海外向けWebサイトの分析・改善の進め方【回遊率の改善編】

【執筆者紹介】稲垣 達也
この記事の執筆者
稲垣 達也
【経歴】
テクノポート株式会社「海外Webマーケティング」サービスの責任者
名古屋工業大学大学院 電気機械工学専攻 博士前期課程卒業
同大学 機械工学科卒業

【保有資格】
TOEIC L&R:990/990、英検一級:合格、TOEFL iBT:108/120
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テクノポート株式会社の稲垣です。
BtoB企業向けの「海外向けWebマーケティング」サービスの責任者を務めています。

この記事では、海外向けWebサイトの「回遊率」の改善手法について、解説します。

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「回遊率」とは?

「回遊率」とは、Webサイトやアプリ上でユーザーが複数のページまたはスクリーンを訪れる割合を指す指標です。一般的には、1回のセッション(訪問)中にユーザーが2ページ以上を訪れる割合を表します。

回遊率の計算方法は以下の通りです。

回遊率(%) = (2ページ以上を訪れたセッション数 / 全セッション数) × 100

回遊率が高いことは、ユーザーが興味を持って複数ページを見てくれたと解釈できるため、一般的には回遊率は高い方が望ましいと言えます。(1ページ完結型のランディングページや、問い合わせフォームのページは例外です。)

回遊率の逆数として「直帰率」という概念があります。直帰率の定義は、以下の通りです。

直帰率(%) = (1ページのみ訪れたセッション数 / 全セッション数) × 100 (= 100 – 回遊率)

なぜ「回遊率」が重要なのか?

結論、回遊率を改善することが、コンバージョン数(例:問い合わせ数)の改善につながるからです。

一般的に、Webサイトからの獲得できるコンバージョン数は以下の計算式で試算できます。

コンバージョン数 = インプレッション数 × クリック率 × コンバージョン率

回遊率の改善は、この中でもコンバージョン率の改善に影響する指標であるため、回遊率の改善は、コンバージョン数の改善につながります。

Webサイト改善の詳しい考え方は、こちらの記事を参照ください。

改善の進め方

具体的な改善の進め方を解説します。基本的な流れは以下の通りです。

  1. 回遊率を改善するべきページを決める
  2. 回遊先のページを決める
  3. 現状の回遊率を調べる
  4. 離脱の原因を考える(仮説を立てる)
  5. 改善施策を実行する(仮説を検証する)
  6. 施策の効果を検証する

1. 回遊率を改善するべきページを決める

まず、回遊率を改善するべきページを決めます。この工程を行うべき理由は、ページによって回遊してほしい場合とそうでない場合があるためです。

例えば、回遊率を低くするべきページとして、以下のようなものがあります。

  • ランディングページ(流入口と問合せフォームが一体となったページ)
  • お問い合わせフォーム

これらのページにおいては、ページ内でユーザーの行動を完結させることが目的であるため、以下にユーザーを離脱させないか、という視点でページの改善を行います。

回遊率を改善するべきページを見極めるための方法として、以下のような「バブルチャート」を使う方法があります。

このバブルチャートは、横軸にページの視聴回数(=ページビュー数)、縦軸にコンバージョン数(ページを経由して発生したコンバージョンの回数)をとり、サイト内の各ページをプロットしたグラフです。(バブルの大きさは、ページに訪れたアクティブユーザーの数を示します)

このグラフの赤い線の下側に位置するページは、「視聴回数は多いが、コンバージョン率は低いページ」であり、その逆の赤い線の上側に位置するページは「視聴回数は少ないが、コンバージョン率は高いページ」です。

ここで、回遊率を改善するべきページは、前者のページであると言えます。なぜなら前者のページから後者のページへの回遊を強化することで、獲得した視聴回数をより効率的にコンバージョンへつなげることができるためです。

上記のようなグラフを活用し、回遊率を改善するべきページの優先順位を決定し、次項以降の改善施策を実行します。

2. 回遊先のページを決める

1のステップで選定したページに対して、回遊先のページ(当該のページに訪れたユーザーに対して、回遊を促したいページ)を決めます。

回遊先のページを決める上で重要なことは、ページに訪れたユーザーの興味関心に沿ったゴール(回遊先)を設定することです。

例えば「“Rapid Prototyping”について解説するページ」に訪れるユーザーは、次のような興味関心を持っていると想像できます。

  • Rapid Prototypingについて知りたい(=情報収集)
  • Rapid Prototypingができる会社が知りたい(=会社探索)

上記のような興味関心のあるユーザーが、次に興味を持ちそうなページの例としては以下のようなものがあります。

  • Rapid Prototypingサービスのページ(イメージ
  • Rapid Prototypingのホワイトペーパー(お役立ち資料)ダウンロードページ(イメージ
  • Rapid Prototypingと類似の工業技術の解説ページ(イメージ

もしくは先ほどのバブルチャートにおける「視聴回数は少ないが、コンバージョン率は高いページ」の中から、ユーザーの興味関心に近いものを選定する方法もあります。

このように、ページに訪れるユーザー心理状況を先読みし、彼らが次に興味を持つであろうことの中から自社にとって回遊を強化したいページを回遊先に設定します。

3. 現在の回遊率を調べる

1と2のステップで、回遊の経路(起点となるページとゴールとなるページ)が決定します。次に行うことは、この経路における現在の回遊率を調べることです。

具体的には、Google Analytics 4の「探索」という機能を活用します。(詳しい設定方法は割愛します)

こちらの機能を使用しレポートを作成すると、上記のような表を作成できます。

この表は、起点となるページからゴールとなるページへの回遊率(ここでは完了率)を示しており、起点に訪れたユーザーの中で、何人のユーザーがゴールまでたどり着いたかを把握できます。

上記の例では、流入ユーザーの内訳として「デバイスカテゴリ」を設定することで、流入したユーザーが使用するデバイスごとに数字を把握することができます。(これはこの後解説する離脱の原因を考える際にヒントになります)

4. 離脱の原因を考える(仮説を立てる)

次に、定めた経路において離脱が発生する原因を考えます。

原因を考えるために最初にするべきことは、当該のページに訪れたユーザーの気持ちになって、実際にページを操作してみることです。ここで感じたちょっとした違和感、操作性の悪さをもとに、ユーザーの離脱が発生する原因仮説を立てます。

例えば、以下のようなイメージです。

  • リンクの設置場所が不明瞭で気づきにくい
  • 関連製品、情報に関するリンクが設置されていない
  • 欲しい情報にたどり着くまでのスクロール距離が長すぎる

上記のような仮説を立てた次に、仮説の確からしさを「ヒートマップ」を使って検証します。ヒートマップを使用することで、上記の仮説で想定したような行動をユーザーが実際に取っているかを確かめます。(検証項目の名称はツールによって異なります)

原因仮説 ヒートマップにおける検証項目
リンクの設置場所が不明瞭で気づきにくい ・クリックマップ(当該リンク箇所のクリック回数の確認)
・レコーディング(当該リンク周辺におけるユーザーの動きを観察)
関連製品、情報に関するリンクが設置されていない ・熟読マップ(当該箇所を熟読はしたが何もアクションを起こさず離脱しているユーザーがいないか確認)
欲しい情報にたどり着くまでのスクロール距離が長すぎる ・スクロールマップ(当該箇所までたどり着かずに離脱したセッションの割合を確認)

上記のような検証を加えることで、実際に自分が感じた違和感を他のユーザーも同じように感じていないかを確かめることができます。(ただしヒートマップを見ても、実際のユーザーの心理状況まではわからないため、最終的には感覚と経験を元に判断します)

なお各種検証項目については、GA4にて設定を行うことで、同様のデータが取得できます。(以下の例は、GA4にて作成したスクロール率レポートの例です)


これらのレポートは、原因の仮説を持たないまま見始めるとどれだけ時間があっても分析しきれません。そのため、ある程度仮説に目星をつけた状態で、その仮説を検証する目的で使用することをおすすめします。

5. 改善施策を実行する

4で立てた原因仮説を改善するための施策を考えます。

施策は、以下のような情報をある程度収集した状態で考えることをおすすめします。

  • 競合他社のWebサイトの仕様
  • Webマーケティング関連の書籍で紹介された手法
  • 他のページで実施し、効果のあった施策

例えば、4で出てきたような仮説を改善するための施策の例を紹介します。

原因仮説 ヒートマップにおける検証項目
リンクの設置場所が不明瞭で気づきにくい ・クリックできることがわかるような装飾を行う(例:マウスホバーをした際の動きを加える)
関連製品、情報に関するリンクが設置されていない ・当該のページを訪れたユーザーの興味関心に沿ったページのリンクを設置する
・関連製品ページへのリンクを設置する
欲しい情報にたどり着くまでのスクロール距離が長すぎる ・ユーザーが興味を持って読んでくれる情報、ユーザーに優先的に見せたい情報をページの上部に配置させる

上記のような改善施策の中でも実行が容易であり、かつ効果のありそうなものから順に実行していくことをおすすめします。

6. 施策の効果を検証する

最後に、5の施策を実行後に一定期間を置き、効果を検証します。

検証方法は、3のステップで紹介した通りです。加えて、ヒートマップでも検証後のページにおけるユーザーの動きを調査し、こちら側が意図したような動きをするユーザーが増えたか確認します。

この時点で改善が確認できない場合、まず以下の2つの可能性が考えられます。

  1. 原因仮説が間違っていた
  2. 原因仮説は合っていたが、改善施策が間違っていた

1、2の可能性が考えられる場合、再度4または5のステップに戻り、やり直します。

また上記2つ以外の可能性として、そもそもの経路設定(起点とゴールとなるページの設定)に無理がある場合もあります。例えば、リンクを踏んでもらうことをゴールにしていたが、やはりそのページ内で直接コンバージョンしてもらう方が、コンバージョン率の向上が見込めるケースもあります。

上記のような可能性も考え、次の方針を決定し、必要に応じて見切りをつける姿勢も大切だと思います。

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海外向けWebサイトの離脱発生要因

最後に、海外向けWebサイトならではの離脱の発生要因を2つ紹介します。

1. 言語による離脱

1つ目は、言語による違和感で離脱が発生するケースです。具体的に以下の2つのパターンに分類できます。説明をわかりやすくするために、英語を例に説明します。

  1. 英語ネイティブが非ネイティブが作った英語サイトを訪れる場合
  2. 英語非ネイティブが英語ネイティブが作った英語サイトを訪れる場合

上記の場合、非ネイティブが作った英語文章に違和感を抱き、コミュニケーションの壁を感じ離脱してしまうパターンです。(日本人が外国企業が作った日本語Webサイトを見たときに抱く違和感と近いです)

後者の場合は、非ネイティブにとってもわかりやすいWebサイトを作ることが必要です。特にグローバルサイト(特定の国に対象を絞らないサイト)において重要です。

上記2つに共通する解決策としては、視覚的、客観的な情報を中心にページを構築することです。製品の写真や仕様を表す数値は、誰が見ても同じように解釈できるため、積極的に活用した方が良いです。

2. アクセス速度による離脱

海外向けのWebサイトでは、サーバーの設置位置によりアクセス速度に差が生じます。

つまり、サーバーの設置位置が遠い地域に住んでいるユーザーがWebサイトにアクセスした場合、近い地域に住むユーザーよりも表示速度が遅れる場合があります。

海外Webサイトのサーバーの選び方、速度が与える影響は、以下の記事で解説していますので興味のある方はご参照ください。

まとめ

今回の記事では、海外向けWebサイトの回遊率の改善の進め方を解説しました。

この記事を含めて、私の執筆する記事ではノウハウの更新に応じて、随時内容を更新するので、定期的に見に来ていただけると幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました。

弊社(テクノポート株式会社)では、製造業向けに「海外向けWebサイトの改善コンサルティング」サービスを提供しております。
壁打ち相談会(30分)」も実施していますので、お気軽ににお声がけいただければ嬉しく思います。

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