【2022年版】マレーシアの製造業(主要産業・進出している日本企業)

【執筆者紹介】稲垣 達也
この記事の執筆者
稲垣 達也
【経歴】
テクノポート株式会社「海外Webマーケティング」サービスの責任者
名古屋工業大学大学院 電気機械工学専攻 博士前期課程卒業
同大学 機械工学科卒業

【保有資格】
TOEIC L&R:990/990、英検一級:合格、TOEFL iBT:108/120
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テクノポート株式会社の稲垣です。
BtoB企業向けの「海外向けWebマーケティング」サービスの責任者を務めています。

前回の記事ではASEAN地域の中でいち早く先進国の仲間入りを果たした「シンガポールの製造業」について紹介しました。今回はそのシンガポールとほぼ同じGDPの成長率(2000年から2018年)で急速に発展を遂げているマレーシアの製造業について紹介します。(出典:ASEAN Key FIgures 2019

マレーシアのGDPの37.5%は製造業関連で、製造業は主要産業として経済成長に大きな役割を果たしています。今回はマレーシアの製造業の主要産業であるエレクトロニクス産業石油化学産業家具産業について掘り下げていきます。

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基本情報

  • 正式名称:マレーシア
  • 首都:クアラルンプール(Kuala Lumpur)
  • 首相:マハティール・ビン・モハマッド(2018年5月から)
  • 通貨:リンギット(1リンギット=27.37円 ※2022年2月3日時点)
  • 人口:約3200万人
  • 面積:33万km2(参考:日本の面積38万km2)
  • 公用語:マレー語、中国語、タミル語、英語
  • 公式宗教:イスラム教(61%)仏教(20%)キリスト教(9%)ヒンドゥー教(6.0%)儒教・道教(1.0%)
  • 平均寿命:男 72.7歳、女 77.6歳

GDPの変化

基本的な情報としてマレーシア経済をGDPの変化を通して調査します。GDPとは国内総生産(Gross Domestic Production)の略で一定期間に国内で生み出された付加価値の総額を指します。

まず、マレーシア全体のGDPの変化を確認します。下の図は2010年から2017年までのマレーシアの総GDPとGDPの年平均率を示したグラフになります。(1リンギット=26.85円 ※2020年1月27日時点)

データ引用元:eDataBank – Department of Statistics Malaysia Official Portal

グラフから以下のような特徴が挙げられます。

  • 基準年の2010年から一貫して増加傾向が続く
  • 成長率は4%から10%の辺りを上下している

現状

  • 2018年のGDPは世界37位(196カ国中)を記録
  • 2018年の一人当たりのGDPは66位(196カ国中)を記録

今後

  • 経済の専門家によると、2020年のマレーシアの経済成長は4.3%になる見通し
  • 2020年の経済成長は停滞する見通し(米中貿易摩擦が対外部門に影響)
  • 民間消費は輸出部門の衰弱によって減速する見通し

産業構造

次に、マレーシアの産業構造を調査します。下の図は2018年のマレーシアの総GDPにおける各部門(上からサービス関連産業、製造業、建設産業、鉱業・採石業、農業)の割合をしめした円グラフです。

出典:Malaysia Economic Performance Second Quarter 2018

グラフからマレーシアの産業構造について次のような特徴が挙げられます。

  • 製造業はGDPの23.6%を占め、4.9%の増加率を記録
  • サービス関連業がGDPの55.3%を占め、マレーシアの主要産業と言える
  • 鉱業・採石業と農業はGDPの10%以下で減少傾向

現状

  • 消費者の高所得化により卸売業・小売業部門の成長が進んでいる
  • サービス関連業のビジネスサービスは専門サービスによって大きく成長している
  • 製造業は電気機器・光学製品部門に支えられ緩やかに成長している

今後

  • 2020年には5466の開発プロジェクトが企画されており、5億6000万リンギット約150億円)がマレーシアの経済成長と長期的な発展のために投資される予定
  • 今後10年間において、政府は新しい経済領域を開拓し高給な職を創出するとともにマレーシア経済を加速させる予定

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製造業

製造業全体

ここでは、マレーシアの製造業全体における変化をデータを通して調査します。下の図は2010年から2017年までのマレーシア製造業のGDPとGDPの年成長率を示したグラフです。(1リンギット=26.85円 ※2020年1月27日時点)


データ引用元:eDataBank – Department of Statistics Malaysia Official Portal

グラフから読み取れることとして以下のようなことが挙げられます。

  • 製造業のGDPは基準年の2010年から一貫して増加傾向が続く
  • 成長率は年によって約4%から11%の間で大きく変動

次に、下に示す図は2010年から2017年までにおけるマレーシアの総GDPにおける製造業の割合を示したグラフです。


データ引用元:eDataBank – Department of Statistics Malaysia Official Portal

グラフから以下のようなことが挙げられます。

  • 総GDPにおける製造業が占める割合は年々減少
  • 基準年の2010年から2017年で約1.2%減少

現状

  • 2017年6月時点のマレーシア製造業の主要分野はエレクトロニクス産業(27.6%)、石油・科学・ゴム・プラスティック産業(24.0%)、木材・家具・紙製品・印刷産業(22.4%)
  • マレーシア製造業が直面している問題として、研究・開発のための資金不足が挙げられる

今後

  • 製造業分野においては製造効率化、製品の多様化・複雑化に焦点が当てられる予想
  • 今後成長が期待される航空・宇宙産業、医療機器、エレクトロニクス産業、機械加工・機械装置、化学産業の強化が見込まれる

エレクトロニクス産業

前回シンガポールの主要産業の一つとして紹介したエレクトロニクス産業は、マレーシア製造業においても主要産業の役割を果たしています。下の図は2016年と2017年のマレーシアのエレクトロニクス産業の指標(上から輸出額、輸入額、純輸出、付加価値(基準価格)、労働生産性(製造業全体)、労働生産性(エレクトロニクス産業)、労働者数)を示した表です。(1リンギット=26.85円 ※2020年1月27日時点)

出典:A Study on Productivity and Contribution of the … – WayUp.my

表から読み取れることとして以下のようなことが挙げられます。

  • 総貿易額は統計開始の2012年から2020年(予想)までほぼ一定の傾きで増加
  • 輸出は年を重ねるごとに傾きが増加するのに対して、輸入は減少傾向に転じる見通しが立てられている(国内製造設備の強化により)

石油化学産業

次にマレーシア製造業のGDPの24.0%を占める石油化学産業の現状と今後について調査します。下の図は2012年から2020年(予想)までのマレーシア石油化学製品の貿易収支を示したグラフです。(1リンギット=26.85円 ※2020年1月27日時点)

出典:malaysia petrochemical country report 2018 – Malaysian …

グラフから以下のようなことが挙げられます。

  • 総貿易額は統計開始の2012年から2020年(予想)までほぼ一定の傾きで増加
  • 輸出は念を重ねるごとに傾きが増加するのに対して、輸入は減少傾向に転じる見通しが立てられている(国内製造設備の強化により)

現状

  • マレーシアは現在、世界14位の天然ガス埋蔵量、世界23位の原油を有している
  • マレーシアは一つの区域内で2300万メートルトンの製造設備を有しており、世界で最も大きな液化天然ガスの製造設備と言われている
  • 日本の大手石油化学企業の一つである出光興産は環境にやさしいシンダイオタクティックポリスチレン(SPS)の製造に4億リンギットを投資した

今後

  • マレーシアは現在東南アジアで石油化学産業が盛んなインドネシア、タイに代わって2020までに生産設備容量の面で主導的な立ち位置になる見通し
  • マレーシア政府は統合型石油化学産業区域を作り、生産から貿易までを限られた区域で効率的に計画を立てている

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家具産業

マレーシアは豊富な森林資源を活かした木材関連産業が盛んです。先ほども紹介したようにマレーシア製造業の22.4%は木材・家具・紙製品・印刷産業が占めています。その中でも家具産業の現状と今後について調査します。下の図は1986年から2015年までの家具の輸出額と年成長率を示したグラフになります。(1リンギット=26.85円 ※2020年1月27日時点)


データ引用元:the malaysian furniture industry – Universiti Putra Malaysia

グラフから以下のような特徴が挙げられます。

  • 輸出額は統計開始の1986年から2008年にかけて増加傾向
  • 年成長率は2009年以降0%付近で上下し停滞傾向

また、下の図は1989年から2015年までの家具の輸入額と年成長率を示したグラフになります。(1リンギット=26.85円 ※2020年1月27日時点)

データ引用元:the malaysian furniture industry – Universiti Putra Malaysia

こちらもグラフから以下のような特徴が挙げられます。

  • 輸出額は2000年から2005年辺りにかけて急激に増加、その後は2010年以降でも増加傾向
  • 年成長率は2009年で大きく減少したが、その後は増加傾向に転じる

現状

  • マレーシアは世界で南洋材と木材製品の輸出を行っている国の上位10位以内に入る
  • マレーシア国内で生産する(家具を含めた)木材製品の80%以上を輸出している

今後

  • 国が定める木材産業規定によると、家具産業は2020年に120億リンギット約3200億円)の輸出額を達成する目標を掲げている
  • マレーシア政府は単純な汎用製品の製造に加えて、デザイン性を兼ね備えたクリエィティブな製品設計に力を入れている

まとめ

今回はマレーシアの製造業の現状と今後について主要産業を中心に紹介しました。マレーシアをはじめ東南アジア各国はGDPにおける製造業の割合は年々減少しています。しかし、マレーシアの製造業自体のGDPは増加を続けています。

そしてマレーシアが保有する天然資源の埋蔵量、製造拠点の立地、豊富な労働資源などを考慮すると、今後もその傾向は続くと予想されます。今回の内容がマレーシアへの進出に関心のある方の参考になれば幸いです。

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