中小企業専門の弁理士の亀山です。お陰様で、開業して5年目になります。開業して約300社の中小企業様・個人事業主様のご相談を受けてまいりました。前回は、「特許の権利化までの手続きがわかりくい!」という声に応え、「特許の権利化までの手続き」できるだけわかりやすくご紹介したました。今回は、特許相談のときに、よく見受けられるお客様の勘違いについてご紹介します。
この記事の目次
1、特許出願を済ませばOK?
特許権取得までの道のりとして、以下の6つのイベントがあります。
- 先行技術調査
- 特許出願
- 出願審査請求
- 審査対応
- 特許査定
- 特許権の維持
特許を取るためには、特許出願をする必要がありますが、特許出願をしても、すぐに特許権取得になりません。その理由は、前述の通りですが、わからない方は前回の記事を参照ください。
2、特許表示の罠
「特許出願を済ませた」=「特許取得」と勘違いする方は多いようです。通常、特許出願した後に、発明品の販売を行うのですが、その発明品のチラシに、「特許製品」、「特許技術」や、「オリジナル特許」と表示されるケースを時々見かけます。ところが、「特許製品」、「特許技術」や「オリジナル特許」という表示に問題があります。
3、特許法によると・・・
特許法第百八十八条(虚偽表示の禁止)には次のようなことが記載されております。
何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
- 一 特許に係る物以外の物又はその物の包装に特許表示又はこれと紛らわしい表示を付する行為
- 二 特許に係る物以外の物であつて、その物又はその物の包装に特許表示又はこれと紛らわしい表示を付したものの譲渡等又は譲渡等のための展示をする行為
- 三 特許に係る物以外の物の生産若しくは使用をさせるため、又は譲渡等をするため、広告にその物の発明が特許に係る旨を表示し、又はこれと紛らわしい表示をする行為
- 四 方法の特許発明におけるその方法以外の方法を使用させるため、又は譲渡し若しくは貸し渡すため、広告にその方法の発明が特許に係る旨を表示し、又はこれと紛らわしい表示をする行為
すなわち、特許を取っていないのにもかかわらず、あたかも特許権を取得しているような紛らわしい表示をした場合には、虚偽表示に該当します。さらに、特許法第百九十八条には次のようなことが記載されております。
第百八十八条の規定に違反した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
また、特許法第二百一条(両罰規定)には、には次のようなことが記載されております。
1 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号で定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
- 一 第百九十六条、第百九十六条の二又は前条第一項 三億円以下の罰金刑
- 二 第百九十七条又は第百九十八条 一億円以下の罰金刑
2 前項の場合において、当該行為者に対してした前条第二項の告訴は、その法人又は人に対しても効力を生じ、その法人又は人に対してした告訴は、当該行為者に対しても効力を生ずるものとする。
3 第一項の規定により第百九十六条、第百九十六条の二又は前条第一項の違反行為につき法人又は人に罰金刑を科する場合における時効の期間は、これらの規定の罪についての時効の期間による。
つまり、特許を取っていないのにもかかわらず、あたかも特許権を取得しているような紛らわしい表示をした場合には、刑事罰の対象となり、懲役3年以下、300万円以下の罰金に科されますし、法人の場合には、1億円以下の罰金の対象となります。
発明品のチラシを作って販売する時点で、ほとんどが法人である可能性が高いと思いますので、行為者には、懲役3年以下、300万円以下の罰金に科され、その勤め先の企業には、1億円以下の罰金が科されます。無視することのできない大きな問題です。
4、ではどう表示すればよいの?
特許出願後、特許取得前においては、「特許製品」等ではなく、「特許出願中」や「特許出願済」と表示します。一方、特許取得後は、「特許製品」、「特許技術」等と堂々と表示することができます。
5、まとめ
- 特許表示を一歩間違えると刑事罰になる
- 特許出願後、特許権取得前 → 「特許出願中」「特許出願済み」と表示
- 特許権取得後 → 「特許製品」「特許技術」と表示