マーコム・サポーターの椎名です。中小企業や個人事業主のマーケティング活動をサポートする傍ら、ライティング活動も行っています。今回はWebサイトの多言語化をテーマにお話しします。
グローバルでの情報発信として自社のサイトを翻訳して海外でも活用したい企業は多いかと思います。一方、各地域で人が翻訳し、ローカルサイトを制作するのでは、費用工数が大幅にかさんでしまいます。今回は、費用工数を削減する手段となる「Webサイト翻訳ツール」に関して解説します。
この記事の目次
Webサイト翻訳ツールとは
Webサイト翻訳ツールはサイトの多言語化を実現するツールで、Webページのテキストを機械的に翻訳します。翻訳したいWebページのHTMLやCSSに任意のコードを追加することで、希望の言語に変換するものです。
デザインやレイアウトを変更しなくても、元のデザインのテキスト位置に翻訳されて表示することができます。サービスによりますが、英語・中国語・スペイン語など、主要言語すべてに対応しています。中には100以上もの多言語を扱えるものもあります。
サイト制作における活用方法
サイト制作での活用方法として2通りあります。
ひとつは、自社のWebサイトを多言語対応することです。ある一言語のサイトをオリジナルで作るだけで、他の言語を容易に構築でき、グローバルに統一情報を少ない費用工数で発信できます。
もうひとつは、海外Webサイトのテキストを翻訳して、ローカルサイトを制作することです。拠点別のサイトを制作できます。翻訳ツールを活用して共通部分の情報を各言語に自動的に翻訳することで、工数を削減できます。また、各地域のユーザーニーズに合わせ独自色を出すことが可能です。
Webサイト翻訳ツールのメリット・デメリット
Webサイト翻訳ツールは、人が翻訳する場合と比較して、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?ここでは、Webサイト翻訳ツールが得意とする部分、苦手な部分を整理します。また、苦手な部分について改善策があるのかもあわせて解説します。
翻訳ツールが得意なこと
Webサイト翻訳ツールの一番の強みは、なんといっても処理スピードの速さです。人が何時間もかける作業を、ツールならわずか数分で処理することができます。
また費用も安いです。例えば英語から日本語に翻訳する場合、翻訳者が対応するとワードあたり10円~30円程度かかります。5,000ページ程度のWebサイトの場合、軽く数百万円はかかってしまう計算となります。一方、翻訳ツールの場合、サービスにもよりますが、同じ規模のサイトで1桁安くあげることが可能です。
一度に複数言語に対応できる点も、翻訳ツールならではの大きな強みです。人が翻訳する場合、一人で複数言語を翻訳できる専門家はなかなかいませんので、言語ごとに別の翻訳者に相談することになります。これが翻訳ツールであれば、一度に何言語でも翻訳可能です。
翻訳ツールが苦手なこと
Webサイト翻訳ツールの課題は翻訳精度にあります。AI翻訳のレベルは以前より高くなっていますが、まだ誤訳も含まれています。表記ゆれや訳抜けもあるため、結果の確認が必要です。
仮に、翻訳が完璧に正確になったとしても、まだ問題は残ります。言葉の解釈、ニュアンスの違いまでツールでは担保できないからです。コンテンツのタイプによって、得手不得手があります。日常会話レベルであればかなり品質は高いですが、広告宣伝系のクリエイティブ・コンテンツは、顧客や市場を理解する人の査読が必要です。専門性が非常に高い領域でも、同様に専門家による内容の精査が求められます。
精度の課題は改善できるのか?
AIは日々、対訳コーパスを学習しています。関連するIT技術もどんどん進化しているため、機械翻訳の精度はこれからも改善され続けていくでしょう。また、現時点のツールのままでも、自社のWebコンテンツに関連する翻訳文を継続的に学習させていけば、翻訳文を改善させることが可能です。
仮に、ツールの翻訳結果に満足できない部分が含まれていても、有料ツールであれば 編集機能があるため、適切な訳に修正できます。正しい訳を辞書登録、翻訳メモリーに設定しておくことで、使うたびに改善されていくようになります。
翻訳ツールだけで完結できるのか?
こうして改善を続けていくことにより、ツールだけで完成度の高い多言語サイトが実現できるようになるでしょうか?
少なくとも現時点の技術レベルでは、高品質な翻訳を実現するには、人による校閲が不可欠になります。ただし、それはツールに限らず、翻訳者(人)に依頼した場合でも同じです。
ツールでも人でも、完璧な翻訳は困難です。品質を担保するためにクロスチェックが必要となります。仮に正しい訳だったとしても、自社の顧客のニーズをとらえる内容になっているかどうかは、翻訳者には確認しきれません。
翻訳ツールを検討する際のチェックポイント
Webサイト翻訳ツールを初めて導入する場合、ツールベンダーのWebサイトなどに書かれた情報を見ているだけでは、どのツールが自社にあったものか、使い勝手は実際どうなのかわからないかもしれません。ここでは、翻訳ツールを導入する前に確認しておきたいポイントを整理しておきます。ここであげた内容を参考に、ツールベンダーに確認するなどしてみてください。
翻訳の精度
翻訳の精度を左右する要素として「翻訳エンジン」があり、GoogleやDeepL、翻訳会社オリジナルのサービスが提供されています。業界や文章のタイプによって長所短所があり、どういうものが自社にとって最適か、ベンダーの説明だけで判断することは難しいかもしれません。
その際の判断基準として、自社の業種/業界での実績の有無を調べるのもよい方法ですが、それだけだと心もとないかもしれません。一番よい方法は、自社の想定コンテンツを入れて、複数のツールで実際に比較してみることです。
比較検証するコンテンツはテーマによって求められる質も変わります。まず対象コンテンツを整理し、自社で使う機会の多いテーマをいくつか試すとよいでしょう。テーマとしては、商品情報や技術仕様、ブログや記事、プレスリリース、宣伝広告系のクリエイティブといったものがあげられます。
そのほか、「精度を改善するための手段」も確認しておくとよいでしょう。チェックする内容は、専門用語の辞書登録や、正しい対訳の文章登録(翻訳メモリ)などです。機能として持っているかだけでなく、チューニングがどのくらいできるか、運用管理方法はどうなっているかなどを聞いておくことをおすすめします。
セキュリティ
コンテンツには、取扱注意の情報や極秘データが含まれていることがあります。情報漏洩は 大きな損失になるため、データセンターのセキュリティ面やデータの暗号化・ウイルスチェックなどの基本的な対策がどうなっているか、自社の環境も含め、あらためて確認しておくとよいでしょう。
ツールがクラウド型サービスの場合、サイバー攻撃による情報漏洩や改ざん、不正アクセスのリスクがあります。リスクを確実に回避したい場合は、オンプレミス型の開発環境の検討が必要です。
コスト
翻訳サービスは、翻訳ボリュームや利用者数によって料金体系が違ってきます。どの程度使う可能性があるのか、落としどころをみた上で検討するとよいでしょう。ボリュームが小さい場合、サービス料金が安く設定されているものもありますが、Webサイトの場合ページはどんどん追加されるので、あっという間に使い切ってしまう可能性があります。カバー範囲を超えると料金が大きく変わってしまうこともあるので、注意しておきましょう。
また、サービスによっては初期費用がかかってくるものもあります。さらに、自社の環境によってはサーバー料金が別途必要になる場合もあります。
ローカライズ
本文の翻訳だけでは、サイトのローカライズとして不十分です。各地域のニーズにあったデザイン、文章表現の再構成やSEO対策が求められます。Webサイト翻訳ツールのサービスとして、以下に示す機能の有無や内容を確認しておくとよいでしょう。
- 検索エンジンへのインデックス対応&ドメイン設定
- タグや画像テキストの翻訳対応
- レイアウト調整としてHTML・CSSの編集・追加機能
- 画像の差し替え機能
ユーザビリティ・運用面
Webサイト翻訳ツールのサービスの中には、サイトのローカライズを進める上での各種ニーズに応えるさまざまな機能がカバーされているものがあります。こうした機能は非常に心強いですが、操作の難易度が高くなってしまうかもしれません。
運用面の課題は検討時に気づきにくいため、無料体験を活用し、使い勝手を確かめてから検討するようにしたいものです。例えば、表示ビューで確認しながら翻訳の編集ができると便利ですが、スマホ表示には対応していないかもしれません。また、翻訳してほしくない部分の扱いや、サイト更新があった際の更新情報の通知などは、使ってみてはじめて気づく部分です。
実際に使ってみて気づいた点をまとめておき、どのようなサポート体制があるかも含めてベンダーに確認してみるとよいでしょう。
おすすめのWebサイト翻訳ツール
ここでは、レビューサイトなどで評判の高いおすすめのWebサイト翻訳ツールをご紹介します。
shutto翻訳
Shutto翻訳は、株式会社イー・エージェンシーが提供するツールです。Google翻訳APIを利用、100言語以上に対応しています。自動翻訳、プロ翻訳、セルフ翻訳の3つの翻訳を組み合わせられます。
企業サイト、ブログ、ECサイトなどさまざまなサイトを多言語化、動的なサイトでも対応可能です。翻訳結果を画面で見ながら直感的な編集が行えます。
検索インデックス登録やドメイン付与など海外のSEO対策も行えます。独自ドメイン取得もオプションで対応しています。
<詳細はこちら>
https://www.submit.ne.jp/shutto-translation
WOVN.io
Wovn Technologies株式会社が運営するWebサイト翻訳ツールで18,000サイト以上の導入実績があり、43言語に対応しています。ECサイトの決済・配送ページなどの動的サイトを含め、幅広いコンテンツで活用できます。現地のSEO対策機能も備えています。
実際のWebサイトを確認しながら翻訳でき、スマホ表示も確認可能です。WordPressなど各種CMSやECサービスと連携しており、既存の環境に導入できます。
日本人の専任スタッフが導入から運用フローの構築までをサポートしています。
<詳細はこちら>
https://wovn.io/ja/suite-web/
WEB-Transer@Enterprise(AI)
株式会社クロスランゲージによるサービスです。22言語に対応しており、トップページに言語別のボタンを貼るだけで、ドメイン内の全ページを翻訳できます。
同社のサービスは、オンプレミス環境のAI自動翻訳プラットフォームでセキュリティを担保できます。独自開発の機械翻訳エンジンを備えており、翻訳者(人)との併用も可能です。
<詳細はこちら>
https://www.crosslanguage.co.jp/auto-translation/enterprise/lp-ai/
Myサイト翻訳
株式会社 高電社によるサービスです。デザインやWebサイトの内容を変えずに、翻訳ボタンで翻訳できます。121言語に対応しています。
「J-SERVER」は同社翻訳ソフトのエンジンを基に開発されたサービスの総称で、同社サービスを利用したサイトでは、自動翻訳サービス「J-SERVERプロフェッショナル」の機械翻訳であるという情報が入るようになっています。
<詳細はこちら>
https://mysite-ai.jp/
まとめ
Webサイト翻訳ツールはサイトの多言語化を実現するツールで、Webページのテキストを機械的に翻訳します。処理スピードが速く、複数の多言語サイトをリーズナブルに構築することができます。
ただし、翻訳精度の課題はあります。単なる正確性だけでなく、海外ユーザーのニーズに応えるローカライズを実現するには、クリエイティブの工夫やSEO対策などを施す必要がありますが、ツールは完ぺきではありません。どの程度の品質を要求するか、自社の目的にもよりますが、人の手によるクロスチェックが不可欠となります。
Webサイト翻訳ツールを検討する際には、精度やセキュリティ、コストなどさまざま な項目を事前検証しておくとよいでしょう。使ってみないと気づきにくい運用操作上の問題もありますので、ある程度の期間、試用してみることをおすすめします。
テクノポートは製造業のWebマーケティングを支援する各種コンサルティングサービスをご用意しています。お困りの際は、ぜひご相談ください。