プロジェクトとその管理

【執筆者紹介】熊坂 治
この記事の執筆者
熊坂 治
山形県生まれ
東北大学工学部(応用物理学科)を卒業後パイオニア(株)に入社し、基礎研究、プロセス技術、生産技術、製造技術、工場計画、技術営業、事業開発など広範に担当。
2008年に経営工学部門、2009年に総合技術監理部門と技術士資格を取得し、退社後技術士事務所を開設して、品質工学をコンサルティング。
2011年に株式会社産業革新研究所を設立し、2012年にWebサイト「ものづくりドットコム」を公開。多くの専門家と協力しながら製造業のプロセス革新と課題解決を支援している。
博士(工学)、技術経営修士(専門職)、山梨学院大学客員教授(技術経営論)
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ものづくりドットコムの熊坂です。

このところ雑誌からの執筆依頼が続き、今月1日にIEレビュー、10日に機械設計に記事が掲載されました。それぞれ「Webを通じた教育」「IoT起業」という、私のコアではないながら興味深いテーマで、調べてみると新しい情報がたくさん出てきて、結果的に本業に関する多くの気づきを得ることができました。怯まずに挑戦してみるもんですね。

IEレビュー

IEレビュー12月号記事

機械設計1月号記事

さてものづくり革新の手法を一つずつ紹介しており、今回は「プロジェクトマネジメント」についてお話します。

プロジェクトとは

プロジェクトという言葉は良く耳にし、自分で使うこともあるかと思います。有名なのが昔NHKで放送していた「プロジェクトX」ですよね。大きな困難に出会ったチームが失敗を繰り返す中で、ふとしたことからたまたま解決のヒントをつかんで、苦労の末に大成功を収めるというストーリーです。娯楽番組は面白くないと見てもらえないので、上記のようなパターンにはめ込んで作るのでしょうが、ビジネス的な観点で言えば、これはダメダメパターンですよね。

まずはプロジェクトの定義を見ると、次の3つの要素を満たすものです。

  1. 定められた期限
  2. 定められた新規目的
  3. 定められた資源

いつ終わるとも知れず、行き当たりばったりの活動はプロジェクトではないわけです。成功すべく活動してきちんと期限に終わる必要があります。リスクの高いテーマは、たとえ製品や技術が完成しなくても、活動の過程で得られる知識、情報を目的にすればよいでしょう。

また決算業務などのように、定期的に実施される活動もプロジェクトとは呼びません。「新規の」目的がないからです。新たな手順を使うとか、作業期間を半減するといった目的があれば、決算もプロジェクトとなり得ます。

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プロジェクト管理の要素

死屍累々の失敗プロジェクトの経験を基に、成功しやすいパターンを専門家がまとめた体系がいくつか提案されており、最も著名なのが米国PMI(Project Management Institute)が出版するPMBOK(Project Management Body of Knowledge)です。多くの人が関係する大きなプロジェクトほど混乱しがちで、こういった体系が有効であり、大規模になりがちな建設や情報システムのプロジェクトで普及が進んでいます。

最新の第5版は600ページにも及ぶ大著で、中小製造業がこれをすべて理解して実行することは難しく、必要すらないでしょうが、その概要を知って参考とすることには大きな意味があります。5S導入、新規CAD導入、忘年会(?)などと、小規模なプロジェクトはしばしば発生するからです。

PMBOKは下図のような10の観点を持っています。

  • コミュニケーション:トラブルの9割はコミュニケーションが起因するとも言われます。会議や報告体系を扱います。
  • 品質:成功の基準やその評価方法を扱います。
  • リスク:失敗する可能性を事前に想定します。
  • 調達:すべてを内製する例は稀です。外部から獲得する部品、材料、サー^ビスを定義し、管理します。
  • ステークホルダー:プロジェクトメンバー以外の社内外関係者です。クライアント、ユーザー、株主、サプライヤー、事業部長など様々です。
  • 要員:構成員に必要なスキル、選定などを扱います。
  • スコープ:適用範囲のことですが、目的、成果物なども含まれます。
  • タイム:日程です。
  • コスト:活動の経費はもちろん重要です。
  • 統合:トレードオフになりがちな上記9要素を、バランスよく高い次元でまとめあげる必要があります。

PMBOKの構造

PMBOKの構造

プロジェクトの進行手順

PMBOKに示すプロジェクト進行手順は以下のようになります。

1.立ち上げ

ここでは対象となるプロジェクトを定義します。誰が何のために何を目指してやるのか、不明確なままスタートするプロジェクトは意外と多いものです。さほど時間を取りませんので、目的、関係者、財源を文章でまとめてと(特に指示者と)共有します。

2.計画

前述した9つの要素について詳細活動を計画します。ここで作成するWBS(全般に渡る作業項目を網羅的にツリー形式で分解したもの)やPERT図は有効性が高いのですが、解説は次回に譲ります。

3.実行

プロジェクト活動で消費される費用や工数の大半はこの段階ですから、実行管理は大事なプロセスです。

4.監視・コントロール

プロジェクトが進むと色々なことが起こるので、当初の計画を変更する必要も生じます。進行を監視しながら、それらに対処していきます。

5.終結

プロジェクトが完了してやれやれと思うだけでなく、次の機会に備えて反省し、教訓として記録しておくことが重要です。慰労会も(^_^;)

 

これも、あらゆる活動の基本形「PDCA」ですね。これだけしっかりやれば成功するだろうと思うわけですが、一方考えただけで疲れてしまいそうでもあります。数人で数週間、数十万円予算のプロジェクトに上記をすべて適用したら、計画の時間、費用が実行のそれを上回ってしまうかもしれません。そんな時は、PMのエッセンスだけを考慮に入れて、柔軟に対応したら良いでしょう。

いかがでしょう?PMで使われるツールの一部も書こうとしたのですが、長くなったのでまた次の機会にします。奥が深いですね。プロジェクトマネジメントの分野では石橋良造さんが第一人者です。不明の点はQ&Aや問い合わせフォームで質問してください。

この記事の執筆者
熊坂 治
山形県生まれ
東北大学工学部(応用物理学科)を卒業後パイオニア(株)に入社し、基礎研究、プロセス技術、生産技術、製造技術、工場計画、技術営業、事業開発など広範に担当。
2008年に経営工学部門、2009年に総合技術監理部門と技術士資格を取得し、退社後技術士事務所を開設して、品質工学をコンサルティング。
2011年に株式会社産業革新研究所を設立し、2012年にWebサイト「ものづくりドットコム」を公開。多くの専門家と協力しながら製造業のプロセス革新と課題解決を支援している。
博士(工学)、技術経営修士(専門職)、山梨学院大学客員教授(技術経営論)
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