テクノポートの渡部です。Webマーケティングにはさまざまな施策がありますが、どこにどれくらいの予算をかければいいのかということについては、頭を悩ませる分野だと思います。そこで利用したいのが、かけたコストに対してどれくらいの効果があったかを測る手法・ROIです。本日はその手法とそれをどのように最適化するかについて解説します。
この記事の目次
マーケティングROIとは
ROIとは「Return on Investment(投資対効果)」の略で、マーケティング活動に投資した費用に対して得られた利益のことです。
計算式
ROIは下記の計算式で算出されます。
ROI=(マーケティング関連で挙げた利益 / マーケティングにかけたコスト)× 100
計算式は単純で、100%を超えていれば、かけたコスト以上に利益を生み出せていることになります。
LTVで計算
製造業のWebマーケティング運営の場合、Webサイトから問い合わせがあった売り上げだけで計算すると、ROIの値がすごく小さくなってしまいます。というのも、Webサイトからくる問い合わせの最初の取引額が小さいことが多く、リピートで大きな取引先になることも多いので、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を考慮してROIを計算してください。つまり、最初の取引の売り上げだけでなく、その後のその取引先とのリピート注文の利益も計算に入れるということです。
目標値
どれくらいを目標にするかは企業にもよりますが、最低でもコスト以上の利益を生み出す100%以上を最低限の目標にするとよいでしょう。
ただし、ROI単独でマーケティング活動を評価するのではなく、他の指標と組み合わせて総合的な評価を行うことが重要です。ROIが100%を超えなくても、他の指標や目標を達成している場合、成功とみなされることもあります。
これは他社と比較するのではなく、自社で継続的に数値を取っていき、どのように変化したかを自社内で時系列で評価していくのがよいと思います。
最適化の手法
ROIを算出してそれで満足してはいけません。重要なのは、それを使ってWebマーケティング活動をより良いものにしていくことです。
目標の設定
まず、マーケティング活動における目標を明確に設定します。先述のように基本は「利益」で算出しますが、その他に「新規顧客獲得」や「既存顧客の満足度向上」などを、数値化や利益に換算して設定するのも一つの目標設定方法です。すぐに売上や利益を見込めない場合は、獲得リード数やウェブサイトのトラフィックなど、自社目標に関連した指標を使用しましょう。
ROIの算出
ROIの算出の分母である、マーケティング活動にかかった費用として、広告費、プロモーション費、人件費など、マーケティング活動に関連するコストと、それによって得られた成果を算出し、ROIとして数値化します。算出するときは期間を決めて算出し時系列で記録を取っていくといいと思います。
最適化
ROIの分析結果を時系列で取っていき、マーケティング戦略やキャンペーンの最適化をします。収益性の高い活動の強化や、収益性の低い活動の見直し、効果的なチャネルの重点的な活用など予算配分を検討します。新たな施策をして、全体の数字がどう変わるかと個別のROIを算出して評価しましょう。
また、全体の数字を見るだけではなく、個別の施策ごとにどれくらいの効果があったかについても検証してROIを算出すると、より詳しい分析ができます。
PDCAを回す
1回の施策で終わらせるのではなく、PDCAサイクルを繰り返すことで、持続的な改善が可能となります。成果を評価し、改善策を実行して効果を検証し、再度計画を立てて改善を繰り返すことで、マーケティング戦略の最適化を実現していきましょう。
弊社ではこのPDCAを回していくためのプランとして、コンサルティングプランがありますので、より良いWebマーケティング活動をお考えの方はご相談ください。
計算される利益とコストの要素
大まかに「マーケティング関連で挙げた利益」と「マーケティングにかけたコスト」と説明しましたが、具体的にどのようなものがあるのか、例を挙げてみます。
利益として数えられるもの
- Webサイトのコンバージョン:Webサイトのコンバージョンは、特定の目標達成(例:製品の購入、お問い合わせフォームの送信、メーリングリストへの登録など)がどれだけ達成されたかを示す指標です。売り上げにつながらなくても利益換算の数値を決めて評価に入れるか、個別に利益とは違うROIを出すとよいと思います。
- Webサイトからの利益:Webマーケティングの成果として、Webサイトから新たな顧客から発注で利益が出たものを計算します。
- コスト削減:Webマーケティング活動によって、従来の広告や販売活動のコストを削減できた場合、その削減分を利益として計上します。実例として、毎年出ていた展示会があったが、Webサイトで十分に顧客が取れるようになったから、出展を取りやめた等があれば、それはコスト削減の数値として計算に入れてもいいと思います。
- リピート顧客からの利益:Webマーケティングを通じてリピート顧客からの売り上げがあった場合、その顧客からの追加売上の一部を利益として評価します。
費用として数えられるもの
- 広告費用:オンライン広告を実施するための費用。例えば、Google広告やSNS広告などの費用が含まれます。
- コンテンツ制作費用:Webサイトのコンテンツやブログ記事、ビデオコンテンツなどの制作にかかる費用です。Webサイトの制作費は制作してからの現在までの期間で案分するとわかりやすいです。
- Webサイト運営費用:Webサイトの運営にかかる費用。デザイン修正や、機能の追加開発などのコストが含まれます。また、Webサイトのアクセスを解析し、改善コンサルの契約費用などです。
- MAツール費用:マーケティングオートメーションツールを導入している場合は、月額のその利用料などです。
仮定計算
仮定として一度ROIを計算してみたいと思います。かなり簡素化したモデルですので、参考までに。
対象期間
- 2023年1月~6月(6か月)
利益算出
- Webサイトのコンバージョン:10万円(問い合わせ獲得1件当たり1万円と設定し、期間内に10件獲得)
- Webサイトからの利益:20万円(獲得した問い合わせのうち2件受注し、2件分の利益)
- コスト削減:15万円(毎年30万円かけて出ていた展示会出展をやめたことによるコストの削減)
- リピート顧客からの利益:30万円(Webサイトから獲得した顧客からのリピート注文の利益)
費用算出
- 広告費用:30万円=5万円×6か月(Googleリスティング広告費用)
- コンテンツ制作費用:12万円=2万円×6か月(2万円=制作費用100万円/リニューアルから50か月経過)
- Webサイト運営費用:18万円=3万円×6か月(制作会社の運営コンサル契約)
- MAツール費用:特に利用な無し
ROI算出
- 利益合計:75万円(=10万円+20万円+15万円+30万円)
- 費用合計:60万円(=30万円+12万円+18万円)
- ROI=(75万円/60万円)*100=125
この場合ROIは125となります。なお、リピート顧客からの利益を入れないとすると、
- 利益合計:45万円(=10万円+20万円+15万円)
- 費用合計:60万円(=30万円+12万円+18万円)
- ROI=(45万円/60万円)*100=75
となり、コストの方が高くなってしまいます。単純な数字だけで評価するとマイナスに感じてしまうこともありますが、自社にあった評価計算式にカスタマイズして使ってください。
まとめ
マーケティングにかけたコストがどれくらい効果的かについては評価が難しく、単純にWebサイトからきた問い合わせと制作費だけに目が行きがちですが、総合的に評価をすることが大切です。ROIの考え方を参考にして、より効果的なマーケティング戦略を立てていただけたらと思います。