こんにちは、テクノポートの永井です。今回は技術をより多くの人に知っていただくための手法の一つ「コンテンツマーケティング」のやり方についてお伝えします。
コンテンツマーケティングについては過去に弊社の徳山が「コンテンツマーケティングの進め方(BtoB製造業・メーカー向け)」という記事を書いていますので、そちらも参考にしてください。
コンテンツマーケティングは簡単にいうと「ターゲットが求めてる情報を発信することで、見つけてもらう確率や選んでもらう確率を向上させる手法」で、より具体的にいうと「ニーズが潜在化していないターゲットに対しても有益な情報を発信し、定期的に自社を見てもらうことで自社を記憶してもらい、必要になったときに問い合わせをしてもらうための手法」です。
つまり、短期的な視点ではなく、ターゲットを育てながら問い合わせにつなげるという中長期的な手法になります。このことから、コンテンツマーケティングはその業界での認知度向上を目標とし、最終的に利益に結びつけることを目的とするような考え方となります。コンテンツマーケティングはWebと相性がよく、認知を広める方法や記憶してもらう方法として有効と言われています。
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Webとコンテンツマーケティングが相性が良い理由
- 検索者が情報を探している
- 探している情報に対して、無制限にコンテンツを制作できる
- 動画、画像、イラストなどを情報をわかりやすく伝える手段が豊富にある
- 記事を多く書くことで、見つけてもらう確率が上がる
- 広告を使わずともたくさんのアクセスを稼ぐことができる
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そのため、コンテンツマーケティングを行う企業が増えてきていますが、BtoBかつ技術系のコンテンツマーケティングを行っている企業は意外と多くはありません。
その技術系コンテンツマーケティングが難しい理由として、
- 更新内容がなく、途中でストップしている。
- 技術系コンテンツを書ける人がいない(工数がない)
- 技術流出の可能性を懸念している
などがあります。しかし、それをクリアすることによって強いブランド力を作ることができますので、ぜひ挑戦してほしいです。今回は技術系コンテンツマーケティングを始めるときのポイントや注意点についてお伝えします。
この記事の目次
技術系コンテンツマーケティングの始め方
1、目的を明確にする
コンテンツマーケティングにより良質な記事の数が増えてくると、広告を使わなくてもたくさんのアクセスを稼げるようになります。しかし、アクセスだけが増えても、全く問い合わせに繋がらなかったり、的外れな問い合わせが増えることがよくあります。そのため、本業の利益につながるようなストーリーを作ることが大切です。
ストーリーというと少し大げさですが「ターゲットからどのような企業に見られたいか」を考えれば大丈夫です。
例
- 業界トップの知識量がある企業
- 共同開発をしたくなるような企業
- 安心して依頼できそうな企業
※本記事の最後に事例となる企業を紹介しています
もし「業界トップの知識量がある企業」として見られたい場合は、加工方法や技術に対する一般知識から応用技術、研究段階の話や未来の話。または直接の担当者にしかわからないほどニッチだけどあったら嬉しい情報の発信などがあります。
このように目的が決まると発信する情報にストーリーを持たせやすくなり、利益につながる問い合わせに繋がります。
2.ターゲットの選定
設計、研究、開発、製造技術、品質保証、購買など立場によって求める情報が異なるためターゲットを決めることが大切です。ターゲットを選ぶ方法は大きく分けて2つ、どういう人から問い合わせがほしいか、もしくは自社の技術を使っていくる人は誰か。「問い合わせが欲しい人」はこちらの都合で決められるため選ぶのは簡単ですが、「自社の技術を使っていくる人」を見つけるのは少し難しくなります。
その場合は、
- 自社の技術の棚卸しをする
- 技術が役に立つ状況を想定する
- その状況に合致する立場の人を見つける
といった具合に、自社の技術の棚卸しから始めると見つけやすくなります。また、ターゲットを決めるだけではなく、ターゲットの置かれた状況も考慮すると、より刺さるコンテンツが発信できるようになります。
例えば、開発者をターゲットとた場合、研究フェーズなのか、開発フェーズなのか、それとも量産フェーズなのかによって求める情報が異なってきます。
- 研究フェーズはシーズからニーズを見つけるための研究であり、その技術がどこのどういった課題を解決できるかの情報
- 開発フェーズは製品化や機能改善、機能の付加に向けた開発であり、ものを作るための技術情報
- 量産フェーズは量産品の改善であり、品質の向上やコストダウンなど情報
このように状況によって求める情報が異なるため、ターゲットの状況まで考慮したほうが適切なコンテンツを作りやすくなります。ただ、コンテンツマーケティングはターゲットに合わせてコンテンツを複数制作すれば良いため、ターゲットを決める必要はありますが、ターゲットを絞る必要はありません。そのため、ターゲットが複数出てきても問題はありません。
3、カテゴリーマップの作成
コンテンツマーケティングは記事を複数制作するため、最終的な全体像を把握してから始めることをおすすめしています。全体像がわかると記事を作るときのテーマ選定や記事の方向性を決めるときに楽になるため、コンテンツマーケティンを継続させやすくなります。
先程のターゲット選定で「ターゲット+状況+自社の技術の紐付」をしていると思います。次はそれに合わせたカテゴリーとテーマの設定をします。このとき、自社の技術以外の情報についてもマップに書くことテーマの幅が広がります。
カテゴリーを作る際はマインドマップ作成ツールなど使うと簡単に作れます。マインドマップについてはこちらを参照ください。
4、コンテンツの制作
カテゴリーマップができたら、最後にコンテンツを制作します。コンテンツの制作を社内外の人に依頼する場合、使用する単語や言い回しがかわってくるため、それらをまとめる編集長を決めたほうがスムーズに進みます。ちなみに、モノカクの編集長は渡部です。
では、コンテンツを作る際の全体的な流れについてです、
まず、カテゴリーマップからテーマを選びます。
絶対に入れたほうが良いキーワードを調査して、そのキーワードを入れるようにします。※コンテンツマーケティングはニッチなキーワード対策をするときもあるので、キーワード設定については比較的ゆるくても大丈夫と思います。
記事をすぐに書くのではなく、記事の構成となる目次と概要を書き、編集長や記事をチェックしてくれる人の承認を取ります。ここで記事の方向性を決めるため、意外と重要な工程です。
記事を書き、記事を複数人でチェックします。そのときターゲットとなる人が社内にいれば、ぜひ確認してもらってください。記事の修正ができたら、体裁を整えて、サイトに公開します。
これを繰り返すことで、良質なコンテンツを大量に作っていきます。
技術系コンテンツマーケティングの注意点
1、社内の協力体制を作る
良質な記事を定期的作るためには、社内の協力、特に技術系の人の協力は必要不可欠になります。記事を書いてもらったり、チェックをしてもらったりと時間を割いてもらうことになりますので、社内の協力体制作りは必ず行ってください。
社内協力体制を得るためには、「なぜwebを使ったコンテンツマーケティングをするのか、なぜ他の人が協力する必要があるのか」を説明しなければなりません。
新規顧客を開拓するためにWebは有効な手段であり、その中でもコンテンツマーケティングは効果が得られそうな手法である。そして、技術系のターゲットに刺さるコンテンツを作るためには、どうしても社内の技術者を含めた協力体制が必要になるからお願いします。
といった具合に、他部署もを含めた協力体制を作ることが理想的です。技術的な記事の制作やチェックは一人ではできません。記事のクオリティをあげるためにもぜひ社内の協力体制は整えてください
2、チェック体制を整える
チェック体制を整える意味は2つ
- 記事そのものの確認
- 技術流出のリスク対策
です。
記事の構成や言い回し、使用する単語は人によって異なってくるため、それらを統一する必要があります。また、誰しもが文章を書くことが得意なわけではないので、複数人でチェックすることで読みやすい文章になります。また、特に技術系の場合は「技術流出」の可能性もあるため、最終的に今回の記事に書いてある技術を出して良いかどうかの判断する人は必要になります。
3、文字だけではなく、図や絵、グラフ、動画などを多用する
技術を伝えることは思っている以上に難しいため、文字だけではなく、図や絵、グラフ、動画などを多用して、わかり易く説明することを心がけてください。
特に技術者は文字をあまり読まず、図やグラフなど文字だけのWebサイトは、資料の無い展示会と同じでスルーされる傾向にあります。技術をわかりやすく相手に伝える方法については別の記事を書いていますので、参考にしてみてください。
https://marketing.techport.co.jp/archives/20896
4、後からでも探しやすいようにページを構築する
アクセスを稼ぐためのコンテンツを乱立するのではなく、ターゲットが後からでも探しやすいようにメニュー等を設計にすることが大切です。情報を整理することで、ターゲットが探していた情報以外の情報も見ていただくことができますし、こちらの目的も達成しやすくなります。探しやすくするためには、カテゴリーを分けたメニューを配置したり、サイト内検索を付けるなどの手法がありますので、制作する際はご検討ください。
5、社外に依頼する場合は技術を説明できる資料を作る
記事の制作を社外のライターに依頼する場合は、技術を説明できる資料を準備ください。
ほとんどのライターはその分野の専門家ではありません。内容を聞いた上で、噛み砕いてわかりやすい言葉で説明することはできますが、コアな技術を知っているわけではないので、ライターに依頼する場合は技術を説明する資料が必要になります。
技術系マーケティングの具体的な事例
1、業界トップの知識量がある企業の例
エレファンテック株式会社:https://www.elephantech.co.jp/
エレファンテック株式会社はフレキシブル基板の開発、製造を行っている企業です。当サイトのメニューを見ていただくとわかるように、フレキシブル基板の情報については、初心者から研究者まで、幅広い情報を掲載しています。技術については写真やグラフ、表を多用し、ひと目でわかるように工夫されています。
「フレキシブル基板」では、エレファンテック株式会社以上に詳しい情報を掲載している企業はいないため、「フレキシブル基板」の情報を探している方は必ずといっていいほどエレファンテック株式会社のサイトを閲覧しているはずです。情報のまとめ方、掲載方法が本当に素晴らしいのでぜひ参考にしてみてください。
2、安心して依頼できそうな企業の例
東海バネ工業株式会社:https://www.tokaibane.com/
東海バネ工業株式会社はバネを製造している大阪の企業です。サイト内に「計算式」「設計時の注意点」といった、設計者が設計時に欲しい情報を掲載しています。しかも、圧縮バネや引張バネといった一般的なバネに限らず、ゼンマイや竹の子バネといった具合に幅広いバネの情報を掲載しています。
「設計を知り尽くしている企業が製造するバネ」というイメージのサイトであるため、設計者が設計に行き詰まったときなど、とりあえず東海バネ工業に相談してみようという依頼が多そうな企業です。
3、共同開発をしたくなるような企業
旭化成株式会社:https://www.asahi-kasei.co.jp/
旭化成株式会社は医療から工業、食品などあらゆる分野の技術を持った企業です。自社が持っている技術の説明はもちろん、これまでのイノベーションの事例を掲載することで、共同開発したくなるようなイメージを与えてくれます。
まとめ
技術系コンテンツマーケティングは難しいように思うかもしれませんが、きちんとした手順を踏むことでどの企業でも行うことができます。テクノポートは技術系コンテンツマーケティングの支援もしていますので、これから始めたいという方はぜひご相談ください。
モノカク内にWebマーケティング手法をまとめた記事もございますので、こちらもご参照下さい。