受注率が高い製造業の共通点|問い合わせ対応8つの工夫

【執筆者紹介】小林(井上) 正道

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この記事の執筆者
小林(井上) 正道
会社名:テクノポート株式会社
役職:取締役
【経歴】
製造業のWebマーケティング支援を15年以上。
製造業への訪問実績3000件を超える。
幅広い加工知識と市場調査をもとに、製造業の新規顧客開拓の支援を行う。

日本工業大学技術経営学修士号(MOT)
研究テーマ「Webを活用した用途開発マーケティング」

【専門領域】
製造業 × 企画コンサルティングスキル × Webスキル(SEO中心)

【寄稿実績】
・Webリニューアルが逆効果に? 問い合わせを減らさない製造業のサイト改革(MONOist)
・新規顧客が集まらない製造業のWebサイト、活用を阻む3つの壁(MONOist)
・技術PRのために最適なWeb戦略は何か、「アンゾフの成長マトリクス」の活用(MONOist)
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「ホームページからの問い合わせは増えたのに、なかなか受注につながらない」——テクノポートが受託加工業のWebマーケティングを支援するなかで、よくいただくご相談です。

興味深いのは、アクセス数や問い合わせ数がほぼ同じ水準でも、受注につながる会社とつながらない会社がはっきり分かれることです。その差を生んでいるのはWebサイトの中身ではなく、問い合わせが来たあとの「対応」でした。

本記事では、私たちが支援現場で見てきた「受注率が高い会社に共通する工夫」を、問い合わせ対応の流れに沿って8つ紹介します。いずれも特別なツールや営業人員の増強を必要とせず、今日から取り組めるものばかりです。問い合わせはあるのに受注に結びつかないとお悩みの経営者・営業ご担当者は、自社の対応フローと照らし合わせながらお読みください。

受注数を決める3つの変数と「受注率」の位置づけ

Webサイト経由の受注数は、次の掛け算で決まります。

受注数 = アクセス数 × 問い合わせ率 × 受注率

アクセス数を増やすSEO対策や、問い合わせ率を高めるコンテンツ改善については、多くの情報が出回っています。一方で3つ目の変数である「受注率」は、各社の問い合わせ対応に委ねられており、体系的に語られることがほとんどありません。

しかし実際には、ここが最も差のつくポイントです。発注側は複数社に同時に問い合わせをしており、各社の「対応」を通じて発注先を絞り込んでいきます。つまり、問い合わせが来た瞬間から比較検討は始まっているのです。

受注率の改善には広告費もサイト改修費もかかりません。それでいて、受注率が2倍になれば受注数も2倍になります。集客施策に追加投資する前に、まず見直す価値のある領域だといえます。

なお、「自社の受注率が低いのかどうか分からない」という方も多いと思いますが、受託加工業の場合、扱う加工内容や案件単価によって適正水準は大きく異なるため、他社平均との比較にはあまり意味がありません。それよりも、自社の失注理由を把握し、対応の工夫で改善できる失注を減らしていくことが本質的なアプローチです。

【問い合わせ直後】受注率が高い会社の初動対応

工夫1:見積より先に「対応可否」を即日で返す

受注率が高い会社に共通する最も分かりやすい特徴が、返信スピードです。

正式な見積の作成には、図面の確認や工程の検討が必要で、数日かかることも珍しくありません。しかし受注率が高い会社は、見積の完成を待たずに「対応可否」だけを当日中に返しています。

「拝見した図面の内容であれば当社で対応可能です。正式なお見積りは〇日までにお送りします」——この一報があるだけで、発注側は安心して待つことができます。

前述の通り、発注側は複数社に同時に問い合わせています。最初に反応した会社が比較の基準となり、その後のやり取りでも優位に立ちやすくなります。逆に、数日間何の反応もなければ、それだけで検討候補から外れてしまうこともあります。

このスピードを実現するために、受注率が高い会社は「どんな案件なら受けられるか」の判断基準を社内で明確にしています。材質・サイズ・精度・数量などの対応範囲があらかじめ整理されていれば、図面を見た瞬間に可否を判断でき、返信までの時間を大幅に短縮できます。

工夫2:図面の情報だけで見積もらず、背景をヒアリングする

問い合わせに図面が添付されていると、そのまま見積作業に入りたくなります。しかし受注率が高い会社は、見積の前にひと手間かけて、案件の背景をヒアリングしています。

  • この部品は何に使われるのか(用途)
  • 今回の数量と、今後の生産数の見通し
  • なぜ新しい発注先を探しているのか(現状の困りごと)
  • 納期やコストの優先順位

背景が分かると、提案の余地が生まれます。たとえば用途を聞いた結果、「その使い方であれば、材質を変更してコストを抑えられます」「この公差はここまで緩和しても機能上問題ないはずです」といったVE/VA提案(価値を保ちながらコストを下げる提案)ができるケースがあります。

図面通りの見積りを返すだけの会社と、背景を理解して提案を添えてくる会社。発注側から見れば、後者は「単なる外注先」ではなく「相談できるパートナー」です。価格だけで比較されない関係性は、この最初のヒアリングから始まっています。

【見積提示時】選ばれる会社の見積の返し方

工夫3:見積書に「信頼性情報」をセットで添える

見積金額だけで発注先が決まるわけではありません。テクノポートが実施した大手メーカー開発設計者へのインタビュー調査では、サプライヤー選定時に重視する情報として「取引実績」「製品写真」「不具合発生時の対応力」が繰り返し挙げられました。発注側は、価格と同じくらい「この会社に任せて大丈夫か」を見ているのです。

受注率が高い会社は、この心理を踏まえて、見積書に信頼性を裏付ける情報をセットで添えています。

  • 類似加工の実績写真(1〜2枚で十分です)
  • 保有設備や検査体制が分かる資料
  • 品質保証・不具合対応の体制説明

とくに相見積の場面では効果的です。金額が数%高くても、「同じような部品を作った実績がある」ことが伝われば、発注側は安心料としてその差を受け入れることが少なくありません。見積書1枚を返すか、実績資料を1枚添えるか。このわずかな違いが、相見積の勝率を左右しています。

工夫4:試作サンプルや図面化などの「見積+α」で応える

見積依頼への回答を、金額の提示だけで終わらせない会社もあります。

たとえば、ポンチ絵や現物しかない問い合わせに対して図面化から対応する、要望に応じて試作サンプルを製作して現物で技術力を示す、といった対応です。

こうした「+α」の対応は手間がかかる分、どの案件にも行えるわけではありません。しかし受注率が高い会社は、継続受注が見込める案件や自社の得意分野に合致する案件を見極めて、ここぞという場面で付加価値を提供しています。

発注側にとって、図面化や試作に応じてくれる会社は「開発段階から相談できる会社」です。一度この関係ができると、次の案件も図面が固まる前の段階から声がかかるようになり、価格競争とは別の土俵で仕事を受注できるようになります。

工夫5:対応できない案件こそ、誠実に断る

意外に思われるかもしれませんが、受注率が高い会社は「断り方」も丁寧です。

対応できない案件に対して、単に「対応できません」と返すのではなく、「当社の設備では〇〇の精度が出せないため、今回はお力になれません」と理由を添えて断る。可能であれば「この加工なら〇〇のような会社が得意です」と協力会社や同業他社を紹介する。

一見、受注につながらない案件への過剰なサービスに見えます。しかし発注側の立場では、誠実に理由を説明し、代替案まで示してくれた会社の印象は強く残ります。「今回は頼めなかったが、対応が信頼できる会社」として記憶され、後日、その会社の得意分野に合致する案件で指名の問い合わせが来る——支援先でも実際に見られるパターンです。

すべての問い合わせは、受注できるかどうかにかかわらず、自社の評判をつくる接点です。受注率が高い会社は、断る場面も含めてその接点を大切にしています。

【見積後】発注タイミングを逃さないフォローの仕組み

工夫6:案件管理表で「返答待ち・長期検討」の案件を追客する

見積を送ったあと、返事がないまま案件が自然消滅していく——多くの会社で起きていることですが、受注率が高い会社はここで手を止めません。

受託加工業の新規受注において最大の難所は、発注側のタイミングを捉えることです。見積後に返答がないのは、失注が確定したのではなく、発注側の社内検討や計画変更で保留になっているだけのケースが多くあります。

受注率が高い会社は、問い合わせ案件を一覧化した管理表を作り、進捗(見積中・返答待ち・受注・失注)と失注理由を記録しています。そして「返答待ち」の案件には、1〜2週間後に「その後ご検討状況はいかがでしょうか」と一報を入れています。

高度な営業ツールは必要ありません。Excelやスプレッドシートの管理表で十分です。大事なのは、見積を出した案件を「出しっぱなし」にせず、フォローのタイミングが仕組みとして回っていることです。このひと手間だけで拾える受注は、想像以上に多くあります。

工夫7:リード情報を蓄積し、メルマガ等で接点を持ち続ける

失注した案件、保留のまま止まった案件。その連絡先を「対応終了」として捨ててしまうのは、非常にもったいないことです。

受注率が高い会社は、問い合わせで得た連絡先を「リード(見込み顧客)情報」として蓄積し、継続的な接点づくりに活用しています。具体的には、新しい設備の導入案内、加工事例の紹介、技術情報などを、メールマガジンなどの形で定期的に配信するという方法です。

なぜこれが受注につながるのか。受託加工業の発注は、発注側にニーズが生まれたタイミングでしか動きません。今回は縁がなくても、半年後、1年後に「あの加工を頼める会社を探している」という瞬間が必ず訪れます。そのときに思い出してもらえるかどうかは、接点を持ち続けていたかどうかで決まります。

一度問い合わせをくれた相手は、自社の技術に関心を持った確度の高い見込み顧客です。展示会で交換した名刺も同様です。こうした接点を資産として積み上げていくと、時間の経過とともに「過去の問い合わせからの再受注」という新しい受注経路が育っていきます。

【体制づくり】受注率が高い会社は「対応の幅」と「問い合わせの質」を育てている

ここまでは個別の問い合わせへの対応の工夫を紹介してきました。最後に、受注率が高い会社が取り組んでいる、より構造的な2つの工夫を紹介します。

工夫8:協力工場ネットワークで受注対応の幅を広げる

自社の設備でできる加工だけを受けていると、断る案件が増え、受注率は頭打ちになります。受注率が高い会社は、協力工場とのネットワークを築き、自社設備の範囲を超えた案件にも一括対応の窓口として応えています。

発注側にとって、複数の加工先を探して個別に手配するのは大きな負担です。「表面処理まで含めてまとめてお願いできますか」という要望に応えられる会社は、それだけで選ばれる理由になります。

また、協力工場ネットワークは工夫5で紹介した「断る場面」でも活きてきます。自社で受けられない案件を信頼できる協力会社につなぐことで、発注側との関係も、協力会社との関係も深まっていきます。

番外編:問い合わせ分析から自社の強みを特定し、受注しやすい問い合わせを呼び込む

そして、受注率が高い会社ほど実践しているのが、問い合わせデータの分析です。

工夫6で紹介した案件管理表には、進捗や失注理由が蓄積されていきます。このデータを見返すと、さまざまなことが見えてきます。

  • どのような案件が受注につながりやすいか
  • 失注理由は技術・価格・納期のどれが多いか
  • 他社があまり対応していない領域の問い合わせはないか
  • 今後伸びそうな分野からの引き合いはないか

ここから見えてくるのは、市場から見た「自社の本当の強み」です。そしてこの強みをWebサイトの訴求内容やSEOの対策キーワードに反映すると、そもそも受注につながりやすい問い合わせを呼び込めるようになります。

つまり、問い合わせ対応の記録は、受注率を高めるだけでなく、問い合わせの質そのものを高めるマーケティング資産になるのです。「対応の工夫」と「Webマーケティング」は、ここでひとつの循環としてつながります。

まとめ|受注率の改善はWebマーケティングの成果を最大化する

本記事で紹介した、受注率が高い会社に共通する8つの工夫を振り返ります。

  1. 見積より先に「対応可否」を即日で返す
  2. 図面の情報だけで見積もらず、背景をヒアリングする
  3. 見積書に「信頼性情報」をセットで添える
  4. 試作サンプルや図面化などの「見積+α」で応える
  5. 対応できない案件こそ、誠実に断る
  6. 案件管理表で「返答待ち・長期検討」の案件を追客する
  7. リード情報を蓄積し、メルマガ等で接点を持ち続ける
  8. 協力工場ネットワークで受注対応の幅を広げる

いずれも、大きな投資や営業人員の増強を必要としない工夫です。しかし、これらが実践できているかどうかで、同じ問い合わせ数からの受注数は大きく変わります。

そして忘れてはならないのは、受注率の改善はWebマーケティング全体の投資効果を高めるということです。受注率が低いままアクセスや問い合わせを増やしても、穴の空いたバケツに水を注ぐようなものです。逆に受注率が高まれば、同じ集客施策から得られる成果が何倍にもなります。

テクノポートでは、製造業に特化したWebマーケティング支援として、アクセス・問い合わせを増やす施策だけでなく、問い合わせ分析にもとづく強みの特定やサイト改善まで一貫してサポートしています。「問い合わせはあるのに受注につながらない」とお悩みでしたら、お気軽にご相談ください。

この記事の執筆者
小林(井上) 正道
会社名:テクノポート株式会社
役職:取締役
【経歴】
製造業のWebマーケティング支援を15年以上。
製造業への訪問実績3000件を超える。
幅広い加工知識と市場調査をもとに、製造業の新規顧客開拓の支援を行う。

日本工業大学技術経営学修士号(MOT)
研究テーマ「Webを活用した用途開発マーケティング」

【専門領域】
製造業 × 企画コンサルティングスキル × Webスキル(SEO中心)

【寄稿実績】
・Webリニューアルが逆効果に? 問い合わせを減らさない製造業のサイト改革(MONOist)
・新規顧客が集まらない製造業のWebサイト、活用を阻む3つの壁(MONOist)
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