製造業のLinkedIn企業アカウント活用術と成功事例を紹介

【執筆者紹介】山下 展義
この記事の執筆者
山下 展義
経歴
エネルギー分野のエンジニアとして10年間、小規模工場の省エネ提案や大規模プラントの蒸気システム診断、セミナー講師、バイオマス発電プラントの設計・建設プロジェクトを経験。また、個人で工業技術ブログを運営し、500本以上の記事を執筆。最高月間20万PVを記録し、YouTube登録者2万人、Xフォロワー8,000人を突破。

現在はテクノポート株式会社で製造業向けの海外Webマーケティングを担当。エンジニアリングの知見と情報発信力を組み合わせ、企業の販路拡大を支援している。

保有資格
エネルギー管理士(熱)、第三種電気主任技術者

SNS
LinkedIn
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製造業の営業や広報活動は、専門性が高くターゲットも限られるため、効率的に情報を届けることが難しいです。

展示会や訪問営業を中心にしている企業も多いですが、近年では製造業でもビジネス特化型SNSであるLinkedInの企業アカウントを活用するケースが増えています

LinkedInは他のSNSと比較して、世界中のビジネスパーソンが利用しており、経営層や技術者といった意思決定層に直接届く点が大きな強みです。特に製造業においては、新技術の発信、海外市場での認知、優秀な人材採用といった多方面で効果を発揮します。

本記事では、製造業がLinkedInの企業アカウントを運営することで得られるメリット、効果的な投稿内容、参考になる企業事例をご紹介します。

LinkedInの企業アカウントとは

LinkedInは、世界中のビジネスパーソンや企業が集まるBtoBに特化したSNSです。

その中でも「企業アカウント(会社ページ)」は、製造業において製品や技術の認知拡大、採用ブランディング、さらには海外市場での営業活動にまで活用できます。ここではまず、基本的な特徴やできることを整理します。

個人アカウントとの違い

LinkedInには「個人アカウント」と「企業アカウント」の二つが存在します。

個人アカウントはキャリア形成や人脈づくりに重きを置き、プロフィールや投稿を通じて“人”としてのブランドを築きます。一方、企業アカウントは会社全体の情報を発信し、採用・営業・広報を行います。

特に大きな違いは、複数の管理者で運営できる点や、アクセス解析機能が備わっている点です。また、広告配信や求人掲載など法人向けの施策が可能です。

個人アカウントと企業アカウントの比較を表にまとめると、以下のようになります。

  個人アカウント 企業アカウント(会社ページ)
主な目的 キャリア形成、人脈、専門性の発信 製品・技術の認知拡大、営業・採用・広報
発信対象 同業者、人脈、採用担当者など 顧客、取引先、パートナー企業、求職者
投稿内容 キャリア、業界への意見、活動報告 製品紹介、導入事例、求人情報、告知
広告活用 基本的に不可 LinkedIn広告利用可能

企業アカウントでできること

LinkedInで企業アカウントを開設すると、以下のような幅広い機能を活用できます。

  • 会社ページの作成・管理:会社概要や沿革、ビジョンの掲載による信頼性の向上
  • ショーケースページの運用:製品ラインや事業ごとの専用ページによるターゲット別情報発信
  • 投稿機能(コンテンツ発信):製品紹介、導入事例、採用情報、業界トレンドの共有
  • 求人掲載と採用ブランディング:LinkedIn上での求人公開と優秀人材へのアプローチ
  • イベント・ウェビナー告知:展示会やセミナー、オンラインイベントの集客と案内
  • 広告配信:業界・役職・地域を絞ったターゲットリーチ

これらに加えて、企業アカウントではアナリティクスでフォロワー属性や投稿効果を分析でき、結果を見ながら発信内容を調整できます。

次に、企業アカウントを運用するメリットについてです。

製造業がLinkedInで企業アカウントを運用するメリット

LinkedInは他のSNSと比べて利用者層がビジネス寄りで、意思決定権を持つ人材や専門家が多く集まっている点が特徴です。

さらに、世界中のユーザーに向けて情報を発信できるため、国内外の市場開拓に活用できるのも大きな魅力といえます。ここでは、製造業がLinkedInを運用する具体的なメリットについて解説します。

決裁者や専門家に直接届く

LinkedInの大きな特長は、利用者層に経営層や技術責任者、購買担当など意思決定に関わる専門家が多いことです。

製造業の営業活動では、最終的な決裁者にたどり着くまでに時間がかかることが一般的ですが、LinkedInを活用すれば、企業アカウントから直接情報を届けることができます。

特定の業種や役職を絞り込んで発信できるため、ニッチな技術や高額製品でも、必要としている相手に確実に情報を届けられます。

海外市場との相性が良い

製造業にとって海外市場の開拓は重要なテーマですが、言語や商習慣の違いから従来の営業活動だけでは効率的に進めにくい課題があります。LinkedInは世界中で利用されており、特に欧米やアジアのB2B分野での活用が盛んです。

企業アカウントを運用すれば、現地の代理店や見込み顧客、さらには潜在的なパートナー企業に直接つながることができます。海外の展示会に参加しなくても、技術情報や導入事例を発信することで認知を高め、問い合わせや商談のきっかけを作れるのです。

LinkedInの海外での利用者については、こちらの記事で詳しく解説しています。

専門的な情報を発信しやすい

製造業の製品や技術は専門性が高く、一般的なSNSでは関心を持つ人に届けにくい場合があります。

一方、LinkedInでは、業界別や職種別に情報が流通し、技術者や研究者など専門知識を持つ層に届きやすいです。企業アカウントを通じてホワイトペーパーや技術資料、研究成果、導入事例などを発信すれば、専門性を評価されやすく、企業としての信頼性を高めることができます。

また、フォロワーとの双方向コミュニケーションにより、新たなニーズや市場動向を把握できます。

これらのメリットを得るためには、日頃から利用者に支持される投稿を継続的に行うことが重要です。

製造業のLinkedIn企業アカウントで効果的な投稿内容

LinkedInの企業アカウントを効果的に運用するためには、どのような投稿を行うかが重要です。特に製造業は専門性が高いため、単なる会社紹介にとどまらず、製品や技術の強みを理解してもらう必要があります。

ここでは、製造業の企業アカウントで実際に成果につながりやすい投稿内容の代表例を紹介します。

製品・技術紹介

製造業の強みは独自の製品や技術力にあります。LinkedInでは画像や動画、さらにはPDF資料を添付して、わかりやすく専門性をアピールできます

新製品の特徴や改良点を紹介するだけでなく、利用シーンや課題解決のポイントを具体的に示すことで、技術に詳しい担当者や意思決定者に響きます。また、複雑な仕組みを解説する短尺動画や3Dモデルを用いると、理解につながりやすいです。

  • 新製品発表の紹介:製品写真や動画とともに特徴・性能を簡潔にまとめた投稿
  • 製品改良・アップデートの発表:改善ポイントを図表で提示
  • 利用シーンのデモ動画:実際の工場ラインでの稼働映像やシミュレーションを短尺動画で紹介
  • アニメーションを活用した解説:複雑な仕組みをわかりやすくビジュアルで伝える投稿
  • 技術者インタビューの紹介:専門性と企業文化を同時に訴求

導入事例・顧客の声

実際の導入事例や顧客の声は、新たな見込み客に大きな信頼感を与えます。

LinkedInはビジネス層が集まる場であるため、数値データや改善効果を交えたストーリー形式で発信すると説得力が増します。

例えば「生産効率が◯%向上、コストが◯割削減」といった成果を具体的に提示すると、同じ課題を抱える企業に刺さります。さらに顧客のインタビューや写真を取り入れることで臨場感を持たせられます。事例記事やホワイトペーパーへのリンクを設置し、興味を持った人を深い情報へ誘導する工夫も有効です。

社員紹介・企業文化

LinkedInは採用活動やブランディングの場としても活用できます。

製造業の現場や研究開発部門で働く社員を紹介することで、企業文化や働き方を伝えられます。例えば、社員のキャリアストーリーや一日の業務紹介は、求職者に具体的なイメージを与え、応募への後押しになります。

技術力だけでなく「人」を打ち出すことで、採用広報と同時に企業の親近感を高められます。

  • 社員インタビュー:「入社のきっかけ」「仕事内容」「やりがい」などを伝える記事や動画
  • 業務紹介:研究開発や工場勤務の1日をタイムラインで紹介し、働き方を可視化
  • キャリアストーリー:「海外拠点で活躍中の社員」など成長や挑戦を発信
  • オフィス・工場の雰囲気紹介:設備や休憩スペースを写真・動画で紹介し、文化を表現
  • 社内イベント・表彰の共有:表彰、研修、懇親会などを投稿し、チームワークや社風を発信

展示会・イベント情報

製造業では展示会や技術イベントが新規顧客との接点を生む重要な場です。

LinkedInの企業アカウントを通じて、出展告知から当日の様子、開催後の振り返りまで一連の情報を発信できます。事前に出展内容を伝えることで来場を促進し、当日はブースの写真や動画で臨場感を伝えると効果的です。

さらにイベント後に資料ダウンロードや問い合わせ先を案内すれば、リード獲得にも直結します。現地に来られなかった人にも情報を届けられる点は大きなメリットで、展示会の成果を最大化できます。

業界トレンド・ニュース

LinkedInは専門家や意思決定者が最新情報を求める場でもあります。

製造業の企業アカウントが業界トレンドや技術ニュースを取り上げ、自社の見解や解説を添えて発信すれば、専門性を示せます。

単なるニュースの紹介にとどまらず、「この動向が業界や顧客にどう影響するのか」「自社はどのように対応しているのか」を加えることで、読み手に価値を与えられます。

次に、実際にLinkedInを活用して積極的に情報発信を行う製造業の企業アカウントについて紹介します。

製造業でのLinkedIn企業アカウントの成功事例

フォロワーが数万人規模で、積極的に情報発信を行っているアカウントを表にまとめました。

特に海外展開が進んでいる企業では、並行してLinkedInでの情報発信を行っていることがわかります。また、多くの企業では英語を中心に投稿を行っていますが、一部日本語と英語の両言語で発信を行っているケースもあり、企業ごとの戦略の違いがうかがえます。

  フォロワー数 言語 投稿内容
日立製作所 155万人 英語 活動報告、業界ニュース
富士通 115万人 英語 活動報告、業界ニュース
デンソー 31万人 英語 活動報告、業界ニュース
横河電機 30万人 英語 活動報告、製品PR、デモ映像
三菱電機 27万人 英語 活動報告、業界ニュース
三菱重工業 26万人 英語 活動報告、業界ニュース
キーエンス 26万人 英語 活動報告、製品PR、デモ映像
FANUC(ファナック) 24万人 英語 活動報告、デモ映像
SMC 16万人 英語 活動報告、製品情報
小松製作所 11万人 英語 活動報告、業界ニュース
本田技研工業 10万人 英語、日本語 活動報告、技術情報、製品PR
村田製作所 8万人 英語、日本語 活動報告、技術情報、製品PR
川崎重工業 5万人 英語 活動報告、業界ニュース
東京エレクトロン 4万人 英語 活動報告、採用情報
ダイキン工業 4万人 英語 活動報告

※フォロワー数は2025年9月25日時点

これらは全て大手企業のもので、主に活動報告や業界ニュースの投稿でフォロワーを増やしているアカウントも多いです。

一方で、今後、海外展開を拡大していきたい中堅、中小企業にとっても投稿内容について参考にできる企業アカウントを一部紹介します。

キーエンス、横河電機

キーエンスや横河電機などのセンサーメーカーは、LinkedInで海外向けに製品情報や設置方法、実際の使用状況を示すデモ動画を積極的に発信しています。

これは単なる製品紹介ではなく、海外市場の潜在顧客に「自社製品の有用性を理解させ、導入後のイメージを具体的に持たせる」ことを狙っていると考えられます。

中小企業が海外展開を目指す場合も、仕様やカタログ情報だけではなく、実際の利用シーンや課題解決のストーリーを発信することが重要です。特に動画や画像を活用すれば、言語の壁を超えて理解されやすくなります。

本田技研工業

本田技研工業はLinkedInのニュースレター機能を活用し、開発ストーリーや技術的な背景など、通常の投稿では伝えきれない深い情報を定期的に発信しています。

これは単なる広報ではなく、技術に関心を持つ層と継続的な接点を築き、読者をファン化していく狙いがあると考えられます。製品や技術を単発的に発信するだけでなく、その開発過程や活用事例を定期的に届けることで、ブランドへの信頼と共感を積み重ねられます。

特に海外市場では、企業規模の大小よりも「専門性」と「一貫した発信」が評価されやすいため、自社の強みをテーマ化したニュースレターを継続することが、見込み顧客やパートナー候補との関係構築に有効です。

SMC

SMCはLinkedIn上で制御機器や継ぎ手といった専門性の高い製品情報を積極的に発信しています。

一見ニッチで一般的な反応は少なそうですが、実際には制御機構の導入を検討するエンジニアや技術者にフォローされており、LinkedInならではの特性が表れています。

狙いとしては、幅広い認知よりも「意思決定に関与する専門層」に確実にリーチし、検討段階から自社製品を選択肢に入れてもらうことだと考えられます。

海外展開を考える中小企業にとって、専門的すぎると感じる情報であっても、必要としている人には高い価値を持つという点は貴重な気づきです。ターゲットを明確にし、その層が求める実用的な情報や技術資料を発信すれば、規模に関わらず信頼と関心を獲得できる可能性があります。

FANUC(ファナック)

FANUCはLinkedInで工作機械の展示会映像など、視覚的に強いインパクトを与えるコンテンツを発信しています。

展示会は本来その場に来場した人だけが体験できるものですが、映像として公開することで情報が「資産」として残り、時間や場所を超えて広く共有できます。

狙いとしては、展示会投資の効果を来場者以外にも波及させ、見込み顧客や海外市場にまでリーチを広げる点にあると考えられます。中小企業にとっても、展示会や工場見学といったリアルイベントを動画や記事にして二次利用することで、限られたリソースでも発信効果を長期的に最大化できます。

海外展開を視野に入れるなら、英語字幕やダイジェスト化を工夫し、現地の技術者や意思決定層にも届けることが重要です。

製造業が海外展開に向けてLinkedIn企業アカウントを始めるなら

LinkedInは、製造業が海外市場で認知を高め、見込み顧客やパートナーとつながるための強力なプラットフォームです。

しかし実際に取り組もうとすると、「どんなターゲットを想定すべきか」「どのような投稿を続ければよいのか」「成果をどう測ればよいのか」といった課題に直面する企業も多いのではないでしょうか。

テクノポートでは、海外展開を目指す製造業向けに、LinkedInの運用代行サービスをご提供しています。ターゲットの設計やコンテンツ企画から、実際の投稿運用、定期的なレポートと改善検討まで、長期的に伴走しながらご支援させていただきます。

「自社には発信できる内容がない」と思われる方でも、実際にお話を伺うと、国内向けに使っている販促資料や展示会コンテンツを二次利用できるケースが多くあります。また、状況によってはLinkedInではなく、Webサイトの見直しやSEO対策、広告出稿など別の施策が適しているといったご提案もいたします。

海外展開に向けた一歩をLinkedInから始めたいとお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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エネルギー分野のエンジニアとして10年間、小規模工場の省エネ提案や大規模プラントの蒸気システム診断、セミナー講師、バイオマス発電プラントの設計・建設プロジェクトを経験。また、個人で工業技術ブログを運営し、500本以上の記事を執筆。最高月間20万PVを記録し、YouTube登録者2万人、Xフォロワー8,000人を突破。

現在はテクノポート株式会社で製造業向けの海外Webマーケティングを担当。エンジニアリングの知見と情報発信力を組み合わせ、企業の販路拡大を支援している。

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