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現地の顧客にがっかりされる翻訳にならないようにするには?
海外進出を進めている製造業にとって、英語のWebサイトの制作は集客のための重要なマーケティング施策となっております。これまでは、英語に詳しい日本人が翻訳するケースが多かったのですが、機械翻訳や生成AIによる翻訳ツールが普及され、翻訳の精度が上がってきているため、ツールを利用されるケースも増えてきております。しかし、そのまま翻訳したままではまだまだネイティブの顧客に伝わりにくい翻訳になっている可能性があります。
結論を先に申し上げますと、現地の顧客にがっかりされる翻訳にならないようにするためにはまだまだネイティブのチェックが欠かせないと言えます。本記事では製造業が日本語のWebサイトや技術資料を英語に翻訳するときの注意点についてご紹介をします。
製造業Webサイト翻訳の注意点
アメリカ英語とイギリス英語を統一する
英語で技術記事を書くとき、アメリカ英語(AmE)とイギリス英語(BrE)で異なる表記や用語があるためどちらかに統一しましょう。例えば、次のような違いがあります。
1. スペルの違い
AmE: color, analyze, center
BrE: colour, analyse, centre
技術記事では、材料特性(color change)や解析方法(analyze data)などはよく出てくる単語なので要チェックです。
2. 用語の違い
AmE: gasoline, wrench, elevator
BrE: petrol, spanner, lift
単語そのものが変化するパターンです。
3. 単数・複数の扱い
AmE: The company is developing a new adhesive.
BrE: The company are developing a new adhesive.
イギリス英語では集合名詞(company, team, staffなど)を複数扱いする場合があります。
記号:○×△は通じない
日本語でよく使われる「○×△」の記号表現は、英語では通じません。日本語では「○=良い、正しい」「×=悪い、間違い」「△=どちらとも言えない」と認識できますが、英語圏では同じ文化的背景がないため誤解を招きます。翻訳時には記号に「acceptable / not acceptable / partially acceptable」の注釈を付けるなど、内容に応じた言葉で明確に表現することが重要です。
数値や日付の表記
日本語から英語へ翻訳する際には、数値や日付の表記方法に注意が必要です。日本語では「1,000円」「2025年9月5日」のように表記しますが、英語では「¥1,000」「September 5, 2025」と書くのが一般的です。また、日付はアメリカ式(September 5, 2025)とイギリス式(5 September 2025)があり、対象読者に合わせて使い分ける必要があります。
SEOで検索される言葉に翻訳する
日本語のWebサイトを英語に翻訳する際は、単に直訳するのではなく、SEOを意識した検索されやすい英語表現を選ぶことが重要です。日本語で一般的な用語が、英語圏では異なる表現で検索される場合があります。例えば「接着剤」を直訳してadhesiveとするよりも、用途によってはglueやbonding agentの方が検索需要が高いケースがあります。翻訳時には読者が実際に使う検索キーワードを調査し、それに合わせて最適な言葉を選ぶことで、英語版サイトの集客効果を高めることができます。
翻訳しずらい日本の専門用語がある
日本語のWebサイトを英語に翻訳する際には、直訳が難しい日本特有の専門用語に注意が必要です。文化や制度、産業に根差した言葉は英語に対応する単語が存在しない場合が多く、そのままでは意味が伝わりません。
例えば、製品評価の条件としてでよく使用される「常温」は直訳するとcommon temperatureやordinary temperatureとなりますが、人間が生活している大気と同じ温度帯を意味する「ambient temperature」と訳すほうが自然な場合があります。
曖昧な表現は英語に翻訳しずらい
日本語には「適宜」「~程度」「場合によって」「など」といった曖昧な表現が多く見られますが、英語ではそのままでは意味があいまいになり、読者に正確に伝わりません。そのため翻訳時には、主語や条件を明確にし、数量は「5–10 mm」「within 24 hours」のように範囲や期限で具体的に示す必要があります。曖昧な言葉は定義や注釈を補うことで、誤解のない分かりやすい英文にすることが重要です。
カタカナ英語・和声英語に注意する
日本語のWebサイトを英語に翻訳する際は、カタカナ英語や和製英語に注意が必要です。例えば「コンセント」は英語ではelectrical outlet、「サラリーマン」はoffice worker、「ベビーカー」はstrollerと表現します。そのまま英語にすると誤解や不自然さを招くため、実際に英語圏で使われている表現に置き換えることが大切です。翻訳前に用語を確認し、適切な英語表現を選ぶことで読み手に正しく伝わります
単位の表示
日本語のWebサイトを英語に翻訳する際は、数値に付随する単位の表記に注意が必要です。日本語では「mm」「kg」などSI単位が使われますが、英語圏では表記ルールが異なり、値との間に半角スペースを入れるのが基本です(例:10 mm, 5 kg)。また一部の国ではインチやポンドなどのヤード・ポンド法が一般的に用いられるため、対象読者に合わせて単位を換算・併記することが求められます。
規格の表示
日本語のWebサイトを英語に翻訳する際は、規格の表示方法に注意が必要です。日本ではJISやJASなど国内規格が多く使われますが、英語版では国際的に認知度の高いISOやASTM、ENといった規格の表記に合わせる方が理解しやすい場合があります。また、規格番号や年号はそのまま翻訳せず正式表記を用い、必要に応じて「Japanese Industrial Standard (JIS)」など補足を加えると海外の読者にも正確に伝わります。
複数のコラムで単語や言い回しを統一する
日本語のWebサイトを英語に翻訳する際は、複数のコラムやページで同じ意味の単語や表現を統一することが重要です。例えば「adhesive」と「glue」を混在させると読者に異なる製品と誤解される恐れがあります。また「evaluation」と「assessment」なども統一しないと文章全体の一貫性が損なわれます。用語集を事前に作成し、サイト全体で統一することで、読みやすさと専門性の両立が可能になります。
Webサイトの翻訳手段
翻訳する手段は以下の4点が挙げられます。それぞれのメリットと注意点について説明します。
- 日本のプロの翻訳家が執筆
- ネイティブのプロの翻訳家が執筆
- 機械翻訳
- 生成AIによる翻訳
日本のプロの翻訳家が執筆
英語に詳しい日本人へ翻訳を依頼するケースです。
メリット
- 日本語のニュアンス・文化背景を正しく理解しているため、意味を取り違えにくい。
- 専門用語や業界知識に強い翻訳者を選べば、正確性が高い。
- 日本の企業文化に合った丁寧な表現を英語に置き換えやすい。
注意点
- 英語の自然さ・マーケティング的な響きが弱くなることがある。
- ネイティブが読むと「不自然」「硬い」印象になる場合がある。
- 最終的にはネイティブチェックが必要になる場合がある。
ネイティブのプロの翻訳家が執筆
ネイティブのプロの翻訳家に翻訳を依頼するケースです。
メリット
- 自然でこなれた英語になる。
- 専門分野を理解している翻訳者を選べば、ターゲット読者(海外顧客)に直接伝わる文章が書ける。
注意点
- 日本語特有の表現(例:「段取り」「手戻り」「三現主義」)を理解できず、誤訳のリスクがある。
- 日本語の曖昧表現(例:「多少のばらつき」)を誤解されることがある。
- 専門分野を理解しているネイティブ翻訳者は数が限られ、コストが高め。
機械翻訳
DeepL、Google翻訳を使用して翻訳するケースです。
メリット
- 翻訳スピードが圧倒的に速い。
- DeepLは特に文脈の理解が強く、ビジネス文書の下訳には十分な精度がある。
注意点
- 文章スタイルの指定ができない
- 訳抜けが発生する場合がある
- 最終的にはネイティブチェックが必要になる。
生成AIによる翻訳
ChatGPT、Gemini、Claudeを使用して翻訳するケースです。
メリット
- 機械翻訳よりも文脈やトーンを調整できる。
- 「技術資料風」「キャッチコピー風」などスタイル指定が可能。
- 関連するWebサイトや専門用語を事前に教えれば、専門性と統一感のある翻訳が可能。
- SEOや読み手を意識した翻訳にも対応できる。
注意点
- 正確性はプロの翻訳者に劣る場合があり、専門知識の不足により誤訳のリスクがある。
- プロンプトによって翻訳の品質が変わる
- 同じ日本語からの翻訳でも翻訳のたびに言い回しが変わる場合がある
- PDFやWebサイトを一度に読み込ませて翻訳をすることも可能だか訳抜けが発生する確率が高くなる。
- 最終的にはネイティブチェックが必要になる場合がある。
ネイティブチェックの方法
プロのネイティブ翻訳者・校正者に依頼
ネイティブの翻訳者にチェックを依頼するのが最も確実です。ただし、業界に詳しくないネイティブの場合は記事内容を十分にチェックできない可能性があるため、業界の知識があるかどうかを事前に確認したほうがよいでしょう。ネイティブの翻訳者は翻訳プラットフォームで依頼する場合や、ネイティブの知人がいればその方に依頼する場合があります。
主な翻訳プラットフォームは以下の4つが挙げられます。
社内・取引先のネイティブスピーカーにレビュー依頼
海外拠点や海外顧客がいる場合、現地のネイティブ担当者にレビューしてもらうのは有効な手段です。私が製造業で勤務していた頃、海外向け製品の取扱説明書を日本で作成した後、現地法人のネイティブの担当者にチェックしてもらっていました。「読めるレベルではない」と言われ多くのフィードバックを受けて修正したことがありますが、品質面で安心してドキュメントを発行することができました。
テストユーザーに読ませる
英語版Webサイトやカタログを実際の顧客候補に見てもらい、理解度や印象を確認してもらう方法です。社内・取引先のネイティブスピーカーにレビューを依頼する方法と似ておりますが、翻訳の出来具合のチェックの他に実際に製品を使用する立場の方から製品仕様に関するフィードバックも得ることができます。
オンライン校正ツールを使用
AIによるオンライン校正ツールを使用する方法です。主なオンライン校正ツールとして次の3つが挙げられます。
文法の校正をするだけではなく、学術論文やビジネス文書、Eメールなどのジャンルに合った修正提案を表示することが可能です。
まとめ
本記事は、製造業のWebサイトを英語に翻訳する際の注意点について紹介しました。単なる直訳ではなく、読者が理解しやすく信頼できる文章に整えることが重要です。アメリカ英語とイギリス英語の違いや数値・単位の表記、専門用語や曖昧な表現への対応、さらにはSEOを意識した用語選びなど、多くのポイントに注意する必要があります。機械翻訳や生成AIの精度は向上していますが、それだけでは十分ではなく、最終的にはネイティブによるチェックが品質を左右します。
テクノポートではネイティブの翻訳者による翻訳サービスを提供しております。日本語を単に英語に翻訳するだけではなく、英語のキーワード調査を含めたSEOライティングを行っております。海外Webサイトやドキュメント類の翻訳でお困りの際はお気軽に弊社(テクノポート株式会社)までお問い合わせください。