テクノポート株式会社の稲垣です。
BtoB企業向けの「海外向けWebマーケティング」サービスの責任者を務めています。
この記事では、BtoB企業が海外の顧客開拓を目的としたコンテンツマーケティングを進める上で必要な知識を網羅的に記載しました。
この記事の目次
海外向けコンテンツマーケティングの基礎
海外向けコンテンツマーケティングの定義
特定の国や地域の顧客層に向けて価値のあるコンテンツを制作・配信することで、ブランドの認知度向上、見込み顧客の獲得、顧客との信頼関係の構築を目指すマーケティング手法です。この文脈における「コンテンツ」とは、特定の目的やターゲットに向けて情報や知識の提供するために作成されたものです。(具体的なコンテンツの種類は、後述する「コンテンツの種類」で詳しく解説しています)
海外向けコンテンツマーケティングに取り組むべき理由
費用対効果の高さ
BtoB企業にとって、コンテンツマーケティングは費用対効果の高い施策の一つとして、多くのデータが報告されています。
- コンテンツ マーケティングは、アウトバウンド マーケティングよりもリードの点で 3 倍効率的です。(レビュー 42)
- マーケティング担当者の 67% が、SEO が最も効果的なマーケティング戦術であると述べています。(Smart Insights)
- コンテンツ マーケティングによってリードの数が増加したと 72% が述べています。(Content Marketing Institute)
158+ B2B Content Marketing Statistics To Drive More Leads In 2025 – B2B Digital Marketers
実際、弊社が2024年1月に実施した「BtoB企業の海外向けマーケティングの実態調査」においても、海外向けマーケティングで成功している企業のうち、44.8%の企業が「検索エンジンの最適化(SEO対策)」、34.5%の企業が「外国語コンテンツの制作」に取り組んでいることがわかっています。(詳しくはこちら)
オーガニックコンテンツの重要性
多くの顧客が広告よりもオーガニックのコンテンツを重要視していることがわかっています。
70% の人々は、従来の広告ではなく、記事やブログ投稿から企業に関する情報を入手したり、何かを学んだりすることを好みます。
15 Content Marketing Statistics that Prove the Value of Your Efforts
昨今の生成AIによって作られたコンテンツやデジタル広告の急速な普及により、独自のノウハウや経験を含む一次情報によって作られたコンテンツの重要性は、より一層高まっているといえます。
コンテンツの多様性の拡大
デジタルチャネルの多様性が拡大すると同時に、顧客が消費するコンテンツの種類も増えています。
- ミレニアル世代の 52% は、自分が支持するブランドの動画を見たいと考えていますが、45~54 歳の世代では 25% しか見ていません。(HubSpot)
- B2B の回答者の 71% は、購入プロセス中にブログをレビューしたと述べています。(Demand Gen Report)
- 消費者の 32% は、ブランドの Web サイトをチェックする前に、そのブランドのソーシャル メディア プレゼンスをチェックしています。(Animoto)
- B2B の回答者の 64% は、購入プロセスの初期段階で価値のあるコンテンツ形式としてポッドキャストを挙げており、インフォグラフィック (76%) に次ぐものです。(Demand Gen Report)
15 Content Marketing Statistics that Prove the Value of Your Efforts
消費されるコンテンツの種類が増えるということは、複数種類のコンテンツを制作することの重要性が増しているといえます。特に若年層は従来存在しなかったチャネルから情報収集をする傾向があるため、コンテンツを制作する企業としても、顧客の多様な行動様式を把握しておくことは重要です。
コンテンツの種類
ここではBtoBマーケティングにおいて一般的に用いられるコンテンツの種類をカテゴリごとに紹介します。
Webコンテンツ
ブログ記事
ブログ記事は、特定のターゲット層に向けて情報提供や課題解決を目的とした文章コンテンツです。SEO対策によるブランド認知の向上やオーガニック流入の増加を図る手段として活用されることが一般的です。
ブログ記事の例
参照元ページ:What is Grinding: Definition, Process, Types & Specifications
こちらは中国のラピッドプロトタイピングサービスを提供する企業のWebサイトに公開されている「研削加工(Grinding)」の基本情報を解説するページです。検索キーワード “griding” でのSEO対策を念頭に作られたページであり、同キーワードを検索するユーザーに対して、同社の専門性の高さや認知度向上を目的として作られていると考えられます。
ケーススタディ(事例)
顧客の課題を解決した過去の成功事例や課題解決のプロセスを示すコンテンツです。見込み客に製品やサービスの実績を伝え、信頼を構築する効果があります。
ケーススタディ(事例)の例
参照元ページ:Success Stories
こちらはドイツのサプライチェーンソリューションを提供する企業の顧客が同社のサービスを通して得られた成果を紹介するページです。こちらのページの配下には、各顧客企業ごとの事例(課題、解決策、成果)が個別ページで閲覧できるようになっています。
同社の顧客が得られた成果は、上記のように数字で端的に把握できる形で記載されています。
カタログコンテンツ
製品カタログ/技術資料
製品やサービスの詳細な仕様、技術情報、機能、特長を一覧化した資料です。複数社の比較を経て購入を検討している顧客に具体的な情報を提供し、購買決定を促すために有効なコンテンツです。
製品カタログ/技術資料の例
参照元ページ:Datasheets and downloads for optical glass | SCHOTT
こちらはドイツのガラス素材メーカーが同社の提供するガラス素材の技術資料を公開しているページです。公開している資料には、以下のものが含まれます。
- データシート 各種光学ガラスの詳細な仕様や特性をまとめたデータシート
- 光学ガラスポケットカタログ: 製品ラインナップや技術情報をコンパクトにまとめたカタログ
- 技術情報 (TIE): 光学ガラスの温度係数、屈折率、機械的・熱的特性などをまとめた専門的な技術資料
同企業の場合はすべての資料を個人情報の入力なしで入手できますが、企業によってはダウンロードフォームを介して資料を公開する場合もあります。
ホワイトペーパー
特定のテーマや技術に関する深い知識や解説を提供する文書形式のコンテンツです。顧客に価値ある情報を提供しながら、専門性や信頼性をアピールする手段として使われます。
ホワイトペーパーの例
参照元ページ:Sensors – the gateways to the Smart Factory | ACCRETECH
こちらは、半導体製造装置と精密計測機器の製造販売を行う株式会社東京精密が「Metrology 4.0」をテーマにIndustry 4.0(第4次産業革命)の文脈で、現代の計測技術が直面する要求や課題を詳しく解説するホワイトペーパーです。
Eブック
見込み顧客が関心を持つテーマやトピックを1つにまとめたデジタル形式の本です。リード獲得を目的として無料ダウンロード形式で提供されることが多いです。
Eブックの例
参照元ページ:Design and Test Solutions for E-Mobility and Autonomous Driving | Keysight
こちらは、電子計測機器の開発・製造・販売を手掛ける米国の企業が電動モビリティ(eモビリティ)と自動運転技術の設計、およびテストに関する包括的な情報を提供する電子書籍です。同社の見込み顧客であるエンジニアや研究者がeモビリティと自動運転技術の開発プロセスにおいて直面する課題と、適切な設計およびテストソリューションを選択するために必要な情報が整理されています。
SNSコンテンツ
ソーシャルメディア投稿
短文、画像、動画を用いて、SNSプラットフォーム上で共有するコンテンツです。ブランド認知やエンゲージメントを向上させ、顧客が購買検討プロセスに入った際に自社を想起させるために有効です。
ソーシャルメディア投稿の例
参照元ページ:Post | LinkedIn
こちらは製品向けの包装ソリューションを開発・製造する包装企業のLinkedInへの投稿です。この投稿は同社の包装ソリューションの一環として、PETボトルのリサイクルの推奨を促す内容になっています。このような投稿は、業界の第一人者として認知を拡大させる目的や、有益な情報を提供することで、フォロワーを増やす目的で作成されます。
動画
BtoB企業において動画は、会社紹介や製品やサービスの特徴を視覚的に伝えるための説明手段として使われることが多いです。動画は、SNSやウェブをはじめとするオンライン上での活用はもちろん、展示会や商談の場でも使用できる使い勝手の良さがあります。
動画の例
参照元ページ:PowerHap Piezo Actuator – Product Overview – YouTube
上記の動画は、TDK社が同社のPowerHap™ピエゾアクチュエータの特長と応用例を紹介するために作成されています。製品の特徴がアニメーションを用いて説明されているため、Webページよりも視覚的な情報を伝える上で有効なコンテンツであるといえます。
海外BtoB企業のコンテンツマーケティングのトレンド
最後に海外のBtoB企業で導入が進んでいるコンテンツマーケティングのトレンドを紹介します。
1. パーソナライズコンテンツ
特定の企業や担当者に焦点を当てカスタマイズされたコンテンツを提供する手法です。個別のニーズや課題に対応したコンテンツを提供することで、顧客エンゲージメントの向上やコンバージョン率の改善が期待できます。特にABM(アカウントベースドマーケティング)における施策の一つとして導入されます。
パーソナライズコンテンツの例
以下は、オンライン決済システムを提供する企業のWebサイトに掲載されている導入企業のロゴです。このロゴは、ユーザーが属する国と地域によって表示される企業が変わる仕組みが適用されています。
アメリカからアクセスした場合
日本からアクセスした場合
それぞれの国のユーザーにとって、よりなじみのある企業を表示させることで、顧客と信頼感を形成する意図があると考えられます。
2. AIコンテンツ
AIを利用したコンテンツ制作も多くのBtoB企業が積極的に取り入れています。近年では特に文章作成に限らず画像、動画、音声を含むコンテンツでもAIの活用が進んでいます。
AIコンテンツの例
以下のAIを活用したEコマースサービスを提供する企業のWebサイトのブログでは、自社のブランドガイドラインを学習させたAIを活用することでコンテンツ制作の工数を大幅に削減しながら、大幅トラフィックの増加を実現させているそうです。
参照ページ:Blog Archives | Bloomreach
同社はブログコンテンツだけでなく、自社で配信するニュースレターや広告のコピーを作成する際にもAIを積極的に活用することで一貫したメッセージを届けながら、コンテンツ制作工数の効率化を実現しています。
3. ブランドジャーナリズム
ブランドジャーナリズムとは、企業自らが取材やリサーチを通じて制作した記事や動画などのコンテンツを発信する手法です。従来の企業のPRを目的としたコンテンツとは異なり、まだ自社の製品・サービスに関心を持つ前の顧客を対象として彼らが抱える課題や関心事に対してストーリー形式のコンテンツを作成するのが一般的です。
ブランドジャーナリズムの例
以下はイギリスを拠点とする公共事業者向けのエネルギーシステムのサービスを提供する企業が公開しているページです。
参考ページ:Stories
このページでは主に、顧客の課題解決に向けて会社としてどのような取り組みをしているのか、がストーリー形式で説明されています。コンテンツもすべて自社の取り組みや自社で取得した調査結果が中心になっており、業界の第一人者としての認知を拡大する上で、これらのページが重要な役割を果たしていると考えられます。
まとめ
海外向けコンテンツマーケティングと海外におけるコンテンツマーケティングのトレンドについて、解説しました。本記事の内容が、BtoB企業のコンテンツマーケティングの取り組みに役に立てれば幸いです。
弊社(テクノポート株式会社)では、BtoB企業向けに「海外向けWebマーケティング」を支援しています。
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