当技術を広めるために「金属部品の樹脂化提案」という切り口を考案
- Webサイトのコンテンツを全面的に「PPS成形分野」に絞り、専門性の高さをアピール
成果
PPS、PPS成形、PPS金型といったキーワードで検索上位対策を実現し、Webサイトから新規の見込顧客を多く獲得できるようになった。また、目に見える成果により、社内のモチベーションが大きく向上した。
株式会社TKYプロダクツ(ノビナイト加工)
(参照:株式会社TKYプロダクツ)
技術マーケティングの目的
ノビナイト加工ができるサプライヤー企業を探しているメーカーや同業者からの新規取引を獲得すること。
施策の内容
- 競合ひしめく旋盤加工分野の中で独自のポジションを築けそうな切り口を検討
- 加工経験の多かったノビナイト材の加工に特化した切り口でWebサイトを全面リニューアル
- Webサイトには自社の加工技術のアピールだけでなく、ノビナイト材に関する知識系のコンテンツも多く掲載することで専門性の高さを訴求
成果
ノビナイト、ノビナイト加工といったキーワードで検索上位対策を実現。ノビナイト加工の新規取引案件を多く獲得することに成功した。
高木特殊工業株式会社(高品質めっき)
(参照:高木特殊工業株式会社)
技術マーケティングの目的
ニッケルめっき、クロムめっき、PTFEめっきにおいて、めっきの品質にこだわるメーカー、特に自動車業界以外から新規取引先を獲得すること。
施策の内容
- ターゲットを設計者に絞り、技術的な内容を中心にサイトを構成
- めっきに詳しくない設計者にも興味を持ってもらえるように、各めっきの特徴をレーダーチャートを使ってわかりやすく表現
- めっきの物性値を定量的に伝えるため、評価試験の結果を掲載
- お客様先で評価してもらえるようにテストピースを配布
- 全体のアクセス数を増加させるため、めっき関係でのSEO対策を実施
成果
これまで取引のなかった業界から問い合わせが増えた。特に、設計開発者からの問い合わせも多く、狙い通りの結果となった。
株式会社富士産業(鋼材販売、金属加工)
(参照:株式会社富士産業)
技術マーケティングの目的
個人、デザイナー、建築事務所をターゲットに、小口の製作金物案件を受注すること。
施策の内容
- 既存事業であった鋼材販売の顧客とバッティングしない領域として、個人、デザイナー、建築事務所をターゲットを選定
- ターゲットユーザーが求める技術領域に応えるため、金属加工以外の業種(皮革や繊維など)も含めた独自の協力工場ネットワークを構築
- 町工場への問い合わせのハードルを下げるため、かっこよいデザインではなく親しみやすいデザインのWebサイトへリニューアル
成果
主業であった鋼材販売事業に代わり、製作金物事業が大きな売上の柱となった。製作金物事業では、月30件前後の問い合わせを獲得している。
多くの顧客獲得を実現した4社の事例から考察する成功ポイント
- 顧客のニーズ、自社の強み、競合性の度合いを俯瞰したうえで、適切なターゲティングを実践している
- ターゲットユーザーに対し、その知識レベルに合わせたコンテンツを制作することで、分かりやすく技術を伝える工夫をしている
- 絞り込んだ分野に対して深く情報提供することで、専門性の高さをアピールし競合他社との差別化を図っている
以上、技術マーケティングに成功した7社の事例をご紹介しました。皆様の技術マーケティングを推進するための参考となれば幸いです。
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