テクノポートの廣常です。製造業のWebサイトにとって、自社の製品や加工技術をどう見せるかは非常に大きなテーマです。中でも、実際の製品写真や加工事例は、ユーザーの製品理解を深めたり、問い合わせを促したりと高い効果が見られます。
とはいえ、BtoBの製造現場ではすべての情報を自由に公開できるとは限りません。守秘義務のある案件や、新製品に関わる内容など、見せたくても見せられないということがよくあります。
今回は、そんな“載せたくても載せられない”ときに役立つ、代替的なコンテンツの例や作り方をご紹介します。
この記事の目次
事例写真に替わる代替コンテンツ
CAD図や簡易図面の活用
例:3Dモデル
出典:株式会社長野サンコー
例:簡易図面
出典:大鉄精工株式会社
実際の製品写真の代わりに、CADデータから生成した図面や、簡易図面を用いる方法です。外観や機能に関する細かい部分は伏せたうえで、構造の一部や特徴的な形状だけを示すことで、「どのような加工に対応できるか」という技術的な幅を伝えることができます。 特に、技術者にとっては図面の方が理解しやすいケースも多く、信頼性のある情報として受け取ってもらいやすいというメリットもあります。
AIの生成画像を使ってイメージを作成
例:ChatGPTによる生成画像
近年では、画像生成AIを使って製品や加工品のイメージ画像を作る方法も選択肢に入ってきました。ChatGPTやImageFXのようなツールを活用すれば、実写に近いクオリティで素材を用意することが可能です。「実際に存在する製品は載せられないが、似たような加工内容を説明したい」「製品の用途例をイメージで表したい」といった場合に有効で、雰囲気や方向性を伝える補助的な素材として機能します。
※2025/3/26時点でChatGPTの新たな画像生成機能(4o Image Generation)がリリースされ、「GPT-4o」での画像生成レベルが飛躍的に高まりました。いわゆる「AIっぽい不自然な画像」の枠を超え、より実用的な画像・イラストの作成が可能となっています。
「〇〇の画像を作成して」とのシンプルな指示でも質の高い画像が生成され、またイメージに近い素材やイラスト(人によるラフな手書きでも可能)を併せてアップロードして伝えればより精度高い画像を作ることが可能です。無料ユーザーでも利用可能ですので、ぜひ一度お試しください。
サンプル品の作成や端材の活用
例:サンプル品
出典:株式会社イナック
自社独自のサンプル品の作成、あるいは普段廃棄してしまう端材や不良品に追加工をして活用する方法です。本番の製品そのものではなくても、加工技術の一端を見せるには十分な材料となります。「この素材にこういう加工ができる」と伝えることが目的であれば、実際の納品物である必要はありません。見せ方次第で、自社の加工対応力や技術力を印象づけることができます。
情報を制限した上で掲載する
例:一部情報のみ公開
出典:井山工作所 有限会社
やむを得ず、どうしても写真や図も出せない場合には、「一部情報のみを掲載する」という選択肢もあります。たとえば「〇〇材を使用し、厚みXXmmの複雑形状を5軸加工で対応」など具体性のある断片的な情報だけでも、技術レベルの参考になります。 情報を全く出さないのではなく、出せる範囲を最大限活用するという視点で考えることも大切です。
それでもやはり実例の力は強い
前述の通り代替可能なコンテンツは何種類かあるものの、実際の製品や加工写真が持つ説得力にはかないません。生成AIによる自然な画像の作成が可能になってしまった分、自社独自の実例、一次情報の重要性がより増してくると考えられます。少しずつでも掲載できる事例を増やしていくことをおすすめします。情報開示のルールを社内で整理したり、取引先と協議したりと時間がかかるケースもありますが、地道に取り組むことで確実に成果につながります。
掲載許可はどう取るか
実際に掲載に向けて動く際、ひとつのハードルになるのが「掲載許可の取得」です。掲載したい事例がある場合には、許可の取り方にも工夫が必要になります。たとえば、事後にお願いするだけでなく、受注時や見積もり段階で掲載可否の確認をするという方法もあります。場合によっては「事例としての掲載許可を条件に、サービスや価格面で特典をつける」といった活動をされているBtoB企業様もいらっしゃるようです。
掲載できる事例が少ない時期や、社内外の事情で公開が難しい場面は、どんな企業にも起こり得ます。そのときに何も掲載しないのではなく別の見せ方や伝え方を工夫していくことがWebサイトの価値を大きく左右します。そして、いずれ実例が載せられるように早い段階から見せる準備を整えておくこともまた重要です。