【20226年版更新】シンガポールの製造業(主要産業・進出している日本企業)

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シンガポールは国土こそ小さいものの、ASEANの中でもとくに高付加価値型の製造業とサービス業が高度に集積した拠点です。2025年のシンガポール経済は実質GDP成長率が5.0%と堅調で、2026年1Qも前年同期比6.0%成長を記録しました。とくにAI投資を背景にした半導体・電子関連需要が製造業を押し上げており、製造業は依然として国家経済の重要な柱であり続けています。 

一方で、シンガポールは「安く作る場所」ではありません。人件費の高騰、オフィス・土地賃料の上昇、就労ビザ要件の厳格化などにより、日系企業にとっては拠点の位置づけを「量産」から「高付加価値生産」「東南アジア統括」「研究開発・実証」へと再定義する必要が高まっています。2026年時点でシンガポールを製造拠点として見る際は、この二面性を理解することが重要です。 

基本情報

  • 正式名称:シンガポール共和国(Republic of Singapore) 
  • 首都:シンガポール 
  • 首相:ローレンス・ウォン(2024年5月就任) 
  • 大統領:ターマン・シャンムガラトナム(2023年9月就任) 
  • 通貨:シンガポールドル(2026年7月適用の日本銀行公表レートを基に換算すると、1シンガポールドル=約123.9円) 
  • 人口:611万人(2025年6月末時点) 
  • 面積:744.3平方キロメートル(2025年時点)
  • 公用語:中国語、マレー語、タミル語、英語 
  • 公式宗教:なし(宗教構成の全国ベースの詳細公表としては国勢調査2020が公式参照資料) 
  • 平均寿命:83.9歳(2025年、居住者ベース) 

経済の特徴

強み

シンガポール経済の最大の強みは、高付加価値産業に政策資源を集中できる点です。政府は「Manufacturing 2030」で2030年までに製造業の付加価値を50%引き上げる方針を掲げ、製造業のGDP比率をおおむね20%で維持する考えを示しています。加えて、IFRの2022年統計では、シンガポールのロボット密度は1万人当たり730台で世界でも最上位級にあります。EDBやA*STARはAIMfgを通じて、AI・ロボティクス・デジタルツインなどを実装するインダストリー4.0化を後押ししています。つまり、製造業の競争力を「低コスト」ではなく「自動化・品質・スピード」で確保しているのが2026年のシンガポールです。 

また、港湾・空港・法制度・税務運用の透明性・政治社会の安定といった基盤の強さも見逃せません。JETROの2025年度調査では、日系企業が感じる投資環境上のメリットとして「政治・社会の安定」が90.2%で首位でした。東南アジア複数国を束ねる地域統括拠点や、高度部材・医療・半導体のハブとして評価されやすいのはこのためです。 

弱み

弱みとしては、慢性的な人材不足と人件費・事業コストの高騰がより鮮明になっています。MTIによると、2025年の製造業のユニット・ビジネス・コストは0.1%上昇しました。上昇率自体は小幅ですが、外注費やロイヤルティなどがコストを押し上げています。さらに2026年は生産性の伸び鈍化を背景に、経済全体のユニット・レーバー・コストが上向く見通しです。 

労働市場も引き続き逼迫しています。2025年12月時点の求人件数は7万7,700件、求人倍率は1.58倍、2026年3月時点でも7万3,300件、1.46倍と、求人数が失業者数を上回る状態が続きました。JETRO調査でも、シンガポール進出日系企業の91.3%が「人件費の上昇」を投資環境上の最大リスクに挙げています。加えて、就労ビザ制度COMPASSや給与基準の引き上げを受け、2025年調査では駐在員数を既に見直した企業の49.5%が削減と回答しました。製造現場であっても、必要人員を前提にした拡張より、自動化投資を前提にした拡張へ発想を切り替える必要があります。 

国内総生産と産業構造

GDPの変化

シンガポールのGDPは長期的に拡大基調にあります。世界銀行によると、名目GDPは2025年に6,038.7億米ドルとなりました。シンガポール政府統計では、名目GDPは2025年に7,895億シンガポールドルです。実質成長率でみると、2024年の4.4%成長に続き、2025年は5.0%成長、2026年1Qも前年同期比6.0%成長でした。政府見通しでは、2026年通年の成長率は2.0~4.0%が維持されています。 

この推移から読み取れるのは、シンガポール経済が外需に左右されやすい一方で、半導体やAI関連投資の波を取り込めたときには強い回復力を持つということです。2025年から2026年前半にかけての成長は、まさにその典型例といえます。 

産業構造

2025年の名目GDPをSingStatの業種別付加価値でみると、サービス生産部門は5,355億シンガポールドルでGDPの約67.8%、財生産部門は1,792億シンガポールドルで約22.7%、そのうち製造業単独でも1,376億シンガポールドルで約17.4%を占めます。シンガポールは一般に「サービス国家」と見られますが、製造業の比重はなお大きく、しかも半導体、精密機器、バイオ医薬など高付加価値分野に集中している点が特徴です。なお、GDP内訳上は卸売・小売も1,555億シンガポールドルと大きく、物流・商流ハブとしての性格も色濃く表れています。 

このため、シンガポールの産業構造は「製造業が弱い」のではなく、「サービス業が厚い中で、製造業も高付加価値領域に特化して強い」と捉えるのが実態に近いです。東南アジア向けの本社機能、営業機能、調達機能、品質保証機能と、先端製造が一体化しやすい点に同国の強みがあります。 

日本企業の進出状況

現状

JETROシンガポール事務所の2025年分析によると、シンガポールで経営実態のある日系企業は2024年3月時点で4,558社でした。このうち非製造業が9割を占め、2011年以降に設立された企業が67.9%に達しています。つまり、日系企業の進出自体は引き続き厚いものの、その中身は従来の製造・卸売中心から、ICT、経営コンサルティング、地域統括、専門サービスへとシフトしています。 

また、JCCIの会員数について、公開情報として確認できる最新水準はJETROが引用した2024年11月時点の761会員です。2016年4月時点の854会員からは減少していますが、これは必ずしも撤退増を意味しません。JETROは、駐在員の減少や現地人材への幹部交代が背景にあると分析しています。加えて、JETROの2025年度調査では、シンガポールの日系企業の66.8%が2025年に営業利益を見込んでおり、今後1~2年の事業方針でも43.9%が「拡大」と回答しました。製造業に限っても43.9%が拡大志向です。 

今後

今後の進出は、従来型の量産工場よりも、半導体、医療、精密機器、AI検査、自動化設備、サステナブル素材などの高付加価値領域で進む可能性が高いです。EDBの2025年誘致実績では、固定資産投資14.2十億シンガポールドルのうち約12.1十億シンガポールドルが製造関連案件でした。半導体、バイオ医薬、メドテック、特殊化学品、航空MROなどへの投資が中心で、シンガポールが先端製造の受け皿として引き続き機能していることがわかります。 

ただし、投資判断には選別が必要です。JETRO調査では、投資環境上のリスクとして「人件費の上昇」91.3%、「土地・事務所不足・賃料上昇」「ビザ・就労許可取得の難しさ」などが上位でした。したがって、シンガポールは東南アジア全体の司令塔としては有力ですが、コスト競争型製造の全面移管先としては適しにくい国です。製造、営業、R&D、統括機能をどう組み合わせるかが進出成否を左右します。 

シンガポールに進出した日本企業の事例

テクセンドフォトマスク株式会社

テクセンドフォトマスク株式会社は、2025年10月31日にシンガポール東部タンピネスの「30 Tampines Industrial Avenue 3」で新工場を起工しました。発表によると、この工場はシンガポール唯一のフォトマスク製造拠点となる見込みで、急成長する東南アジアおよびインド市場への供給体制強化を目的としています。新工場ではAIによる日程計画、自動生産管理システム、自動製造ラインの導入を進め、歩留まり改善や生産性向上を狙っています。EDBも、この投資がシンガポールの半導体エコシステムとサプライチェーン上の地位を強化すると評価しています。 

株式会社MENOU

株式会社MENOUは、2025年12月に現地法人「MENOU SINGAPORE PTE. LTD.」を設立しました。MENOUは製造業向けのAI外観検査ソフトウェア「検査AI MENOU」を展開しており、プレスリリースでは、海外拠点を持つ日系企業や海外企業の需要拡大に迅速かつ的確に対応するため、政府主導でものづくり産業の高度化・自動化を進めるシンガポールに拠点を置いたと説明しています。従来から自動車部品、医療機器、食品、日用品など170社超で導入実績があり、東南アジアの製造現場における検査工程のDX需要を取り込む動きとして注目されます。 

株式会社welzo

株式会社welzoは、2025年6月に100%出資の現地法人「welzo Singapore PTE. LTD.」を設立しました。welzoは農園芸分野の企業であり、発表ではシンガポールを東南アジア事業の統括・営業拠点と位置づけています。主な業務内容は、東南アジアマーケティング、作物、飼肥料原料、ペット用品の輸出入事業です。ASEAN諸国へのアクセスの良さと国際ネットワークを活かし、地域展開とグローバル成長の基盤を築く狙いが明確です。 

製造業

製造業全体

シンガポール製造業は2025年に総生産額4,791億シンガポールドル、付加価値額1,328億シンガポールドルとなり、それぞれ前年比11.5%増、13.9%増でした。2026年に入ってからも勢いは続いており、EDBによると2026年5月の製造業生産は前年同月比13.0%増、バイオ医薬を除くベースでは17.7%増です。さらに、2026年4~9月の景況感調査では、製造業企業のネットDIはプラス17%となっており、企業マインドも総じて前向きです。 

この背景にあるのは、AIサーバー、メモリー、半導体装置、医療関連、特殊材料などの需要です。EDBの2025年投資実績でも、半導体・バイオメディカル・特殊化学・航空分野での大型投資が続いており、シンガポール製造業は景気循環に左右されながらも、構造的には先端分野へ深くシフトしています。 

製造業の主要産業

エレクトロニクス産業

エレクトロニクスはシンガポール製造業の中核です。EDBの2025年速報では、エレクトロニクス産業は製造業総生産の45.6%を占め、2025年の生産額は全体の中で最大、伸び率も43.2%と突出しました。2026年4月も同クラスターの生産は前年同月比44.0%増で、AI関連投資と半導体需要の恩恵を最も強く受けている産業といえます。 

精密工学産業

精密工学産業は2025年に製造業総生産の11.8%を占め、前年比15.5%増となりました。また、付加価値額は206億シンガポールドルでした。2026年4月の生産も前年同月比15.1%増と堅調です。EDBは2025年の投資レビューで、半導体メーカーの新増設が精密工学セクターにも正の波及効果をもたらしたと説明しており、今後も装置、部材、検査、制御関連の需要増が見込みやすい分野です。 

医薬品・バイオテクノロジー産業

医薬品・バイオテクノロジー分野に相当するバイオメディカル製造業は、2025年に164億シンガポールドル、製造業総生産の7.7%を占め、前年比12.3%増でした。一方で月次では変動が大きく、2026年4月の生産は前年同月比16.1%減となっています。ただしEDBは、2025年に高付加価値のバイオ医薬品やメドテック製品向けの能力増強投資が続いたと説明しており、短期の生産変動はあるものの、シンガポールがバイオ医薬の地域拠点である構図は変わっていません。 

まとめ

2026年のシンガポール製造業は、量より質で勝つ産業構造へ一段と進化しています。実質GDPは2025年に5.0%成長し、製造業も総生産・付加価値ともに二桁成長を達成しました。とくにエレクトロニクス、精密工学、バイオ医薬といった高付加価値領域が強く、AIや自動化を梃子にしたスマートファクトリー化が競争力の源泉になっています。 

その一方で、人件費、賃料、ビザ制度のハードルは高く、単純なコスト競争型生産には向きません。したがって、日本企業にとってのシンガポールは、東南アジア市場向けの先端製造拠点、品質保証拠点、地域統括拠点、研究開発・実証拠点として位置づけるのが現実的です。実際に、テクセンドフォトマスク、MENOU、welzoの事例は、いずれも「高機能化」「自動化」「地域ハブ化」を重視した進出であり、2026年のシンガポール進出の方向性をよく表しています。 

参考ソース一覧

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資料イメージ

【調査期間】 2024年1月22日〜1月23日
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