中小企業専門の弁理士の亀山です。お陰様で、開業して5年目になります。開業して約300社の中小企業様・個人事業主様のご相談を受けてまいりました。ここ数年、お客様の中の数社が、良い業績を出しつつあります。その例について、ご紹介したいと思います。
この記事の目次
1.技術開発に成功したので、特許を取りたい!
最初の出会いは、今から約3年前、特許相談でした。
とある技術的なアイデアを保護したいんです!以前は、特許を取らなかったがために、オリジナル技術が他社に使われてしまった。今回はそうなりたくないので、特許が欲しい!
というものでした。そこで、新商品リリースの前に、特許出願を行いました。
2.「新商品リリース」の前にすべきこと!
特許出願後、その技術を利用した新商品をリリースすることになりました。商品名も決まりました(ここでは、仮に、「ABC」とします)。
お客様:新商品リリースの前に、特許出願を済ませたので、もう大丈夫でしょうか?
かめやま:インターネット経由のPRを行うのですよね?そうすると、皆がこの商品名を知ることになります。良い方に転べば、売り上げにつながりますが、悪い方に転ぶと、第三者による名称の模倣や、商標登録の抜け駆け出願のリスクがあります。このため、商品名の商標登録を取得を勧めました。
3.新商品の商標登録だけじゃ「モッタイナイ」
そこで、次のような提案をしました。単に、名称「ABC」の商標登録をするだけではもったいないです。折角のオリジナル技術なので、「その技術のブランド化のための商標登録」を併せて勧めました。より詳しく言うと、その技術のブランド化に寄与しそうな名称「ABX」に微調整し、名称「ABX」を、新商品及び新技術サービスの共通名称としました。
4.営業活動 兼 ブランディング活動
その後、お客様の努力の甲斐もあって新商品が市場に次第に浸透していきました。と同時に、新商品の商品名「ABX」が市場に浸透していきました。これに伴って、商品名「ABX」と同じ名前の技術サービスが市場に浸透し、お客様の技術がオリジナル技術として認知されるようになりました。すなわち、商品名「ABX」の宣伝を通して、お客様の技術がブランドとして成長していったわけです。
5.新しい商談が舞い込む
とある展示会にて、新商品及び技術サービスを展示しました。そこでは、沢山の企業から声をかけられました。これまでであれば、「こちらから声をかけても相手にしなさそうな企業」ばかりでした。商談の内容は、お客様の技術及び技術ブランド「ABX」を利用したコラボ商品の提案でした。そこで、商標権を利用したライセンス契約による名称使用料という収入源構築を目論見ながら、コラボ商品のための技術開発を進めることとなりました。
その結果、
- 新しい技術が生まれたので、この技術を採用したい・・・。
- この技術について特許を出しておけば、コラボ先から浮気されることもなくなる。
- 結果、継続的な収入を確保できる。
という良い流れになります。
6.技術系の中小企業の成長パターン
この企業の成長フローは以下のように表せます。
- 技術開発に成功
- 技術の保護(特許、契約か秘匿)
- 商品企画
名称決め(単なる名前ではなく、信用・ブランドの器となる名前決め)
その名称の商標登録 - 営業開始
商標を利用した自社商品のPR活動 - 新商品が浸透し、新しい商談が舞い込む(売上UP+α)
新商品のブランド化
そのブランドを通して、技術に興味を持つ企業も現れる
オリジナル技術のブランド化 - その技術を利用した新しい開発案件が舞い込む
- 技術開発の成功
- 技術の保護(特許、契約か秘匿)・・・(2に戻って繰り返し)
これが、技術系の中小企業の成長パターンの1つだと思います。実際のところ、弊所のお客様の中でも、数社がこのパターンに乗っかっていますし、数社はこのパターンに乗っかろうとしています。しかも、いずれの技術内容もローテクに属するもの。市場に受け入れられるものであれば、技術レベルは関係ありません。
弊所のお客様の中から、このような会社が1社でも多くなるような活動を継続していきたいと思います。