【成功事例あり】BtoB企業向けWebマーケティング手法5選(BtoCとの違いも解説)

【執筆者紹介】徳山 正康
この記事の執筆者
徳山 正康
テクノポート株式会社 代表取締役

製造業専門のWebマーケティング事業と技術ライティング事業を手がけるテクノポートの代表を務める。「技術マーケティングで日本の製造業に追い風を」を経営理念に、これまでに数名の町工場から一部上場のメーカーまで、累計1,000社を超える製造業を支援し、数多くの企業の経営革新を実現。

グロービス経営大学院(MBA)卒業、(社)日本ファミリービジネスアドバイザー協会 フェロー、(社)Reboot 理事、(社)Glocal Solutions Japan 認定専門家

【寄稿実績】
間違いだらけの製造業デジタルマーケティング(MONOist)
精密板金企業が「Webでの引き合い」を売上につなげることができた、たった一つの理由(ビジネス+IT)
製造業のSEO対策を基礎から解説、「加工事例」が超重要なワケとは(ビジネス+IT)
製造業の「技術マーケティング」戦略、事例で読み解く自社技術の可能性を広げる方法(ビジネス+IT)
徳山 正康 が執筆した他の記事をみる

テクノポートの徳山です。

本記事は、下記のような疑問をお持ちの方に読んでいただきたい内容です。

  1. BtoB Webマーケティングの手法とそれぞれの手法のメリット・デメリットは?
  2. BtoB Webマーケティングで成功している企業は何をやっているの?
  3. BtoB企業がWebマーケティングに力を入れるべき理由は?
  4. BtoBとBtoCのWebマーケティングの違いは?
  5. BtoB Webマーケティングはどうやって進めるの?

そこでこの記事では、下記の内容を解説します。

▶︎ BtoB Webマーケティングで用いられる5つの手法(概要、メリット、デメリット)
▶︎ BtoB Webマーケティングに成功した企業5選
▶︎ BtoB企業がWebマーケティングに力を入れるべき3つの理由

▶︎ BtoBとBtoCのWebマーケティングの違い
▶︎ BtoB Webマーケティングの進め方

本記事を執筆する弊社テクノポート株式会社は、これまでにBtoB企業を含めた1,000社以上の企業のWebマーケティングをサポートした実績があります。

なお本記事では「Webマーケティング」という言葉の意味を「インターネット(Web)を利用したマーケティング活動」と定義します。

本記事で使用するデータは、すべて参考文献へのリンクを記載しています。ご自身でデータの内容を確認したい方は、ご参照ください。

BtoB Webマーケティングで用いられる5つの手法

最後に、BtoB Webマーケティングでよく用いられる代表的な5つの手法をそれぞれの手法のメリット・デメリットとともに紹介します。

①Webサイトの制作・運用

Webサイトの企画・制作・運用により顧客を獲得する方法です。「Webマーケティング」という言葉を聞いて、真っ先にこの方法が思いつく方も多いと思います。

Webサイトの制作・運用の主な目的は、以下のようなものが挙げられます。

  • 認知の拡大
  • 自社製品・サービスを顧客の説明
  • 問い合わせの獲得
  • 自社のブランディング
  • 採用活動

メリット・デメリット

メリット
デメリット
継続的かつ安定的にお問い合わせを獲得することができる 効果を出すために一定以上の期間が必要
自社の製品・サービスに一定以上の関心のある顧客との接点を多く持つことができる 制作にコスト・労力がかかる
製品・サービスの購買活動、採用活動の窓口として機能する 制作・運用のためのノウハウが必要
更新活動が容易に行える  

Webサイトの制作・運用によるマーケティングの詳細が知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

②コンテンツマーケティング

「コンテンツマーケティング」とは、ユーザにとって価値あるコンテンツ(情報)の制作・発信や、役に立つ資料を提供するマーケティング手法です。重要なことは、自社のPRではなく、ユーザーの課題解決に役立つ情報を発信し続けることです。

コンテンツマーケティングの主な目的としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 潜在顧客との接点を作る
  • 潜在顧客のニーズを育成し問い合わせにつなげる
  • 特定の業界内での自社のブランディングを確立する

メリット・デメリット

メリット
デメリット
資産性がある 効果が出るまで時間がかかる
潜在的なニーズを持つ顧客と接点を持つことができる コンテンツを発信し続ける労力が必要となる
自社のブランディングにつながる 提供する情報の質が低いとブランディングの損失につながる

コンテンツマーケティングの具体的な進め方、事例の解説を弊社公式YouTubeチャンネルにて行っています。詳しい内容が知りたい方は、下記の動画をご覧ください。

 
 
 

③動画マーケティング

本記事で定義する「動画マーケティング」とは、動画コンテンツを活用したマーケティング活動全般のことを指します。

動画マーケティングの手法は大きく下記の2種類に分類されます。

  1. 動画コンテンツ配信:動画投稿プラットフォーム(例:YouTube、Instagram、TikTok)で情報発信する手法
  2. 動画広告:動画形式の広告、動画コンテンツの合間に表示されるものからWebページのバナーに表示されるものまで、複数種類存在

2020年のサイバーエージェント社の調査(2)によると、動画広告の市場規模は年々増加しており、2024年には2020年の2倍以上の市場規模に成長すると予想されています。

メリット・デメリット

メリット
デメリット
予算がかからない(動画コンテンツ配信は基本無料) 労力、制作のための時間的コストがかかる
情報量が多い(1分間でWeb3,600ページ分の情報を伝えることができる) 効果が出るまでに時間がかかる、ノウハウが必要
資産性がある 視聴環境が制限される、映像、音を同時に使える+ネット環境
信頼の構築につながる  

参考資料

(2)サイバーエージェント、2020年国内動画広告の市場調査を発表 | 株式会社サイバーエージェント

④SNSマーケティング

「SNSマーケティング」とは、その名の通りSNS(例:FaceBook、Twitter、Instagram)を活用したWebマーケティング活動全般のことを指します。BtoB企業のSNSの活用方法は主にSNSでの情報発信とSNS広告の2種類です。

SNSマーケティングの主な目的には、下記のようなものが挙げられます。

  • 潜在顧客との接点を獲得
  • 潜在顧客の育成(自社の製品・サービスについての理解を深める)
  • 顧客のニーズを調査

メリット・デメリット

メリット
デメリット
発信が容易かつ拡散力が高い 効果が出るまでに時間がかかる
予算がかからない(情報発信は基本無料) 悪い評判が伝播するリスクがある
顧客のニーズを調査することができる 発信する内容によっては自社のブランディングの損失につながる
顧客との距離を縮めることができる  

⑤ウェビナー

「ウェビナー」とは、名前の由来(「ウェブ」+「セミナー」)が示す通り、Web上で行うセミナー活動のことを指します。(オンラインセミナーと呼ばれることもあります)

BtoB企業のウェビナーの主な使い方は、大きく下記の3種類あります。

  1. 製品・サービスの説明
  2. セミナー・講義
  3. 顧客サポート

新型コロナウイルスの流行以降、積極的に取り組む企業が増えてきています。(3)

メリット・デメリット

メリット
デメリット
自社の製品・サービスに関心の高い潜在顧客との接点を獲得できる 通信トラブルが発生するリスクがある
コストがかからない(例:会場費、参加者の交通費、運営費) 対面のセミナーと比較し、受講者の集中力が切れやすい
物理的・地理的制約が少ない(日本全国から参加可能、参加者の人数制限がない)  
録画配信可能  

参考資料

(3) 株式会社イノベーションによるコクリポ社の完全子会社化について~新規事業領域「ウェビナー(Web セミナー)市場」への参入~ |イノベーションのプレスリリース

BtoB Webマーケティングの成功事例5選

次に、BtoBWebマーケティングに成功した企業の事例を5社紹介します。

紹介する事例は、全て弊社が実際にサポートしているお客様のものです。他の事例を含めた詳しい内容は、こちらからご覧いただけます。

株式会社長野サンコー

本社 長野県諏訪市
社員数 60名
事業内容 プレス金型の設計・製作およびプレス加工
取材記事 Webマーケティングでは難易度の高い量産案件の受注に成功

企業の概要

プレス金型の設計から製作までを行う企業。絞り加工技術を活かした高精度な部品生産技術を保有しており、自動車に使用される重要保安部品の生産も請け負った実績を有する。

Webマーケティングの施策

行った施策は大きく2つ。

1つ目は「絞り加工」や「プレス金型」といった多くのアクセスを獲得できるキーワードで、検索上位表示を狙ったSEO対策

2つ目は、獲得したアクセスを問い合わせに繋げるために、「加工実績」をWebサイトに可能な限り掲載し、ユーザーへの安心感を訴求することで、問い合わせへのハードルを下げる施策。

施策の効果

2020年5月に行ったWebサイトのリニューアルから1年後には、超大型の量産案件をWebサイトから獲得することに成功。

リニューアル前には年に数件程度しかなかった問い合わせの相談が、現在では、毎月3件以上が安定して獲得できるまでに成長。問い合わせの中身は、試作案件が主だが、量産案件の問い合わせも増加傾向。

第一フォーム株式会社

本社 神奈川県横浜市
社員数 10名以下
事業内容 発泡スチロール加工・ディスプレイ製作・オブジェ製作
取材記事 コロナ禍のイベント自粛でWeb経由の売り上げが月1件まで激減。 注力するターゲットを変えV字回復

企業の概要

加工機と職人の技術を駆使した発泡スチロールの加工を専門にする会社。発泡スチロールを使った「イベント用のモニュメント」、「ロゴパネル」、「立体オブジェ」に加えて、機械加工用の治具、試験台、工業用の模型製作も行う。

Webマーケティングの施策

「工業分野の案件」の獲得を狙ったSEO対策を実施。

具体的には、工業分野のユーザーが検索時に使用する可能性の高いキーワードを洗い出し、それらのキーワードで検索上位表示をするために必要な情報の選定およびWebサイトへの反映を行った。

これらの施策に加えて、従来のページの改善作業(情報の加筆、修正)も行い、Webサイト全体の品質を向上を図った。

施策の効果

工業分野からの発泡スチロール加工の依頼が急増。

具体的には、工業分野のキーワードによりアクセス数が3倍以上に増加。同時に、問い合わせ数も施策実行前と比較し、3倍以上に増加。

加えて、問い合わせの内容も具体的かつ継続的な案件につながるものが増え、施策を実行してから半年後には、大口の案件を獲得することにも成功した。

NISSHA株式会社

 

本社 京都市中京区
社員数 720名
事業内容 産業資材・ディバイス・メディカルテクノロジー
取材記事 技術者をターゲットとしたWebマーケティングにより多くの新規顧客開拓に成功

企業の概要

スマートフォンをはじめとする電子機器に使用されるタッチパネル、フィルム、センサーの設計・開発・製造に加え、天然素材を使用したパッケージの製品の製造、工業用印刷技術、コーティング技術を活かした事業にも注力。

Webマーケティングの施策

会社の事業内容が中心であるコーポレートサイトとは別に、ターゲットを潜在顧客となる技術者に絞り込んだ「特設Webサイト」を制作。

制作したWebサイトの運用では、見込み顧客が検索に使用するであろうキーワードの洗い出しを行い、それらのキーワードで検索上位表示させるために必要な情報の追加を実行。

上記の施策に加えて、短期的に業界内での認知度を獲得するために「リスティング広告(検索結果画面の上部に表示される文字型の広告)」の運用も実施。

施策の効果

施策の最大の目的であった、業界内の大手企業の技術者からの問い合わせを獲得することに成功。

上記の効果に加えて、他分野の技術者から新規の開発案件も増加し、複数の業界をまたいだ幅広いユーザーからの問い合わせを獲得している。

現在では、次なる施策として「コンテンツマーケティング」を行い、更なる問い合わせの獲得に向けて更新をを行っている。

有限会社宮崎製作所

本社 東京都大田区
社員数 8名
事業内容 合成樹脂切削加工・受注生産・販売
取材記事 コロナ禍のニーズに合わせたWebマーケティングで顧客開拓

企業の概要

合成樹脂の切削加工、旋盤加工、曲げ・接着加工を得意とする会社。汎用機と高機能マシニングセンターを駆使し、低コストで短納期の加工に注力している。

Webマーケティングの施策

競合企業との差別化を図るために「対応力の高さ」をWebサイト上でアピール。

具体的には、不具合発生時のレスポンスの速さ、問い合わせから加工が完了し、納品するまでのリードタイムの短縮に強みがあることをわかりやすく訴求。

加えて、短納期を希望するユーザーが近場の会社を検索する際に使用するであろうキーワード(例:樹脂加工 東京)を洗いだし、ユーザーが求める情報を掲載する形でSEO対策を実施。

施策の効果

新規の問い合わせ月に4〜5件のペースで安定して獲得。

施策の一つとして行った「キーワード対策」では、「樹脂切削 東京」で1位、「樹脂切削 特急」でも1位を獲得することに成功。これらのキーワードからの流入を中心にお問い合わせを獲得することにも成功。

株式会社スペック・ジャパン(Speck Japan Co.Ltd)

本社 大阪市西区
社員数 10名以下
事業内容 ドイツ製ポンプの販売
取材記事 国内市場への参入に大きな成果(海外マグネットポンプメーカー)

企業の概要

ドイツのポンプメーカーであるSPECK社の日本支社。Speck社が製造するポンプの販売が専門。同社のポンプは世界40カ国以上で複数の業界(例:医療、半導体、食品、鉄道)において使用されている。

Webマーケティングの施策

主力製品に関するキーワードを洗い出し「SEO対策」を実施。

具体的には、競合が比較的少なく上位表示できる可能性が高いキーワードの中から、同社の取扱がある製品を抽出し、優先度をつけてSEO対策を実施。

加えて、業界内での認知度獲得と見込み顧客との接点作りのために、お役立ち情報を発信し、1人でも多くのユーザーと接点を作ることに注力。

施策の効果

主力製品の一つである「マグネットポンプ」とその関連製品のキーワードの順位が軒並み上昇し、Webサイトのリニューアル以降、アクセス数右肩上がりに増加加えて、問い合わせ数大幅に増加

お役立ち情報を発信した効果として、見込み顧客から「製品の選定方法」、「用途にあった製品の見つけ方」に関する問い合わせも増加。

BtoB企業がWebマーケティングに力を入れるべき3つの理由

次にBtoB企業がWebマーケティングに力を入れるべき理由を解説します。

①情報収集方法の変化

今から約10年前までは、下記のようなインバウンド型の営業が主流でした。

  • ダイレクトメール
  • FAX
  • オフラインの展示会
  • テレアポ

一方2021年現在では、どの企業もWebサイトを持つことが当たり前の時代になっており、ほぼすべてのビジネスパーソンがスマホとパソコンを1人1台持っています。

また、新型コロナウイルスの流行による営業活動の自粛の流れも相まって、インターネット上からお問い合わせを獲得することの重要性が再認識されていることも事実です。

2018年のトライベック・ブランド戦略研究所の調査(1)によると、BtoBビジネスにおいて64.8%の顧客が最も参考にする情報源として「Webサイト」を挙げています。これは他のどの情報源よりも高い数字です。

この結果が示す通り、BtoBビジネスにおいてWebサイトは重要な役割を担っており、BtoB企業がWebマーケティングを推し進めるべき理由になります。

参考資料

(1) BtoBサイト調査 2019 | BtoBサイト調査 | トライベック・ブランド戦略研究所

②リソースの有効活用

飛び込み営業、テレアポに代表される従来のアウトバウンド型の営業は、自社の製品・サービスに対するニーズのない顧客も含めて営業活動を行うことが当たり前です。

また、一般にアウトバウンド型の営業には下記のようなコストがかかります。

  • 人件費
  • 交通費
  • 宿泊費
  • 展示会出展費用

一方、インバウンド型の営業(例:Webサイトからのお問い合わせ)は、自社のWebサイトの内容を一通り理解した、一定以上のニーズがある顧客のみと商談をするケースがほとんどです。

そのため営業活動に余分な労力をかける必要がなく、かつ受注につながるケースが高いという特徴があります。

加えて、営業担当者が不在になったとしても、Webマーケティングに力を入れておけばWebサイトが勝手にお問い合わせを呼び込んでくれます。そのため、営業活動に大きなリソースを割くことができない中小企業ほど、Webマーケティングに力を入れるべきであると言えます。

弊社の体験談

BtoB Webマーケティングの重要性を説いている弊社テクノポートも実は、10年ほど前まではテレアポや飛び込み営業を主体とする、典型的なアウトバウンド型の営業を行っていました。

当時は、調子が良くて10件に1件程度の受注、ひどいときには何十件回っても一つも受注が取れない日もありました。

しかし、Webサイトからのお問い合わせを中心にしたインバウンド型の営業に切り替えて以来、コンスタントに2件に1件程度の確率で受注につなげることができています。

この経験から、弊社がWebマーケティング支援をする企業様には、インバウンド型の営業への切り替えをお勧めしており、実際に効率良く受注を獲得できているという声をいただいています。

③新市場の開拓

アウトバウンド型の営業(例:飛び込み営業、展示会)は、物理的・地理的な理由により営業活動の範囲が制限されます。加えて、従来の営業活動はその手法上、営業活動を行っていない顧客からの問い合わせを獲得することが難しいという特徴があります。

一方、インターネットを利用したマーケティング活動は、世界中に情報発信ができるため物理的・地理的な制約に縛られません。また、インターネットは不特定多数の顧客に情報発信できるため、思いも寄らない仕事につながる可能性があります。

弊社では、インターネットを利用した情報発信を通して技術の新しい用途(使い道)を開発する手法を「用途開発マーケティング」と呼んでいます。用途開発マーケティングの具体的な方法と事例は、私(徳山)が弊社公式YouTubeチャンネルで詳しく解説していますので、ご興味がある方はぜひご覧ください。

 

 

BtoBとBtoCのWebマーケティング違い

BtoBとBtoCのマーケティングの違いを下記の3点から考察します。

①ターゲットの特徴
②購入までの期間
③購入の判断基準

①ターゲットの特徴

BtoBとBtoC企業がターゲットとする顧客の特徴は以下の通りです。

  BtoC BtoB
特徴 一般の消費者をターゲットにしているため母数が大きい 法人をターゲットにしているため母数が小さい
購買にかける金額は小さい(数100円〜数10万円) 購買にかける金額は大きい(数10万円〜数1,000万円)
製品・サービスの購入数は多い 製品・サービスの購入数は少ない

ポイント

  • BtoB企業のターゲット顧客は、BtoC企業のそれに比べて少数であることが多いです。そのため、少数の特定のターゲットを明確にイメージし、その顧客に響くマーケティング施策を行うことが必要です。
  • BtoB企業がターゲットとする顧客の数は限定されています。そのため、認知を広める活動と同時進行で、一度認知を獲得した顧客のニーズを育成する活動(自社の製品・サービスをより詳しく知ってもらう活動)も必要です。

②購入までの期間

BtoBとBtoC企業の顧客が購買に至るまでの期間の特徴は以下の通りです。

  BtoC BtoB
特徴 購買の決断までに至る期間が短い 購買の決断までに至る期間が長い
購買の意思決定は消費者個人が行う 購買の意思決定は購買担当者を含めた複数の人間が関与する

ポイント

  • BtoB企業の購買プロセスでは、複数の購買候補を比較し、長期間の検討期間を経て購買に至るケースが多いです。そのため、購買担当者が自社の製品・サービスを選びやすいように、不安をできるだけ取り除いてあげる工夫が必要です。
  • BtoB企業の購買プロセスでは、購買担当者が単独で購買先を決定するケースは少なく、社内の複数人の承認を得てから購買先が決定されます。したがって、購買担当者が他部門の意思決定権者に説明しやすい形で情報を提示してあげることが必要です。

③購入の判断基準

BtoBとBtoC企業の購入の判断基準の特徴は以下の通りです。

  BtoC BtoB
特徴 購買の判断は直感的、感覚的に行われる 購買の判断は論理的、実証的に行われる
購買の目的は消費・浪費が主 購買の目的は課題解決が主

ポイント

  • BtoB企業の製品・サービスの購入目的は課題解決が主であるため、自社の製品・サービスを導入することでどのような課題が解決されるのかを明示してあげることが必要です。
  • BtoB企業の製品・サービスの購入は、数字や事実を基に論理的に行われます。そのため、自社の製品・サービスが課題解決の手段としてなぜ有効なのかを論理的に説明することが必要です。

BtoB Webマーケティングの進め方

それでは最後に、BtoB Webマーケティングの進め方を説明します。

説明する流れは、最初に紹介した5つの手法全てに共通する内容になるので、Web上で新規顧客を獲得するために知っておいて損はない内容だと思います。

全体の流れ

結論から先にまとめると、Webマーケティングの進め方は、「①認知の獲得」→「②興味・関心の獲得」→「③問合せの獲得」の3つの流れで進みます。

それぞれのステップで顧客の数は徐々に絞られていくため、顧客の数を考慮すると次のようなイメージで表すことができます。

それでは具体的にそれぞれのステップを解説します。

I 認知

最初のステップとして、御社の製品・サービスの対象となる顧客に、御社の存在を認知してもらう必要があります。

具体的には、顧客に以下のような行動を起こしてもらうことを意味します。(①〜⑤の番号は、先に説明した5つの手法に対応しています)

①Webサイトの制作・運用(②コンテンツマーケティング)
Webサイトのページが検索結果に表示される

③動画マーケティング
YouTubeの動画が関連動画枠に表示される

④SNSマーケティング
Twitterの投稿が表示される

⑤ウェビナー
ウェビナーの告知メールを受け取られる

これらの方法で、まずは顧客に御社の存在を認知してもらいます。この段階ではまだ、顧客は御社に興味を持っているかどうかはわかりません。

II 流入

御社の存在を顧客に認知してもらった次のステップとして、御社のプラットフォームに流入してもらう必要があります。

具体的には、顧客に以下のような行動を起こしてもらうことを意味します。(①〜⑤の番号は、先に説明した5つの手法に対応しています)

①Webサイトの制作・運用(②コンテンツマーケティング)
Webサイトのページにアクセスされる

③動画マーケティング
YouTubeの動画を再生してもらう(チャンネルの詳細ページに移動してもらう)

④SNSマーケティング
Twitterの投稿に反応をしてもらう(アカウントに入ってもらう)

⑤ウェビナー
ウェビナーに参加してもらう

この段階で顧客は、御社の存在に興味を持っており、詳しい情報を求めてこれらの行動を起こします。

Ⅲ 問合せ

最後のステップとして、御社に興味を持ってもらった顧客に問合せをしてもらいます。

具体的には、顧客に以下のような行動を起こしてもらうことを意味します。(①〜⑤の番号は、先に説明した5つの手法に対応しています)

①Webサイトの制作・運用(②コンテンツマーケティング)
Webサイトから問合せをしてもらう

③動画マーケティング
YouTubeチャンネルを経由して問合せをしてもらう

④SNSマーケティング
TwitterのDMで連絡をもらう

⑤ウェビナー
ウェビナーを経由して問合せをしてもらう

これが、BtoB Webマーケティングにより新規顧客を開拓する流れになります。

まとめ

本記事では、以下の内容を解説しました。

  • BtoBWebマーケティングで用いられる5つの手法:①Webサイトの制作・運用、②コンテンツマーケティング、③動画マーケティング、④SNSマーケティング、⑤ウェビナー
  • BtoB企業がWebマーケティングに力を入れるべき3つの理由:①情報収集方法の変化、②リソースの有効活用、③新市場の開拓
  • BtoBとBtoCのWebマーケティングの違い:①ターゲットの特徴、②購入までの期間、③購入の判断基準

BtoB企業のWebマーケティングを進める上で、本記事の内容を参考にしていただければ幸いです。

この記事の執筆者
徳山 正康
テクノポート株式会社 代表取締役

製造業専門のWebマーケティング事業と技術ライティング事業を手がけるテクノポートの代表を務める。「技術マーケティングで日本の製造業に追い風を」を経営理念に、これまでに数名の町工場から一部上場のメーカーまで、累計1,000社を超える製造業を支援し、数多くの企業の経営革新を実現。

グロービス経営大学院(MBA)卒業、(社)日本ファミリービジネスアドバイザー協会 フェロー、(社)Reboot 理事、(社)Glocal Solutions Japan 認定専門家

【寄稿実績】
間違いだらけの製造業デジタルマーケティング(MONOist)
精密板金企業が「Webでの引き合い」を売上につなげることができた、たった一つの理由(ビジネス+IT)
製造業のSEO対策を基礎から解説、「加工事例」が超重要なワケとは(ビジネス+IT)
製造業の「技術マーケティング」戦略、事例で読み解く自社技術の可能性を広げる方法(ビジネス+IT)
徳山 正康 が執筆した他の記事をみる

関連記事