中小企業専門の弁理士の亀山です。4月になりました。新しい期の始まりです。新しい期に入ったことで、これから開発系の助成金の募集も始まると思います。開発系の助成金を取って、大学と共同研究して、その技術成果を利用して次のご商売につなげたい!と考えている方も多いと思います。
先日も、地元のものづくり企業の社長さん達に対し、共同開発契約書のレクチャー行いました。そこで改めて思ったことは、大学との共同研究が初めての方や、まだまだ経験の少ない中小企業の社長さんも多いということでした。大学との共同研究では何が起こるのでしょうか?
- 途中でもめてしまい、最終的には破談となったり・・・
- 成果が出たものの、当初の企業側の希望とは全く異なるものになってしまったり・・・
上手に進めていかないと、最終的に損をするのは、大学ではなく企業側となります。そこで今回は「大学との共同研究で気を付けたい”5つ”のこと」について述べたいと思います。
弊所でも共同研究の契約書のチェックや交渉(またはその立ち合い)を行う場合がありますが、知的財産の関係では、
- 研究成果の帰属
- 共同出願の取り扱い
- 秘密保持(成果物の発表含め)
が特に重要になります。
※実際には、他条項へ影響が及ぶ場合もあるため、全体的なチェックが必要になります。
この記事の目次
1、研究成果の帰属
共同研究を通してできた知的財産(アイデア、技術等)は、
- 大学のもの?
- 企業のもの?
- 両社の共有物?
といった取り決めを行います。
この取り決めを、成果物ができた後に行う場合、成果物利用する側(つまり企業側)の交渉力が下がってしまいます。
※その理由は「ルパン三世と不二子ちゃん」の関係です。ピンとこない方は、弊社の過去のブログ記事「特許出願に関する誤解」 をご参照ください。
したがいまして、「こちら側に交渉力があるときに契約をまとめてしまう!」これが交渉のセオリーです。
大学との交渉の場合には、大学の研究費は企業負担となるため、「大学側が研究費が欲しいなぁと思う時」つまり、申し込み時に行うのがセオリーです。
2、共同出願の取り扱い
成果物に関する特許出願。成果物が大学との共有物の場合、大学との共同出願となるケースが多いのですが、出願に関する費用は企業持ち・・・となるケースが多いです。費用が企業持ちなら、出願の持ち分は企業単独がイーブンでは?という考えもありますがが・・・
ここは、
- 大学の協力なしには、成果物はできなかった
- 大学の名前を実績として使いたい!
等、別の理由もありますので、最終的には、事業戦略上のトレードオフとなります。
3、秘密保持(成果物の発表含め)
成果物の中には、
- (企業側として)ブラックボックスにしたく特許出願をしない!
というものもあります。一方、
- 大学としては成果を論文発表したい!
ここで利害が対立します。秘密保持(成果物の発表含め)という条項は、この利害調整の役割を果たします。要点としては、
- 発表前の事前承諾
- 発表内容の時期・内容・方法などの協議の機会の確保
となります。
4、他には?
気を付けたいポイントとして実は、もう2つあります。それは、
- 大学(組織として)のスタンスと
- 教授のスタンス
肝は
- 信頼関係が構築できる相手なのか?
前者は組織なので、ポリシーの確認でよいと思いますが、後者は個人。ポリシーとキャラクターが混在するため、そのジャッジが難しいところ・・・です。
5、まとめ「大学との共同研究で気を付けたいこと」
1、研究成果の分担
アイデアはだれのもの?
2、共同出願の取り扱い
費用負担は誰が? 権利保有は誰が? 両者のバランスは?
3、秘密保持(成果物の発表含め)
時期・内容・方法の協議の機会は事前にもらう。
4、大学のスタンス
信頼関係が構築できる相手なのか?ポリシーの面からジャッジ可能。
5、教授のスタンス
信頼関係が構築できる相手なのか?ポリシーとキャラクターの混在につき、ジャッジが難しいケースも有り。
何かのご参考になれば幸いです。